All Chapters of 運命の輪~愛してる~: Chapter 21 - Chapter 30

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初お泊り 1

 彼に見つめられている時間がとても長く感じる。 彼の体制と私の体制は変わらない。 私は恋愛経験もキスもそれ以上のことはしたことがない。 だからこういう時、どうしていいのかわからないよ。 普通なら、ここでキスとかするのかな。 蓮さんは、私を見つめてはくれるけれど、それ以上何もしてこない。 もしかして私があの人<川口さん>に襲われたから、きっと彼は気を遣ってくれているのかな。あの時のことを思い出させないように。そんな気がした。 蓮さんと川口さんは全然違う。 今、私の目の前にいるのは私の大好きな彼氏だ。 だから押し倒されても怖くなんて感じない。 蓮さんの整った顔が近くにあって、緊張はするけれど。「すみません。ちょっと外に行ってきます……」 ふぅと息を吐き、蓮さんは私から離れようとした。「蓮さんっ!」 私は自分から彼の首に両手を伸ばし、彼がどこかに行ってしまうことを止めた。「美桜……?」「私は蓮さんのことが好きです。だから何をされても怖くありません」 私、なんて大胆なことを言ってるんだろう。 これじゃあ、誘っているように聞こえちゃうのかな。 本心だから、仕方がないよね。 ドクンドクンと心臓の音が鳴りやまない。 蓮さんは私の言葉に数回瞬きをしたかと思うと「……。我慢しようと思いましたが、やっぱりやめます」 そう言って彼は、私の頬にチュッと軽くキスをした。「……!」 頬に唇の感触が一瞬残る。  蓮さんがキスしてくれた。 あんなこと言ったくせに、どうしたらいいのかわからない。 一ミリも動けない。瞳孔だけが開いている気がする。「ん……!」 蓮さんは、私の唇に自分の人差し指を当てた。 そして耳元で「本当はこれ以上のことをしたいんですが、周りに人も多いですし、続きはあとにしましょうか?」 そう囁いた。 彼の吐息と低い声で、ゾクゾクしてしまう。 これ以上のことってもしかして……。 キス以上のこと?いや、まだちゃんとキスしていない。 まだほっぺだった。 今度は唇にってこと? 彼の指の感触が唇に残る。それだけで顔がまた熱くなるのに。 蓮さんは私の身体を起こして、車の座席を元に戻す。「マッサージ気持ち良かったです。またお願いするかもしれません」 そのあとは、いつもの彼だった。 帰る時間の方が圧倒的に短く感
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初お泊り 2

 遠慮がちに小さな声でそう彼が提案してくれた。 抱きしめられてて顔が見えないけれど控えめな声音だったから、きっと蓮さんも私のことを気遣いながら言ってくれたんだよね。「蓮さんが良かったら。じゃあ、あの、私、着替えとかすぐ持ってくるので、ちょっと待っていてください」 アパートに一旦戻り、ボストンバッグを用意して泊まる準備を慌ててする。 彼女として泊まるってことは、もしかしたら……。 そんなことを考えながら準備をしていると、着替える服や下着が全く決まらない。「ああ、どうしようっ!」  蓮さんを待たせてはいけないと思って、必要だと思われるいろんなものを詰め込んだ。「お待たせしました」「いえ。では行きましょうか?冷蔵庫に何もないので、スーパーに寄って行きましょう」「はい」 彼女としてはじめて彼氏の家にお泊りするんだ。 どうしよう。変な想像しかできない。「蓮さん。今日の夕ご飯、食べたいものありますか?」 二人でスーパーに寄って、食材を見ながら彼に問いかける。せっかくの機会、彼の好きなものを作ってあげたい。「そうですね……」 蓮さんはしばらく考えたあと「子どもっぽいって思われるかもしれませんが、ハンバーグが食べたいです」 そう伝えてくれた。「ハンバーグでいいんですか?」 良かった、それなら普通に作れそう。 とは言ってもこの間、自分の家で作ったときは焦がしちゃったけど。 スーパーで必要な材料を買い、車に戻る。「荷物、持ちますよ」「ありがとうございます」 当たり前のように軽々と買ったものを持ってくれる蓮さんがカッコよく見える。 彼のマンションに着き、エレベーターに乗る。 この間は精神的にショックを受けていたからかよく覚えていないが、マンション内は管理がきちんとされており、エントランスや共用部分も綺麗だ。 家賃はいくらくらいするのだろう。 都内で二十五階に住めるようになるには、どれくらい努力しなければいけないのかな。蓮さん、まだ二十代なのに。 そんなことを考えているうちに、彼の部屋に着く。「お邪魔します」 部屋の中に入ると、この間と変っていない。 整った部屋、男性の一人暮らしのイメージではない。「蓮さんのお部屋って、綺麗ですよね」 部屋を見渡しながら思わず口に出しちゃった。「そうですか?あまり物がないだけですよ
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初お泊り 3

