All Chapters of 再会は魔法のような時を刻む~イケメンドクターの溺愛診察~: Chapter 131 - Chapter 140

150 Chapters

8 未来を決めた日

「おかえり、よく来てくれたわね」「久しぶりです。おじさん、おばさん」「ただいま、お父さん、お母さん」実家に上がって結婚の報告をすると、2人とも本当にびっくりしていた。「こんなにイケメンになった瑞君が愛莉の旦那様なんて、なんだかドキドキするわね」お母さんは、昔から瑞のことが可愛くて仕方なかったみたいで、見た目が変わってさらに喜んでいる。「確かにな、こんなハンサムがこの世にいるなんてな。愛莉、誰かに盗られないように気をつけないとな」「お父さん、変なこと言わないで」「大丈夫ですよ。愛莉を悲しませるようなことは絶対にしませんから。安心してください。ずっと大事に思ってくれたお2人のことも、これからは俺が守りますから」「まあ、なんて嬉しいことを……」「ああ、本当に嬉しいよ。瑞君、立派になったね。素晴らしいよ」お父さんもお母さんも、少し年齢を重ねたからかな……涙腺が弱くなったのだろう。「確かにびっくりしたけれど、私はね、2人が結婚することは、昔から何となく分かってたのよ。本当に……嬉しいわ。絶対に幸せになってね」お母さん、わかってたなんて…… まさかそんな言葉が飛び出すとは思ってもなかったから、正直、すごく驚いた。「愛莉を幸せにします。必ず」「2人で……幸せになるよ。瑞と私はずっと幸せだから。お父さんとお母さんも、ずっとずっと健康で、幸せでいてね」「……ああ、そうだな」「愛莉、ありがとうね。お母さん、本当に幸せよ」 こうして、お互いの両親が心から祝福してくれ、大切に思ってる身内に見守られてると思うと、たまらなく嬉しかった。私の心は、さらに強くなった。 あっという間の旅行だったけど、久しぶりに鎌倉の空気を吸って、両親にも報告ができて、とても充実した2日間を過ごすことができた。 日常に戻ってからも、私達はそれぞれに仕事に励みながら、いろいろと結婚について話し合った。 しっかりと将来のことを考えて、様々、慎重に決断していった。 とにかく…… これからは、「周りに流されないで真っ直ぐ前を向いて、2人で支え合って生きていこう」って、瑞と約束した。 ずっと弱かった私の心。 でももう、私は1人じゃない。 この先は、その大事な約束を、瑞と一緒に必ず守り抜きたいと心に誓った。
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1 あなたと歩む人生

半年後、私達は結婚した―― 式は2人だけで挙げて、家族だけのささやかなパーティーを開催した。 みんなに祝福してもらい、私は…… 「菅原 愛莉」になった。 毎日が夢のように幸せで、瑞と共に過ごす1日1日が宝物のように思えた。 そんなある日。 元気だった瑞のお父さんが急に倒れてしまった。 素早い治療のおかげで、とても早く回復したけど、病院の院長として気苦労が絶えない状況は回避しなければならなくなった。 これ以上ストレスをかけてはいけないと、瑞はお父さんを近くで支えたいと思うようになった。 小川総合病院の院長先生にとても感謝してる瑞にとっては、苦渋の選択だったと思うけど、真剣に事情を話したら「大切なご両親を安心させてあげなさい」と、病院を去ることを快く了解してくれたようだった。 もちろん、小川先生には、そのことでまたいろいろ言われたみたいだったけど、もう何も気にしないようにしていた。 瑞が病院を辞めてすぐに、私達は鎌倉の新居に移った。 そのタイミングで私も「ラ・フルール」を辞めることになった。店長はじめ、お世話になった人達との別れは寂しかったけど、新しい未来に希望も湧いていた。 『愛莉さん。今まで本当にありがとうございました。お世話になりました』 賢人君は、私が去る前、最後に言葉をかけてくれた。 『私こそ、本当にありがとう。賢人君と一緒にいろいろ学べて、頑張ってこれて、すごく楽しかったよ』『本当に……いろんなことを教えてもらいました。愛莉さんのおかげで、もっともっと花が好きになりました。これからも……自分でしっかり学んでいきます』『ううん、賢人君はちゃんと自分で花を知ろうとしてた。私が教えたことの何倍も、自分で努力してた。私、先輩なのに賢人君を尊敬してたよ』『……そ、そんな風に言われるとなんだか照れますね。僕はまだまだ未熟ですから』『未熟なんかじゃないよ。いつかお店を持てるその日まで、賢人君らしく頑張ってね。ずっと応援してるから』 『はい、本当にありがとうございます。愛莉さんはいつも優しいですね。あれから僕は何も言いませんでしたけど、やっぱり……今でも愛莉さんのことが好きです』『えっ』『諦めが悪いって怒られるかも知れませんね。だけど、僕は……心からあなたが好きだったから』
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2 あなたと歩む人生

