เข้าสู่ระบบその話を聞いて、夏美は腑に落ちなかった。祐介とは長年一緒にいたけれど、仕事を手伝ったことは一度もなかった。それでも、祐介が経済犯罪を何よりも嫌っていることは知っていた。そんな汚い手を使うような人じゃない。でも……もし、彼が死に場所を探していたとしたら、話は違ってくる。その後、夏美は祐介が勾留されている拘置所へと向かった。窓ガラス一枚を隔てて、祐介がこちらへ歩いてくるのが見えた。彼は少しやつれているように見えた。受話器を取ると、夏美はすぐに問いかけた。「祐介、わざと捕まったんでしょ?」目の前の祐介は、何の反応も示さなかった。それどころか、彼女の質問に答える気もないようだった。「祐介、どうしてなの?」祐介ほどの力があれば、たとえ彼女の両親の不正を暴いたとしても、せいぜい株価が下がるくらいのはずだった。経済犯罪で捕まるなんて、ありえない。それなのに……だが、祐介が何も答えないのを見て、夏美も受話器を置き、それ以上何も言えなかった。3日後、I国行きの飛行機の中で、彼女は警察から連絡を受けた。祐介が、護送中のパトカーの中で頭を打ちつけて自殺した、という内容だった。死ぬ間際に、夏美へ手紙を渡すよう警察に頼んでいたらしい。送られてきた写真には、祐介の手紙が写っていた。【夏美、今でもこう呼んでいいのかな。俺のこの短い32年の人生で、君に出会えたことは最高の幸運だった。こうなってしまったのは、全て俺たちの問題だ。本当に、ごめん。言いたいことは山ほどあるのに、いざペンを握ると何から書けばいいのか分からない。昔のこと、本当にすまなかった。子どもも、君のことも守れなかった、俺のせいだ。だから人生の最後に、君の心のつかえを取り除いてあげたかったんだ。少しでも、君の助けになればいいと思ったんだ。もし来世があるなら、どうか、俺みたいな男には二度と出会わないでくれ】……手紙を最後まで読むと、夏美は何も言わずに、その写真を黙って削除した。だって世界はこんなにも輝いているんだもの。自分も、前へ進まないと。
このメッセージを見て、夏美は祐介が前に送ってきたメッセージの意味が、ようやく分かった。彼は、自分の両親のために正義を証明しようとしていたんだ。でも、そんなことをしたら、藤原グループ全体が法の裁きを受けることになるだろう。案の定、数日も経たないうちに、世間の関心が高まるにつれ、藤原グループの株価は急落。祐介もマスコミの前に立たされることになった。「藤原社長、ネットで噂されている14年前の交通事故は、本当に藤原グループと関係があるんですか?」「藤原グループの成功は、誰かの犠牲の上に成り立っていたというのは事実でしょうか?」「藤原社長、今回の件について、ご意見をお聞かせください!」……たくさんのマイクが祐介の前に突きつけられたけど、彼は何も答えなかった。ネット上では、様々な憶測が飛び交っていた。【これって、藤原グループのライバル会社の仕業じゃない?ビジネスの世界じゃよくある手でしょ?】【もしこれが本当なら、14年も前の事故を掘り返すなんて、すごい執念だね。でも、14年も経って物証とか残ってるのかな?】【この事故で亡くなった人の家族が、復讐に来たのかもね】【同意。これは単なるビジネス上の争いじゃなくて、計画的に練られた復讐劇だと思う】……夏美はコメントを一つ一つスクロールしながら見ていた。でも、実際のところ自分が何を知りたいのか、それすらも分からなくなっていた。ただ心臓が激しく鼓動し、指は無意識にスマホの画面を滑っていた。あの交通事故のことを思い出すと、まるで昨日のことのようだった。あの日、両親は大きな商談があるんだと、嬉しそうに話していた。でも、日が暮れても、彼女の両親が帰ってくることはなかった。代わりに掛かってきたのは、警察からの電話だった。今でも覚えている。あの電話を受けた時、体中の震えが止まらなかった。電話を切った後、彼女はしばらくぼうぜんとしてしまい、それから現場に向かった。ひっくり返った車、人だかり、そして燃え盛る炎。夏美は、吸い寄せられるように一歩、また一歩と前に進んだ。そこにいたのは、変わり果てた父親の姿だった。その瞬間、彼女は地面に崩れ落ちた。いろんな感情がこみ上げてきたけど、頭が追いつかなかった。まるで魂が抜けてしまったみたいで、あとで警察に声をかけら
