梶本家の本邸。克樹が足を踏み入れるなり、ソファに陣取っていた来幸と彼女の両親から、射るような視線が飛んできた。「克樹さん!あのあばずれに息子を殺させておいて、今度は大っぴらに彼女を捜し回るなんて……私たちへの当てつけのつもり?」克樹は氷のような視線で彼らを一瞥し、淡々と口を開いた。「お宅の息子がなぶりものにしてきた女は百を下らない。そのうち、死んだのは何人だ?あなたたちが裏で揉み消さなければ、輝良の罪は死刑が十回あっても足りなかったはずだが。今まで生きていられただけで儲け物だろう。それに、輝良は異常性癖持ちのギャンブル狂だ。先月、マラカニアで二十億も溶かして、あなたたちが不動産を二軒売って穴埋めしたばかりじゃないか。息子の死を本当に悲しんでいるのか、それともこの機に乗じて俺から金を毟り取ろうとしているのか。どっちだ?言葉には気をつけた方がいい。さもないと……」彼はソファに深く沈み込み、疲労の色を滲ませながらも、眼光だけは鋭さを増していた。時乃の件で精神を削がれている今、彼らの相手をする気力など残っていない。「ええ、確かにあの子にも非はあったわ。でも……何があろうと私の息子なのよ」来幸の母・岡山琴子(おかやま ことこ)はしゃくり上げながら訴えた。「私には、あの子しかいなかった。たった一人の息子の命が奪われたっていうのに……あなたは来幸の婚約者でしょう?どうしてそんなに冷たいことが言えるの?」来幸の父・岡山祐次郎(おかやま ゆうじろう)も妻の袖を引き、言葉を継いだ。「これからは家族になるんだ。こんな大事が起きたんだ、我々も……」克樹はこめかみを揉み、煙草に火をつけた。深く紫煙を吸い込む。「城北区の屋敷を二軒、岡山家の名義にしてやる。岡山実業の資金繰りには丁度いいだろう。それと、そっちが抱えているプロジェクトのトラブル、あれも俺が解決してやる。……これで十分か?」岡山夫婦は顔を見合わせ、声を揃えた。「悪く思わないでくれ。私たちも気が動転していて……」その時、来幸が堪えきれずに口を挟んだ。ヒステリックな詰問だ。「克樹!それだけじゃ足りないわ。時乃の死体が見つかったら、岡山家に引き渡して!私たちの好きにさせてよ!」克樹は煙を吐き出し、冷笑した。「引き渡して、どうするつもりだ?」
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