白鳥は整備エリア脇のベンチに腰を下ろし、水筒をあおった。 真壁の訓練は、今日も容赦がない。 的確だが冷徹な指示と、理論的で笑いを挟む隙もないカリキュラム。 訓練生の間では〝地獄の真壁班〟とまで、囁かれている。 しかし、指導そのものが行き過ぎてはおらず。 真壁のやり方で、訓練生の意識が向上することを、上も認めていた。 その日は、訓練基地に埴生二佐が顔を出した。 埴生は、航空幕僚監部付の視察担当官であり、現場畑を長く歩いてきた叩き上げの男だ。 訓練生の卒業にはまだ時間があるが、当日に〝お偉いさん〟をつつがなく案内するために、かなり前から下見と予定を組まねばならない。 将官には向かないと、自分で公言している男だが、顔が広く、調整や根回しが上手い。 訓練生はもとより、現役のパイロット達からの信任も厚いが、上層部からの信頼も得ている男である。「よう、タカ坊、元気でやってるか?」 汗を拭っていた白鳥に、埴生が声を掛ける。「えっ……? あ、埴生のおっちゃ……いえ、埴生二佐!」 慌てて敬礼をする白鳥に、埴生はゲラゲラと笑った。「さすがのタカ坊も、真壁班でしごかれりゃ、口の利き方ひとつ変わるか!」 埴生は、白鳥に取っては〝親戚のおじさん〟に近い存在だ。 白鳥の父・晴雄は、元は自衛官で糧食担当をしていた。 埴生は晴雄の同期であり、親友でもあった。 そもそも晴雄が自衛官になったのは、いわゆる〝資格コレクター〟の性癖持ちだったからだ。 めぼしい資格を取得したところで、晴雄は自分が〝調理〟関係の資格を全く持っていないことに思い至った。 そこで糧食に志願し、皿洗いから始めて料理を作るための修行に勤しんだ。 ところが、意外にも資格どうこうではなく、料理そのものが面白くなってしまった。 そして、隊で得られる調理関係の資格を取得し終わったところで、いきなり除隊したのである。 い
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