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Alle Kapitel von 空に墜ちる: Kapitel 31 – Kapitel 40

54 Kapitel

2-7:墜ちた教官

 真壁の身体は、火照っているのに、どこか震えていた。 半脱ぎのフライトスーツを脱がそうとすると、さすがになにをするのか分かったらしく、俺のフライトスーツのジッパーに手を掛ける。「真壁、本当に良いのか?」 今更だが、問うた。「指導をお願いしたのは、僕です」 ホントに分かってんのか? と小一時間問い正したい真っ直ぐな目で、真壁が答えた。 息が詰まるほど、愛しい。 俺がキスをすると、真壁はやっぱりたどたどしく返してきた。 舌が絡み、肌の熱が上がるような気がする。 真壁の肌に触れると、ビクリと小さな反応が返ってきた。「くすぐったいか?」「……あったかいなって、思っただけです」 その言葉と共に、真壁はそっと目を伏せた。 肌が重なり、息遣いが絡む。 まだ触れてもいない部分まで、熱が伝染していくようだった。 やがて──。 俺たちはお互いに何も纏わなくなっていた。 肌が触れ合う音がする。 体温が、音を立てるように重なっていく。 触れるたび、探るたび、真壁は新しい反応を返してくる。 息を吸い、震え、時に声にならない吐息を漏らす。 俺が肩口に手を這わせれば、彼の腰が小さく跳ねる。 背中を撫でれば、まるで〝もっと〟とでも言いたげに、擦り寄ってくる。「ふふ……、かわいいな……」「か……かわいいだなんて、やめてください。恥ずかしいです」 赤くなって顔を逸らしているのに、体は初めて知った快感を欲しがって、素直な反応を示す。「あ……っ、あぁ……っ! 若桐さんっ!」 今まで〝教官〟だったのが、そこで名を呼ぶとは、本当に分からないでやってるのか?「真壁……ホント、かわいいな……」
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-02-11
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2-8:刷り込み

 連休が明けて、基地に喧騒が戻ってきた。 俺は……と言えば、今日も一日の業務をこなし、明日のカリキュラムを考えながら、茶を飲んでいた。 昼間の熱気はどこへやら、秋風どころか冬将軍の足音が聞こえてきそうだ。──どうするんだよ、俺。ほんとに。 変わらぬふりを続けながら、俺の心の中は大荒れだった。 つい数日前。 あの〝事故みたいな夜〟の翌日。 真壁は、その晩もその翌日の晩も、俺の部屋を訪ねてきた。 全くなんの濁りもない、あの真っ直ぐな目で。「今夜も、ご指導をお願いします」 と言って。 応じる俺も、俺だが。 しかし、つまりは〝新しい知識〟を知った高校生が、熱に浮かされたようにそれに熱中するのは、ままあることだ。 真壁の場合、それが五年ほど、遅かっただけの話で。 問題は、連休中ならいざ知らず、人目につくようになった今夜も来たら困る……ってところだ。 ある意味、俺はノックがないことを心底祈ってた。 だが──。 ノックがあった。 扉を開けると、案の定、例の〝無自覚な天使〟が立っている。「失礼します、教官。本日もご指導をお願い出来たらと思いまして」「いいから、入れ」 悪気なんてこれっぽっちもない、純粋な瞳でそう言われちゃあ、俺の胃も良心も、あらゆる意味でヒリつく。 俺は真壁に椅子を進めた。 てっきりベッドへ誘われるつもりだったらしい真壁は、きょとんとしながら椅子に腰掛ける。「あのな、真壁」「はい」 なんの汚れもない目で、こっちみんな! と思いつつ。 しかし、今日は流石に言わねばならない。 俺は紅茶にブランデーを入れずに、真壁の前に置いた。「おまえは〝指導〟と言うがな。普通はそれ、付き合ってるやつとするもんだぞ」「え……っ?」 そんな〝今更何いってんですか?〟
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-02-12
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§