『賢人君……すごく嬉しいよ。私なんかを好きになってくれて、本当にありがとう。でも、これからは、自分自身の幸せのために大切な時間を使ってほしい。賢人の大事な時間は私以外のことに……。ごめんね。でも、ずっとずっと応援してるから、そのことは忘れないで』 賢人君は、優しく微笑んだ。 この笑顔が…… 私は、大好きだ。 絶対に、幸せになって。 お互いの未来を願いながら、私達は「またいつか会いたいね」と言って……さよならした。 今暮らしている新居は、瑞の両親が経営する総合病院の近くにある。広いお庭付きでかなり立派だ。 こんな素敵なお家に住めるなんて…… 本当に夢みたいだ。 「愛莉、これから、俺達の新しい人生が始まる。本当に……子どもの頃からの夢が叶って嬉しいよ。何度も言うけど、何も心配しないで俺に着いてきて」 「前も言ってくれたけど、夢が叶ったなんて大げさだよ。でも……ありがとね。うん、着いていくよ」 その言葉通り、何の不安もなく過ぎる瑞との新しい日々。 その中で、嬉しいことに、私は赤ちゃんを授かった。妊娠中はもちろんいろいろ大変だったけど、周りの支えもあり、無事に出産を終え、可愛い赤ちゃんが誕生した。 瑞に似た、とても愛らしい男の子。 私達は、その子に「優希」(ゆうき)と名付けた。 優しく、希望溢れる人生を送ってほしくて。 瑞が菅原総合病院の院長になって3年が過ぎた頃には、優希は小学1年生になっていた。 「お父さん、僕、絶対にお医者さんになるよ。お父さんみたいな立派な人になりたいから」 初めて我が子が語った夢に、私達は本当に感動した。 子どもの成長はとても早くて、気がつけば小学校の高学年になり、その辺りから私も、近くの花屋でパートとして働き始めた。子育てと仕事の両立は結構大変だったけど、瑞がいつだって私を支え続けてくれたから、全然苦じゃなかった。 そうやって、一生懸命前を向いて進むうち、優希は大学生になった。私達は、息子の成長を見守っていられることにこの上ない喜びを感じていた。
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3 あなたと歩む人生

