All Chapters of 運命の輪~愛してる~: Chapter 31 - Chapter 40

53 Chapters

誤解 1

「実は、相談したいことがあって」 真帆という子が胸の前で両手を組む。「どんなことですか?」「私、美桜ちゃんの親友なんですけど、美桜ちゃん、浮気しているんです。相手は同じ大学の子です。こんなに優しくてカッコいい彼氏さんがいるのに……」 彼女は目を潤ませた。「それを伝えたくて。これ、証拠の写真です」 彼女がスマホから見せたのは、美桜と男性が抱き合っている写真だった。 美桜が浮気なんてするわけがない。 作られたものだとすぐにわかった。 偽りだとわかっていても、美桜が違う男と抱き合っている写真を見ると妬けた。そんな自分を面白く感じる。 他人に興味などなかったはずなのに、美桜が俺を変えてくれた。「それ、作られたものですよね?解析してみればすぐわかりますよ」 彼女は俺の言葉にビクッと反応したかのように見えたが「ウソなんかじゃないです。信じてください」 目から涙を流していた。 すごい演技力だな。何をしたいのかわからない。目的はなんだ?「私、美桜ちゃんから彼氏さんの話を聞いて、すごく羨ましかったんです。それでこの間、優菜ちゃんと会っているところを見て。どうしてこんなに素敵な彼氏さんなのに、浮気なんてするんだろうって思っていて……」 何も答えず、彼女の話を聞いていた。同じ話を繰り返している。 いつまで聞いていればいいのだろう。「私なら浮気なんてしないのに、もっとあなたのことを大切にできるのにって。私、実はあなたに一目惚れをしてしまって。美桜ちゃんからもよく自慢されてたから。内面もすごく素敵な人なんだなって。余計、好きになっちゃって」 つまらない話に、ふぅとため息をついてしまった。「すみません。俺、美桜のことを信じているので。写真を見せられても、キミから何か言われても、何も応えられません」 彼女が一瞬、目線が逸れた気がした。「私、好きになってもらえるよう頑張ります。あなたのことが好きなんです」 そう言って、抱きつかれた。 こんなに積極的な子、久しぶりだな。社内でもたまに告白はされるが、ここまでのことはさすがにされない。学生だから、まだ社会に出ていないからこんな大胆なことができるのか? 無言で彼女の肩を掴み、離そうと思った時ーー。「蓮さん?」 うしろを振り返ると、美桜の姿があった。 ・・・--- 私はアルバイトが終わって、蓮さ
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誤解 2

 気持ちに足がついていけなくなり、転んでしまった。「痛いっ……」 最近、転んでばかりだ。 転んだのはアスファルトの上、せっかく治った膝から血が出ていた。 転んだまま、その場に座り込む。立ち上がろうとしたが、立ち上がれない。 幸い、夜遅い時間だったため、駅の近くでも歩いている人は少なかった。「どうして……」 息を整え、深く深呼吸する。 私、蓮さんから直接話を聞いていないのに。 また暴走しちゃったかも。好きな人が他の子に抱きつかれてるって、こんなに嫌な気持ちになるんだ。 抱きつかれている彼を見て、動揺して、見たくなかったから走り出して。 私、蓮さんをを信じているんじゃなかったの?「バカだな、私」 スマホが鳴っているのに気づく。 相手はもちろん蓮さんだ。 どうしよう。「もしもし?」<……。今どこにいますか?> 彼が珍しく息が上がっている。 走っているのかな。「わからないです」<そこから何が見えますか?目立つ建物とかありますか?>「私、蓮さんに会いたくない……」  まだ頭の中で整理ができていない。 彼のことを信じられなかった自分が悔しくて、きっと蓮さんは許してくれるかもしれない。だけど自分が心の底から浅はかでバカで嫌だ。 転んでしまっただなんて、惨めな姿も見られたくない。<……無理にでも会ってもらいます>「えっ?」 通話が切れたと思った瞬間、後ろから誰かに抱きしめられた。私の好きな香水の匂いがする。蓮さんだ。 彼はすぐ抱きしめるのをやめて「大丈夫ですか?転んだんですか?ケガ、見せてください」 彼は私の正面に行き、ヒザや腕を見てくれた。「痛かったですね。血が出てます。すぐに帰ってまずは洗い流しましょうか。立てますか?」 どうして蓮さんはそんなに優しいの?「立てません。一人にしてください」 私は俯いていたので、彼がどんな顔をしているのかわからない。「事情はあとで話します。一人にはさせません。立てないのなら……」「きゃっ」 彼は私を簡単に持ち上げ、抱きかかえる。 どこにそんな力があるのだろう。「重いので降ろしてくださいっ」「ダメです」 そう言った彼の表情は、私が見たことがないような厳しい顔をしていた。 彼はタクシーを拾い、気づいた時には蓮さんのマンションに着いていた。  無言の蓮さんに手を
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誤解 3

