All Chapters of 殺し屋は愛に復讐を誓う。: Chapter 71 - Chapter 80

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■71

「……朱里、怒鳴って済まない。 でも、今はお前の身体を一番に考えるべきだ。何かあってからじゃ、遅いだろ」私は溢れた涙を拭えなくて、ただ下を向くことしか出来ない。「朱里、お前はもう、この仕事を引退しなさい。……お前には、やはり危険すぎる。 身体にも、負担がかかるし」「ボス……ごめん、なさい……ごめんなさい……」そんな私を優しく抱きしめてくれるボスに、私は涙が止まらなかった。「朱里……俺はお前が心配なんだ。お前がボロボロになってまで、あの男に復讐をしようとするんじゃないかって、心配なんだよ。……お前をこの世界に入れてしまったことを、俺は後悔しているよ」「っ……え……?」「お前が自分の身体を武器にしていることで、いつかこんなことになってしまうのではないかと……心配していた。 だが、俺の心配は的中した。だからその時俺は、お前をこの世界から引き離すことを決めていた。……こうなるずっとずっと前からだ」知らなかった。……ボスがそんなことを思ってくれているなんて、全然知らなかった。知らなかったからこそ、私はダメなんだと思った。「ボス……私……。私はっ……」「朱里、これからは普通の人間として、普通に生きるんだ」「普通に……生きる……?」ボスは私の手を優しく握りしめ「お前はまだ若い。まだいくらでも、やり直しがきく。……だから、お腹の子を幸せにすることだけを考えなさい」と言って、私の頭を撫でてくれる。「そんな……。そんなの、イヤです……」「朱里、お前は俺の大切な家族だ。 大切な家族を守るのも、俺の役目なんだ」「だって……私の居場所は、ここしかないんです。私は、ボスのために働くことが、生き甲斐なんですよ……?」「……頼む。分かってくれ、朱里」 「ボス……」そんなの、絶対にイヤだよ……。その時だったーーー。「おい。ボス、今の話はどういうことだ」ハルキが私たちのいる部屋に入ってきて、そう言った。「ハルキ……!?」「……お前、まさか聞いていたのか」 やばい。今の話、どこまで聞かれちゃったかな……?「朱里……お前、妊娠してるのか?」ハルキは私に視線を向けてそう聞いてくる。「……そうなんだな」そんなハルキに、私は「ごめん。雅人には……言わないで」と伝えたが、ハルキは「朱里、お腹の子の父親って……まさかボスか?」と聞いてくる。「え……?」
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□72

「ボス……アンタ、朱里になんてことを! 何が報酬だよ、ふざけんなよっ!」ハルキがボスの言葉に怒りを顕らにして、ボスの胸ぐらを掴む。「ボス、やめてください!  ハルキ、本当に違うの!私か悪いの……。全部、私が悪いの!」だからお願い……もうやめて……。「朱里、お前……なんで庇うんだよ」「……違うの、本当に違うの。お腹の子の父親は、ボスじゃない。 だからお願い……その手を離して、お願い……っ」ハルキは私がそう言った後、掴んでいたその手を離した。「……朱里、なぜ俺を庇おうとした」ボスは私にそう言ってくる。「だって……ボスが悪者になろうとしたから……」「朱里、もう一度聞く。 本当にボスの子供じゃないんだな?」「本当だよ。……ボスとは、確かにセックスはしたよ。でもボスはいつもちゃんと避妊してくれていたから、妊娠するはずがないのよ」ハルキは呆れたようにため息を付くと、「なんでそこまでして、ボスに媚びようとするんだよ」と呆れたような顔をする。「……ボスが私を、この世界に入れたからよ」「え?」「ボスと約束したの。……あの男に復讐出来るなら何でもするって。 ボスにそのすべてを捧げるって、そう約束したから」ハルキはその言葉を聞くと、「だからって、お前の身体まで捧げたのか?」と問い詰める。「……そうよ。私にはこれしかないから」これしかなかった。 