明け方、目を覚ました絵里は、ソファに座っている裕也の姿に驚いて息を呑む。「裕也?」絵里は驚きに目を見開き、彼を見つめる。上半身に白いシャツだけを羽織った裕也は、彼女が目覚めたのに気づくと、大股でベッドに近づいてくる。「起こしちゃったか?」「ううん」ふと微かな血の匂いを感じ取り、絵里は眉をひそめる。「怪我してるの?」彼女は今夜起きた出来事をまだ知らない。夜、裕也はここへ来ると言っていたが、結局姿を見せなかった。十時過ぎまで梨乃が付き添ってくれて、その後は使用人が見守ってくれていた。今夜はもう来ないのだろうと思っていたのに、こんな静まり返った深夜に突然病室に現れるなんて、嫌でも悪い想像が膨らんでしまう。何かただならぬ事態が起きたのだと、直感が告げていた。「平気だよ。手にちょっと擦り傷を作っただけだ」裕也がガーゼで巻かれた右手を持ち上げると、薄暗い照明の下でも、指の関節から血が滲んでいるのが見える。絵里は胸を締め付けられ、問い詰める。「どうしてそんな怪我をしたの?」彼女はベッドサイドに手を伸ばし、明かりをつけようとする。「動かなくていい、俺がやる」裕也は彼女の手をそっと押さえて制止し、自ら照明を少し明るくする。その光の中で、彼の手の甲に巻かれた白いガーゼが赤く染まっているのがはっきりと見える。どう見ても軽い怪我ではない。彼の言い訳など信じられるはずもなく、絵里は眉を寄せて言う。「いつも私には気をつけろとか、自分の体を大事にしろって言うくせに、自分のことになると全然ダメじゃない」怒ったような彼女の顔を見て、裕也の心に修司のことで鬱積していた苛立ちが、すっと霧散していくのを感じる。「心配するな。本当に大したことないから」裕也は軽く笑い、甘やかすように絵里の鼻先を指で弾く。最近の絵里は十分に休息を取れており、順調に回復していた。今も目が覚めたばかりだというのに、すっかり頭が冴えている。彼女は以前、洋二が言っていた言葉を思い出す。裕也はR国で郁江に会っていたと。心の中では彼を信じていながらも、やはり聞かずにはいられない。「この前、海外で何をしてたの?昔の友達にでも会ってた?それとも仕事のプロジェクト?」「なんだ、俺が信じられないのか?」裕也は口角を上
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