 彼の目がパッと開き、私を上目遣いで見上げている。 寝ているフリしたたの!? いつからだろう。すごく恥ずかしいよ。 こんなこと、最初から挑戦しなきゃ良かった。「ごめんなさい!」 蓮さんとしっかり目を合わせるのが怖くて、その場を離れる。「美桜」 バッと離れる私の腕を引き、彼はチュッと私の頬へキスをした。「蓮さんっ!?」「騙すつもりはなかったんです。途中までは本当に寝てしまっていて。でも、熟睡ではなかったので美桜が近づいてくる音で起きました。俺が寝てたらどうやって起こしてくれるのかなって思って、興味本位で寝たフリをしてみました。そうしたらもうちょっとで……」 もうちょっとと言いかけた彼の口を私は手で塞いだ。「その先は言わなくてもいいです。私が悪かったんです!ご飯できましたよ!」 彼は笑って「はい」 だけ答えた。 連絡先を交換した時は、まさか蓮さんとこんなやりとりができるようになるなんて思っていなかったな。 「いただきます」 二人で手を合わる。 蓮さんが食べる様子を伺っていたけれど、私が作ったハンバーグを食べ「美味しい!」 彼はそう言ってくれた。「美桜は料理が上手ですね。また作ってくれますか?」 満足そうに食べる彼を見て、ホッとする。優しい目、嬉しい。 やっと彼に何かすることができた。「もちろんです、こんなので良かったら!いつでも作りますよ」  自炊はしている方だと思うけれど、蓮さんが喜んでくれるようにもっと頑張ろう。  夕ご飯を食べて、洗い物を二人で行う。 片づけも私にさせてほしいって蓮さんに伝えたけれど、彼が手伝いますの一点張りだった。 蓮さんはクールなイメージだったけれど、一緒の時間を過ごしていくうちに少しずつわかってきたことがある。 優しいけれど、彼は自分が譲れないと思ったところは譲ってはくれない。 だけど、それは私のことを想ってくれてのことだから。 こんなに甘やかされていいのかって申し訳なく感じる。それにこんなに大切にされたことがないから、どういう反応をすればいいのかわからない。「美桜、先にシャワーどうぞ?」 うーんとぼんやりしていたら、彼がバスタオルを持ってきてくれた。「蓮さんが先に……」 「レディーファーストです」 彼に押し切られ、先に入ることにした。 シャワーから戻って来る
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初お泊り 4