私の武器になるのはこれしかなくて、だからそれでしか生きてこれなかった。軽蔑されたって仕方ない。 そうだ、こんな生き方間違ってるって私もわかってる。でもこうやって生きていく生き方しか、私は知らないの。……ボスがこの生き方を教えてくれたから。「ボス、俺はアンタのことを見損なったよ」ハルキはボスに冷たい視線を向けている。「まさかとは思うけど……アンタ、朱里のことが好きなのか?」「……え?」ハルキの言葉を聞いたボスは、黙ってタバコに火を付けた。「どうなんだよ、答えろよ」ハルキが問い詰めると、ボスは「……逆にお前は、なんて言ってほしいんだ俺に」とハルキに聞き返した。「は……? 質問してるのは俺だよ」「……俺が朱里のことを好き? そんなわけがないだろ」ボスはタバコの煙を吐き出す。 そんなボスにハルキは「ボス、俺はアンタを絶対に許さない」と口にした。「ハルキ、朱里には……この仕事を辞めるように言った
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■73

ボスに「朱里」と名前を呼ばれた私は、「はい」と返事をした。「お前は体調が落ち着くまで、仕事を休みなさい。 なにか辛いことがあれば、俺たちを頼りなさい。……分かったな?」「……はい」その後ボスは「ハルキ」とハルキの名前を呼ぶ。「ハルキは、朱里のことを守れ。 朱里に身に危険が晒されたりしたら、お前は全力で死ぬ気で、朱里を守れ」ハルキはボスに「言われなくても、ちゃんと守る。……コイツは、俺たちの大切な仲間だからな」と言ってくれた。「朱里が妊娠していると知ったら、レッド・アイはなにを仕掛けてくるか分からない。……慎重にな」「……はい」私は、あの二人を抹殺するまで絶対に諦めない。 私の復讐がそこで終わるまで、絶対に……。「……朱里、絶対に無理はするなよ」「はい」ハルキとボスがいるから、私はこんなにも頑張れるということが、分かった。仲間がいるって、本当にありがたい。 だから私は、全力でこの子を守るーーー。✱ ✱ ✱「千歳……話があるの」それから何日かして、私は、千歳を家に呼び出した。「朱里……体調はもう大丈夫なのか?」「うん……」さて、私が妊娠したと言ったら……千歳はどんな反応をするだろうか。「あのね、千歳……驚かないで聞いてほしいの」「うん、なに?」 「……私、妊娠したの」私がそう告げると、千歳は「えっ……? 本当か!?」と私の手を握る。「うん、病院に行ってきたの。そしたら、妊娠してることがわかって」千歳は「やべえ。すごく嬉しいよ、俺!」と私を抱きしめる。「本当に……? 喜んでくれるの?」「当たり前だろ? 朱里と俺の子だろ?嬉しすぎるって」千歳は私にキスをすると、「マジで俺、めっちゃ幸せだ」と微笑んでいる。「……良かった。喜んでもらえるか分からなくて、不安だったから、安心した」「喜ぶに決まってるだろ! 朱里、本当にありがとう。嬉しくて仕方ないよ」「……ありがとう」いい反応だ。……すっかり自分の子だと信じている様子だ。「じゃあさ……朱里」「ん?」千歳は私に「結婚……してくれないか」と私を見つめる。「え……? 結婚?」「朱里との子供が出来たってことは、そういうことだよな?」結婚か……。私は別に、結婚する気はない。 偽りの愛に答えなんて求めるつもり?「結婚は……ちょっと待ってほしいの」私がそう言うと、
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□74

なんでそんなことをするんだ、というような表情をしている千歳に、私は「なんで? なんでは私のセリフなんだけど」と言い返した。「このボイスレコーダーにバッチリ録音されてるよ。 あなたと浮気相手の情事がね」「あ……朱里、ごめん。許してくれ!」「はあ?」許してくれ? ふざけんな。「過ちだったんだよ! でも俺は、本当に朱里を愛してて……朱里のことだけ愛してるんだよ。だから……」「……そんな言い訳、通用するとか本気で思ってるの?」「言い訳なんかじゃ……! 俺は本当に……」私はボイスレコーダーのスイッチを押した。 