修司は裕也の様子を見て、すぐに察しがついた。R国から夜を徹して駆けつけてきたのだろう。修司は口角を上げる。「あんな重要なプロジェクトを放り出してまで戻ってくるとは、あまり賢い選択とは言えないな」今回、裕也が極秘で出国したことを知っているのは、ごく一部の人間だけだ。彼が向かった先は、現地で名高い自動車メーカーだった。どうやら、新エネルギー市場への進出に向けて、提携を結ぶつもりらしい。ただ、そのメーカーはガソリン車を主力としており、近年はいち早くハイブリッド技術を打ち出している。自動車製造の技術においては、常にトップクラスを維持してきた。これまで新エネルギー分野を軽視してきた企業だ。裕也は今年、新エネルギー市場に注力しているとはいえ、これほどまでに力を入れているのは、かえって不自然に思える。ましてや今夜、わざわざ海外からとんぼ返りしてくるなど……「お前が口出しすることじゃない」裕也はその言葉の裏にある意図を読み取り、顔を曇らせる。足を踏み出し、病室に入ろうとしたその時、入り口を固めていた医療スタッフに遮られる。「患者様はまだ容態が完全に安定しておりません。慎重な経過観察が必要ですので、当面は面会謝絶となっております」裕也はギリッと歯を食いしばる。その顔には、どす黒い怒りが滲んでいる。ちょうどその時、健が医師から状況を聞き出して戻ってくる。必死に感情を押し殺している裕也の姿を見て、もし社長が事故の真相を知ったらどうなってしまうのかと、健は不安を覚えずにはいられない。「調べはついたか?」そのことだけが頭から離れない裕也は、冷たく鋭い視線を健に向ける。健は歩み寄り、声を潜めて事の顛末を一つ一つ報告する。その間、修司と秀信は傍観を決め込み、一向に立ち去る気配を見せない。秀信はそれを不思議に思っていた。絵里と裕也の関係がただならぬものであることを社長が知っている以上、先ほどまでここで付き添っていたのは理解できる。だが、裕也が駆けつけた今になっても、なぜ帰ろうとしないのか。報告を聞き終えた裕也は、指の関節が白くなるほど拳を強く握りしめ、ボキボキと音を鳴らす。そして、眉を吊り上げて修司を睨みつける。同時に、大股で彼に歩み寄る。「今夜の件は、礼を言う」裕也は修司を快く思っていない
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