「急にあんなところを見せられたら動揺だってします。美桜が事前に話してくれていた相手だったから。俺がもっと気をつけるべきでした。すみません」 彼は俯いている。 どうして自分を責めるの? なぜ、私を責めないの?「どうして私を責めないんですか?怒らないんですか?冷静に判断できなくて、勝手に走って転んで。子どもでバカなのは私で。また蓮さんに迷惑をかけちゃったのに」 彼は悲しそうにふっと笑い「美桜は何も悪くないですよ」 そう言ってくれた。「俺の今の話、全部信じてくれるんですよね?」「当たり前じゃないですか!」「不謹慎かもしれないですが、美桜が妬いてくれたのは……。嬉しいです」 彼女が、蓮さんに抱きついているのを見たくなかった。 ヤキモチ、嫉妬、こんな感情が当てはまるのかな。 蓮さんに一方的に抱きつかれたことをしっかり聞いても、嫌な気持ちになる。  今まで恋愛したことがなかったからわからなかったけれど、私って実はすごく嫉妬深いのかも。「はい。蓮さんが他の女の子に触れられているだけで、すごく嫌だって思ってしまいました……」 素直に答えちゃったけれど、こんなことを蓮さん本人に話しても良かったのかな。重い女とか思われちゃう? 「俺は、美桜にしか興味がありません。信じてください」 私のことを見つめる真っすぐな瞳、目を逸らすことができない。「はい」「せっかく治ったのに、痛かったですよね?本当に他に痛いところはありませんか?」 彼が私の近くに寄って、再度ケガをしていないか確かめてくれた。 いつもの蓮さんだ。どうしてだろう。すごく愛おしく感じる。「蓮さんっ!」 私は彼に抱きついてしまった。「美桜?」「好きです。蓮さん……」「俺も好きですよ」  彼に抱きしめられ、頭を撫でられる。ずっとずっとこの空間が私の場所であってほしい。「バカでどうしようもないけれど。もっと大人になって蓮さんにずっと好きでいてもらえるように頑張ります。だから嫌いにならないでください。ごめんなさい」 私の言葉に蓮さんは少し笑い「そんなに可愛いこと言わないで下さい。これでも、自重しているんですよ?美桜にケガをさせてしまったから」 自重しているって、行動を控えているってことだよね。 私が悪いのに。 私は彼の腕の中から一旦離れる。 彼の肩に両手を置かせても
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彼の心配/彼女の思惑

