All Chapters of 白月光は妹?私が死んでから元夫は泣いて後悔しました: Chapter 91 - Chapter 100

102 Chapters

91話 目覚め

優希はふと目を開けた。 動かない頭でぼんやりと目だけを動かして見えた白い天井と壁が、病院みたいだと思いながらゆっくり瞬きをする。 なんだか酷い夢を見ていた気がして、気分は良くない。 胸焼けしているような不快感に眉を寄せた優希は、深く深呼吸をして目を閉じた。 (なんでここにいるのかしら?) 起き抜けで動きの悪い頭では思い出せず、思わず唸ってしまった。 その時すぐ横で物音が聞こえ、優希がそちらに顔を向けると、椅子に座りながら何かの書類を見る暁春がいた。その頬には何故か湿布が貼られ、書類を持つ腕にも包帯が巻かれている。 覚えていないが、どうやら自分は病院のベッドで寝かされ、夫の暁春が見舞いに来てくれたようである。その夫も怪我をしているということは、2人で何かに巻き込まれたのかもしれない。 そう思うと優希は詰めていた息を吐き、安心した表情を浮かべた。何があったかは知らないが、2人とも命は無事だったのだから。 優希が目を覚ましたことに気づいたのか書類から目を離した暁春と目が合うと、優希は大丈夫という意味を込めて微笑みかける。 優希が体調を崩した時、暁春は大袈裟なほど心配して時間が許す限り側に付き添った。 きっと今回も心配していただろう彼が、すぐに安堵の表情を返すと思った優希の予想は、彼女を一瞥しただけでナースコールを押した暁春に裏切られた。 ナースコールを押した後も、いつものように笑いかけることをせず、無表情を向けてくる暁春に優希は困惑した。 「暁春…?」
last updateLast Updated : 2026-04-18
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92話 将生の解雇

(…本当に全部嘘だったんだ…。) 優希は服を脱ぎながらぼんやりと思った。 目が覚めてから一度も以前のように笑いかけたり心配の言葉をかけない暁春に、気を失う前の彼の言葉が真実であることを実感する。 本当にこの5年間が虚構だったのかと思うと、優希の胸に大きな穴が空いたように感じた。 (私に触れるの嫌だったんだって…。) あの時も、あの時も、あの時だって、愛しいと蕩けた目も、激しい欲を映した目も、全て優希を通して有美を見ていたのだ。 それなのに浮かれた自分のなんて滑稽なこと。 優希は人生で1番の羞恥心を感じ、壁に頭を打ち付けたくなった。 さすがにそれは抑え、唇を強く噛み締めて俯くと、白いお腹が目に入る。 (最初から望まれてない子供まで作って…本当に馬鹿だわ。) 酷い両親の元に来てしまって申し訳ないとお腹を撫でると、その手に水滴が何個も落ちてきた。 悲しくないわけがない。 愛した人も、幸せだと大切にしていた家庭も、全てが作り物だったのだから。 優希は脱いだ服を強く噛んで涙を流す。 様子を見に部屋の扉を開けた和珠は、声を殺して泣く優希に心を痛めた。 「…赤ちゃん、元気か診てもらいましょう。」 和珠は驚かさないようにそっと言い、下着姿の優希に着替えを渡す。 (そうよ、赤ちゃんは私が望んだの。) 強くあると誓ったではないかと、優希は強く涙を擦ると大きく深呼吸をして自分を落ち着かせた。 (私が産む、私の子供よ。父親なんてこの際どうでもいいのよ。) 「…大丈夫です。行きましょう。」 清潔なパジャマに着替えた優希は、和珠に強く頷くと内診台の部屋に入っていく。 その後の診察
last updateLast Updated : 2026-04-19
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94話 不倫男の考えは分からない

実は暁春の肩越しに扉の窓の外に和珠がこちらを窺っているのに優希は気づいていた。 冷静になれたのは、和珠の姿を見て独りじゃないと思えたからだ。 暁春が廊下の向こうに完全に消えるのを待ったのか、和珠は数十秒後に入ってきた。 優希は硬い表情をしている和珠に、良くないことが起きたと一気に不安が押し寄せてきた。 「和珠さん、すみません。将生のことは暁春から何も聞けなかったわ。でも安心して、おじいさんに相談してみるから。」 「その必要はありません。」 和珠の表情と同じく硬い声に、優希は戸惑いの声をあげた後、息を呑む。 「まさか…。」 最悪な結末の予感に震える優希の声に、和珠は慌てて手を振って話した。 「違います!想像してることではないんです!…ただ、それと近い状態ではあります。先ほど道に倒れていたと緊急搬送されてきました。命に別状はないですが、外傷が酷く…。意識もないので犯人は分かりません。」 「そんな…。」 優希は口を両手で押さえて顔を青くさせる。 出ていった暁春も怪我をしていたのを思い出し、もしかしたら2人は殴り合いになったのではないかと思った。 「和珠さん、私が気絶した後に何があったんですか?」 和珠は言いにくそうに目を逸らすと話し出した。 「…自宅の中でのことは佐久間先生から簡単にですが聞いてます。その後のことは、私が車で待っていると、佐久間先生が気絶した優希さんを抱えて走って来るのが見えて、急いでエンジンをかけました。」
last updateLast Updated : 2026-04-20
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93話 嘘の残像

