ノックをする余裕もなく開けた扉の先にはワンピースを着た美緒がいた。 窓のカーテンをタッセルで束ねていた美緒は突然開いた扉に驚いた表情をするも、優希の顔を見ると「いらっしゃい。」と優しく微笑む。 「おば様!」 優希は美緒に駆け寄るとその手を引いた。 「おば様逃げて、お母さんの様子がおかしいの!」 パニックになった優希は上手く説明ができず、美緒は困惑の表情を浮かべる。 そこに老夫人が「どうしたの?」とやってきた。 頼れる大人が増えたことに優希は少し落ち着き、状況を説明しようと口を開いた。 しかし 「お母さんが」そう言おうとした言葉は、突然老夫人の後ろから現れた舞に驚いて喉の奥に消えた。 「こんにちは美緒さん。お久しぶりですね。」 「舞さん?」 美緒の困惑した声に返事をせず、舞は老夫人を押しのけると部屋に足を踏み入れる。 クマとうさぎが描かれた薄ピンクの壁紙、天井から吊らされた可愛らしいメリー、小さなベッドの横に置かれた棚にはオムツや粉ミルクの缶が置かれ、赤ちゃんのために用意した部屋だとわかる。 ギラギラとした目で室内を見渡した舞は、最後に美緒の膨らんだお腹に視線を止めると怪しく笑った。 「美緒さん、赤ちゃんが生まれるんですって?おめでとう。水臭いじゃない、今日知ったのよ。」 「…ありがとう。妊娠は何が起こるか分からないから、なかなか言い出せずにいたのよ。ごめんなさいね。」 舞の異様な空気に気づいたのか、美緒はその視線を遮るようにお腹に手を当てた。 その行動に舞の手がピクリと反応したのを見た優希は、暴れないようにと舞に駆け寄りさり気なく抑える。 「お母さん、家に帰ろうよ。急に来るのは迷惑だよ。」 「黙りなさい。…社長は忙しくてあまり家に帰れていなかったと思うけど、いつの間に出来た赤ちゃんなのかしら?ああ、勘違いしないでね安心してるんですよ。ほら、私社長の秘書として常に一緒だから、美緒さんよりも一緒にいる時間長くて申し訳ないなぁって思ってたの。なんか、夫婦仲もそんなに良くなかったようですし…、あら失礼。」 「私たち夫婦の事を心配してくれてありがとう。でも心配には及ばないわ。あの人はただ遊んでいるだけだって言っていたから、私の地位は揺るがないの。」 内心はどうか分からないが、美緒の口調は落ち着
Last Updated : 2026-04-06 Read more