All Chapters of 入籍しないなら…兄嫁になります!~冷徹社長に溺愛される日々~: Chapter 571 - Chapter 572

572 Chapters

第571話

「そう思っていたのか」裕也の瞳の奥に淀んでいた暗い色がすっと晴れ、その声には微かな昂ぶりが滲んでいた。絵里自身の口から説明を聞き、彼の胸のつかえがすっと取れたのだ。絵里は裕也の瞳の変化に気づかず、ただ声の調子から、彼が少し興奮しているように感じる。「この件を調べ始めて、あなたが無関係だと分かってからは、巻き込みたくなかったの。だって、お母さんでしょう?あなたを板挟みにして、苦しませたくなかったの」絵里が胸の内に秘めていた本音を打ち明けたのは、裕也に誤解されたままなのが嫌だったからだ。そしてもう一つ。裕也が心から自分を大切にしてくれていると知っているからこそ、彼を失望させたくなかった。この先、彼がどう動こうとも、その意思を尊重するつもりだった。裕也の口角がぐっと上がり、絵里の手を握る手に、さらに力がこもる。「これからは二度とこんなことするな。何も言わずに一人で抱え込むのは、嫌なんだ」絵里の胸が、とん、と小さく跳ねた。それって、私を責めていないということ?てっきり、自分に黙って勝手に行動し、彼の母を追い詰めたことを怒っているのだと思っていた。心配していたようなことは何一つ起こらず、絵里の心にじんわりと熱いものが広がり、力強くこくりと頷く。「うん」目を覚ましたばかりの裕也はまだひどく衰弱しており、医者からは口数を減らし、安静にするようきつく言われていた。それでも気分が良かったのか、彼は無理をして絵里と長く言葉を交わし、やがて限界が来て重い瞼を閉じると、再び深い眠りへと落ちていった。泣き腫らした赤い目元で裕也の寝顔を見つめながら、絵里はふっと微笑んだ。心の中は、これまでにないほど澄み切って軽い。父が殺害された事件の真相はすでに解明され、手を下した者たちは皆捕らえられ、法の裁きを待つ身となった。そして、二人の間に横たわっていた厚い壁も、この瞬間に幻のように消え去ったのだ。絵里は立ち上がると、身をかがめて裕也の唇にそっと口づけを落とし、病室を後にした。廊下のベンチには、賢治が腰を下ろしている。両手で杖をつき、目を閉じて休んではいるものの、背筋はピンと伸び、近寄りがたい威厳を放っている。執事の畑山が彼女の姿に気づき、賢治に小声で耳打ちする。「絵里様が出てこられました」賢治はかっと目を見
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第572話

「行本教授から聞いたぞ。治夫はいつ目を覚ましてもおかしくない状態だというのにな。それなのに、お前はあんな無茶をして……謝るべきじゃないのか?」絵里は驚きに目を見張る。賢治の言葉の真意がそこにあるとは、思いもよらなかった。自分が藤原家をここまで引っ掻き回したというのに。午後には、藤原グループの株価が下落しているのも目にしている。しかもそれは昨日から続いており、藤原が緊急の広報対応や声明の発表に追われても、一向に歯止めがかからない様子だった。これまでの騒動とはわけが違う。今回はあまりにも事が大きすぎた。雪枝が殺人容疑をかけられたとなれば、その影響は計り知れない。この隙につけ込み、藤原を叩き潰そうとする輩が現れないとも限らないのだ。とにかく、今回の件で藤原が被る損害は計り知れない。それなのに、賢治は自分を一切責めようとはしない。「私がこんなに事を荒立てて、グループの株価まで暴落させてしまったのに……お爺さんは、私を責めないか?」「責めるだと?何をだ?お父さんの死の真相を調べたことか?それとも復讐のために、あの自業自得の嫁を警察に突き出したことか?お前にとって、わしはそんな分からず屋だったのか?」絵里は勢いよく首を横に振る。「そんなことない。私にとってお爺さんは、いつも優しくて、物事の道理をわきまえた、とても温かい方だ」賢治は彼女の瞳をじっと見つめる。その目には、夜の闇の中で微かな涙の光が揺らめいている。安堵したように頷き、ふっと笑みをこぼす。「その言葉が聞けただけで十分だ。わしはてっきり、お前がこれきり、この老いぼれを見捨ててしまうのではないかと心配しておったよ。お前は何も間違っていない。確かに今、藤原は大きな危機に直面しておるがな、わしも伊達に何十年もビジネスの世界を渡り歩いてきたわけじゃない。これくらいのこと、どうとでもなる。ただ一つ願うのは、今回のことで裕也のやつまで完全に見限らないでやってほしいということだ。これだけは覚えておきなさい。お前が藤原に嫁いできただろうとそうでなかろうと、わしはいつだってお前を本当の孫娘だと思っておる」賢治のしわがれた太い声には、偽りのない真心がこもっている。その温和な顔立ちには、切実な願いが滲んでいる。絵里は途端に鼻の奥がツンとし、胸の内に様々な感情が込み
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