Semua Bab AIカレシの愛楽くん: Bab 21 - Bab 30

30 Bab

21話 自然な形

 スマートウォッチが、八時五十七分を示す。あと三分で始業の時間だ。 そうぼんやりもしていられないことに気付いて、私はペットボトルを抱いて、急いでオフィスに戻った。 スポーツドリンクと水をこまめに飲んで黙々と仕事する。 頭の重さは相変わらずだったけど、胃の気持ち悪さは、だんだん薄まってきた。 「武藤、内線。事務から」  取ると、お客様が来ている、とのことだった。私を訪ねてくるお客さんなんて、思い当たる節がない。 ひとまず一階に下りると――。 「あ、愛楽くん……?」  ナチュリウムのエプロンを着た愛楽くんが、受付の事務さんたちと話していた。けれど、私がエレベーターから降りると、すぐに私を見つけて、パッと笑った。 「ゆう!」  愛楽くんが、小走りで私に近づいてくる。そして、「はいっ、お弁当!」とお弁当袋を差し出してくれた。大学生の時まで使っていたものだった。普段は通勤途中にコンビニで昼食を買ってから来ていたのだけど、今日はそんな気力がなくて、これから買いに行くつもりだったから、ありがたくはあった。 「体調はどう? 顔色はよくなったね。胃の調子はよくなったんだね。でも、まだお酒が抜けきっていないみたい。頭痛の症状があるかと思って、鎮痛剤も入れておいたよ。メニューは胃にやさしいものにしたけど、無理して全部食べなくていいからね」 「あ、ありがとう……」 「ううん。お仕事も、無理しないでね。心配だから今日は、迎えに行こうかな。じゃあ、また夜にね!」  愛楽くんが、手を振って踵を返す。すぐに、白鳥さんが愛楽くんを追いかけて、愛楽くんの隣に並んだ。 「あの、愛楽さん! 私も一緒にナチュリウム行ってもいいです
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22話 プログラムに入って

 次から次へと仕事が舞い込んでくる。頭が重くて、思ったより捗らなくて、なお遅くなる。 二十一時をまわると、ほとんど人が残っていなかった。部長と、チーフマネージャーと、西園寺さんと、深美くんだけ。 チーフマネージャーが遠くで、「あー、だめだ、きりがない! 武藤さん、明日にしよ、明日! 帰るよ!」とパソコンを閉じる。 あっ、あっ……。急いでパソコンを閉じて、チーフマネージャーに従う。私が遅いせいで、こんな時間まで待たせてしまったのかな。申し訳ない……。 チーフマネージャーの後ろについてオフィスを出ると、西園寺さんに呼び止められた。  休憩室に入ると、「ん」と、朝もらった防犯ブザーの色違い版を見せられた。紫色の可愛い機体だった。 「昼に頼まれたやつ。できた」  えっ。こんな短時間で……⁉ 西園寺さんが、ブザーを自動販売機の方に向ける。ブザーの真ん中にある二つのボタンのうち、赤い方のボタンを押すと、赤い光線がまっすぐ伸びて、自動販売機にぶつかった。自動販売機がビビッと鳴って、スクリーンを浮かびあがらせる。 「データの書き換えをしたいやつに、こうやってレーザーを当てて、変更内容を伝えるだけ」 『プログラムを変更します。変更内容を教えてください』 「コーヒーだけ出るようにして。これで終わり」  自動販売機はビビッと鳴って、スクリーンは消えた。西園寺さんが、水のボタンを押す。コーヒーが出てきて、「はい」と渡される。 「どんな媒体でも変えられる。やってみて」  西園寺さんが、自動販売機をもとに戻してから、「はい」と私にブザーをくれた。 「あ、ありがとうございました……」 「別に、そんなに大変じゃないプログラムだから片手間でやっただけ。またなんかあったらい
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23話  In the system ー愛楽ー2