このメッセージを見た途端、空は自分のキャッシュカードを取り出した。「夏美、これを持ってて。もし本当に訴えられたら、何かの足しになるはずだ」夏美は、空の真剣な眼差しを受け止め、一瞬ためらった。「お金で解決するつもりはないわ。ちゃんと説明するために、動画を投稿しようと思ってるの。ネットで何を言われたって構わない」その言葉を聞いて、空は目の前にいる夏美を見つめた。そんな彼女は初めて会った頃の、あの臆病な女とはまるで違う。今の彼女は、問題から逃げずに、きちんと向き合おうとしているのだ。「わかった。君を信じるよ。君がどんな決断をしても、俺はずっと味方だ」その言葉に、夏美は胸が熱くなった。だって、空と出会ってから、彼をいろいろな面倒に巻き込んでばかりだったから。迷惑をかけたくないと思う自分の気持ちを察して、見えないところでいつも助けてくれていたのだ。動画を撮り終えて、投稿ボタンを押そうとしたその時、部屋の奥から空の声がした。「夏美、祐介が釈明動画を上げてるぞ」夏美がそれを開くと、そこには祐介が映っていた。「まず、ネットをご覧の皆さん、こんにちは。俺たちのことを気にかけてくださりありがとうございます。ですが、どうか節度を守ってください。他人のプライベートに過度に踏み込むのは、権利の侵害にあたります。次に、俺が二宮さんの小説のモデルであることは事実です。でも、俺たちはもう別れていますし、今後よりを戻すこともありません。俺は今回、彼女が新たに幸せな人生を共にする相手を見つけたことを知りました。だからこそ過去のよしみで、心から祝福したいと思ったんです。それがいつの間にか、皆さんが言うような二股疑惑にすり替わってしまったようです。最後に。皆さんにも自分の人生があるはずです。誰にも、他人の生き方を勝手に裁く権利なんてありません。今回のことで俺は以前、二宮さんに言われたことを思い出しました。『その人の立場に立ってみなければ、その人の痛みは分からない』それはまさにその通りだと思います」動画が投稿されるやいなや、瞬く間に拡散された。そして、わずか数時間で、ネットの空気は一変した。【やっぱり!作者さんは悪くなかったんだ。面白半分で人のプライベートを暴いて楽しむなんて、最低だよね】【これで全部はっきりしたね。私の大好きな
一方、祐介はあの夜、陽子から電話を受けた。陽子は彼に一度会いたがっていた。「祐介、お願いだから。これが最後だと思って、お母さんに会ってくれないかい?」祐介は電話の向こうの声を聞いて、吐き気だけを覚えた。そして、これまでの出来事が次々と目に浮かび、彼は電話を切った。このところ、陽子を病院に送った後、祐介は多くのことを考えていた。もしあの時、夏美とちゃんと籍を入れていたら、結末は今とは違っていたのだろうか、と彼は思った。あるいは、夏美の飲み物に妊娠できなくなる薬を入れなければ、もう少し良い結果になっていたのだろうか。でも、現実は現実だ。後悔しても時間を巻き戻すことはできない。たとえ時間を戻せたとしても、二人はきっとまた別の困難に直面していただろう。結局のところ、自分の心の弱さが、この恋における最も大きな妨げとなったんだろう。「社長、梨花さんがお亡くなりになりました」浩平の声で祐介は現実に引き戻された。その知らせを聞いても、彼の心は静まり返った湖のようで、何の波も立たなかった。「分かった。後の手配はしっかり頼む」祐介はスマホを開くと、ニュース速報が画面に表示された。【#人気作家、交際宣言!】【#人気作家の恋人】【#愛のカフェ】といった見出しがトレンド入りしていた。それを開くと、夏美と空の交際についての記事だった。写真に写る夏美を見つめながら、祐介はその画面を何度も指でなぞった。だが心の中は、まるで無数の蟻に食い荒らされるようで、痛みと息苦しさでいっぱいだった。彼は少し考えると、その記事をシェアし、コメントをつけた。【おめでとう!】しかし、このシェアが多くのネットユーザーの注目を集めることになるとは、思ってもみなかった。【これってあの藤原グループの社長?なんで無名の作家の投稿にコメントなんかしてるの?】【ほんとそれ。こういう社長って普通は奥さんがいるんじゃないの?よく堂々とコメントしたりシェアしたりできるよね】【まさか、この人が本に出てきた幼馴染だったりして】【ありえる、ありえる!細かいところとか結構一致してるし】【でも、もし本当に藤原社長なら、なんでまだ連絡取り合ってるんだろ?本の結末だと、もう二度と会わないはずじゃなかった?】【さあね?金がなくなったら元夫にせびる