・・・ーーー 俺は自宅のマンションに帰り、さっきまで美桜と座っていたソファに一人座っていた。 本当は、美桜を帰したくはなかった。もっと一緒にいたい。離れたくない。 経験したことがない自分の気持ちに戸惑う。 真帆という子。 プライドが高そうだ。それに自分が美桜よりも劣っていることを認めないだろう。一応、軽く脅しはしたが。さぁ、どうしたものか。 スマホをポケットから取り出す。〈プルルルル……プルルルル〉 何回かコールを鳴らした後、相手から反応があった。<はい?もしもし?黒崎さん、どうしたんですか?>「夜遅くにすみません。相談したいことがあるんですが……」<黒崎さんが、私に相談って何事ですか?美桜に何かあったんですか?>「実は……」  俺は真帆という子にされた行為について、正直に相手へ話す。<はあ?マジあの子、許せない!>「美桜に変わったことがあったら教えてください。きっと一人で抱え込もうとするので……。どんなことでもいいです。あと、その真帆って子に気をつけてください」<わかりました。ご連絡ありがとうございます。黒崎さんってホントに美桜のこと大好きなんですね!羨ましいな> とりあえず、美桜に一番近い存在である子には連絡を入れた。 何も起こらなければいい。心配だけで終われば。 嫌な予感がする。言霊にしてしまうと、本当にその通りになってしまいそうだから。あえて言葉には出さなかった。・・・--- あの日、真帆ちゃんが私のアルバイト先に来て、蓮さんに告白をした日から何日か過ぎた。 大学で会ったら何を言われるのだろうと身構えていたが、廊下ですれ違っても、ゼミの講義の中でも何も触れてこない。話しかけて挑発してくることもなかった。 さすがにもう諦めてくれたよね。真帆ちゃんだって彼氏とかいるはずだ。 それに相手には困らないって自慢しているのを聞いたことがある。 蓮さんには迷惑かけちゃったけれど、しばらくしたら<あんなこともあったな>なんて、話せる時がくるのかな。 蓮さんとは毎日連絡を取り合ってはいるけれど、彼の仕事が忙しく、帰りが夜間になることが多いため、会えない日々が続いている。 私が「会いたい」って言えば、きっと蓮さんは無理しても会ってくれる。  でも蓮さんの仕事の邪魔はしたくはないし、社会人と付き合っているという自覚を持た
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彼女の思惑 2

 まさか彼女がうしろにいたなんて。 全然気がつかなかった。 身体が固まりそうになったけれど「なに?」 冷静に冷静に。蓮さんのアドバイスを思い出す。  それに今は優菜が隣にいてくれて良かった。「美桜は、話したいことなんてないんだけど」 優菜が代弁してくれた。優菜はこの間のこと知っているから。 真帆ちゃんに対して、前よりもさらに厳戒態勢だ。「優菜ちゃんには言ってないんだけど。私は美桜ちゃんに言っているの。とにかく、今日のゼミの授業が終わったら、そのまま少し残って。ああ、別に優菜ちゃんは残ってなくていいから」「何それ?私だって残るよ」「どっちでもいいけど。それじゃあ、またあとでね」 真帆ちゃんは自分の要件だけを伝え、すぐその場から立ち去った。「なに、あの態度。美桜、どうするの?」 今日はアルバイトも休みだ。 私は悩んだが、彼女と話したい気持ちもある。 真帆ちゃんを無視して、もしも行かなかったら、また何か嫌がらせをしてきそうだ。今度は私だけじゃなくて、優菜にも何かしてきそう。「私、残るよ。優菜は帰っていいから」「そんなわけにいかないよ。何言われるかわからないんだからさ、私も残るから」 巻き込みたくなかったから帰っていいなんて伝えちゃったけれど、優菜がいてくれた方が心強い。「ありがとう。助かる」「当たり前じゃん」 ゼミでの授業が終わり、そのまま教室に残る。 皆が帰り、真帆ちゃんと私たち二人だけになった。 「で、話ってなに?」 優菜が切り出す。 何を言われるのだろう、マイナスなことばかり想像をしていた。「美桜ちゃん、この間はごめんね」 そう言って彼女は私たちに頭を下げた。「えっ?」 思わず、優菜と顔を見合わせる。 あの真帆ちゃんが頭をさげて、ごめんなんて言っている。 彼女のことだから絶対謝らないと思っていたのに。「私、この間、黒崎さんを見たとき一目惚れしちゃって。美桜ちゃんの彼氏だってわかってたんだけど。どうしてもタイプで羨ましくて。だからって、美桜ちゃんに酷いことしちゃった。ごめんなさい」  彼女の言葉はまだ続く。「そう。羨ましかったの。美桜ちゃんが。あんなカッコいい彼氏もいて、仲の良い友達もいて。私は、上辺だけの友達しかいないし。だから、いじわるしたくなっちゃったっていうか。よく考えたら、私が悪かっ
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彼女の思惑 3

