「母さん、俺たちはただ、あなたの体を心配して駆けつけただけですよ。他意なんてありません。誤解しないでください」正人は白々しい笑みを浮かべ、さらに言葉を重ねる。「それに、起きた事実は変えようがないでしょう。自分たちのしたことが噂になるのは、自業自得というものだ。世間の後ろ指がどれほど冷たいか、あなたたちだって耳にしているはずだ」志津が倒れた直後こそ狼狽えていた正人だが、回復したと見るや、元の厚かましい本性を露呈させたのだ。「いい加減にしなさい!」正人の言葉を遮る志津の声には、鋭い怒気がこもっていた。「せっかく皆で集まったのだから、静かに食事もできないのかい。どんなことがあろうと、あなたたちは血の繋がった家族でしょう。その無様な態度は何事ですか!」志津の言葉は容赦なかった。「拝島の家名を汚しているのは、お前たちの方だよ」普段は穏やかな志津がここまで言い切ることは珍しい。さすがの正人たちも、その剣幕に圧され、それ以上言葉を続けることはできなかった。伯母の早苗は、今日に限って酷く静かだった。食卓についた後もスマートフォンを手放さず、何かに憑かれたように画面を凝視し、誰かと激しくメッセージをやり取りしている。「お義母様、お医者様からは薄味のものをと厳しく言われていますから。家に戻ったからといって、油断は禁物ですよ」朱美がかいがいしく志津の皿に料理を取り分ける。志津は本来、こってりとした味付けや揚げ物を好む。その食の好みは若者と変わらないほどだが、今は体力が第一だった。「分かっているわよ。そう四六時中構わなくても、自分の面倒くらい見られます。あなたたちも仕事が忙しいでしょう。私にばかり構っていては、かえって申し訳なくて落ち着かないわ」志津は根が強情だ。昔から一人で暮らすことに慣れており、四時中誰かに囲まれているとかえって息が詰まる質(たち)だった。「お義母様。退院されたばかりで心苦しいのですが、長らく調べていたことがございまして……今この場で申し上げないと、私の気が済みませんの」これまで沈黙を守っていた早苗が、唐突に顔を上げた。張り詰めたような声が部屋に響き、団らんの空気は一瞬で凍り付く。「回りくどい言い方はよしなさい。何が言いたいのです」志津が真っ直ぐに早苗を見据えた。その有無を言わさぬ迫力は、これか
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