そのボイスレコーダーから聞こえてきたのは、二人のセックスの様子だった。「あんっあんっ、いやっ」「ん、気持ちいい……」「私も……気持ちいいです」生々しい喘ぎ声と揺れるベッドのギシギシ音がボイスレコーダーから聞こえてきて、今にも吐き気がする。 ダメだ……これを聞くだけで吐きそうだわ。「朱里……違うんだ。これは……!」「これは……なに?」これがなんなのか聞くと、千歳は「いや、これは……」と口を紡ぐ。「この声、千歳だよね? この日、誰とセックスしてたの?」「いや……これは、なんていうか……。酔った勢いってヤツで……たった一回だけの過ちだよ」「……たった一回の過ち、ねえ」 これがたった一回だけの過ちだというなら、なんなの? 浮気したなら、まずは認めてほしいんだけど。「本当に、その一回だけしかしていない。本当だ」「相手は誰?」「……同じ塾の、先生だ」「そう。 これがあるから、言い訳なんていらない。……浮気したっていう事実がここにあるんだから」そう、これが動かぬ証拠だ。「一回だけの浮気でも、私は許さないよ。 私を疑ったりした時もそうだし、今もそう。 自分に必死になってる。……浮気したなら、認めて素直に」「……した。本当に悪いと思ってる、二度としないから」浮気したことはぶっちゃけどうでもいい。 私にはそんなの関係ないから。「やっぱり私、あなたを信じることは出来ないわ。……あなたとは、結婚出来ない。ごめんね」ウソ偽りの愛は、所詮偽物だった。「千歳……私と別れてほしいの」「えっ……!?」「私、もうあなたのこと信じられない。もう冷めた。 だから別れてくれる?」私がそう告げると、千歳は「朱里……冗談、だよな?」と困惑している
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■75

「知りたい? なら教えてあげる」私は千歳の目の前で拳銃を取り出すと、その銃口を千歳に向ける。「っ……!! や、やめてくれ朱里! 俺が悪かったっ!」慌てふためく千歳に、私はニヤニヤしながら「いちいちウザイんだよね、そういうとこ。 私アンタと早く別れたかったのに、アンタなかなか別れてくれなくてさあ、本当待ちくたびれたよ」と告げる。「朱里……君はそんな人じゃないだろ? 君は優しくて、素直で、可愛い人だろ?」「はあ? アンタが見てきてたのは、幻の私よ。 本当の私は、今の私だから」 「あ、朱里……その拳銃、降ろして……くれないか」 私はそんな千歳に「アンタ、本当におめでたい人だね。こんな私でも信じる訳? どれだけおめでたい人なの?バカすぎるわ! 本当に笑っちゃうんだけど」と話すと、イヤホンで雅人とハルキを呼んだ。すぐに私の家の外に待機していた雅人とハルキがやってきて、千歳を取り押さえる。「な、な、なんだ!離せよ! おい、朱里、これはどういうことだよ!」「アンタには、お仕置きしないとね」私の言葉に千歳は「お、お仕置き……?!」と困惑している。「そう、お仕置き。でも抵抗したらその場で撃つから、私は本気よ」「あ、朱里……君はどうしちゃったんだよ! なんでこんなことをするんだ!」「その答えはいずれ分かるわ。……ハルキ、雅人、さっさと連れてって」「ああ、行くぞ」抵抗する千歳を、ハルキと雅人が連行していく。「……ゔっ」なんでこんな時に、つわりなんて……。つわりなんかに、負けない絶対に。「もしもし、真樹?」「朱里か。どうした?」「……話があるんだけど、時間取れる?」「分かった。もうすぐ終わるから、それからでいいか」私は「大丈夫。じゃあ」と電話を切り、真樹と会うために支度をする。「……いよいよね」真樹、アンタの弟、千歳を拉致したわ。 アンタに復讐するための道具にするためにね。 真樹の家に着くと、真樹はすんなりと私を家へと上げた。「なにか飲むか?」「いらないわ。話したいことがあるから、座ってくれる?」「ああ、分かった」私の目の前に座った真樹は、私に「朱里、話って?」と問いかけてくる。「……私、あなたに、言わなきゃいけないことがあるの」そう言うと真樹は「言わなきゃいけないこと?」と私を見る。「なんだ?」「私……妊娠してる
