そういう時、隅のほうで固まってしまうなみたを見ると本当に不憫で申し訳ない気持ちになるのだが、父親のいる生家に預けて常に針のむしろの上に居るような思いをさえることを思えばそんなもの比にならないだろう。 傍目に見ても仲の良い兄弟である竜太郎となみた。その兄が、自分が仕事中に弟を預ける場所として選んだのがこの託児所なのだ。「すんませ~ん。なみた連れてきましたぁ~」「おはよ、ござまーす」 案の定、一番乗りはこの兄弟であった。 ガラガラと扉が開いて長身の青年が姿を現す。恐らく、玉郎と並んでも引けをとらないと思われる大柄な兄の手をちょこんと握っているのは、ここの常連なみただ。 ふわふわとした柔らかい髪と、丸く大きな瞳。竜太郎の切れ長の鋭い目つきとはずいぶん印象が違う。きっと母親似なのだろう。 なみた、今日は兄の手を握るのとは反対側の手で、茶色いものが入った小瓶を抱えていた。「なみた君、おはよう。今日も一番乗りだね~」 にっこり笑ってなみたを出迎える帝太郎に、竜太郎が頭を下げる。「いつもいつも早くからすんません。五時までには迎えに来ますんで」 店の準備の都合上、誰よりも早くなみたを連れて来る竜太郎であったが、その代わり弟を迎えに来るのもいつも一番早い。なみたに関して言えば、お迎えが遅れて泣きべそをかいた、なんてことはまだ一度もなかった。「気にしないで下さい」 そんな竜太郎に、のほほんとした柔和な笑顔で帝太郎が応える。 竜太郎がここを弟の託児場所として選んだのは、ひとえに優しそうなこのオーナーの人柄にあった。どんなに朝早く預けに来てもにっこり笑ってなみたを抱きしめてくれる。こんな先生のいる託児所なら大事な弟を預けても大丈夫だろう。そう思ったのだ。 事実、毎日楽しそうにその日起こった出来事を語るなみたを見ていると、その選択が誤りではなかったことが分かる。「じゃあな、なみ。兄ちゃん、帰るからな。五時には迎えに来るからそれまで先生たちに迷惑かけねぇで良い子にしてるんだぞ?」「あい!」 大きく手を挙げて返事をする弟の頭をぐしゃ
Read more