カルテを見ていた体勢のまま優希を睨みあげる暁春は、優希の口から出た将生の名前に眉間に深い皺を刻んだ。 「あいつはお前と二度と関わらないという約束を破った。雇い主の言うことが聞けない従業員はいらない。」 鼻で笑う暁春に、優希は眉をひそめる。 それでも冷静にと言い聞かせて1番気になることを尋ねた。 「将生と連絡が取れないんだけど、何か知らない?」 「…さっき目が覚めたばかりなのにもうあいつに連絡したのか。この2日間はさぞかし良い夢を見ていたんだな。」 「…お陰様でね。」 優希は初めて暁春に皮肉った表情を向けた。 これは自分自身にも向けており、目の前で椅子に腰掛ける不遜な男の中に、無意識に愛した男の面影を探す未練たらしい自分を自虐している。 「あの男とは二度と会うな。」 「…彼をどこにやったの。」 「会わないと約束しろ。誓え。今生では二度と関わらないと、今ここで誓えば教えてやる。」 暁春の重くのしかかってくるような威圧感に背中に冷たい汗を感じながら、優希はまっすぐ暁春の目を見て頷いた。 「わかったわ。」 暁春は眉を寄せて険しい顔になる。 望み通り了承したのに何が気に入らないのかと優希も眉をひそめ「それで、将生はどこにいるの?」と聞いた。 「二度と会わないやつのことなんて知る必要無い。」 しかし帰ってきたのは無慈悲で冷淡な声で、優希は理解できずに一瞬放心する。 「約束が違うわ!将生はどこにいるの!?」 「明
last updateLast Updated : 2026-04-20
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95話 上のフロアへ

「離婚は必ずします。ただ、暁春が離婚を認めない以上長期戦になりそうなので、まずは物理的に距離を置いて子育ての環境を整えたいと思います。数年別居すれば離婚は認められるそうなので。」 暁春は仕事で留守にすることも多く、これからは有美との時間を大切にしていくだろうから、家を出るタイミングはたくさんあると予想している。 正面から言って上手くいかないことは先ほどの暁春の態度で分かったため、優希は秘密裏に動くつもりだった。 それを聞いた和珠は頷き「その意気です。」と言った。 「外国で暮らそうと思うの。この国だと、何をしても暁春に見つかってしまいそうで…。だから看護学校もまた探さないといけないわ。」 「意見を聞いたのにごめんね。」と優希が眉尻を下げて言うと、和珠は首を振る。 「選択肢が広がるのは良いことです。福祉に力を入れている国なら、子育てしながら資格勉強もしやすいかもしれません。」 和珠はそう言って優しく微笑んだ。 前向きな話は空気も明るくしてくれ、自然と優希の表情はリラックスしたものになる。 和珠は仕事中なので長居せず、その後すぐにカートを押して扉に歩いていった。 どうやら将生のことを伝えるためにわざわざ寄ってくれたようである。 優希は感謝の気持ちを和珠に伝える。 すると振り返った和珠は口元を緩くあげ、老夫人にも優希が目
last updateLast Updated : 2026-04-22
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96話 地獄の再会

