All Chapters of 白月光は妹?私が死んでから元夫は泣いて後悔しました: Chapter 81 - Chapter 90

102 Chapters

81話

ノックをする余裕もなく開けた扉の先にはワンピースを着た美緒がいた。 窓のカーテンをタッセルで束ねていた美緒は突然開いた扉に驚いた表情をするも、優希の顔を見ると「いらっしゃい。」と優しく微笑む。 「おば様!」 優希は美緒に駆け寄るとその手を引いた。 「おば様逃げて、お母さんの様子がおかしいの!」 パニックになった優希は上手く説明ができず、美緒は困惑の表情を浮かべる。 そこに老夫人が「どうしたの?」とやってきた。 頼れる大人が増えたことに優希は少し落ち着き、状況を説明しようと口を開いた。 しかし 「お母さんが」そう言おうとした言葉は、突然老夫人の後ろから現れた舞に驚いて喉の奥に消えた。 「こんにちは美緒さん。お久しぶりですね。」 「舞さん?」 美緒の困惑した声に返事をせず、舞は老夫人を押しのけると部屋に足を踏み入れる。 クマとうさぎが描かれた薄ピンクの壁紙、天井から吊らされた可愛らしいメリー、小さなベッドの横に置かれた棚にはオムツや粉ミルクの缶が置かれ、赤ちゃんのために用意した部屋だとわかる。 ギラギラとした目で室内を見渡した舞は、最後に美緒の膨らんだお腹に視線を止めると怪しく笑った。 「美緒さん、赤ちゃんが生まれるんですって?おめでとう。水臭いじゃない、今日知ったのよ。」 「…ありがとう。妊娠は何が起こるか分からないから、なかなか言い出せずにいたのよ。ごめんなさいね。」 舞の異様な空気に気づいたのか、美緒はその視線を遮るようにお腹に手を当てた。 その行動に舞の手がピクリと反応したのを見た優希は、暴れないようにと舞に駆け寄りさり気なく抑える。 「お母さん、家に帰ろうよ。急に来るのは迷惑だよ。」 「黙りなさい。…社長は忙しくてあまり家に帰れていなかったと思うけど、いつの間に出来た赤ちゃんなのかしら?ああ、勘違いしないでね安心してるんですよ。ほら、私社長の秘書として常に一緒だから、美緒さんよりも一緒にいる時間長くて申し訳ないなぁって思ってたの。なんか、夫婦仲もそんなに良くなかったようですし…、あら失礼。」 「私たち夫婦の事を心配してくれてありがとう。でも心配には及ばないわ。あの人はただ遊んでいるだけだって言っていたから、私の地位は揺るがないの。」 内心はどうか分からないが、美緒の口調は落ち着
last updateLast Updated : 2026-04-06
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82話 親権放棄

隆一は室内に目を走らせ状況を理解すると、顔面を蒼白にさせながら「救急車!」と声を張り上げた。 そしてすぐに倒れた老夫人に駆け寄り手首に触れると安堵の息を吐き、駆けつけたお手伝いさんたちに動かさないように指示を出す。 そして自分は走って部屋を出ていった。 呆然としていた暁春はすぐさま執事に指示を飛ばし、自分も隆一の後を追う。 走り去る前に優希に向けられた視線はとても鋭いものだった。 残された優希はショックで足が動かず、その場で立ち尽くす。 傍の舞は窓の下を凝視しながら口元に邪悪な笑みを浮かべており、優希の背筋を凍らせた。 外で救急車のサイレンが聞こえ、救急隊員が美緒と老夫人を運び出した後も優希は動けなかったが、舞は平然と近くの椅子に座ると鼻歌を歌い出す。 戻ってきた隆一はそれに顔をしかめた。 「お父さん、おば様は…?」 優希が駆け寄り尋ねると、隆一は大きくため息をつく。 「…僕が見に行った時は美緒おばさんは頭部から出血をしていて既に意識はなかった。下腹部からの出血もあったから、おそらく搬送先で緊急帝王切開になるだろう。」 出血と聞いて、優希は隆一の服に血がついていることに気づく。 優希は顔を青ざめ震える声で「…赤ちゃんは?」と聞いた。 「美緒おばさんが落下時に腹部を守る体勢を取っていたが、どのくらいの衝撃が胎児に行っているか不明だからなんとも言えないね。」 深刻な状況に優希の顔は色を無くし、体は震え出す。 美緒に伸ばした手が痺れるほどに冷たく感じて無意識にその手を握った。
last updateLast Updated : 2026-04-08
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83話 母親について行く

