เข้าสู่ระบบ洗面所に駆け込んだ暁春は髭を剃り、念入りにシャワーを浴びる。
髪を切りに行く時間も惜しく、伸びた髪は軽くまとめて結ぶ。ふと洗面台の鏡に写る自分の姿が目に止まった。頬が痩け、窪んだ目。筋肉が落ちて二回り細くなった腕。浮いた肋骨。(これでは驚かせてしまう)見窄らしさを通り越して痛々しい自分の姿に、暁春は眉をひそめた。急いで服を着てキッチンへ向かうと、冷蔵庫の中の食べ物を適当に取って食べ出す。しかし久しぶりの食事を胃が受け付けず、すぐにトイレに駆け込んで吐き戻してしまう。それでも強引に胃に収めた。その後何とかお皿一つ分を平らげ、車の鍵を手にする。暁春が家の外に出るのは実に一年ぶりだった。長い間家に引きこもっていた体は、春の柔らかい陽光すら刺激に感じ、眩しさに目を細める。これから確認することは、彼らの死の再確認になるかもしれない。だが暁春は希望を持っていた。優希には、それなりに長く交際した男がいたことがわかった。 それが佐久間将生。 やはりその男も、優希が好む穏やかで優しいタイプだった。 彼女は相当その男に心を許していたというから、それを知った時の衝撃は凄まじかった。 なぜ。 約束したじゃないか。 嘘つき。 自分は有美との結婚を考えていたことを棚に上げ、その言葉が頭の中で次々浮かんだ。 (俺を見ないのなら、他の男も見させない) そう、暁春が優希に語ったような、母のためという大義が本当の動機ではない。 優希を自分の傍に縛りつけようとした根底にあったのは、彼の嫉妬心と独占欲だったのだ。 そこからは、裏切られたような身勝手な怒りに突き動かされ、どうしたら優希を自分の傍に置いておけるか、どうしたら彼女に後悔させられるかを考えた。 きっとそれを計画していた時の暁春の顔は、醜く歪んでいただろう。 最終的に色恋を利用する方法にしたのは、それが優希には一番効くと思ったからだ。 そして優希は暁春に捕まった。 彼女に好かれるための振る舞いは馬鹿らしく、時には腹立たしくさえあった。 それなのに、優希と一緒に過ごす時間そのものは心地良いものだった。 有美を愛しているはずなのに、と不安になれば、自分の愛を確かめるように有美を抱き、その都度体だけが満たされた。 そしてあの最悪な夜、優希の肩を抱く将生を見た瞬間、再び強い怒りが込み上げてきた。 それは優希が言った離婚の言葉で、さらに激しくなった。 (俺は馬鹿だ。答えに気づいていたのに、気づかないフリをした) だから、大切なものが全て手から零れ落ちてしまったのだ。 優希たちの車が走り去っ
暁春の一番古い記憶を遡った時、優希はすでに彼の日常にいた。ほぼ毎日遊びに来ては、美緒にくっついて甘え、老夫人には絵本をせがむ優希。おませな少女らしく、暁春の世話も率先してやりたがった。そして暁春もまた、温かく甘い匂いがする彼女に懐き、よくそばにくっついていた。彼女を間近で見ていたからこそ、暁春はその瞳がとても綺麗なことも知っていた。普段は黒く見えるその瞳も、光が差し込むと少し違って見えるのだ。まだ小さかった暁春に目線を合わせるため、優希はよくしゃがみ込んで彼の顔を覗き込んでいた。そうして光に照らされた瞳には、瞳孔を囲むように細い筋が浮かび上がり、それが幼い暁春には小さなひまわりのように見えた。光を受けて輝くその瞳を見ながら「宝石みたい」とそんなことを言った記憶もある。「よく遊びに来る近所のお姉さん」への意識が変わったのは、優希が小学校に上がってしばらく経った頃。その頃、優希はクラスの男の子に好きな子ができたと言ってきた。優しい子で、休み時間には静かに席で本を読んでいるような子なのだそうだ。「他の男子みたいに意地悪じゃないし、頭もいいの!喋り方も笑った顔も優しくて、なんかお日様みたいなの!」優希は目を輝かせ、頬を染めながらそう言った。それを聞いた時、暁春が第一に思ったのは(僕と違うタイプじゃないか)だった。