「そう思っていたのか」裕也の瞳の奥に淀んでいた暗い色がすっと晴れ、その声には微かな昂ぶりが滲んでいた。絵里自身の口から説明を聞き、彼の胸のつかえがすっと取れたのだ。絵里は裕也の瞳の変化に気づかず、ただ声の調子から、彼が少し興奮しているように感じる。「この件を調べ始めて、あなたが無関係だと分かってからは、巻き込みたくなかったの。だって、お母さんでしょう?あなたを板挟みにして、苦しませたくなかったの」絵里が胸の内に秘めていた本音を打ち明けたのは、裕也に誤解されたままなのが嫌だったからだ。そしてもう一つ。裕也が心から自分を大切にしてくれていると知っているからこそ、彼を失望させたくなかった。この先、彼がどう動こうとも、その意思を尊重するつもりだった。裕也の口角がぐっと上がり、絵里の手を握る手に、さらに力がこもる。「これからは二度とこんなことするな。何も言わずに一人で抱え込むのは、嫌なんだ」絵里の胸が、とん、と小さく跳ねた。それって、私を責めていないということ?てっきり、自分に黙って勝手に行動し、彼の母を追い詰めたことを怒っているのだと思っていた。心配していたようなことは何一つ起こらず、絵里の心にじんわりと熱いものが広がり、力強くこくりと頷く。「うん」目を覚ましたばかりの裕也はまだひどく衰弱しており、医者からは口数を減らし、安静にするようきつく言われていた。それでも気分が良かったのか、彼は無理をして絵里と長く言葉を交わし、やがて限界が来て重い瞼を閉じると、再び深い眠りへと落ちていった。泣き腫らした赤い目元で裕也の寝顔を見つめながら、絵里はふっと微笑んだ。心の中は、これまでにないほど澄み切って軽い。父が殺害された事件の真相はすでに解明され、手を下した者たちは皆捕らえられ、法の裁きを待つ身となった。そして、二人の間に横たわっていた厚い壁も、この瞬間に幻のように消え去ったのだ。絵里は立ち上がると、身をかがめて裕也の唇にそっと口づけを落とし、病室を後にした。廊下のベンチには、賢治が腰を下ろしている。両手で杖をつき、目を閉じて休んではいるものの、背筋はピンと伸び、近寄りがたい威厳を放っている。執事の畑山が彼女の姿に気づき、賢治に小声で耳打ちする。「絵里様が出てこられました」賢治はかっと目を見
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