本がどんどん多くの人に読まれるようになり、夏美のSNSには、たくさんのダイレクトメッセージが届くようになっていた。【作者さん、ファンミーティングを開いてください!絶対に行きます!】【この本が出版されたら絶対に教えてくださいね!絶対、書店まで買いに行きますから!】【この文章、すごく好きです。いつか一度お会いできませんか?】……そんなダイレクトメッセージが増え続けるなか、夏美の元に出版社から連絡が来た。出版社は、ぜひ夏美と一緒に本を作りたいと、彼女の意向を尋ねてきたのだ。【はい、ぜひお願いします】3ヶ月後、新刊の発売を記念したファンミーティングが開催された。はるばる全国から駆けつけてくれたファンを目の前にして、夏美は、自分の作品がこれほど愛されているのだと初めて実感した。「次回作はどんなお話ですか?いつ頃でますか?絶対読みます!」「この文章は本当に素晴らしいです。ただ、結末がどうも腑に落ちなくて……ヒロインは最後に、相手の男性を許したのでしょうか?」「次回作が始まったらSNSで教えてくださいね!絶対読みますから。私は、この結末が大好きです」……ファンとの交流がひと通り終わった頃には、もう真夜中になっていた。夏美がイベントスタッフと一緒に後片付けをしていると、祐介が会場にやってきた。彼はまた一段と痩せていた。着ているスーツが、まるでジャージのようにぶかぶかに見えた。そんな彼はまるで全ての精気を吸い取られたようで、ただの抜け殻だけが残されているようだった。祐介は本を手にすると、夏美の前に進み出て、向かいの椅子に座った。「この結末はどういう意味なんだ?夏美、俺を許す気はないのか?」まっすぐな視線を受け止めても、夏美は目をそらさなかった。そして、彼をただの一人のファンとして扱った。「ヒロインには、許す理由もあるでしょ。でも、許さない権利だってある。あなたは彼女じゃない。彼女の気持ちが分からないのなら、コメントを控えてもらいたいものだわ」夏美がそう言うと、祐介が何か言い返そうとした。でもその時、彼のスマホが震えた。祐介は電話に出ると、そのまま戻ってはこなかった。彼の背中を見送ると、夏美は片付けを終え、カフェへと向かった。小説を書いていた間、空が支えてくれなかったら、きっとここまで続
その知らせを聞いた時、祐介は車椅子に座り、母親の陽子と激しく言い争っていた。かつての夏美の両親の件にしろ、今の夏美との別れにしろ、陽子はまるで寄生虫のように、四六時中、彼の人生に干渉してきた。以前は、母親が女手一つで自分を育ててくれたことに、感謝していた。しかし今、次から次へと予期せぬ出来事が起こり、そのすべてに、彼女の仕業があったように思えてならないのだ。「じゃあ、あなたがそんな姿になったのは、すべて私のせいだと言いたいの?」陽子はソファに座り、涙に濡れた瞳で目の前の息子を見つめた。「ああ」祐介はテーブルの上のものを床に叩きつけた。彼は眉間に深くしわを寄せ、その瞳は怒りで真っ黒に染まっていた。陽子のことを、まるで汚物でも見るかのような目で睨みつける。「でもね、私が二宮家に手を下していなければ、今の私たちがあったと思う?」その言葉は鋭いナイフのように、祐介の心を深くえぐった。彼は何も言わず、ただ黙って陽子を見つめるだけだった。やがて、陽子は祐介の、感情のこもらない冷たい声を聞いた。「誰か。母を精神病院へ送れ。彼女は精神に異常をきたしている。厳重な監視が必要だ」その瞬間、陽子は床にへたり込んだ。部屋は静まり返り、彼女はこれまで息子を思う気持ちが木っ端みじんに砕かれたように感じた。一方、カフェに戻った夏美は、ある決心を固めていた。このカフェを売ろうと。「え?このカフェ、手放すつもりなのか?」隣で、空が驚きの声を上げた。「本気かよ、夏美。なんで売るんだ?せっかく繁盛してるのに」「理由なんてないわ。ただもうカフェを続ける気がしないの。小説を書きたい」夏美の落ち着き払った様子を見て、空は少し黙り込んだ。そして、目の前のコーヒーを一気に飲み干して言った。「なら、俺に譲ってくれよ。ちょうどカフェをやりたいと思ってたんだ」その日を境に、空がカフェのオーナーになり、夏美は小説を書き始めた。最初のうちは、何もかもが謎めいてきた。なにしろ、彼女はこれまで小説一冊すらまともに読んだことがなかったのだ。それでも、たくさんの本を読むうちに、少しずつ筆を進めることができるようになった。小説サイトと契約し、夏美は少しずつ更新を重ねていった。祐介との物語を書き上げることで、この恋にようやく別れを告