暁春は同世代と比較しても落ち着いており、あまり笑わない子供だった。だから子供ながらに、優希が好きな男子のような温かいタイプとは正反対だと理解した。自分が一番長く一緒にいるのに、なぜ自分以外に心を奪われてしまうのか。その綺麗な目を他の人に見せないで。だから一度「僕が大人になるまで、他の人を見ないで」と言ったのだ。その時の優希はきょとんとした顔をした後、笑って了承した。そしてその独占欲は、優希が去った後に最悪な形で悪化した。優希がいなくなって数年後。その日は桜と一緒に庭で遊んでいた。傍らには
その余裕のある口調が、年上の将生に軽くあしらわれているように感じ、暁春の苛立ちはさらに強くなる。「……この学校に投資してやる。だがお前を解雇することが条件だ」「暁春!」「そして優希。お前は俺と一緒に国に帰るんだ。どうしても働きたいなら、井竜グループの受付でも秘書でも手配してやる。だが医療業界は駄目だ。もちろん子供たちも一緒にだ」「どうしてあなたに決められなきゃいけないの!?あなたと一緒に子育てなんて無理よ!私は絶対に帰らない!」暁春の言葉に優希が眉を釣り上げた。しかし将生はそれを手で遮り、暁春を真っ直ぐに見据える。「…あなたは何も変わっていない。そんなんじゃ、欲しいものは何も手に入らないでしょう」暁春の心の底を見透かすような目は、僅かに彼を動揺させた。しかしすぐに持ち直すと、鼻で笑う。握りしめた両手が小さく震えているのは気のせいだろう。「欲しいもの?俺は陽を返してほしい。わかるか?これは立派な誘拐だ。出るところが出れば、お前たちは仲良く牢屋行きだ。それはあの女の子にとっていいことか?」少し違う。本当はあの女の子も一緒に育てたい。陽と双子ということにしているのなら、あの子も同じくらいの年齢のはずだ。そして、あの優希によく似た顔。年齢から見ても、あの時優希が妊娠していた子供だろう。ならば暁春の子供で間違いない。だがもっと欲しいのは…暁春は優希に視線を移し「戻ってくるなら、今回の偽装は不問にしてやる」と言った。「嫌よ。私は帰らない」しかし優希ははっきりとそう言った。暁春を見る目に迷いはない。優希はそれだけを言うと、一瞬気押された暁春を睨みつけ、託児所に入っていく。そしてすぐに二人の子供を連れて出てくると、暁春に一瞥もくれずに足早に去っていった。「……彼女を愛しているなら、これ以上苦しめないで欲しい」
「……医者?」俺は医者ではない。思わず聞き返す暁春に、校長はにこやかに頷き、暁春の背後に目を動かした。「あ、あの先生が双子のお父さんですよ。まぁ、本当の父親じゃないらしいですが、三滝さんとは古い知り合いらしくて、仲もいいようですし、いつかはそうなるのでは、なんて密かに期待しているんですよー」他意などなく本当に楽しみなのだろう、人の良い顔で笑う校長は、そのまま手を振った。暁春の手が小さく痙攣する。優希に自分以外の夫。そして自分の子供が、他の男を父と呼ぶ。悪夢より最悪な事態に、息が苦しくなる。「またその話をしているんですか?僕たちはそんな関係じゃありませんよ」そして背後から聞こえた聞き覚えのある声に、心臓が一瞬止まった。困ったように笑う声は、低く優しい。優希の周りで、そんな柔らかい空気を持つ人物は限られている。隆一と……。 「でも三滝さんも、あなたには随分気を許しているじゃないですか。」「彼女にとって、僕は気兼ねなく頼れる友人なんですよ。誰だって頼られて悪い気はしませんよね」暁春はゆっくりと後ろを振り返る。薄々予想していた通り、そこには優希の元交際相手である男、将生が苦笑いを浮かべて立っていた。「貴様……」思わず出た言葉に、将生も暁春に視線を向けた。そして驚愕の顔で固まる。「あなたは…」「なぜお前がここにいる?」呆然と呟く将生を遮り、暁春は噛み付くように言った。優希のそばに、なぜお前がいる。それが一番強く湧き上がる思いだった。「あの…二人はお知り合いですか?」決して和やかではない二人の空気に、校長は戸惑いの声を出す。「……前にいた病院の経営者です」将生の声には明らかな警戒が滲んでいる。そして無事を確認する