優希は、子どもの時に語った夢の通り、医師を目指し頑張っている。瑞も、精一杯優希と関わり、医師になるために必要な話をたくさんしてくれた。 もちろん、そんな会話の内容に、私は全くついていけないんだけど。 それでも、2人の楽しそうな姿を見てるだけで、幸せで嬉しかった。 優希は瑞と良く似てて、母親が言うのも変だけど、長身でかなりのイケメンだ。きっと、ガールフレンドもたくさんいるんだろう。 優しくて、穏やかなところも父親に似たみたいで、私は優希にも支えられてる。 「お母さん、誕生日おめでとう。これ、この前欲しいって言ってたアクセサリー。それと、お花」 誕生日には毎年プレゼントをくれる。 「うわぁ、可愛い寄せ植えだね。アクセサリーもすごく嬉しい。優希、ありがとう。でも、嬉しいけど、彼女のことも大切にしてあげなさいね」「それはもちろんだけどさ。でも、お母さんがいるから、お父さんも僕も、毎日元気でいられるんだし。やっぱり感謝してる、本当にありがとう」 こういう優しいところ、瑞にそっくりだ。 泣けてしまうよ…… 「お母さん、ますます頑張らなきゃね。いっつも優希とお父さんに支えてもらって、私は本当に幸せだよ」 「おじいちゃん、おばあちゃん達、お父さんとお母さん。みんな、元気に長生きしてもらいたいんだ。そのために僕も早く医師になりたい。みんなが病気になった時に治せるように」 その言葉には、我慢できずに涙がこぼれた。 思わず、瑞がお祖母さんを亡くしたことで、お医者さんを目指した時のことを思い出した。 瑞も、優希も…… 本当にすごく深い意志を持ってる。 私は、そんな2人を心から尊敬してる。 「だけど、あまり無理をしないで、体に気をつけて頑張ってね。お母さん、いつでもあなたの味方だから。もし何かつらいことがあったら、ちゃんと私達に相談してね。お医者さんなんて大変な職業、きっと悩み事も多いだろうから」瑞は私に弱音を吐かなかったけれど、やはり子どものこととなると心配になる。これが、母親というものなのだろう。 「うん、ありがとう。わかってるよ。心強いよ、本当に」
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4 あなたと歩む人生

その後、瑞の支えもあり、優希は無事に医師になった。途中、大変な時期も乗り越え、良く頑張ったと拍手を送りたい。 今は、鎌倉にある別の病院で働いてる。 しばらくは外の世界で頑張って、まだまだこれからだけど、お父さんみたいに「総合内科専門医資格」を取るんだって、今から張り切ってる。きっと瑞のような立派なお医者さんになるって、私はこれから先の優希のキラキラした姿を想像していた。 「愛莉、今日は久しぶりにシーキャンドルに行こうか」瑞が言ってくれた。 「本当に? 嬉しい。久しぶりだね」「ああ。あそこは思い出の場所だからな。時々、愛莉と行きたいと思うんだ」「……2人の原点……かな。あそこで瑞にプロポーズしてもらったから」 忙しい合間をぬって、誘ってくれることが心から嬉しい。お互いずいぶん年を重ねたけど、今でも、瑞は私を大切にしてくれてる。 何一つ、変わらずに―― 確かにここにくるまでにはいろいろな困難もあった。 でも、それが人生だと思う。 順風満帆では、成長もできないし、喜びも生まれない。私が負けそうになった時、つらく悲しい時、そんな人生の大変な時には、いつだって瑞が支えてくれた。 だから私は…… ここまで頑張ってこれたんだ。
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1 あなたのそばにいられる幸せ

あの日、瑞がプロポーズしてくれたシーキャンドル。 久しぶりに見たキャンドルの絨毯。 キラキラ輝いてて、本当に綺麗だ。 揺らめく炎を見てたら、若い頃を思い出した。 本当に…… いろんなことがあった。 賢人君は、数年前に手紙をくれた。 自分のお店を持って頑張ってるって。 小さなお店だけど、今はすごく充実してると……とても綺麗な字で綴られていた。 そこには書かれてなかったけど、きっと新しい人生を、誰か素敵な人と歩んでるんだろうな。そうであってほしいと心から願う。 毎日、大好きな人と、大好きな花に囲まれて、あの優しい笑顔でみんなを癒して…… 絶対に幸せになってるに違いないと確信してる。 坂井先生は、ご実家のある北海道に戻り、病院を開業した。 瑞に連絡が来て、「坂井先生は独身を貫いてて、今でも愛莉のことが好きみたいだ」って聞かされた。 その真偽はわからないけど、でも…… 寒い北海道で、患者さんのために奮闘してる坂井先生を想像すると、それはとても嬉しかった。 きっとお母さんを守って、お母さんと一緒に……二人三脚で頑張っているんだろう。 坂井先生にも、お母様にも…… ずっと元気でいてもらいたいと、心から思った。 そして、小川先生。 同じ内科のお医者さんとお見合い結婚して、数年前に離婚したそうで…… 原因は旦那さんの浮気だった。 憔悴しきった小川先生から1度だけ瑞に連絡があって、その時、小川先生のことをちゃんと励ましてあげてた。 それから連絡はないけど、風の噂で、他のお医者さんと再婚して、小川総合病院を継いだって聞いた。 小川先生、院長になったんだ。 女性であんな大きな病院の院長なんて、すごいなって思う。いったい毎日どれだけのプレッシャーと戦ってるんだろう? 私には、到底無理だ。 いろいろ言われて確かにショックも受けたけど、それでも今は思う。 小川先生はあまりに背負う物が大きすぎて、強く生きることでしか自分を守れなかったのかなって。 とにかく…… 私が関わった人達には、いつまでも、みんな幸せでいてほしい。 みんなへの感謝は絶対に忘れないよ。
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2 あなたのそばにいられる幸せ

