ほどなくして、莉奈は壇将から返信を受け取った。【待っていろ】莉奈は椎名邸で、まず千鶴の話し相手をした。千鶴が眠ったあとは、将軍と何度かフリスビーで遊んだ。気づけば、もう午後三時を過ぎている。それでも壇将はまだ来ない。けれど莉奈は、壇将が約束を守る人だと知っていた。待っていろと言った以上、適当にごまかすような真似はしないはずだ。莉奈が将軍の頭を抱えながら陽だまりに座り、ずっと静かだったスマホを両手で見つめていると、ようやく壇将からメッセージが届いた。【出てこい】莉奈は将軍を放すと、すぐに椎名邸を飛び出した。遠くに角張った大型SUVが停まっているのが見えた。車から降りてきたのは、黒いキャップとマスクで顔を隠した、背の高い男だ。廷治が早足で二人のそばへ駆け寄ってくる。「Jさん、向井さんをどこへ連れていくつもりですか?」車のドア脇に立っていた壇将は、無言のままスマホを廷治の目の前へ差し出した。【口を出すな】圧倒的な威圧感を前に、廷治は壇将が莉奈を車に乗せるのを黙って見ているしかなかった。しかも同行さえ許されない。廷治は一人、冷たい風の中に取り残された。今、電話口から聞こえてくる廷治の泣きそうな声に、莉奈はなだめるように答えた。「もうすぐフィットネスクラブに戻るから、心配しないで」夜、壇将は莉奈を車でマンションまで送り届けた。廷治とほかのボディーガードたちも、別の車で後ろからついてきている。壇将の車が莉奈のマンションの敷地へ入ろうとした、その時だった。突然、別の方向から一台のスポーツカーが猛スピードで走ってきた。その車はエントランスの入り口を塞ぐように乱暴に停まり、進路を遮った。入り口の警備室にいた警備員が、窓から顔を出した。ぶつぶつ文句を言いながら出てこようとしたが、スポーツカーが威嚇するようにクラクションを鳴らした途端、驚いて室内に引っ込んでしまった。車の窓が下がる。そこから現れたのは、莉奈の見覚えのある顔だった。同時に、莉奈のスマホが鳴る。莉奈が画面をスワイプして電話に出ると、尚南の感情の読めない声が耳に届いた。「奈奈、車を降りてくれ。話がある」「せっかく電話してきたんだから、このまま話せばいいじゃない」莉奈は、尚南の横暴でもったいぶった態度にうんざりしていた。
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