そして数時間のフライトを終え、あのパンフレットの学校がある国にやってきた。空港を出ると、早々にパンフレットの学校に向かうべく、タクシーに乗り込む。流れる街の景色を見ていると、親子連れが多く目に入る。その中でも、一人で子供を連れている母親たちを無意識に目で追ってしまう。この国は福祉制度に力を入れており、特に母子家庭では手厚い支援が受けられるのだそうだ。(…俺が離婚を拒否したから、ここに来たんだな)暁春は優希が死を偽装した理由を何となく理解している。彼女は「あの夜」すでに暁春と離婚をしたがっていた。しかし暁春が離婚を拒否したために、国内で死を偽装して姿を消すしかなかったのだろう。(俺と離れるために…)その事実に、胸の奥を強く抉られるような痛みを覚えた。学校には、資金援助の件で視察に訪れることは前もって伝えていた。そのため暁春が身分証明書を見せると、問題なく学校内に入れた。校内を歩きながら、校長が学校の説明をしているが、暁春は自分の姿が変ではないかが気になってしょうがない。優希と会うのだから、少しでも良く見せたいのだ。「…少し休憩しましょうか?」暁春が遅れ始めたことに気づいた校長は気遣うように言った。しかし暁春は早く優希の姿を見たかったため、首を振る。「いや、大丈夫だ。それより、実習も手厚くしていると聞いた。その現場を見たいのだが」息が切れて話すのも苦しいが、それを悟られぬよう、拳を握る。「こちらへ」とにこやかに案内された病院は、学校と同じ敷地内にあった。この街で一番大きな病院らしく、とても立派な建物だった。「学生は各科をローテーションして実習を行なっています。」「この国は社会人の看護資格取得も支援していると聞いた。実際、社会人から入学した学生は何人くらいいる?」あくまでも視察なのだから、聞くべきことはきちんと聞く。しかしその中に私欲も含まれていた。
洗面所に駆け込んだ暁春は髭を剃り、念入りにシャワーを浴びる。髪を切りに行く時間も惜しく、伸びた髪は軽くまとめて結ぶ。ふと洗面台の鏡に写る自分の姿が目に止まった。頬が痩け、窪んだ目。筋肉が落ちて二回り細くなった腕。浮いた肋骨。(これでは驚かせてしまう)見窄らしさを通り越して痛々しい自分の姿に、暁春は眉をひそめた。急いで服を着てキッチンへ向かうと、冷蔵庫の中の食べ物を適当に取って食べ出す。しかし久しぶりの食事を胃が受け付けず、すぐにトイレに駆け込んで吐き戻してしまう。それでも強引に胃に収めた。その後何とかお皿一つ分を平らげ、車の鍵を手にする。暁春が家の外に出るのは実に一年ぶりだった。長い間家に引きこもっていた体は、春の柔らかい陽光すら刺激に感じ、眩しさに目を細める。これから確認することは、彼らの死の再確認になるかもしれない。だが暁春は希望を持っていた。(俺が見間違うはずがない…)だって……。暁春は頭を振る。その先を認めるのはまだ怖かった。暁春は自ら病院の検査担当に骨壷を渡し、その足で空港に向かった。そして空港のVIPフロアの中で、できるだけ見栄えが良くなる服を揃える。以前は何も考えずに選んだ服も彼の体に映え、着こなせていた。しかし先ほど行ったブティックでは、何を着ても服に着られて見え、店員の取り繕いきれていない愛想笑いが彼を惨めにさせた。久しぶりの行動は激しい運動をした時のように暁春の体力を削り、疲れを感じた暁春はラウンジの椅子に座る。「暁春?」その時、聞き覚えのある声が耳に届き、暁春は眉をひそめた。少し離れたところで、有美が驚愕した表情で暁春を見ている。「…何の用だ」「……今から旅行に行くのよ。それよりどうしたの?その姿」有美は追い出された後、宣言通り何度かあの家に押しか