「おばあさん、あなたも俺が有美ちゃんをどれだけ愛していたか知っているはずです。今も昔も、俺が愛しているのはあの子です。優希とは20年前の清算の為に結婚したにすぎません。」 「…目が曇ってると思っていたけどもう腐ってるわね。それなら今すぐゆうちゃんと離婚してその愛しい子と結婚したらいいじゃない。お門違いな憎しみを向けられたゆうちゃんが可哀想だわ。」 「離婚はしません。今離婚したら、優希は罪なんて忘れてすぐに新しい男に行くでしょう。それは許さない。一生母さんを裏切ったこと、罪から逃げたこと、そして厚かましい自分の行いを悔いればいい。」 暁春の残酷な言葉に、わかっていても優希の胸は痛み、崩れない表情の下で奥歯を噛み締める。 老夫人はイライラと息を吐くと、優希の気持ちを察しているかのように手を強く握った。 温かい手は変わらず優希を安心させるが、細く皺だらけな手は先日より明らかに小さくなったように感じ、優希は心を痛めた。 (この2日間で随分痩せたんだわ…。息子夫婦だけでなく、孫夫婦でも心配をかけてしまって…。) 「本当に理解しない男だね。お前が憎むべきは元凶の不倫カップルじゃないか。今じゃ復讐と称してそいつらと同じことをしている…。ただ単にお前が父親と同じ浮気性の男だったってだけさ。」 手の温かさとは裏腹に暁春に向けた声は突き放すようで冷たい。 しかし次の瞬間、それ以上に空気は冷たく、重くなった。 「あの男と一緒にするな。俺の心は昔からただ1人だけを求めている。」 地の底を這うような声と、関節が白く浮き出るほど強く握りしめた両手が暁春の怒りを物語り、優希は思わず老夫人の手を強く握った。 傍らの和珠も動揺したのかペンを落とす。 「ただ1人ね。そう。離婚しないなら、ゆうちゃのお腹の子は誰の産んだ子として育てるの。あの偽物を妻として公表して育てるのかい?」 「…有美ちゃんは偽物ではな
last updateLast Updated : 2026-04-23
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97話 愛人だ

「お話中失礼致します。そろそろ面会時間終了となります。」 和珠は腕時計を見ながらそう言うと、病室の扉を開けて退出を促す。 老夫人と見舞客の女性は確執がありそうだと感じた和珠は、優希も心配だが老夫人のことも心配となり、早々に帰らせようとした。 ストレスは患者の回復の大きな支障となるからだ。 それに何より、あの女性は愛人臭がする。 自分こそが男に愛されているのだと、正妻に知らしめたい自己顕示欲の強い愛人だ。 女の勘でそう思った和珠は、愛妻家は見た目だけなのかと、老夫人の夫に対して他人事ながら落胆した。 緊急搬送後すぐに病院に来た老人は、隠しきれない動揺を見せ、連日面会の時間いっぱいを老夫人の傍らに付き添っていた。 その姿が本当に老夫人のことを愛し、大切にしているように見え、和珠は素敵な夫婦だと思っていた。 苦労をかけている自分の両親、特に母親を重ねて、何十年後にはこうあっていて欲しいと願うほどだった。 真実はこんなものだったのか。 和珠は1度結婚に失敗した者として、老夫人の心境を思ってため息をつきたくなった。 「あら残念。お嫁さんにもきちんと挨拶できなかったわ。でもまぁ、また会えますから今日はお暇いたしますね。」 都はそう言うと下を向いた和珠の横を颯爽と通り向けていった。 後ろに健志も続くが、彼は何故か和珠の前で足を止める。 頭頂部に感じる不躾な視線に和珠が下を向いたまま眉を寄せていると、突然胸元の名札を掴まれた。 「佐藤和珠?いい名前だね。」 和珠はニヤついた声に鳥肌が立つも、声だけは冷静にお礼を言う
last updateLast Updated : 2026-04-24
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98話 初恋

頭の中で優希と有美の顔を思い浮かべていた和珠は、老夫人のため息混じりの言葉に思わず声が出てしまった。 内心慌てながらもポーカーフェイスは崩さず、しかしそれに気づいているのか老夫人は吹き出した。 老夫人が気にしていないようだったので、和珠は気づかれないように息を吐く。 「意外と本人たちより周りで見てる方が気づくことってあるのよ。」 老夫人は緩く微笑むと静かに言った。 「小さい時から見ていると尚更ね。」と先ほどまで暁春がいたところをぼんやりと見ている老夫人に、和珠はどう返事をするべきか考えていた。 「ああ、当時のゆうちゃんは暁春のことは弟としか見ていなかったから何も知らないわ。」 「…夫人は井竜社長の本当に愛している女性は優希さんだと仰っているのですよね。なら、なぜ井竜社長は他の女性を愛しているというのでしょうか。私は到底愛情があるようには思えません。あっても本命に似た顔立ちへの執着では?」 たしかにこの2日間、暁春はベッドに横たわる優希に付き添っていた。 初日に行った父子鑑定の結果をずっと眺めていたことを思い出す。 しかし先ほど優希の前で老夫人に話したことといい、将生から聞いた自宅内のおぞましい出来事といい、到底愛した人に対して行う所業ではないと思い、和珠はそう考えた。 「あの子の頭では本当にそう思っているからよ。」 老夫人の言葉に和珠はますます分からなくなった。 「ゆうちゃんと有美ちゃんって、2人とも父方のお婆さん似だからお顔が似てるのよ。今はお化粧や服装でタイプの違うお顔に見えるけど、子供の頃はよく似てたわ。…有美ちゃんが11歳くらいの時に、ゆうちゃんのお下がりの服を着た時があってね、その姿を暁春に見せに来たの。」 「あの時の暁春の表情は忘れられないわ。
last updateLast Updated : 2026-04-25
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99話 無意識

