承也の姿を探していた美月は、ちょうど莉奈が彼の杖を蹴り飛ばす場面を目の当たりにした。美月はすぐさま付き添いを務める女性・新井識子(あらい さとこ)に車椅子を押させ、彼らのもとへ向かった。床に落ちた杖を拾い上げさせると、美月は責めるように莉奈へ言った。「奈奈、さすがにひどいわ。承也の脚は、あなたを助けようとして怪我をしたのよ。恩をあだで返すような真似をするなんて」「椎名承也は口でもきけなくなったの?」莉奈の怒りはまだくすぶっていた。そこへ美月が、わざわざ火に油を注ぎにやって来たようなものだった。美月の顔色が曇った。「今、何て言ったの?」「私が杖を蹴り飛ばしても本人は何も言わないのに、あなたが慌てて代わりに噛みついてくるから、てっきり彼が口をきけなくなったのかと思ったのよ」美月はそこでようやく自分が出しゃばりすぎたことに気づいたように、かすかに目元を赤くした。「承也、ごめんなさい。奈奈があなたにひどいことをするのを見ていられなくて、つい……」承也は杖を握り直し、感情の読めない声で言った。「わがままに育ったんだろう」「どうしたんだ?」そこへ省之介と浩平も連れ立ってやって来た。名家の御曹司たちが一堂に会したことで、周囲の招待客の視線が自然と引き寄せられた。騒ぎに気づく者はさらに増え、承也と莉奈の関係を詮索するささやき声が少しずつ広がり始める。美月はわずかに眉をひそめ、皆を促した。「もうすぐオークションが始まるわ。行きましょう」「ああ」承也たちが歩き出すのを見て、莉奈は冷ややかに笑った。尚南の腕を引き、短く告げる。「行くわよ」オークション会場は別棟にある。錦園は回遊式の庭園だ。冬の庭は彩りが乏しく、植え込みにも他の季節ほどの勢いはない。それでも昨夜の雪が残り、灯りを受けて白く浮かび上がる景色には、また別の趣があった。莉奈と尚南は、スタッフに案内されて宴会場からオークション会場へと移動した。莉奈が中へ足を踏み入れると、正面に座っていた震海と目が合った。莉奈は軽く会釈し、尚南と並んで席に着いた。琴音は莉奈の反対側に座っていた。琴音は震海のほうを一度だけちらりと見やり、すぐに視線を戻した。承也は椎名家の当主として、最前列の席を用意されていた。美月は同伴者として彼の隣に座り、その横に浩平と省之介が続く
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