「えっ?」 予想していなかった返答に戸惑う。 なんだ。蓮さんも一緒の気持ちなんだ。私一人だけがドキドキしているわけじゃないんだね。 そう思ったら心が軽くなった。 隣にいる彼に近づく。「美桜……?」 私は彼の頬を触る。  そこに彼の頬があるのを確かめ、チュッと自分からキスをした。 さっきみたいに明るくて彼の顔がしっかりと見えるわけじゃない。 だからこんな大胆なことができた。「蓮さん。大好きです。おやすみなさい」  そう伝え、彼から離れようとした。「……。ダメです」 今度は、蓮さんが私に近づき、布団の中で抱きしめられる。 シャンプーの良い香りがした。 彼は私の耳元で「昼間の続きをしましょうか?」 そう囁いた。  ドクンドクンと心臓の音がする。 布団の中で抱きしめられているだけで、鼓動が速くなるのに、そんなことを言われてしまったら緊張で動けなくなっちゃった。 自分からキスしたから。もしかして誘っていると思われたかな? 無言で固まっている私に「すみません。美桜の方からキスしてくれたのが嬉しくて。つい調子に乗ってしまいました」 彼は、私から離れベッドから降りようとする。「水を飲んできますね、電気を少しだけつけます」 真っ暗だった部屋が少しだけ明るくなり、彼の姿が見えた。 蓮さん、まだ気を遣ってくれているんだ。 私の気持ちをちょっとずつ確認してくれるのも、強引に触れないのも、あの出来事から時間が経っていないからだよね。 川口さんに襲われたことを私が思い出さないようにしてくれているんだ。 今日、車の中でキスをしてくれた時もそうだった。「蓮さん!」 慌てて呼び止める。 せっかく二人で一緒に居られるのに、このままだったら彼が気を遣ってソファで寝ますって言われたらイヤだ。「ごめんなさい。私、恋愛経験がなかったから。こういう時、どうしたらいいのかわからなくて。でも嫌なんかじゃないんです。ドキドキして緊張しちゃうけど、蓮さんに触れられてイヤなんて感じません」 彼はベッドの上に座り「俺が焦りすぎているんですよ。美桜は何も悪くない」 優しく頭を撫でられる。「先に寝ててください。頭を冷やさないと。また美桜を傷つけてしまうかもしれません」 やっぱり蓮さんは勘違いをしている。 私は彼だったら怖くないのに。 薄暗い
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初お泊り 5

 その言葉を伝えた瞬間、彼がキスをするのを止め、一旦私から離れる。 あんなこと言っちゃったから。引かれちゃったかな。  謝ろうとした時「そんなことを言われたら、もう抑えられません」 蓮さんは少し長い髪の毛をかきあげた。 優しい彼の雰囲気とは違い、鋭い眼にドキッとする。「あっ……。れんさん……」 私がもっとしてほしいって言ったから、さっきまでとは違う容赦ないキスに変わる。「……ん。……ん!」 私の吐息とともに、チュッ、チュッと高音のリップ音が部屋の中で響く。「れ……んさん……。くすぐったい」 彼は私の耳朶にキスをした。「ん……。あぁ!」 カプッっと耳を甘噛みされる。 彼の唇は次第に首筋に下がる。「蓮さん……。くすぐったいよ……」 首筋を舌が這った。ゾクゾクする。 どう表現して良いのかわからない。 くすぐったいけど、気持ち良い。私は彼の背中にしがみつくしかできない。 私の首筋を見て、彼の動きが一瞬止まったような気がした。 そういえば、その辺りはあの人から襲われた時の痣が残っている。 私は急に思い出したかのように、手で首筋を隠した。「蓮さん、ごめんなさい。私、汚いですよね」 私は見ないようにしていたが、きっと痣は残っているだろう。「汚くなんかないです」 彼はキスを止めて、私を優しく抱きしめる。「これからは俺がずっと守ります。だから、安心してください」 先ほどまでのキスとは違い、優しいキスをされた。「はい……。私、蓮さんにぎゅっとされると落ち着きます」 ふっと彼は笑い「それは良かった。こんなことをしておいてですけど」 彼がふぅと深呼吸をしたのがわかった。 そして「今日は寝ましょうか?明日はバイトですよね?寝不足だと疲れちゃいますし」 蓮さんも疲れているはず。「はい」 本当はもっともっとして欲しいだなんて我儘は言えない。 彼は私の髪の毛を優しく撫でてくれる。「幸せです」 思わず呟いてしまった。「俺もです」 隣に大好きな彼がいる。「おやすみなさい」 少し点いていた電気が完全に消える。彼の顔が見えなくなった。 ずっとずっと蓮さんと一緒にいたい。 そう思いながら眠りについた。 次の日、私が目覚めると隣に彼の姿はなかった。 リビングに行くと「おはようございます」 良い匂いがした。 
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プライド 1