「驚いたけど、最初は私たちも嬉しかったわよ。やっと暁春が立ち直ったって思ったもの。ゆうちゃんって呼び出したのも、愛称としてはよくあるものだから見守ってたわ。」 甘やかす暁春に有美も遠慮なく甘え、それすらも嬉しいと甘く訴える暁春の目は、有美の前では常に愛情で蕩けていたと言う。 「…でも暁春が、たまに有美ちゃんを見ていない時があることに気づいたの。口元は笑っていて目も有美ちゃんの方を向いてるし追うけど、有美ちゃんを認識していないようなのよ。いえ、有美ちゃんの中に何かを探してるって感じかしら。ただぼんやりしてる訳じゃなくて、目は有美ちゃんの顔をなぞるようにゆっくり動いているの。普段熱く見つめている目とは全然違かったわ。」 間違い探しなどのたくさんの中から探す時に、端から端までゆっくり目を動かす感じだと言う老夫人に、和美は妙に納得した。 その後、ぼんやりと反応のない暁春に有美が怒ったことで暁春の目は有美の不機嫌そうな目に止まり、ゆっくりと焦点が合って行ったそうだ。 眉を下げて微笑んだ目は、先ほどの違和感は消え去り、いつも通りの熱いものだったと言う。 「初めてそれを見た時、無意識での行動だって知って少し胸騒ぎがしたの。でも偶然の可能性もあるから特に何も聞かなかったわ。」 和珠は咳き込んだ老夫人に、慌ててその背中をさすって水を差し出す。 「…それからも時々暁春のその違和感は感じたわ。独占したいのか、暁春は暇さえあれば常に側にいたがるし、有美ちゃんも積極的な子だったから、2人が一緒にいるところを見る人は本邸にたくさんいたんだけど、そうなると暁春のその様子に気づく人もいてね。暁春の初恋を知ってる人ばかりだから、そのうち、実は有美ちゃんを通して、ゆうちゃんにしたかったことをしているのではって言い出す人が出てきたのよ。」 「…それはこじつけでは?実際に本人に聞いたわけじゃないんですよね?」 思わず和珠は言ってしまう。 「そうね、たしかに私たちの願望がそう見せていたの
last updateLast Updated : 2026-04-26
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100話 無計画

20年前の事故は和珠も知っており、公式には発表されていないが、ネットが発達した今、井竜の長男の愛人が原因だったと暴露されている。 息子がいる身として、苦しみを耐えながら産んだ子の成長した姿が、そのような愚かな男だとしたらやるせなく思うだろう。 和珠はなんとも言えない気持ちになった。 - 優希は老夫人の顔に疲れが見えることに気づき、退出して休んでもらった方がいいかもしれないと思った。 「…暁春のこと、本当に申し訳ないわ。」 しかし優希が口を開く前に老夫人から話しかけられる。 老夫人の向こうにある大きな窓には鮮やかなオレンジ色の空が見え、射し込む夕日の光が彼女の小さな体の輪郭をぼやかしている。 その姿はとても儚く、太陽が沈むと同時に老夫人も消えてしまうのではないかと優希を不安にさせた。 優希はすぐに歩み寄り、確かめるように老夫人の手を握る。 「…おばあさんが謝ることでは無いです。彼は目的があって私に近づいた。私がそれを見抜けずに不相応な幸せを享受してしまった結果です。」 優希は老夫人がどこまで知っているのか気になった。 報道されたキス写真程度なのか、有美を家に連れ込んで来たことまでか、それとも先日の書斎での情交まで把握しているのか。 おそらくキス写真までだろうが、刺激が強いので詳細は語らないつもりだった。 「でも彼の本心を知ってしまった以上、このまま夫婦でいるのは難しいです。なにより産まれてくる子供たちをそんな環境で育てたくないです。」
last updateLast Updated : 2026-04-27
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