この言葉を聞くと、祐介はすぐに踵を返し、香織がいる療養院へと急いだ。しかし、部屋に入るなり彼が目にしたのは、空っぽのベッドと、とっくにきれいに畳まれていた布団だった。梨花の言葉を思い出し、彼は慌てて近くにいた看護師を捕まえた。「すみません、12号室の患者さんはどこですか?50代くらいの女性の方なんですけど」その言葉に看護師は一瞬動きを止め、いぶかしげな表情で祐介を見つめた。「あの方とはどのようなご関係でしょうか?」「婿です。医療費はずっと俺が払っていました」「婿?部屋を間違えてるんじゃないですか。あの方の婿さんは先週、人をよこして生命維持装置を止めさせましたよ。その後、あの方は亡くなられたと聞いてますけど」そう言うと看護師は去ってしまい、祐介だけが呆然とその場に立ち尽くしていた。そうか……じゃあ、あの日、夏美が抱きしめていたのは、彼女の母親の骨壺だったのか。それに気づくと、彼は後悔の念に駆られて、壁に拳を叩きつけた。いや、待てよ。自分がいつ、生命維持装置を止めるよう人を遣わした?次から次へと疑問が湧き上がり、祐介は秘書の中島浩平(なかじま こうへい)に連絡をした。「夏美のお母さんの生命維持装置が、いつ止められたか調べてくれ。大至急だ!」そして、疑問を抱えたまま、祐介は家に戻った。ドアを開けるなり、テーブルの周りで忙しそうにしている梨花の姿が目に入った。祐介が入ってくるのを見ると、梨花は急いで駆け寄り、彼の胸にぴたりと体を寄せた。「祐介さん、どこに行ってたの?ここ数日、何も食べてないでしょ。あなたのために、使用人に栄養がある食事を特別に作ってもらったのよ」祐介は目の前の女を無言で見つめ、彼女を押し退けた。しかし、次の瞬間、梨花は再び体を寄せてきた。香水の匂いが鼻をつき、祐介はふと、めまいを感じた。唇が重なった瞬間、彼は手足から力が抜けるのを感じた。突然、スマホの着信音が鳴り響き、二人のムードは断ち切られた。祐介が電話に出ると、向こうから浩平の声が聞こえてきた。「社長、分かりました……梨花さんが病院に行き、奥様のお母さんの生命維持装置を外すよう指示したようです」それを聞いた途端に、祐介は立ち上がり、梨花を床に突き飛ばした。「調べろ!もっと調べ続けろ!彼女が他に何をした
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