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□76

「あなたは……本当は何者なの?」「……知らなくていいんだ、そんなこと。知るなんて必要ない」真樹にその言葉を言われたて、私は思わず「好きなの……」と言ってしまった。「え……?」「私、あなたのことが好きなの。……セフレだからと思って、我慢してたんだけど……私、あなたのことが好きなの」これも作戦。あなたを殺すために必死につくウソ。……ウソなはずなのに。「朱里……お前は、千歳のことが好きなんだろ?」そう聞かれた私は、「私……千歳に浮気されたの」と真樹に伝えた。「え……浮気?」「そう。だから私、彼のことが信じられなくなって千歳と別れたの。 でもあなたと過ごしてるうちに、あなたのことが好きなんだと、気づいてしまったの……」「……そうか。アイツ、浮気したのか」真樹の表情はなんら変わらないけど、私に「朱里、俺のことが好きか?」と問いかけてくるから、私は思わず「……好きよ。 私はあなたのことが好き」と答えた。「朱里……俺にするか?」「え……?」「朱里には、俺の方がいい。 俺なら、アイツみたいな思いはさせない」あれ……私、なんでこんなに……ドキドキしてるの?どうして……。これはウソの愛なのに。これは偽物の愛、なのにーーー。「真樹……私のこと、愛してくれるの?」「……ああ、死ぬまで愛してやる」なんで、私……。こんなに真樹のこと……。「……ゔっ……」こんな時でもつわりはやってきてしまう。「朱里、大丈夫か? つわりか?」「ゔっ……」私は急いでトイレに駆け込んだ。「はあ、はあ……」この子は、確実に私のお腹の中で……生きている。「大丈夫か、朱里……?」トイレから出てきた私に、水を渡してくれる真樹。 私はそれを「ありがとう……」と受け取る。「つわり……辛いか?」「うん……結構辛い」私はこの子がいることで、弱くなりそうな気がしてしまう。「朱里、しばらくここに住めば良い」「え……?」「俺ならカウンセリングは別にリモートでも出来るし、家にいれば、朱里も安心だろ?」なんで……。なんでこんなに、優しいの?あなたは、冷酷な殺し屋でしょ? あのレッド・アイでしょ?こんなの……あなたらしくないわ。おかしいもの、こんなの。「どうして……?」「俺の子供だから」俺の子供……。どっちの子供かもまだわからないのに、俺の子供だなんて……どうして
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■77

「ゆっくり食べろよ」「……うん」真樹はカウンセリングがあるからと、私の前を通ろうとする。……その瞬間に私は、真樹の腕を掴んでしまう。「朱里……どうした?」「……ごめん、なんでもない」でもすぐに、私はその腕を離した。 なんで私は今、真樹の腕を掴んだんだろうか。自分でも分からない。無意識だった。「辛いときは呼べよ、すぐ行くから」「……うん」私は……真樹のことが、本当に好きなんだ。 偽物の愛だと思ってたのに。絶対に好きになることなんて、ないと思ってたのに……。私は……私は、アイツのことが好きなんだ。「悔しい……っ」好きになんてなりたくなかった。愛したりしたくなかった。教えて、神様。これが愛だと言うの?「……っ」好きじゃない、好きじゃない。そういい聞かせてるのに、私の心はぎゅっと何かを掴んで離さないんだ。これが……恋なんだ。 ちゃんと、好きなんだ。「うぅ……ん……」悔しい。泣きたくないのに泣いてしまう。 好きになりたくないのに、好きになってしまう。 どうしてうまく感情がコントロール出来ないんだろう。どうして……。これも全部、妊娠のせいだ。 妊娠なんてしたから、こうなったんだ。妊娠さえしなければ……私は今頃、こんなに悩むことはなかった。全部私のせい……。全部全部、私のせいだ。 「……ごめんね」私は、この子を幸せに出来ない。 私はこの子を幸せにする資格なんてない。私には……人を愛する資格もない。そんな資格、ある訳がない。そんな時、私のスマホが鳴った。【朱里、体調大丈夫か?】