「若桐さん?」「すまん。なんでもない」 これはもう、腹をくくるしかない。 俺は、改めて真壁の顔を見た。「付き合ったら服務規程違反に、俺はセクハラのオマケまで付く」「ええっ?」「だがな、真壁。はっきり言うが、俺はおまえを可愛いと思ってる」「若桐さん……」「だから、もう一回確認する。すごく大事な質問だから、よく考えてから答えろ。……おまえ、本当に俺と付き合いたいのか?」「僕は……」 言いかけた真壁を、俺は手を上げて言葉を遮った。「先に、聞け。くどいようだが、俺とおまえが付き合うのは、明らかな違反行為だ。バレたら俺はセクハラ教官で懲戒免職。おまえもこれからの出世の道はほぼほぼ閉ざされる。おまえの未来に伸びてるいくつもの可能性が、全部真っ暗闇だ」「はい」「だから、恋人同士とお互いに認めあったとしても、絶対にバレないように、細心の注意を払わなきゃならん。訓練中に目があったからって、微笑み合うことすら出来ない。分かってるか?」 真壁は、たぶん俺が〝考えろ〟と言ったので、すぐに答えを返さなかったのだろう。 だからって目を閉じたりとか、そういうこともしないで、ただしばらく俺の顔をジッと見ていた。「若桐さんの……教官の迷惑になるなら、我慢します」「俺は……」 そこで一拍おいて、俺は深く深く息を吐いた。「正直、俺が免職されるだけなら、別に構わん。……だが、輝かしい未来の可能性を持っているおまえの道を閉ざすのは……、どうしたって許されるもんじゃないと思ってる」「でも……」「あのな、真壁。おまえが言うほど、おまえの背中は貧弱じゃねぇし、俺が同期なら、背中を預ける相手がおまえだったら、最高だ。……ぶっちゃけ、同期だったら付き合うのにこれほどの問題はないから、悔
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-02-13
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2-9:初めてのデート

 真壁と日付を合わせて、休暇の申請をした。 後ろめたさにドキドキしたが、特に疑われるようなことはなかった。 もっとも、これが初めてのデートなので、今後どうなるかわからないが……。 デート場所は、都会を選んだ。 基地から駅を二〜三離れた程度の場所では、誰かに見られるかもしれない。 待ち合わせは、わかりやすく一般的なところを選んだ。 時間より早めに到着して待っていると、人混みの向こうから、見慣れない装いの真壁が現れた。 ジャケットに、シンプルなシャツと黒の細身パンツ。 服装は地味めなのに、体型がいいから見映えがする。 それになにより──「若桐さん!」 駆け寄ってくる笑顔は、完全にプライベートな恋人モードって感じだ。「定刻通り。さすがだな」「すみません、待たせてしまいましたか?」 歩き出す俺の横を、真壁が付いてくる。 手を繋いだり……はしない。 目立って良いことなんかなんにもない。 というか、真壁は背が高く、整った顔立ちをしていて、姿勢も所作も美しい。 贔屓目を差っ引いても、モデルみたいに目立つのだ。 それがこんなしょぼくさいおっさんと手なんぞ繋いでいたら、目立つどころではなくなってしまう。「なんか、食いたいもんとか、あるか?」「そうですね。僕は……若桐さんと食事に行けるなら、なんでも」「おいおい、せっかくなんだ。なんかねだってくれよ」「……ねだる?」「俺は、おまえに甘えて欲しいんだよ」 真壁は、ちょっとはにかんで。 それから目線を外した。 耳が赤くなってるのがわかる。「……甘いものが……」「ははは、おまえ甘党か? いいぞ。確かでっかいパフェが食える店があったはずだが……」
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-02-14
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2-10:若桐の真心

 選んだのは、さほど高級なところじゃないが、グレードの高いビジネスホテル。 俺の薄給では、一流ホテルのスイートを予約できるほどの余裕はない。 だが、それでも真壁に嫌な思いはさせたくないし、壁の薄さにヒヤヒヤするのも嫌だった。「広いですね……」「これを広いと言うおまえは、本当に世間知らずだな」 窓辺に駆け寄り、摩天楼を眺めている真壁の隣に立って、そっと頬にキスをする。 真壁はびっくり顔で振り返って、それからへにゃっと笑ってから、もじもじと照れたように目線を下げた。「……あの……、えっと……、ま……守さんって……呼んで……も……」「もちろん。当然だろう、百合緒」 名前を呼ばれて、真壁はますます頬を染めた。 俺は真壁のうなじに手を回し、そっと引き寄せて口づけをする。 一瞬見開いた瞳は、すぐに伏せられて、おずおずと舌が応えてきた。 俺は彼の手を取って、ゆっくりとベッドへ導く。 私服の真壁は、基地で見る姿とはまるで違う。 フライトスーツの時は、ジッパーを下げたあとに、Tシャツを脱がさなきゃならなかったが、今日はシャツの下は素肌だ。 真壁も俺のシャツに手を掛けてきて、俺もやっぱりシャツの下が素肌だったことに、なんだか嬉しそうな顔をした。 襟元に指をかけ、そっと首筋に唇を落とす。 真壁が小さく息を呑む。 その喉が震える音が耳元で感じられて、思わず舌を這わせた。「……あっ……」 零した声をこらえるように、真壁が唇を噛んでいる。「我慢なんかするな……」「でも……」「隣に聞こえるような部屋じゃねぇよ」「そうじゃなくて&hel
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-02-15
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§

