隆は裕也に電話をかけるなり、開口一番に言い放つ。「裕也、お前また独り身に戻りたいのか?」何のことかさっぱり分からない裕也は、苛立たしげに眉をひそめる。「また何を言い出すんだ?」これ以上どうすれば、絵里に対して積極的で、大切にしていると言えるのだろうか。隆は彼の不機嫌な声色など気にも留めず、腹立たしげに言う。「どうせ離婚したいんだろ。だったらちょうどいい、修司の思い通りにさせてやれよ」鼻を鳴らす。「さっきあいつ、絵里を抱きかかえてどこかへ連れ去りやがった。そうそう、絵里はひどく酔っ払ってたぞ……」言葉を言い終わる前に、電話の向こうでプツッと通話が切れた。裕也は全身から殺気を漂わせ、大股で病院を後にすると、太い声で健に命じる。「絵里の居場所を調べろ」その険しい表情に、健は密かに息を呑む。また何か起きたのか?五分も経たないうちに、健はすでに車を走らせていた。調査結果の知らせを受け取ると、ルームミラー越しに裕也を窺う。「社長、分かりました」「どこだ?」健は急に口ごもり、ためらいを見せる。「言え!」裕也の纏う空気がひどく重く、今にも爆発しそうなほど張り詰めている。健は言わざるを得なくなり、覚悟を決めて報告する。「我が社が所有する、高級ホテルです」いいだろう!上等だ。裕也の顔色は底知れず沈み込んでいる。「さっさと向かえ」健は一瞬の躊躇も許されず、力強くアクセルを踏み込む。この仕事も、ますます割に合わなくなってきた。裕也が足早にホテルの客室前に到着すると、健はルームキーを差し出し、それ以上は動こうとしなかった。「開けろ」裕也は険しい表情のまま、鋭い眼光で固く閉ざされた扉を睨みつけている。健は無意識に生唾を飲み込んだが、逆らうことなどできるはずもなく、素早くカードをかざして鍵を開ける。ピッ、と電子音が鳴る。扉が内側に向かって、わずかに隙間を開ける。裕也は容赦なく扉を蹴り開け、大股で踏み込みながら命じる。「外で待っていろ」健はすぐさま手を伸ばし、扉を引き寄せる。これで、社長と奥様は恐らく……本当に終わりかもしれない。そこは豪華なスイートルームで、足を踏み入れると広大なリビングが広がっている。贅を尽くした内装が施され、至る所に高
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