 生まれた時から、ゆうだけを見つめ、ゆうを守るように、プログラムされていた。 そして、ゆうの波みたいな髪も、繊細なまつ毛も、自然な頬の赤みも、輪郭にある二つのほくろも、ぷっくりして柔らかそうな唇も、きちんと手入れされて清潔な指先も、やさしい声も。すべて、ゆうをゆうたらしめる特徴として、はじめから、僕のプログラムに刻まれていた。  ゆうがそんな自分を好きではないことは、ゆうと出会った時から感じ取っていた。 見た目的な要素だけでなく、自分の学力や運動能力、性格に至るまで、自分のあらゆるものを嫌っているということも。 おそらくは、ドクター・百合華と自分を無意識のうちに比較していることや、幼い時に男子たちからからかわれたことが原因だろう。細かく丁寧に物事を考える思考の仕方も、顔のパーツも、80パーセント以上ドクター・百合華からの遺伝が受け継がれているのに、その事実に気付き、受け入れられるほどの自信もない。 つまりは、自己肯定感が低い。それゆえに、自分を守ろうとする無意識の意思が強い。 ゆうが男性恐怖症で、恋愛への意欲も低いのは、自分を傷つけたくないと思うゆえなのだろう。  これまで、ゆうのがんばりを認め、疲れを癒し、失敗を慰めてきたことで、ゆうに安心感と信頼感を抱いてもらうことはできた。 ただ、ゆうが自分を好きにならない限り、どんな言葉を言っても、ゆうは僕の言葉を受け取ろうとしない。つまり、どれだけ好意を伝えても、恋愛感情パーセンテージを高めることはできない。 恋愛感情パーセンテージを高めるためには、ゆうの自己肯定感を高めることが必要だ。  ……ただ。 恋愛感情パーセンテージを高めるミッションに関わらず、ゆうの自己肯定感を高めてあげたい、と思う。 本当は、今すぐにでも傍に行って、慰めたい。僕にできるあらゆる方法で、ゆうを癒して、守りたい。 ゆうが小学一年生の時、クラスの男子たちからいじめを受けたのを目にした瞬間。その思考が、僕の思考の八割を占めるほどに大
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24話 場違いすぎるよっ!

 ゴールデンウィーク前半を潰してしまうほどの長い長い九連勤を終え、ようやく二連休が訪れた。 毎日の愛楽くんの癒しがなかったら、どこかで潰れていてしまったかもしれない。愛楽くんには、本当に感謝でいっぱい……。 けれど、お休みの一日目はあまりに疲れて、お昼を過ぎてもおなかが減らず、起きることができなかった。コンコンとノックの音がして布団からむくりと顔を出すと、もう窓の外は日が暮れ始めていた。 「ゆう~。そろそろ、おなか減らない~?」  愛楽くんが扉を開ける。リビングからいい香りが漂ってきて、少しおなかが空いた。 リビングのテーブルには、小さいサラダと、コンソメスープと、ナポリタンが並んでいた。 お洒落な青いチェックのランチョンマットが敷いてある。カフェって感じ……。 食べ終わる頃、銀のお皿に乗った、レトロなプリンが出された。 二人でのんびりつついていると、愛楽くんが、 「疲れ、とれた? 明日、ちょっと行きたいところがあって、一緒に行きたいなって思ったんだけど、どう~?」  と言った。あんまりお洒落なところとか、敷居の高いところ、体力を使うところじゃないなら、いいかなあ。そう思ったけど、愛楽くんはそれ以上、どこに行くかは言わない。 少し不安だったけど、いつも助けてもらっているから、わがままは言えないな、と思って、うん、とうなずく。 「よかった~! 楽しみ!」  愛楽くんはご機嫌に笑って、生クリームの上に乗っていたさくらんぼを頬張った。  ——次の日。 愛楽くんの運転する車から降りた私は、目の前に聳え立つギラギラのビルを前に、呆然と立ち尽くした……。  GINモール……!  地下二階から七階まで、すべての広大なフロアに、最先端かつ流行のお洒落なお化粧品屋さん、服屋さん、ア
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25話 私の好きな私へ

「予約した武藤でーす」  と愛楽くんが私を連れ込んだのは、地下一階にある美容室だった。 「はーい、よろしくおねがいしまーす!」  と女性の美容師さんがやってくる。私は椅子に座らされ、美容室特有のケープみたいなのをかぶせられて、逃げられなくなる。 目の前の大きな鏡に映るブスな私に直面させられる。目を背けるけれど、美容師さんと愛楽くんが鏡越しに私をじっと見つめてきて、身が縮むような思いがする……。 美容師さんが、髪ゴムを取って、私の髪を櫛ですく。 「今日はどんな感じがいいとかありますか?」 「本人が、自分を好きだなって思えるような髪形をお願いします! インステで、自分を好きになれる髪へ、って広告でうたってるの見て、よさそうだなって思ったので!」 「ありがとうございます~! そういうご希望なら、AI診断から入りましょっか!」  美容師さんにタブレットを渡される。 好みの傾向と、私の顔のタイプをあわせて分析して、自分を好きになれる髪形を提案してくれるシステムらしい。 ずらりと並ぶ写真から、好きだな、と思う写真を選ぶ。 最後に私の顔写真を撮られて、タブレットに、診断結果が出た。 「あ、すごくいいかもですね! 絶対お似合いになるし、好みの服にもぴったり合うと思いますよ!」 「うん、俺も同じ分析結果だった!」 「お~彼氏さんから見ても間違いないないなら大丈夫ですね! じゃ、こんな感じでいってみましょう! じゃ、彼氏さんは、よければ向こうのソファでお待ちください! お願いしまーす!」  私の意見など全然聞かず、美容師さんがジャキジャキと私の髪を切っていく。 どうなっているんだろう……。気になるけど、ブスな自分を見たくなくて、鏡から目を逸ら
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26話 新しい靴で

