健吾はわざわざ温かいミルクを買ってきてくれたのに、塾に通うことすら教えてくれなかった。彼にとって、自分は本当に友達なのだろうか?健吾は眉間にしわを寄せ、「先生に言って早退しろ。送っていく」と言った。そう言って彼が立ち上がろうとしたので、綾はとっさに腕を掴んだ。「ううん、大丈夫だから」手のひら越しに、少年のたくましく温かい腕と、トクトクと脈打つ鼓動が伝わってきた。感電したように手を引っ込めると、頬が熱くなった。「本当に平気」健吾は疑うような目を向けたが、綾はしっかりと頷いた。健吾は椅子を引いて座り直すと、「うなずくべき時にうなずかないくせに、変なとこで意地張るなよ」とからかった。綾は何も言い返せず、温かいミルクをお腹に当てた。少し痛みが和らいだ気がした。ちょうど授業のチャイムが鳴った。ミルクのおかげもあって、2限目の授業にはとても集中できた。午前中の授業が終わり、教室から人がパラパラと出ていく。健吾は本を閉じ、ペットボトルと空の紙パックを持って立ち上がると、そのまま後ろのドアへ向かった。綾は「お昼、一緒に食べる?」と聞こうとしたが、声をかける前に彼は行ってしまった。鼻の奥がツンとして、急に食欲がなくなってしまった。その時、背の高い男子生徒が彼女の机をトントンと叩いた。「綾ちゃん、久しぶり」数秒見つめて、綾はようやく中学の同級生の服部耕一(はっとり こういち)だと気づいた。中学の頃はチビだったのに、たった2年ですっかり背が伸びていた。彼女は笑顔で挨拶した。「久しぶり、服部くん」耕一は嬉しそうに誘ってきた。「奇遇だね。一緒に昼飯どう?この近くにすごく美味しいお店があるんだ」綾は思わずつばを飲み込んだ。美味しそうな話を聞いて、食欲が戻ってきた。返事をする間もなく、耕一は続けた。「行こうよ。昔話もしようぜ。そういえば、明里ちゃんは来てないの?」彼は脇に身を引いて、綾に先に通るよう合図した。中学の頃、耕一は明里に片思いしていた。秘密のつもりだったのだろうが、綾を含め周囲はみんな知っていた。綾も断りづらく、自然な流れで彼と一緒に教室を出た。共通の話題である明里の話で盛り上がりながら歩き出す。綾は振り返らなかった。だから、ゴミを捨てて後ろのドアから戻ってきた健吾が、入り口で立ち止
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