 お泊りでやることって言ったら……。 あのことを指しているんだよね、きっと。「えっと……。キスだけした」 私の発言に、優菜が飲んでいたお茶を喉に詰まらせる。「えっ?泊まって、一緒の部屋に寝たのにキスだけ?」「うん」 私は少し考え「たぶん、私が襲れたばかりだから気を遣ってくれたんだと思う。怖くないですか?って何回も聞いてくれから」 蓮さんは私に怖い思いをさせたくないって言っていたから。「そっか。まぁ、そんなことがあったらね。遠慮するか。でもすごいね。性欲我慢できない男なんていっぱいいるからね!黒崎さんは、紳士だと思う。まだ若いのに。真面目で優しくてお金持ちでって羨ましいわ。私も会ってみたいなー」 優菜も同じ大学生だけど、お母さんみたいなことを言うんだな。 若いのにって、私たちより彼は年上だよ。 私も優菜に蓮さんを会わせたい。 人によっては自慢とか思われそうだけど、生まれて初めての彼氏だから。 親友に紹介したい。 私は今まで紹介される側だったからな。 蓮さんに優菜についてチラッとアプリのメッセージで伝えると<いいですよ。俺も会って、挨拶をしたいです。急ですが、今日のお昼とか一緒にご飯とか食べませんか?> そう返事をしてくれた。 蓮さんは仕事の関係で私たちの大学近くに来る予定があるらしい。 お昼の時間は休憩が取れて、会うことができるって言ってくれた。 時間が合ったため、一緒に昼食を食べることになった。 彼が大学の入り口まで来てくれるらしい。「申し訳なかったかな?忙しいのに、私が会いたいなんて言ってごめんね」 蓮さんと合流するために、私たちは大学の門の前で待っている。「蓮さんも優菜に挨拶したいって言ってくれたから」「いいな。優しくて。私の彼氏だったら面倒とか、恥ずかしいとか、絶対断られるよ」 そんな会話をしていた。 すると蓮さんが来る方向を見て、優菜が「ねえ、あの人じゃないよね?」 私に問いかけた。 優菜の言った先の方向を見る。間違いなく蓮さんだ。遠目で見ても、スーツ姿もカッコいいと思ってしまう。 私たちに気づいた蓮さんが駆け寄ってくれた。「遅れてしまってすみません」 「いえ、こちらこそお会いしたいだなんてワガママ言ってしまってすみません」 優菜が答える。「はじめまして。黒崎です」「はじめまして。
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プライド 2

 蓮さんも全て好きなんて、嬉しいけど。 顔が熱くなる。「それじゃ、ダメです。具体的に言ってください」 優菜は引き下がらない。「優しいところ、可愛いところ、気を遣えるところ、美味しそうに食べるところ……。他にもありますが、もっと続けたほうが良いですか?」「蓮さん、もう大丈夫です!ありがとうございます」 私が恥ずかしくなって蓮さんの言葉を止める。「いいな。私が想像していた以上にめっちゃラブラブじゃないですか……」 頬杖をつきながら、優菜が険しい顔をしている。「美桜は蓮さんのどこが好きなの?」「えっ?」 優菜には話しているはずなのに。 本人の前でそんなこと聞いてくるなんて、酷い。「俺もそれは知りたいです」 蓮さんも教えてくださいと言ってくるし。 ああもう。「私も……。蓮さんの全てが好きです」 思わず、顔が赤くなる。「だから、それじゃあ、答えになっていないじゃん」 優菜が美桜も具体的にと突っ込んできた。「優しいところ、カッコいいところ……。他も全部好き」 全て伝えていたら、恥ずかしすぎてランチが食べられなくなりそう。 優菜が「いいなぁ……!いいな。いいなぁ」 何度も繰り返して<いいな>と言っている。 あとはサラっと蓮さんから優菜と仲良くなったきっかけや、学校生活について聞かれ、優菜と顔を見つめあいながら蓮さんの質問に答えた。 「黒崎さん。美桜って、ちょっと天然で純粋すぎるところがあるんです。それも良いところなんですけど。たまに良い子すぎるところがあるので、変な奴から守ってあげてくださいね。大学デビューで、実は男子学生からも密かにモテたりするんで」 優菜が食事が終わったあとに、美桜をお願いしますと頭を下げた。「そんなことないよ!」 慌てて否定したけれど「わかりました」 蓮さんが真面目に返答していたから、それ以上のこと言えなくなっちゃったよ。 楽しいランチタイムも終わり、蓮さんは仕事に戻り私たちも次の講義へ向かうことになった。「ごちそうさまでした!でも、本当にいいんですか?」 昼食代は、蓮さんが私たちの分まで払ってくれた。「美桜はともかく、私は払いますよ?」 優菜が財布を取り出してはいるが「気にしないでください。これでも社会人ですから。楽しかったです。また機会があったら行きましょう」 優菜からお金を
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プライド 3