 俺は、持ってきていたローションの蓋を開けて、手に取った。「ひゃぅ……」「ごめん、冷たかったか?」「いえ……、急にぬるっとしてびっくりして……っ! それ、なんですか?」「ぬるっとするものだよ」 熱の集まっている場所に滑らせると、真壁は体をすくませた。「……う、そ……気持ちよすぎて……変になりそう……」「なら、もっと変にしてやるよ」 やわらかなキスを落としながら、俺は真壁の熱を優しく煽った。「あ……っ! あっ! 守さんっ!」 真壁の声が、ベッドの上で弾ける。 頬を紅潮させ、ぽやんとしていた真壁は、俺の顔を見たところでまたしてもへにゃっと笑った。「なんだよ、その顔は?」「やっぱり、若桐さんじゃないと、駄目です」 こいつは俺を、殺しに来てるのか? こっちが顔を赤らめそうになる。 俺は、真壁の太ももを撫でながら、腰に軽く手を添えた。 彼は一瞬びくっと反応したが──やがて、ゆっくりと脚を開いた。 唇と指で、全身を丁寧に、愛おしく味わう。 彼の吐息、震え、熱。 その全部を受け止めて、抱きしめる。「……守さん……っ、きもち……よくて……、なんか、こわれそう……っ」「壊してやるよ。甘く、優しくな」 脚を開いた真壁の体は、少し震えていた。 けれど、それは恐怖じゃない。 触れられることに慣れていない。 けど、触れてほしいと思っている身体の反応だった。 滑った指先で彼の奥をなぞる。「──っ……!」
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-02-16
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§

 俺は真壁の腰を抱くと、やわらかくほぐした場所に熱を押し当てる。「ふ……あっ!」「百合緒……、おまえ、可愛すぎるよ」「んんっ……」 きつくて、あたたかくて、柔らかい。 真壁の中が、ぎゅうっと俺を受け止めて、包み込んでくる。 白くたおやかな体が、俺を全て飲み込もうと跳ね、両足がするっと腰に巻き付けられた。 呼吸を合わせるように、ゆっくりと、奥まで進む。 真壁の息は、苦しそうに弾んでいるのに、体は全身で俺を歓喜で迎え入れていた。「無理すんなよ……」「あ……、あ……、守さん……好き……」 熱に浮かされたように呟く真壁に、こっちのほうが泣きそうになる。 極力やんわりと、真壁の体に負担をかけないように細心の注意を払った。 なんせ、真壁はまだ数えるほどしか経験がない。 さらに──おかしな告白をするが、俺は付き合った女がだいたい三ヶ月以内に逃げる。 理由は、性欲が強すぎるから──。 相談した医者にまで言われたのだ。 注意に注意を払って当たり前だろう。 そんな風に考えていたのに、ふと見ると真壁が俺を見ていた。 目を潤ませて、口元に微笑みまで浮かべ。 口づけをすると、まるで待ってましたとばかりに応えてくる。 こいつのこの気持ちは、全く一途で真っ直ぐだが……。 俺が触れたのが事故なら、この気持ちも刷り込みにしか過ぎない気もしてる。 とはいえ、今更真壁を諦める……どころか、今の俺は彼を手放すことすら出来ないだろうと確信していた。 甘えて、俺の背に腕を回し、快感に蕩けている真壁よりも。 俺のほうが、よほど真壁に溺れていると感じた。「……
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-02-17
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2-12:進路相談