ハルキがメールをくれた。【うん】既読がついてすぐ、私は【千歳はどう?生きてる?】と送信した。【ああ、生きてる。 朱里を呼べとうるさいけどな】【……マジか】千歳のヤツ、しぶといな……。でもまだ生きててもらわないと困る。……私がやるしかない。私は真樹に置き手紙を残し、そっと家を出た。 タクシーに乗り、アジトへの近くの所で降ろしてもらう。アジト内に到着すると、まずはハルキたちの元へと向かう。「あれ? 朱里?」「雅人、久しぶり」「ハルキから聞いた。……妊娠、してるんだって?」「……ええ」雅人は心配そうに私を見ている。「段差あるから気を付けて」「やけに紳士的なのね」「だって俺、紳士だから」「そうね」相変わらず雅人も元気そう
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「……え? 朱里の両親を……殺した?」「そうよ。……あなたのお兄さんは、私の両親を殺したのよ。アンタのお兄さんがね」「ウソだろ……。そんなの、ウソだっ……」「アンタ、やっぱりおめでたい男ね。お兄さんにも騙されて、私にも騙されて……本当にバカな男」本当にバカすぎて情けなくなる。千歳は「ウソだろ!? 兄貴が、そんなことを……するはずがないっ!」と私に突っかかってくる。「いいえ、したのよ!アンタの兄貴は、私の両親を殺したのっ!……前に言わなかった? アンタのお兄さんにも、私にも裏の顔があるって」「ウソだろ……。俺のこと……利用したのか? 兄貴に復讐するために、俺を利用したってのか!?」そう言われたから、私は「そうよ。私はあなたを利用しただけ。 アンタの兄に近付くために、アンタたちに復讐をするためにアンタを利用したの」と言い返す。「そんな……。そんなこと、ありかよ……」「騙される方が悪いのよ。……あなたは私が本気であなたを愛するとでも思った? そんなわけないじゃない。あ、でも、あなたの身体だけは愛してあげたわ」そんな私に向かって、千歳は「お前……クソだな。最低だ!」と言い放つ。「最低?……アンタたちのがよっぽど最低じゃない。アンタはお兄さんのこと、なんにも知らないのね。アンタのお兄さんは、とんでもない殺し屋なの。 狙った獲物は、絶対に逃がさない。どこまでも追いかける。そんな殺し屋よ。……どこまで行っても、逃げ場なんてない。待ってるのは地獄だけなの」「兄貴が、殺し屋……?レッド・アイ……? どうなってんだよ、一体……」呆然とする千歳に、私は「だから千歳、アンタも私の敵なのよ。……だから私は、あなたを殺すと決めたの」と告げる。「俺は……俺は……死にたくない」「でもまだ殺さないわ。……あなたを殺すのは、あなたのお兄さんの前でにするから」「はっ……? それ、どういう意味だよ……?」「せいぜい楽しみなさい。残りの人生を」「おい、待てよ朱里! ふざけんなよ、お前っ!」私はそう告げると、千歳の前から消えるように立ち去った。「……ふっ、いい気味。せいぜい苦しめばいいのよ」「お前……身体、本当に大丈夫なのかよ」ハルキが心配そうに聞いてくる。「大丈夫よ。……もう少しの辛抱よ」「無理はするなよな」「……分かってる」さて、ここからが鍵ね。「
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■79

真樹は本当に私に優しい。 優しすぎるくらいに優しい。本当に彼は……私の両親を殺した犯人なの? 彼は本当に……あのレッド・アイなの?全然そんな気配を、全く感じさせない。 別人のように感じてしまう。「……朱里、俺は君が愛おしい。そのくらい、君は大切な存在なんだ」私の頬を撫でながら、真樹は優しい表情を浮かべる。「……どうして。私は孤独なのに……。私は誰にも、愛される資格なんてないのに……どうして?」「……君がいつも孤独を感じているのは、分かってたよ。 だからこそ俺は、君のそばにいて孤独を感じさせたくないんだ。……それにもう、君は一人じゃない。俺がいるし、子供もいる」私は……悔しいけど、やっぱり真樹のことが好きなんだ。 彼のことを、すでに愛してしまっている。