 私は、真帆ちゃんが指定したお店に向かっている。 個室になっている居酒屋だった。<予約したら席がちょうど空いてたの!先に入っているね> 届いていたメッセージを見る。 一応、二十歳は過ぎているからお酒は飲んでもよい歳にはなっている。 だけどお酒は苦手だ。身体に合わないらしい。体質的なものがあるみたいだけど。 普通にスーパーで売っているカクテル缶を一杯飲んだだけでも、眩暈がしてしまう。優菜と何回か飲んだことがあり、いつもそんな風に具合が悪くなっちゃうから、自分からは進んでは飲まない。 話しやすいからと居酒屋を選択してくれた真帆ちゃんには申し訳ないけれど、事情を伝えてお茶やジュースだけしか飲めないことを伝えよう。 お店に入り、店員さんに伝えると部屋に案内してくれた。「美桜ちゃーん、待ってたよ」 真帆ちゃんが一人座っていた。 「何飲む?乾杯しようよ」 メニュー表を渡される。「ごめん。私、お酒飲めなくて。身体に合わないらしくて、少し飲んだだけでも体調を崩しちゃうんだ。ソフトドリンクとかノンアルとかにしておくね。真帆ちゃんは飲んでいいから」「えー。そうなんだ!美桜ちゃんが飲まないなら、私もジュースにしようかな」 とりあえず二人でジュースを頼み、乾杯をする。「本当にごめんね。でも、こうやって話せて良かった」 にっこりと笑う彼女は、この前までの彼女と違い、可愛らしい。もともと容姿は良いし、性格も基本的には明るい、男性から人気がある理由がわかる。「それでね。今日、他にも友達を呼んじゃったんだけど、いいかな?」 それは聞いてなかった。 いい?って聞いてくれたけど、嫌だなんて言えない。 大学でいつも一緒にいる子たちかな。「うん。どんな友達?大学でよく一緒にいる子?」「そろそろ来ると思うんだけど……」 彼女は時計を見ている。 すると「お邪魔しまーす!」 知らない男性二人が個室に入ってきた。 年齢は私たちよりも上に見えるが、学生だろうか。見かけだけではよくわからない。「どうぞー!待ってたよ」 友達って、女の子じゃなかったんだ。 どうしよう。これじゃあ、まるで合コンみたい。  とりあえず蓮さんに連絡をして、早めに帰ろう。「ごめんなさい。ちょっとお手洗いに行ってくるね」 そう言って私は一人で席を立った。・・・---  
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彼女の思惑 4

「そっか。こんなところにずっといないで早く戻ろうよ」 私の手を引き、真帆ちゃんに席に連れて行かれそうになる。 席に戻る前に、伝えておかなきゃ。「真帆ちゃん、ごめん。私、男の友達だとは思っていなくて。早く帰るね」 真帆ちゃんと二人で話せると思った。だから来たのに。 男性がいるなんて聞いていない。あの人たちの雰囲気が私は苦手だ。「えー。なんで?いいじゃん。別に浮気してるわけじゃないんだから。美桜ちゃんって真面目なんだね。じゃあ、せめてさ、ジュース一杯くらい飲んで帰ってよ。料理だって注文しちゃったんだから。予約なんだから、コースで人数分出てくるんだよ。もったいないじゃん」 ジュース一杯くらいであれば、そう思い「予約のコース分のお金は払うから。先に帰るよ。ジュースだけ飲んで帰るね」 席に戻ると男性たちはすでにお酒を注文して何杯か飲んでいた。  え、もうジョッキがいくつか空いている。 飲むペースが速くないかな。トイレに行っていた時間はそんなに長くはないのに。「美桜ちゃんね、用事が出来ちゃったから早く帰っちゃうんだって」 真帆ちゃんは男性たちに顔を膨らませて拗ねた真似をした。「そっか、それは残念だね」 そう言った男性はとてもではないが、残念そうには見えない。 お世辞か気を遣って言っているんだろう。「ごめんなさい」 私は、自分の席にあったオレンジジュースを早めに飲み、帰ろうとした。 しかし、一人の男性に腕を掴まれる。「もうちょっとだけいいじゃん。あと五分くらい」「そうそう、私が女の子一人になっちゃうんだよ。寂しいよ」 真帆ちゃんからも腕を掴まれる。 あと五分くらい? はじめて会う男性を交えての飲み会って聞いていたら、私は来なかったよ。 悪い印象を与えちゃってもいいから、断ろう。「すみません。帰ります」 あれ?なぜだろう、急に視界がかすむようになった。 顔が赤くなってきた気がする。身体が熱い。 私、お酒なんて飲んでないのに。 嫌な予感がする。 もしかしてジュースだと思って飲んだものにお酒が入ってた? ううん。トイレに行く前に一口飲んだ時は普通のオレンジジュースだったはず。 頭が働かなくなる。 とりあえず、帰らなきゃ。 立ち上がろうとしたが、足がふらつき、壁にぶつかる。「うえ。マジこの子、お酒一杯でこんなんに
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彼女の思惑 5