 それから俺達は、時々休みを合わせて、お泊りデートを繰り返した。 真壁は──。 さすが、超が付くほど優秀な士官候補生だけあって、訓練中に俺に目配せをすることすら、絶対になかった。 むしろ、俺の方が寂しいと思ってしまうほどだ。 とはいえ、相変わらず〝筋肉のつかない体〟の悩みは続いている……らしい。 ベテランの教官をして「今期の訓練生は化け物揃い」と言わしめた、体力バカばっかりのメンバーだ。 その中で、あの神々しいまでのしなやかな体が、〝見劣りする〟と当人が感じるのは仕方がないのかもしれない。 こればっかりは、俺がどんなに「それがいい。そこがいい」と言っても、真壁にしたら年上の俺が慰めているようにしか聞こえないのだろう。 今日もまた、鶏むね肉とサバとどちらがいいかについて、同期の響野を相手にうんちくを垂れ流していた。 そして今日は、進路相談。 真壁は真っ白な用紙を持って、相談室にやってきた。「パイロットになりたいんだろう?」 俺の問いに、真壁は俯いている。「最近は、単座の機体も増えてる。背中を預けるどうこうって話は、それほど深刻でもないだろう?」「あの……」 きょろきょろっと周囲を見回し、部屋に俺と二人きりなことは分かりきっているのに、確かめているようだ。「これって、音声記録とか取ってませんよね?」「ねえから、安心しろ」「守さんはどうして、教官に?」 きょろきょろしてたのは、名前呼びが出来るかどうかを伺ってたのか。 くそ……、可愛いヤツめ。「守さんは、僕よりしっかりした体してますし、実地訓練の時のフライトテクニックだって、すごいです。時々お見えになる埴生三佐に聞いても、パイロットにならなかったのもったいないって仰ってて……」「全く……」 俺は頭を掻いた。「俺が教官やってるのは、パイ
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-02-18
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2-13:無傷の指輪

 夜の街の灯が、窓越しに揺れていた。 久しぶりのデート。 最近ではすっかり慣れて、真壁は窓辺に駆け寄らなくなった。 今も、俺の腕の中で、無邪気に昼間の訓練であった些細なトラブルについて話をしている。「響野とは、ずいぶん仲が良いんだな」「ええ、あいつはすごくいいヤツです。でも……少し無神経というか……」 あんまり仲良しだから、ちょっと嫉妬混じりで訊ねたのだが。 意外にも、風向きが変わった。「……もしかして、背中が貧弱って言ったの、響野か?」「え? あ、貧弱とは、言ってないんですけど。細いなって言われました」 俺は、吹きそうになった。 確かに響野は筋肉バカの典型で、実技は常にトップだが、座学はイマイチな男だ。 真壁のコメント通り、無神経だわ、声がでかいわ、存在がうざいわの三拍子が揃っている。 が……。 その〝細い〟って発言が、ただの無神経じゃないことは、なんとなく想像がついた。 たぶん……響野も真壁の背中の色気に惑った一人……なんだろう。 むしろ、響野の決死の一言が原因で、俺はとんびになったに違いない。──響野……、すまん。 俺は心の中で、響野に向かって手を合わせた。「響野が、不器用でよかったよ」「あいつ、結構、器用ですよ?」「いや、そういう話じゃないんだが……」 真壁が俺の腕に飛び込んできてくれたから……とは言えなかったので、俺は真壁の額にキスをした。「なんですか?」 きょとんとした顔で俺を見る真壁に、なにも説明したくない。 俺は曖昧に笑って、真壁から目線を逸らした。「実は、おまえに受け取って欲しいものがあってな」 俺は持ってきていたカバンか
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-02-19
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「ぼ……、ぼぼぼ……ぼくが…………ま……ま……まもるさん……の? えっ? ぷろ……ぷろ……プロポーズ……をっ?「落ち着け。まずは深呼吸をしろ」 そこで、本当にすうはあすうはあしてるところが、本当に可愛い。「ちゃんと、跪いたほうがよかったか?」「いえ……いえっ!」「新品で流行りの指輪じゃなくて済まないが、どうしてもこれを受け取って欲しいんだ」「なにか、由緒の有るものなんですか?」「由緒ちゅーか……。これは俺がバアサンからもらったんだ」「おばあさんはご存命なんですか?」「ああ、ピンピンしてるよ。俺がパイロットになりたいと言ったら、飛行機に乗るなら、持ってなさいって言われてなぁ」「この指輪は、お守りかなんかなんですか?」「バアサン曰く『お父さんは最後の時には指輪を外していったから戻ってこなかった』んだそうだ」「どういうことです?」「曾ジイサンは、パイロットでな。曾バアサンと結婚して、この指輪を身に着けてから、無傷で帰ってこられるようになったんだそうだ」 バアサンは、自分の親父たる曾ジイサンの顔を、写真でしか知らない。 なぜなら、曾ジイサンは特攻で帰らぬ人になったからだ。 無傷の指輪は、特攻に出る前に、一時帰宅で家族と晩餐を済ませた時、曾ジイサンが曾バアサンの元に残して行った……という。「つけて行けば、生きて帰れたかもしれないのに……」 真壁の言葉に、俺は思わず笑ってしまった。「おまえは、イマドキだな」 俺には、なんとなく分かる。 時代と言ってしまえばそれまでだが、要はそこに発生してしまった〝責任〟をどう処理
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-02-20
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