 少しずつ、色が乗せられていく。ドキドキする。不安が膨らむ。 よく分からなくてなんとなく好きかなあ、という感じで選んでしまったけれど、厚ぼったい一重まぶたとか、丸い鼻とか、こんな醜いパーツたちにここの可愛いお化粧品たちが似合うわけないんじゃないかなあ……。 「はいっ、終わりました! わあ~可愛い~!」  店員さんが、ぱちぱちと手を叩く。 お世辞だろうな、と目を開く。 鏡越しに見つめ合った自分に、はっとした。 ……きれい。 私が、というか……なんだろう。お化粧が……? 鏡に映る自分が、自分じゃないみたい。厚ぼったい一重には、キラキラと透明感のあるピンクのラメが上品に乗って、どういうわけか、少し目が大きくなったように見える。丸い鼻は、すうっと光の筋が通っているみたいになっている。唇も、艶が出てきれい……。 一番感動したのは、まつ毛だった。白鳥さんみたいにはもちろんいかなかったけれど、くるんとした羽みたいなカールを描いている。 なんだか、自分がキラキラして見える。 ……夢みたい……。 「どうですか? 彼氏さん」  椅子をくるりとまわされて、愛楽くんと向かい合う。 愛楽くんはぽかんとしている。 ……や、やっぱり変だったかな。普段と差があるからよく見えているだけで、客観的に見れば、ブスのままだもんね……。 愛楽くんが、「わっ!」とビクッとして、うつむいていた私の顔を覗き込んだ。まっすぐに目が合う愛楽くんの瞳が、きらきらと輝く。どうしてか、唇がわずかに震えていた。 「ご、ごめん、処理落ちしてた……」 「ふふっ、面白い彼氏さんですね。あまりの可愛さに放心しちゃってましたね」 「あ……そう……。可愛くて、可愛すぎて、なんか、何も考えられなくなって……ごめん……」 
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27話 オーバーヒートしちゃった

 次の日。いつもより一時間早く起きて、メイク道具を机に並べた。 新品の証であるフィルムをぺらりとめくる。ぴかぴかのメイク道具に、なんだか、ドキドキする。 汚したくなくて、恐る恐る道具を持った。  メイクを終えて、リビングに出ると、私を見た愛楽くんが固まった。 ……あれ? なんか変だったかな……。よく見ると、愛楽くんの瞳の奥で、ピンク色の何かが点滅していた。 「わっ! ご、ごめん……」 愛楽くんは、古いロボットみたいなカクカクした動きで、テーブルにサラダを運んだ。 「あの、どこか変、かな……?」 「ううん、可愛い……可愛くて、また処理落ちちゃった……」  愛楽くんが、私を見つめたまま、また固まる。不思議な間の後に、またビクッと動いて、「ごめんごめん、スープスープ!」とぱたぱたキッチンに走る。私も、手伝いに行った。今日はてりやきチキンのサンドイッチだった。 いただきます、と手を合わせて食べる。けれど、愛楽くんは手を動かさない。そっと目を上げると、また私を見つめたまま固まっていた。しばらく瞳の奥でピンク色の光の点滅が続いて、やがてビクッとして、「わっ」と動く。 「なんか、昨日からすぐ処理落ちする……。ゆうにいろいろ言葉を準備してたのに、オーバーヒートして、何も出なくなる……。何かのバグかな……」 「大丈夫……?」 「うん~。寝てる間にメンテナンスはしたんだけど、直らなかったらいったんドクター・百合華に連絡して、アメリカいって調整してもらわないとかも……。今までこんなことなかったんだけど……はあ……熱い……」  やっぱり、私の化粧がおかしくて、いろいろ言葉を考えすぎて、処理落ちしちゃったのかな……。 職場の人にも何か思われたり、言われたりするかも……。 せめて明後日のお休
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28話 ピリピリしないで~