「寒くない?」 秋の風、ちょっと寒いけど…… 「うん、大丈夫だよ」 私の気持ちがわかったのかな? 瑞は、上着を1枚脱いで肩にかけてくれた。 「ありがとう。でも瑞が風邪引いちゃうよ」 「そうなったら、またお前に風邪を移してしまうな」 「そうだね……そしたら、私達、2人とも優希に治してもらわなきゃね」 「頼もしい息子だな。優希なら、必ず立派な医師になれる。だけど、愛莉の風邪は……それだけは、優希じゃなくて俺が治す。そう約束しただろ?」 「……うん、そうだね。いつも私は瑞に治してもらってる」 初めて診察してもらって、聴診器を胸に当てられた、あの時のドキドキは…… きっと、一生忘れない。 「これからもずっと、俺の命が尽きるその瞬間まで、俺はお前を守り続ける」 瑞…… 「嫌だよ。命が尽きるなんて……そんな寂しいこと言わないで」 本当に泣きそうになる。 瑞のいない未来なんて…… 絶対に、嫌だ。 「そうだな、ごめん。ずっと側にいるから。ずっとずっと……一緒にいような。それが俺の願いだ」 優しく手を握ってくれる瑞。 あなたの優しさは、子どもの頃から何も変わらない。 幼なじみで、大好きだった瑞。 今はもう、かけがえのない何よりも大切な人になってる。 菅原総合病院の院長になっても、謙虚で誠実で真面目で優しいあなた。 いつかは、優希も一緒に医師として働くことになるだろう。 2人が頑張ってるから、私も家事や仕事、いろいろなこと……全部頑張っていける。すごく力をもらってるよ、毎日毎日。 私達は、これからも家族で支え合って生きていく。 まだまだこの先、どんな困難があったとしても、3人で乗り越えていきたい。 瑞…… 私の中にあるあなたへの愛情、それは一生尽きることはないよ。 これから、2人共、おじいちゃんとおばあちゃんになっていくけど…… それでもちゃんと、変わらずに私を愛してね。 無数のキャンドルの美しい揺らめきは、今年もこうしてまた、人々の心を癒してくれてる。 「ねえ、瑞。来年も、再来年も、瑞とここに来たい。ずっと一緒に……」 「もちろん。2人でここにまた来よう」 絶対だよ……約束ね。
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3 あなたのそばにいられる幸せ

*** 新居の庭には、今日もたくさんの花が咲いてる。 ピンク、黄、赤、白…… 金魚草も可愛く花壇で泳いでる。 「行ってきます、今夜はカレーだよね。終わったらすぐ帰るから用意しておいて」 「美味しいの期待してて。あっ、自転車、危ないから気をつけてね」 「お母さんも頑張って!」 笑顔で手を振る優希。 爽やかな優しい笑顔に嬉しくなる。 玄関ドアを開けて中に入ったら、次は瑞が出ていくところだった。 「愛莉、行ってきます」 「うん、頑張ってね。今日、カレーだよ」 「エビ入りのシーフードカレーにして。楽しみにしてるから」 「はい、わかりました。気をつけてね」 「ああ、じゃあ行ってくる。あ……そうだ、今度の休み、2人で出かけよう」 瑞はそう言って、優しくほっぺにキスをして、頭を撫でてくれた。 もちろん、いつまでも若くはないってわかってる。 だけど…… あなたのキスは、私に安らぎと元気をくれる。 「今日も1日、頑張ろう!」って思えるんだ。 大好きな瑞…… あなたに出会って動き出した夢のような時間。 今日まで私は、瑞と一緒に、魔法にかかったみたいな素敵な時を刻んでこれた。 私達の人生はまだまだこれから。 いつまでも隣で一緒に笑っていようね。 本当に…… 大好き、愛してるよ。 これからも、どうぞよろしくお願いします。
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1 after story 坂井良輔