 話しかけてきたのは、同じ学年の藤原 真帆《ふじわら まほ》だった。 うしろには二人の女の子もいる。  真帆ちゃんとは、大学の入学時に一緒のゼミになった。知らない人たちばかりでドキドキしていた私に最初に気さくに声をかけてくれたのが真帆ちゃんだ。 「美桜ちゃん、次の講義、一緒に行こうよ」なんて声をかけてくれていたのに。 ある日をきっかけに、話しかけてくれない、ううん、無視をされるようになった。 大学一年生の時、真帆ちゃんと教室に入ろうとすると、男子学生の声が聞こえてきた。「藤原さんと東条さんって、二人でよく一緒にいるよな?仲良いのかな」「授業一緒に受けているし、仲良いんじゃない?俺、どちらかと言うと、東条さんみたいな子がタイプかも」 あまり話したことがない男子にそんなことを陰で言われると思わなくて、私は教室に入れず、固まってしまった。真帆ちゃんも下を向いて、男子たちの会話を聞いていたように思う。「えっ、マジ?俺も東条さんがいいな。優しそうじゃん。ナチュラルに綺麗って感じがして好きだな。彼女にするなら東条さんがいい。遊ぶんなら、藤原さんかな」「あ、それ。わかる!彼女は東条さんだけど、セックスするのは藤原さんだよな」 彼らは私たちに会話を聞かれているとは知らず、笑っていた。 男子って、やっぱりそんな会話をするんだ。 恋愛経験のない私は、彼らの話を聞いて戸惑っていたけれど、それ以上に、真帆ちゃんのほうが可愛いと思っていたから、真帆ちゃんに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。 小学校では虐められて、中学・高校は陰キャだったから。私が恋愛対象に入るなんて、考えたことがない。 その時、チラッと真帆ちゃんのほうを見ると「ムカつく」そう呟いたのが聞こえた。 そうだよね、そんなこと言われたら、嫌な気持ちになるよね。 だけど真帆ちゃんは一言そう呟いたあとに「お疲れー」 そう言って普通に男子たちに話しかけていた。 割り切るってすごい、彼女のメンタルを見習いたいとさえ思っていたけれど。  授業が終わって、いつも通り真帆ちゃんに「お疲れ。次も一緒の講義だよね?」 話しかけるも、彼女は私の声なんて聞こえない様子で、違う女の子たちに「ねえねえ!次の講義、一緒に行ってもいい?」 そんな風に話しかけていた。 あれ、いつも一緒に行ってたのに。 
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プライド 4

