修司がその広く逞しい体躯でそこに立つだけで、空間がいくぶん窮屈に感じられた。梨乃は驚きの表情をすっと隠し、口を開く。「星野さん、お気遣いありがとうございます」歩み寄り、修司の手から花を受け取ると、裕也の顔が頭をよぎり、思わずこう付け加える。「次はもうお気遣いなく。実は絵里、スミレは好きじゃないんです」「ほう?」修司は視線を絵里の顔に移し、花を梨乃に渡しつつ尋ねる。「じゃあ、何が好きなんだ?」梨乃はあっさりと答える。「藤原裕也さんが好きなんです」修司の口角は上がったままで、その瞳には面白がるような、すべてを見透かしたような色が浮かぶ。「……」絵里は言葉を失う。場の空気が、妙に気まずくなる。だが梨乃は全く意に介する様子もなく、花を抱えたまま肩をすくめる。「絵里を助けてくれたそうですね。そのことには、きちんとお礼を言わなきゃいけません。でも、藤原社長の性格からして、私が出しゃばるまでもないでしょうね。彼が絵里の代わりに、しっかりと感謝するはずですから」何を言うにも裕也を引き合いに出す。明らかにわざとだ。「水原さんを助けたのは、ただのついでだ。気にするな」修司も負けじと言い返す。「それに、感謝されるにしても、本人から直接礼を言われるべきだろう」梨乃は皮肉っぽく口元を歪める。「星野さんは、本当に目的がはっきりしてますね」修司は気怠げに彼女の視線を受け止める。「褒めてくれてどうも」「……」梨乃は毒気を抜かれる。「梨乃、私、星野さんと少し話すわ」絵里が小声で口を挟む。その声はまだ弱々しく、力がない。梨乃は彼女に頷く。「花を活けてくるね。あまり無理しないでよ」その言葉には、長話をしないようにという気遣いが込められていた。修司と郁江の関係を考えるだけでも、梨乃は彼に対して微塵も好感を抱けない。梨乃は花を抱え、ついでに花瓶を手に取って病室を出て行き、二人のために空間を空ける。ドアのところまで来ると、彼女は足を止め、ボディガードに言いつける。「気をつけて、絵里をしっかり守ってね」病室の外に控えていた二人のボディガードは、厳粛な面持ちで深く頷く。「承知いたしました」梨乃は病室のドアを深く見つめ、言い知れぬ不安を覚える。裕也が怒らなければ
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