真壁の部屋は、相変わらずなにもない。 否──。「百合緒さん、箱は……?」 若桐の写真と、歪んだリングが入っていた、あの箱が無い。「写真はアルバムに移して、リングはケースに入れた」 さらっと返される。「いいのかよ?」「終わったことだと、言っただろう」 真壁はブレザーの上着を脱ぎ、ネクタイを外してハンガーに掛けている。 白鳥はその背後に近づくと、Yシャツごしの背中に触れた。「やっぱり、百合緒さんの背中、すごく綺麗だ……」「おい、シャツを脱いでからにしろ」「なんで?」「シャツまでクリーニングに出すと、高く付く」 真壁の答えに、白鳥は笑った。「急に、生活感出まくりじゃない?」「普通だろう?」「百合緒さんって、日常だともしかして天然?」 クスクス笑いながら、白鳥は手を伸ばすとシャツのボタンを外す。 真壁は、最初それを追い払おうとしたが、白鳥が諦めないので諦めた。 Yシャツの下はアンダーシャツ。 ウエストのベルトを外して、スラックスも脱がせる。 少々興ざめ感はあったが、先の〝クリーニング〟の話から、真壁が服が汚れることを気にしているらしいので、それらをきちんとハンガーに掛けた。 もちろん、白鳥の服も掛けるよう言われたので、真壁にハンガーを借りて壁に掛ける。「若桐さんとは、秘密の恋人同士だったの?」「なぜ、そんなことを聞く?」「秘密の恋人同士なら、きっと恋人らしいイベントとか、してないんでしょ? 俺はもう訓練生じゃないから、百合緒さんの初めての恋人イベントの権利ゲットかなって」「恋人らしいイベントって、なんだ?」 本気で眉を寄せて問うてくる真壁に、白鳥はますます嬉しそうに笑った。 天然……どころか、どうやらこの教官殿は、冷徹の仮面を外すと、かなりのぼんくららしいことに気付いたからだ。
Terakhir Diperbarui : 2026-02-01 Baca selengkapnya