「……やめて。それ以上、優しくしないでよ……」これ以上優しくされたら、私の気持ちが揺らいでしまう。 彼に復讐したいという気持ちが、鈍ってしまいそうになってしまうから。だからお願い。これ以上、私に優しくしないでーーー。「……朱里?」「お願いだから……これ以上優しく、しないでっ……」真樹は「朱里……どうした?」と私の顔を覗き込む。「私……あなたに優しくされると、困るの。 私はこれ以上……あなたを好きになりたくないのよ」あなたへの思いは、きっと本物。……だからこそ、あなたに復讐する気持ちだけは失いたくない。「……俺との幸せを望むのが、そんなに怖いのか?」そう聞かれて私はつい「……正直、すごく怖い」と答えた。これ以上の幸せを望む権利なんて、私にはない。 そんなことしても、私は幸せになんてなれない。 この子を守ることが……私には本当に出来るのだろうか。 私みたいな裏社会の抹殺をする組織の一員が、ちゃんと母親になれるのだろうか。不安しかなくて、また泣きそうになる。「……それは、お前が俺を恨んでるからか?」「えっ……?」真樹の一言に、私は目を見開いた。(待って……どういう……意味?)「お前は、俺を恨んでるんだろ?……俺がお前の両親を殺したから」「な……んで……?」ウソ……。いつから、気付かれてたの……? 「気付いてないとでも思ったか?」「……なんで、気付いたの?」私は真樹にそう問いかけると、真樹は私の前に座り「俺を誰だと思ってる?」と私を視線を向ける。「……あなたが、私
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□80

「ウソだ。君は俺を愛してる」「愛してない……。愛してないっ」何度もそう言ってるのに、真樹は「いや、君は俺を愛してる。……なのになぜ、強がるんだ?」と私の方を向く。「っ……ウソよ。ウソなの……全部……」私の身体は震えている。どうして、どうしてこの男を殺したいのに、出来ないのだろうか。「……今のお前に、俺が殺せると思うか?」「殺すわよ!……絶対に、絶対にあなたを殺す。千歳と一緒に地獄に葬ってやるから」あなたたちを殺して、私はこの仕事を引退する。……あなたたちを抹殺すれば、私の復讐は終わる。「……朱里、君は妊娠しているんだ。そんな身体で、俺が殺せると、本気で思ってるのか?」真樹にそう聞かれて、私はなにも答えられなかった。「無理をしたら、君のお腹の子に支障が出るだろう。 それでも……君は俺を殺すつもりか?」そんなの……当たり前よ。「朱里……君には悪いと思ってる。本当に……申し訳ないと思ってる」「ウソ……。そんなこと、本当は思ってないくせにっ……!」私が背中を向けると、真樹は私の背中を包み込むように抱きしめてくる。「やめて……。離してっ……」「離さない。……俺は絶対に、君を離さない。俺を殺したれば、殺せばいいさ。 それで君の気が済むのなら……そうすればいい。俺は君に、それほどのことをしたのだから」どうして……。どうしてそんなことを言うのよ……。お願いだから、そんなこと言うのはやめてよ。私はあなたを地獄に落とすために、ここまでやってきたのに……無駄になってしまう。「……俺はもう、殺し屋を引退するつもりだ」「え……?」引退……? ウソよね……?「俺は……お前のために変わりたい。 君の子供を……守りたいって思ってる。これから先もずっと」そんな優しい言葉を言われたら……私の決意が揺らぐ。 私が今まで生きてきた理由は、コイツらのためだけ。それ以外のことはどうでも良かった。……どうでも良かったのに。「……真樹、私はあなたを許すことが、どうしても出来ないの。 あなたを許すことが……私にとって過酷なことなの。わかるでしょ?」大切な家族を奪われた悲しみなんて、アンタにはわかる訳がない。 私はずっとずっと、アンタに復讐することだけを生き甲斐にしてしてきたからこそ、分かってたまるものか。「……わかってる。だから、俺のことは一生許せなくていい。
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