ついに、自分の居場所を手に入れたのだ。「清夏、ありがとう」心愛は振り返ると、真剣な面持ちで感謝を口にした。「水くさいこと言わないでよ」清夏はひらひらと手を振ると、心愛の肩をぐっと抱き寄せた。「引っ越しと新しい仕事のお祝いなんだから、今夜は私がごちそうするわ!」「だめだよ」心愛は清夏の言葉を遮るように首を振った。「私が作る。私の手料理、食べてみてよ」「あら?料理なんてできたの?」清夏は目を丸くして驚いてみせた。「この辺りにスーパーがあるはずだから、一緒に食材を買いに行こう」心愛が提案し、二人はさっそく連れ立って部屋を出た。マンションのエントランスを抜けたところで、前方から見覚えのある人影が歩いてくるのに出くわした。暁である。心愛は一瞬呆気にとられ、反射的にその名を口にしていた。「加賀見さん……?」暁も彼女の姿にわずかに目を見張ったようだったが、すぐにいつもの落ち着きを取り戻し、静かに頷いた。「こんにちは、深水さん。奇遇ですね」「あ……加賀見さんもここに住んでいらっしゃるんですか?」心愛は首を傾げた。以前、彼の別荘を訪れたことがあるが、あそこからここはかなり離れているはずだ。「私も加賀見グループの人間ですから、社員寮を利用するのはごく普通のことですよ」暁はあっさりとそう答えた。彼の涼やかな視線が、二人に向けられる。「これからお出かけですか?」清夏が面白がるような視線を心愛と暁の間で往復させ、心愛を遮るようにして口を開いた。「ええ。親友が引っ越してきたばかりなので、食材を買い出しに行って、お祝いパーティーの準備をするところなんです」「買い出し、ですか」暁は少し考えるように視線を上げた。「近くのスーパーは、この時間帯はかなり混み合いますよ。ここを出て右へ曲がり、三百メートルほど歩いたところに小さな商店街があるんですが、そちらの方が食材も新鮮でおすすめです」「本当ですか?それはすごく助かります!」清夏はぱっと顔を輝かせ、ポンと手を打った。暁は二人を見やり、ごく自然な口調で提案した。「ちょうど私も買い出しに行こうと思っていたところなんです。一緒に行きませんか」清夏は隠しきれない笑みを浮かべて口角を吊り上げると、心愛の脇腹を肘でこっそりと小突いた。心愛は親友の露骨な反応に、すっかり居心
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