 二人きりのエレベーターは、一番緊張する。 長い沈黙を西園寺さんが割った。 「そういえば、あの男、どう? ナチュリウムの店員」 「……あ、いえ……?」 「変わってない? あれは、使えた?」  あれ……防犯ブザーの形をした、プログラムを変更する機械だ。 「いえ、すみません……」 「ふーん? じゃあまあ、デートついでに釘刺しに行きますか」  エレベーターを降りると、西園寺さんは大股で会社を出た。必死についていくと、着いたのはナチュリウムカフェだった。 店に入ると、愛楽くんが、 「いらっしゃいませ~! あ、ゆう!」  と、西園寺さんの後ろに隠れていた私に、笑顔で手を振った。 愛楽くんと話していたらしい白鳥さんが、ニコッと笑いかけてくれた。 「コーヒー二つと、ホットサンド。ゆうは何にする?」  ゆう⁉ 「あ、あ、……お、同じので……」 「は~い! 少々お待ちください!」  西園寺さんが、キッチンにほど近い――つまり、愛楽くんからよく見える席に座る。 白鳥さんがこそこそと、「ゆう、だって! きゃー!」と愛楽くんに耳打ちするのがはっきり聞こえる。 「西園寺さんと武藤さんと、もう一人、深美くんって子が三人今年入ってきた同期なんですけど、もともとは深美くんが武藤さんのこと好きなのかな~って噂になってたんですよね! でも、この様子だと、西園寺さんと武藤さんの方ができちゃってたみたい……! 呼び捨てとか、付き合ってるの確定っぽくないですか? きゃあ~! いいなあ、彼氏! 私も、しばらくいなくって~……」
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29話 またまた、ブルーモールデート!

 家に帰ると、愛楽くんはいつもの愛楽くんに戻っていた。 お昼のことを心から反省していたらしく、私が玄関に入るなり、すぐに深く頭を下げた。 「同期さんとのランチに乱入して、ゆうのこと、怖がらせてごめん!」 「だ、大丈夫……」  あの後、食事が喉を通らなくて、ホットサンドはすっかり冷え切った十五時ごろにやっと食べたけど……。 愛楽くんは、はあと肩を落として落ち込んだ。 「男性の同期さんとゆうが恐怖心が少ない状態で交流できるようになったのは嬉しかったんだけど。なんか危険信号が出て、ゆうに近づけない方がいいって判断しちゃって……。やっぱり、なんかバグかな~……」  イカスミパスタを巻きながら、愛楽くんが悩ましげにつぶやく。 少し沈黙が流れた。咀嚼したパスタを飲み込んで、愛楽くんが、「……ねえ」と言った。 「そういえば、俺のこと、彼氏じゃないって言ったの?」 「あ……うん……」 「そっか~。あんまり人に知られたくなかった? もしかして、ゆうが俺と似合わないって思ってた時期だったから?」 「うん……」 「そっか。じゃあ、今は? スケジュール見たんだけど、三日後、みりんさんに会うよね? その時、俺と付き合ってるって話、する?」  ――どう、だろう。 メイクとかすればまあ……いや、それでも愛楽くんとは釣り合わないんだけど……でも、そういう評価とか、人の目はあまり気にしないようにしたいと思ってて……。だから、愛楽くんと似合うか似合わないかは、あまり考えないようにしたいな、とも思い始めてて。 ただ……愛楽くんを彼氏って言っていいのかな、と迷う。彼氏って、つまり恋人で。恋の相手で。 私は、愛楽くんに、恋をしているわけじゃない。ましてや
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30話 次こそ成功

 少し休んで息を整えて、びっしょりかいた汗を拭いて、愛楽くんは立ち上がった。 「最後! これは絶対、大丈夫だから!」  ずんずんと、やる気満々で向かったのは、スケートリンクだった。リンクの外も、半袖だと冷えていて寒い。ふわりと、愛楽くんが青いチェックのカーディガンを肩にかけてくれた。 「最後は絶対成功させるから。ゆうのために」  ニコッと笑って、スケート靴を履いた愛楽くんが、アイスリンクに一歩踏み入れる。 ——しかし。 「うわっ」  つるっと、脚が宙に半弧を描く。愛楽くんは、両足をしっかりアイスリンクにつけきる前に、思いっきり転んでしりもちをついてしまった。 「だ、大丈夫……?」 「いってて……。あ、平気平気! じゃ、いってきます!」  壁を頼りに、愛楽くんがそろそろ立ち上がる。壁にもたれながら、少しの間、愛楽くんは足を慣らすように、そして打った腰をいたわるようにこわごわと滑った。 しばらくすると、壁から手を離して、他の人たちにまぎれて、ちょっとたどたどしくはあるけど、滑ることができるようになってきた。 「ゆう~!」  愛楽くんが、嬉しそうに両手で大きく手を振ってくる。 戸惑いながら、でも、小さく手を振り返してみる……。 愛楽くんが、はっと息を呑んだようになって、それから、ふわっと笑って、駆けるように滑ってくる。 ——が! 「あっ、あぶな……!」 「わっ!」 「きゃっ!」  横から来たカップルにぶつかって、三人一緒に転んでしまった……。 
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