スマートウォッチが、八時五十七分を示す。あと三分で始業の時間だ。 そうぼんやりもしていられないことに気付いて、私はペットボトルを抱いて、急いでオフィスに戻った。 スポーツドリンクと水をこまめに飲んで黙々と仕事する。 頭の重さは相変わらずだったけど、胃の気持ち悪さは、だんだん薄まってきた。 「武藤、内線。事務から」 取ると、お客様が来ている、とのことだった。私を訪ねてくるお客さんなんて、思い当たる節がない。 ひとまず一階に下りると――。 「あ、愛楽くん……?」 ナチュリウムのエプロンを着た愛楽くんが、受付の事務さんたちと話していた。けれど、私がエレベーターから降りると、すぐに私を見つけて、パッと笑った。 「ゆう!」 愛楽くんが、小走りで私に近づいてくる。そして、「はいっ、お弁当!」とお弁当袋を差し出してくれた。大学生の時まで使っていたものだった。普段は通勤途中にコンビニで昼食を買ってから来ていたのだけど、今日はそんな気力がなくて、これから買いに行くつもりだったから、ありがたくはあった。 「体調はどう? 顔色はよくなったね。胃の調子はよくなったんだね。でも、まだお酒が抜けきっていないみたい。頭痛の症状があるかと思って、鎮痛剤も入れておいたよ。メニューは胃にやさしいものにしたけど、無理して全部食べなくていいからね」 「あ、ありがとう……」 「ううん。お仕事も、無理しないでね。心配だから今日は、迎えに行こうかな。じゃあ、また夜にね!」 愛楽くんが、手を振って踵を返す。すぐに、白鳥さんが愛楽くんを追いかけて、愛楽くんの隣に並んだ。 「あの、愛楽さん! 私も一緒にナチュリウム行ってもいいです
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