「あなたが落としてくれるなら、私……何でも言うことを聞く」「何でも言うことを聞く、か……」龍司は、真帆がこの金のネックレスのために、そこまで口にするとは思っていなかった。だが確かに、心が動いた。彼は、これ以上真帆の心を苦しめたくなかった。このところ、龍司は何度もこの結婚を立て直す方法を考えてきた。けれど、どこからどう見ても、悪いのは自分だった。だからこそここまで引き延ばしても、真帆に許してもらえる理由を、どうしても見つけられなかった。もし、この金のネックレスを落とすことで、彼女の気持ちが戻るのなら。たとえ数十億円など、一体何だというのか。そう腹を決め、真帆に安心させるような笑みを向けると、再び競売札を掲げた。「12億円……」「12億円」かすれた、年季を帯びた声が、その穏やかな声を押し流した。龍司は、はっとして眉を寄せる。「おばあちゃん……どういうつもり?」「家の者が欲しがっているなら、誰が競っても同じことでしょう」龍司の祖母は平静を装いながらも、瞳には明らかな不快を滲ませた。「それとも、年寄りには家の金を使う権限がないとでも?」「おばあちゃん、誤解だよ。そんな意味じゃ……」龍司は小さく息をついた。「ただ、真帆は本当に欲しがっていて……」「波が嘘をついてるとでも?」龍司の祖母の視線が、冷たく突き刺さる。その瞬間、会場のあちこちから、個室へ向けた視線が集まった。こんな場で身内同士が同じ品を奪い合えば、明日の見出しになるのは目に見えている。龍司はこれ以上、真帆に悪い噂が及ぶのを望まなかった。だから結局、競売札を下ろした。そして、真帆の手を軽く叩き、低く声をかけた。「オークションが終わったら、同じものを作らせる。いい?」同じものを、作る……真帆は、思わず苦く笑った。また、いつもと同じ対応……数か月前、苺が死んだときと何も変わらない……失ったなら、代わりを用意すればいい。そんな考え方。そもそも自分も、もうすぐ離婚する身だ。いずれ元夫になる人に、こんな頼みをする資格など、最初からなかったのだ。真帆は、そっとまつげを伏せ、龍司の手を離した。そして、何事もなかったかのように、自分の席へ戻って腰を下ろした。波は真帆が引き下がったのを見て、その瞳の奥に一瞬、勝ち誇った光を
Read more