「なんでそんなことまでするの?」「私は……。私はあんたみたいに可愛くもないのに、努力もしてないのに……。幸せそうにしているあんたが許せないだけ。イライラする、ムカつく。最初、仲良くしてあげてたのは、私のお飾りにはちょうど良いと思ったからだよ。友達だなんて思ったこと、一度もないんだから」 ただムカつくだけ? そんな理由でこんなことまで普通はする? 幸せそうって、やっと掴んだ幸せなのに。 私だって真帆ちゃんに話していないだけで、辛かったこともたくさんあるんだから。「いいから、早くヤっちゃってよ」 彼女はスマホを取り出して、こちらに向けている。 動画を撮っているんだ。「はいはい」 黙って見ていた男二人が私の自由を奪おうとする。「やめて!」 なんとか立ち上がり逃げようとしたが、相手は二人だ。 すぐ捕まってしまった。 地面に押し付けられる。 最近転んだり、酷いことをされることが多い。 神様、私はそんなに悪いことをしましたか? そうだ、きっと幸せすぎたんだ。 蓮さんみたいな人と付き合えて、幸せな時間を過ごして。  その反動かな。 こんな窮地なのに、ふとそんなことを考えてしまう。「おい、暴れんな!」「やめて!」 私なりにじたばたもがき、一生懸命抵抗をする。 簡単に言いなりになんかなりたくない。 最後まで抵抗しなきゃ。「そっち押さえろ!声を出させないように、口をふさげ」 馬乗りになられ、手と足を二人の男に押さえつけられる。 口は何か布のようなもので覆われた。「ははっ。いい気味」 真帆ちゃんがそう言いながら笑っている。「おい、洋服脱がせろ、もっと口を塞げ」 一人の男性が指示を出す。  一生懸命抵抗していたら、口に巻かれた布がズレた。 助けを呼ばなきゃ。「っ……。蓮さん、助けて!」 思わず、蓮さんの名前を呼んじゃった。 私の声なんて届くわけがないのに。「そんな都合の良いように……」 と一人が言いかけた時「すみません。遅くなりましたっ……」 聞き間違えだろうか、私の大好きな人の声がした。 走って来てくれたのだろうか、彼は息が切れている。「蓮さん……」 安心したからか涙が零れる。「おいおいおい、聞いてないぞ」 誰が来るのは思っていなかったようで、男たちは動揺している。 どうするんだと言わんばか
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彼女の思惑 6

