1時間ほどぶっ続けで体を動かし、ようやく先生から「その場で小休止」の合図が出された。綾はその場にぺたんとへたり込んだものの、思っていた以上に地面が冷たくて硬かったのか、ひんやりとした感覚に驚いて慌てて飛び起きた。スポーツボトルを両手で抱え、喉を鳴らして勢いよく水を流し込んだが、どうにも物足りない。ただの水ではなく、何か味のついたすっきりしたものが無性に飲みたくなった。同じユニットの子たちが汗を拭いながら寄ってきて、「ねえ、あっちの仕切ってる先輩スタッフ、イケメンじゃない?」「でも、向こうの先生はめちゃくちゃ厳しくて怖そう」などと、指導員たちの品定めをして盛り上がり始めた。綾は横を向いて聞き耳を立て、視界の隅で健吾がコーヒーの袋を下げてこちらに向かって歩いてくるのに気づいた。彼女は口に水を含んだままルームメイトの話を聞いているふりをした。だが、意識はすっかり健吾に向いていた。健吾が牧子にコーヒーを手渡すのを見届けてから、綾はやっと口の中の水を飲み込んだ。そして、心も一緒に底へと沈んでいった。体の汗がまるで酢の汁のようになって、全身がその中に浸かっているみたいだった。胸がひりひりと痛む。この感情を抱く自分がひどく恥ずかしかった。綾には、健吾の行動に対して何か思う権利などなかったからだ。気を紛らわせるため、彼女は教官の話題に加わった。「ねえ、隣のグループを仕切ってる先輩、結構カッコよくない?背も高くてスタイルいいし、綺麗な小麦色に焼けてて」同じユニットの子が興味津々に身を乗り出した。「小麦色の肌が好きですか?」綾は頷いた。「うん、小麦色の肌の方が男らしくていいですよね」もちろん、それはその場のノリに合わせた適当な相槌にすぎない。生まれてこの方恋愛などしたこともない彼女に、本当の「男らしさ」など分かるはずもなかった。そもそも彼女の周りにいる男性といえば、誠や湊に、それから健吾と、揃いも揃って肌の白い美形ばかりだ。だからこそ、絵に描いたような小麦肌の男性がやけに新鮮に映り、昔読んだ恋愛小説のヒーローを無意識に重ねてしまっていただけだった。差し入れのコーヒーを手に歩み寄ってきた健吾は、その台詞をよりによって一言一句聞き届けてしまい、その表情を小麦肌どころか文字通り真っ黒に曇らせた。彼は手元のコーヒーに目を落とし、そ
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