ずっと泣くわけにもいかず、強引に涙を止めた優希は舞を追って家を出る。 隆一にこれ以上迷惑をかけられないと思ったからだ。 そして自分に向けた隆一の失望と嫌悪感と拒絶の目を見たくないという逃避の気持ちもあった。 とぼとぼと井竜家の門のところに来ると、玄関の方で舞が騒いでいるのが聞こえた。 「ちょっとなんでよ!彼は井竜社長よ!?彼がいなくなったら会社はどうするのよ!」 どうやら老人が帰宅し、若奥様になると意気揚々とやってきた舞を門前払いしているようだ。 優希は急いで門の柱に隠れる。 門から玄関までは距離があるので老人の言葉は聞き取れないが、喚く舞の声は響いた。 玄関に立つ老人は冷徹な視線を舞に向けると口を開き、何かを話す。 「~っ若奥様はどうするの!?跡継ぎも若奥様もいないなんて、天下の井竜様の面子が立たないんじゃない?」 「若奥様は美緒であることは変わらん。暁春が大人になって結婚したら、その相手が次の若奥様で、美緒は奥様になる。少なくともお前では無い。暁春が継ぐまではまた儂が社長に就くから会社も大丈夫だ。」 地団駄を踏む舞に老人は少し苛立ったように声を張り上げた。 舞はなおも諦めず喚く。 「桃子ちゃんを呼んで!あの子私に言ったのよ!美緒を排除出来たら私が若奥様だって!隆一と離婚したのに、若奥様にもなれなかったらどうするのよ!!」 「知らん。お前たちの真実の愛があれば若奥様の地位などなくても幸せというものだ。あのクズは今ゴールデンホテルで待機させている。生前分与と退職金としてまとまった金を渡しているから、あとは愛し合うもの同士好きにしろ。」 老人はそう言うと勢いよく扉を閉めた。 舞は汚い言葉を吐き捨てると振り向いて優希の方に歩いて来る。 「ちょっと桃子ちゃん!?どういうことよ!家に入れてもらえないんだけど!」
last updateLast Updated : 2026-04-09
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84話 その後

翌日には井竜財閥が美緒の件を公式に発表した。 社長の愛人関係とはさすがに公表出来ず不慮の事故とされ、同時に英二も体調不良により休職となることも発表された。 「親父は今頭に血が上っているだけだ。もう歳も歳だから、暁春が後を継ぐ前に体が限界になるだろうな。落ち着いたらそれに気づいて俺を呼び寄せるさ。」 英二はニュースを見ながら楽観的に言い、勘当を真剣に受け止めていないようだった。 英二はもちろん、舞も秘書として同行している時の映像から顔が割れており、このまま国内で生活するのは周りの反応が煩わしいと英二が嫌がったため、すぐに国外に移住することになった。 「これからは家族としてよろしくね。」 空港に向かうタクシーの中、英二は優希にそう笑いかけた。 密かに睨みつけてくる舞の目と笑いかける英二の目が怖く、優希は俯き僅かに頷いた。 垂れた髪が2人の視線を遮ると安心することに気づき、それ以降優希はずっと俯いていた。 英二が決めた移住先は世界でもトップクラスに物価が高い国だった。 しかし貧富の差が激しく、煌びやかな大通りを1本逸れると孤児や薬物中毒者、ギャングなどの巣窟で、毎日誰かが道で倒れている。 英二たちはだいぶまとまった金額を貰ったようで、一等地の一軒家を買い、毎日外食をし、働かずカジノに通った。 2人はその国の言葉を話せたが優希は日常会話も不慣れだったため、学校には行かずに豪邸でひっそりと過ごしていた。 隆一が一括で払った優希の養育費など、本来の目的で使われなかったのだ。
last updateLast Updated : 2026-04-10
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86話 国際電話

道端で公衆電話を見つけ、早る気持ちで駆け寄った。 時差についてはこの時の優希の頭にはなかった。 緊張で震える手はなかなか言うことを聞かないが、なんとかカードを入れ、自宅の番号を押すと単調なコール音が鳴り出す。 (誰が出るかな…。お父さんかな、お手伝いさんかな…。話、聞いてくれるかな…。) しかしコール音の回数が増えていくにつれ、期待はだんだんと不安に変わっていく。 「……はい。」 留守なのかと電話を切ろうとした時、隆一の掠れた声が聞こえ心臓が跳ね上がった。 久しぶりに聞いた隆一の声に優希は恋しさで声を詰まらせる。 目は涙でかすみ、鼻が詰まり、喉からは嗚咽が漏れる。 「…どちら様ですか?」 訝しむ隆一の声に優希は焦って呼びかけた。 「お、お父さ…。」 「…優希?」 痙攣する喉に邪魔されきちんと呼べなかったものの、隆一は優希に気づいた。 嬉しさに優希は何度も頷く。 「お、とうさん…、私…。」 視界を覆う涙を拭いながら、優希は声を絞り出した。 ちゃんと話したい、と優希が呼吸を整えていると、電話の向こうで声が聞こえてきた。 「おじ…お父さん?」優希よりも幼いであろうその声は、優希の父を「お父さん」と呼んだ。 「ああ、起きちゃった
last updateLast Updated : 2026-04-12
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87話 都