「真帆ちゃんさ、最近人気の先輩と付き合ったって聞いてたし。それも彼女がいたにも関わらず、アプローチを続けた結果付き合えたみたいな。まあ、あんな子と付き合う先輩もどうかしていると思うけど。男の人の前ではいい子だからさ。可愛いし」「まあ、黒崎さんはあんな子なんか興味ないと思うけど、気をつけなよ?って言っても、どうしたらいいのかわからないけど」 私は彼女みたいに容姿も良くないし、性格も明るい方ではない。でも、蓮さんは私の彼氏だから。私だって譲れないよ。 彼女の宣戦布告に私は負けない。 大学の講義が終わり、アルバイト先へ向かう。 あの事件以降、川口さんはアルバイト先にさすがに来なくなった。 蓮さんのアドバイスもあり、店長に川口さんのことを相談すると「そんな危ないことがあったんだ。怖い思いしたよね。もし店に来たら警察に通報するし、絶対に店に入れないようにするから、安心してな」 つまりは出入禁止の対応をしてくれるそうだ。 お店で働くということは安心したが、あれから帰り道が怖かった。 もしもまた現れたら……。 そんなことを考えちゃう時もある。トラウマってやつだよね。  蓮さんにもアルバイト先を変えた方がいいとアドバイスされたけれど 店長から「お願いだから辞めないで」と懇願されたため、カフェでのバイトは続けることにした。 蓮さんに続けたいことを伝えると「俺の仕事が早く終わった時は迎えに行きます」 そう言ってくれたけれど、彼は忙しくて残業もあるため時間も合わない。 それに、これ以上甘えるわけにもいかないと思っている。 金銭的余裕が少しなくなるけれど、念のためしばらくは一時間バイトを短くして、少しでも人通りが多い時間に帰るという対応にしてもらった。 アルバイトが終わり帰宅をすると、優菜からメッセージが届いていた。<今日のこと、蓮さんにお礼を言っておいて!あと、あの女のことも相談するんだよ> 蓮さんには心配かけたくないんだよな。 だけど優菜の勘ってよく当たるから、どうしよう。 悩んだ末、蓮さんの仕事が終わったら電話をしたいというメッセージを彼に送った。 夜の二十三時過ぎ――。 蓮さんから電話がかかってきた。 慌ててスマホを取る。「もしもし?」<すみません。残業で遅くなってしまいました。今、帰る途中なんですが……。何かありましたか
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プライド 5

「はあ?」 思わず優菜が声を上げたが「大丈夫。行こう?」 私たちはその場から離れる。「ああ、ムカつく!なにあれ?」 空いている教室で優菜と話す。「どうするんだろうね。どうやって黒崎さんと会うつもりなんだろう。連絡先だって知らないのに」「わからない。だけど、私は負けない」  頭を抱えそうになるけれど、蓮さんは私のことが好きだと言ってくれている。それに人を簡単に傷つける彼女は、きっと蓮さんは嫌いなタイプの子だ。可愛いからってすぐに好きになるような男の人ではない。蓮だってしばらく恋愛はしていなかったって言っていたし、社内からモテるってこの前言われてた。真帆ちゃんに騙されるわけがない。 大丈夫、大丈夫。落ち着こう。 そんな言葉を心の中で繰り返した。 次の日、いつもと変らない時間を送っていた。 蓮さんには昨日の真帆ちゃんの「奪っちゃう」発言は相談していない。 毎日問題ごとに付き合わせたくはないから、黙っていた。 まだ実際に何かされたわけではないから。 言葉だけの嫌がらせかもしれないよね。 優菜と二人で学内を歩いていた。「最近、アルバイトの方はどう?あれから大丈夫?」 川口さんの事件以来、優菜も心配をしてくれている。「うん、大丈夫!それに今日は、蓮さんが迎えにきてくれるっていうから安心なんだ」  急遽、他のスタッフさんが風邪を引いてしまいしばらく出勤ができなくなり、その代わり私が時間を延ばして勤務することになった。店長は謝ってくれたが、他に都合のつく人がいなかったらしい。  蓮さんに帰りが遅くなることを伝えると<その時間であれば、迎えに行けると思うので。行きますね。待っていてください> そう言ってくれた。「じゃあ、安心だね」「うん」・・・---「真帆!」 彼女は真帆と呼んだ人物の近くに行き、先ほどの彼女たちの会話を伝えていた。「へー。そうなんだ!じゃあ、あの子のアルバイト先に行けば、あの人と会えるんだね。わかった。ありがとう。これ、お礼だよ!」 真帆と呼ばれた子はご機嫌で、バッグからとあるものを渡す。「これ韓国で発売されためっちゃ人気の限定品リップじゃん。欲しかったやつ!ありがとう」 友人と思われる人物は、真帆から渡された物を躊躇なくカバンに入れた。「またお願いね!」「もちろん、真帆のためだもん」 
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