「僕も、毎日笑顔でいることがつらくて苦しくて。そんな日々の中で、ある部屋から眺める月がさ、妙に美しく見えたんだ。なぜだかはわからない。だけど、いつしかその魅力に取り憑かれていた。それは……きっと、僕も自分自身では輝けない存在だったからかも知れない。だから、月の悲しい現実に、自分を重ねていたのかも知れない」 ずっと、誰にもこの気持ちはわからない……そうやって卑屈になっていた。 「でもある時気づいたんだ。いや、気付かされたんだ。僕という『月』を、子どもの頃からずっと見守り、輝かせてくれていた母の偉大さに」 「お母さん……?」 「ああ、お前も知ってるだろ? うちは母子家庭だったからな。経済的な余裕なんて無いのに、母はずっと学校に通わせてくれた。自分の欲しいものも買わずに、医学部を卒業させてくれたんだ。そして……同時に、医師という仕事の大切さにも改めて気づいた。ある人達がそれを教えてくれたんだ。自分で気づけないなんて情けないけどな。まあ今は……全てのことに感謝しかないよ」 「そっか……お前にとってはお母さんや仕事が大切なんだな……」 「月は自分では輝けない。だけど、それを照らしてくれる存在は、必ずいるんだ。それは、お前の中に生き続けている奥さんだよ。俺にも大切な人がいるんだけど、でも、一生会うことはない。それでも、彼女も僕の太陽なんだ。心の中にいるキラキラ輝く太陽」 愛莉さんの笑顔、今も毎日思い出す。 それだけで元気になれる。
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