(どこかで見たことあるような…。) 誰かに似ていると思ったが思い出せずに悶々とする優希の元に女性職員が来た。 優希は安心して無意識に女性職員に寄っていく。 「あら、あなたどこかで見たことあると思ったら、三滝家のお嬢さんね。」 背中にかけられた都の声に優希の体が固まる。 「国を出てたのね。英断だわ。今じゃ国中が井竜若奥様の転落事故の真相を知っているもの。」 ゆっくり振り向いて都を見ると、楽しそうに細められた目にははっきりと悪意が込められている。 覚えのない人から突然向けられた悪意に優希は戸惑う。 この国に来た経緯を優希は誰にも言っていなかった。 もはやこの孤児院しか居場所のない優希は、母親が愛人で、あろうことか嫉妬から身重の正妻を突き落としたこと、そしてその原因は優希自身にもあるということを知られたくなかった。 身勝手だとしても、子供だった優希はこの居場所に縋るしか無かったのだ。 「優希ちゃん、お知り合い?」 女性職員は無邪気に尋ねる。 「まぁ、若奥様は植物状態だって診断されて、坊ちゃんもお嬢様も寂しい思いをしてるのに、あなたはこんな所で呑気に暮らしてるの?なんて薄情な人。そこのお姉さん、気をつけた方がいいわよ。この子自分を可愛がってくれた妊婦を母親と一緒になって突き落としたんだから。」 都の大きな声はよく響き、それまで賑やかだった部屋が静まり返る。 優希は知られてしまったという思いと、初めて知った美緒のその後に顔色を無くした
last updateLast Updated : 2026-04-13
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89話

本を読む姿に惹かれて思わず立ち止まると、向こうも優希を見てきた。 話しかけられると胸は高鳴り、全身の血を沸き上がらせる。数年ぶりに生を感じた優希は将生を拒絶することができなかった。 しかし将生の周りは温かくて居心地が良かったが、その分襲ってくる罪悪感は苦しくて辛く、耐えきれずに将生にそれを吐露してしまう。 すると突然優希は抱きしめられた。 服越しにじんわりと伝わってくる将生の体温と清潔な匂い。 背中に回された腕は強く、くっついた胸から心臓の鼓動が分かるほどだった。 優希が最後に抱きしめられたのは12歳の誕生日の3日前、本邸のリビングで美緒と老夫人と泣きながら抱きしめあった時だ。 舞は優しく抱きしめるどころか痛めつけ、英二に至っては優希がそのような接触を望んでいなかった。 孤児院では人と関わらず、抱き合うような仲の人もいない。 実に4年ぶりの人との触れ合いに、孤独感が満たされるのを感じた優希は泣きながら将生にしがみついた。 ハグは幸せホルモンを分泌させると言うが、おそらくこの時の優希は、脳が処理しきれないほど大量の幸せホルモンが出ていただろう。 将生との交際は、暗いベールで覆われていた優希の人生を春の陽だまりのような色鮮やかで温かいものに変える。 当初は幸福に浸かることの後ろめたさに苦しくなることもあったが、将生の優しさや老夫人の継続的な励ましのおかげで徐々に前向きになることができた。 まっすぐ目を見て話せるようになり。自然に笑顔が浮かび、自分からキスやハグや、時にはその先を強請れるほどに将生に心を許して行った。 罪意識から避けていた感情を素直に受け取れるようになると、呼吸がしやすくなり暗い表情も明るく豊かになっていく。
last updateLast Updated : 2026-04-16
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90話 そして

可哀想と言いながら都の目は笑っており、優希は気分が悪くなる。 「娘のように可愛がっていた子は愛人と一緒に夫を奪い、あまつさえ自分を突き落とすんだもの。しかもそれを悔いるどころか逃亡先で彼氏を作って毎日イチャイチャと…。私だったら許せないわぁ。だって今この瞬間も、若奥様は何も見れず、喋れず、もちろん動けず…。食事は直接胃に送られ、オムツを履かされて。何のために生きているのかしら…。殺されたも同然よね。」 だんだん青ざめる優希に口元を優雅にあげた都は、カップに手を伸ばした。 偶然なのか意図的なのか、その手はカップを掠め、飛んだカップから優希の服にコーヒーがかかる。 「あら失礼。でもあなたはその方がお似合いよ。覚えておきなさい、罪深い人間は醜くいから笑うことは許されないのよ。醜いあなたの笑顔は若奥様も不快になるわ。そして彼もね。彼はあなたの外見が好きなのかもしれないけど、恩知らずで厚かましい内側を知っても変わらずに側にいてくれるかしら。」 優希は、都が意図的に優希の罪悪感と不安感を煽ろうとしているのは気づいたが、しかしもともと根深い美緒に対する罪悪感をおことは出来なかった。 脳裏に浮かぶのは隆一の失望の目と孤児院の女性職員の拒絶の目。 そして美緒の驚愕と恐怖の目。 落ち着けと自分に言い聞かせても心臓はどんどん激しくなり、手足は冷たくなる。 都は脂汗を浮かべて息苦しく肩で息をする優希を鼻で笑うと、立ち上がって去っていく。 去り際に肩がぶつかったことで優希の体がふらつくも、見向きもしなかった。 感覚のない足で何とか階段を登り、玄関に入った瞬間、優希はその場で崩れ落ちる。 将生と老夫人によって影を潜
last updateLast Updated : 2026-04-17
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