どうしようもないくらいの敗北感に、僕はずっと支配されていた。いつだって輝いてる人間には勝てないと勝手に思い込んでいた。普段は笑顔を作り、患者のために医師として頑張っているのに、ふとした時に自分の醜い嫉妬心や憎悪が湧き上がった。青春時代を全て失った僕が、闇を背負ってしまった経緯は……今となってはもう何も思い出したくはなかった。北海道に来て母と共に暮らし、病院を開業できたこと、今はあの2人に感謝している。最近の母は、とても体調が良い。それが1番嬉しかった。ある日、親しい人から連絡が入った。僕の友人が、自分自身を傷つけ、辛うじて一命を取り留めたという衝撃的な内容だった。そのことを知った僕は、いてもたってもいられず、診察が終わってすぐに、車で友人が入院する病院に向かった。中学時代の友人がまさか……何とも言えない心境のまま、病室に入った。「坂井……来てくれたのか。心配かけてごめんな、わざわざ来てもらって申し訳ない」「何を言うんだ。そんなこと気にするな。とにかくお前が無事で良かった……本当に良かったよ」覇気のない友人の顔。いったいなぜ?一旦安心した後、そんな疑問で頭がいっぱいになった。それから少し話していると、友人が言った。「ここから見える月はとても綺麗だろ」月の話をされてドキッとした。あれからはゆっくり月を眺めることもしなくなっていたから。「そ、そうだな。綺麗だな……」
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2 after story 坂井良輔

北海道の大地に輝く今夜の月は、確かにあの病室から見えた月と同じくらい美しかった。「坂井、月はさ……自分自身では輝けないんだよな。太陽に照らされてこそ、美しく輝くことができる」「あ、ああ、そうだな」「俺……大切な人を失ったから、もう輝けないんだ」「えっ?」「太陽みたいな俺の妻は……今はこの世にはいないから」「えっ、奥さん、亡くなったのか?」「……ああ。あの日……俺が妻を死なせてしまった」奥さんが亡くなったことは知らなかった。だとしたら、どれほどショックを受けていただろう。察するに余りある。「……どういう意味だ? 俺が死なせた……って」「……あの日は雨が降ってたから、近くの駅まで迎えにきてほしいって電話したんだ。そしたら、すぐに傘を持って、歩いて向かってくれた」「……」心臓がドキッとした。その続きを聞くのが怖い。「その途中だよ。妻は……バイクにはね飛ばされて……」「……そんな……」「あの時、ずぶ濡れになってもいいから急いで帰れば良かったんだ。俺なんか、濡れたって、良かったのに……。俺が妻を呼んだから……。俺が、俺があいつを呼んだから……。俺が……あいつを殺したんだ」「……」思わず言葉を失った。何をどう答えればいいのか。もし、僕が同じように愛莉ちゃんを亡くしてしまったら……そう思うと、友人の思いが痛いほどわかって、胸が締め付けられた。「あの日、俺は太陽を亡くしたんだ。だから……だからもう、俺は輝けないし、輝いてはいけないんだ」友人の瞳から、ひとすじの涙が流れた。「そ、そんなこと言うな。お前は……こうしてちゃんと生きている。生きているじゃないか」「俺なんかに、生きる資格はあるのか? 俺だけが生きてて……そんなことが許されるのか?」深い悲しみの中にいる友人を見ていると、その闇から何としても救い出したいと思った。「お前の苦しみは計り知れないだろう。確かに、僕にその気持ちを全て理解するのは難しい。でも僕も……1度死んで生まれ変わった気持ちになったことがあるんだ」「坂井……?」
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