「志津様の付き添いに戻らなくて大丈夫なの?」紫音は心配そうに尋ねた。志津を一人病院に残しておくことが、どうしても心苦しかったのだ。「母さんが病院にいてね。『紫音さんのそばにいてあげなさい』と言って聞かないんだ。祖母の容体も落ち着いて、検査数値も正常に戻った。だから、もう心配いらないよ」律は常に周囲に目を光らせており、容体に変化があれば即座に報告が入る手はずを整えている。だからこそ、病院を離れていても冷静でいられるのだ。「それならよかった……」紫音は胸をなでおろした。朱美がついているのなら、これ以上の安心はない。「仕事の方は片付いたのかい?」律が静かに問いかけた。「ええ、すべて解決したわ。安心して。状況も落ち着いてきたし、今動いている二つのプロジェクトが終わったら、新しい特許の開発にも着手するつもり。私のスタジオを、もっと大きくしていきたいの」紫音の言葉には、確かな活力が宿っていた。これまでの苦難を経て、仕事に対する自信は揺るぎないものに変わっている。どんな困難があろうと、最後までやり遂げる――その決意が、彼女を突き動かしていた。「応援しているよ」と、律は穏やかに言った。だが、帰宅した時から、彼の全身には深い疲労感が漂っていた。いつもの彼とは違う。会社のトラブルは、そう簡単に片付くものではないのだと、紫音には痛いほどわかった。「会社の方はどうなの?まだ揉めているんじゃ……」たまらず、紫音は尋ねた。「心配いらないよ。株価が下落し続けていて波乱含みだが、手は打ってある。大したことじゃない、すぐに落ち着くさ」彼女に余計な重荷を背負わせたくなくて、律はすべてを一人で抱え込もうとしていた。実際のところ、会社の状況は極めて深刻だった。進行中のプロジェクトはいくつも白紙に戻り、取引先からの信用も失墜しかけている。あの婚約式でのスキャンダルが、トップとしての彼の資質にまで疑問符を突きつけていたのだ。「私、すごく心配で……でも、何も助けになれないのがもどかしいわ」強がる彼の姿に、紫音は胸を痛めた。今回の騒動は、決して自分と無関係ではないのだから。「君は自分のことだけを大切にしてくれ。毎日無理をしてほしくないんだ。仕事の合間には、ちゃんと休む時間を作ること」律の言葉には、紫音を気遣う優しさが滲んでいた。根が気丈な彼女は、何事
더 보기