「ぐ……」 どこかを打ったのか、痛みからか、苦しそうに声を上げている。「お前……」 蓮さんの動きを見ていた男は、予想外の展開に固まっているようだ。 蓮さん、何をしたんだろう。 蓮さんは傷一つ負っていないみたい。さっきと変わらず普通に立っている。「次、どうぞ?」  その声からわかるけど、息一つ乱れていない。「クソ!」 敵わないとわかっているみたい。そんな風に感じられたけれど。 引くこともでいないのか、もう一人の男も蓮さんに殴りかかった。 が、彼はそれを軽くかわし、男の伸びた手を一本取り、抱え、地面に身体ごと投げつけた。「う……」 地面に転がり、うめき声をあげる男。 「いくら正当防衛だとは言え、頭を打って死んでしまっては困りますから。ちゃんと綺麗に投げたつもりですけど……」 蓮さん、柔道や格闘技とかやっていたの? そんな話、聞いたことがなかったけど。プロボクサー相手に普通、すんなりと一般の人が勝てないよね。 最初に倒れた男が再び立ち上がった。「クソ、ナメてんじゃねーぞ」 唇を拭きながら、汚れた洋服をポンポンと叩いている。  男は今度は殴りかかってくるということはせず、突進をし、低い体勢から全身を使って彼を羽交い絞めにしようとした。 だけど、蓮さんは軽々と避け、彼の背中に肘打ちを入れた。「う゛ッ」 再び男は地面に倒れこんだ。 もう一人の男も立ち上がろうとしたが、諦めたらしく呆然と座り込んでいる。 向かって来ないことを確認し、蓮さんは真帆ちゃんのもとへ向かった。 蓮さんの様子を見ていた真帆ちゃんは、一歩うしろに下がる。「なによ!」 真帆ちゃんは、次は自分が何かされるのかと思ったのか半べそ状態だった。 硬直していて動けない彼女に「――?………しょうか?」 蓮さんは小声で何かを告げている。 私には最後の部分しか聞こえなかったが、蓮さんの言葉に真帆ちゃんの身体がビクっと反応したのが見えた。  真帆ちゃんはその場に座り込んでいる。 蓮さんが私のもとへ駆け寄ってくれた。「大丈夫ですか?」 いつもの優しい彼だ。「蓮さん」 思わず抱きついてしまう。 そんな私の背中を彼はポンポンと優しくあやすように叩く。「蓮さん!!」 涙が零れる。 良かった。蓮さんがケガをしなくて。 どうなるかと思った。「立
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優しすぎる彼

「束縛とか監視とかしているみたいで、アプリをいれてもらっても見ないようにしていました。今日は、緊急だったので使わせてもらいましたけど。役に立って良かったです。美桜からあの子と会うことになったと連絡があって、不安が過ぎったんですが。優菜さんからの情報がなかったら、危ないところでした。お礼を伝えておいてください」「はい」 あとで連絡しなきゃ、優菜のおかげで無事だった。 優菜の忠告をもっとしっかり聞いておけば良かった。 あんなに頭を下げて、必死で謝っているように見えても、それは嘘で。 私はあの子を信じちゃいけなかったんだ。 真帆ちゃんが私にあそこまで執着しているとは思わなかった。 人は誰にだって過ちはあるわけで。 心からの謝罪だったら受け入れなきゃいけない時もある。   私にはそれが見抜けない。しっかり人間性を学ばなきゃいけない。 こんなに蓮さんに迷惑ばかりかけて、本当にどうしようもないよ。「今日、真帆ちゃんが謝ってくれたんです。頭まで下げて。あんまり謝らない子だったから。本当に反省しているんだなって思って。信用してしまいました。ごめんなさい」 蓮さんは困ったような顔で「それが美桜の良いところですが、全ての人と分かり合えるとは思わない方がいいですよ。今日みたいに悪い人もいますからね」 よしよしと頭を撫でながら、怒らず、諭すかのように話してくれる。「何もなくて良かったです。今日のことは、とりあえず知り合いの弁護士に相談しておきます。とるべき対処も」 えっ。蓮さん、知り合いに弁護士さんもいるんだ。「はい、わかりました。すみません」 シュンとしている私に「本当に目が離せないお姫様ですね」 そう彼が呟いた。「お姫様なんかじゃないです!」 訂正を要求した私を見て彼は笑う。 私は疑問に感じていたことを彼にぶつけた。 「蓮さんって、どうしてあんなに強いんですか?」 男性二人を相手にして、その上、一人は元プロボクサーだと言っていた。 あの発言ははったりなんかじゃないと思う。 なのに、蓮さんは傷一つ負っていないし、軽く撃退した。「そうですね。あんまり良い話ではないんですが……。聞きたいですか?」「はい、聞きたいです!」 蓮さんのことだから。彼のことを知りたい。 何か護身術みたいなものを習っていたのかな。「アメリカにいた時、
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