ほんの数分、その場で待つ。ゴースト・ジャックがバックドアを開くまでその数分間。周囲を見回す。以前、来た時とさほど変わりは無い。あの悪女がこの部屋で過ごしながらどんな悪事をその脳内で練って来たのか、それはこのバックドアが開けば明らかになるだろう。愛沢くるみその出自には同情はするが。何度も頭の中に浮かんでは消えて行く、疑問。何故、燈をターゲットにしたのか。何故、燈をそこまで憎んでいるのか。ただの嫉妬が原因だったとしても。どうして故意に流産させる、なんて事にまで、手を染めたのか。何もかもを奪いたいという、その原動力となるのは、ただの嫉妬か?俺は笑って首を振る。分からない。俺には全く持って共感も出来ないし、自身の体を売ってまで、高級ブランドが欲しいなんて思った事も無いのだから。ゴースト・ジャックの小さなランプが赤から緑に変わる。開いた。俺はゴースト・ジャックを引き抜き、PCの電源を落とす。寸分の狂い無く、全てのものを元の場所へ戻し、もう一度、部屋を見回す。本当に悪趣味な部屋だ。◇◇◇「じゃあ、愛沢さん。始めますので視界を遮断しますよ」そう言ってゴーグルを愛沢くるみに装着する。眼鏡のようになっているそのゴーグルは、レーザー治療の際に発せられるレーザー光線から目を守る為にあるものだ。だが、今回は。その視界を奪う事で、愛沢くるみ自身が知らない間に奪われるものがあるという皮肉さ。俺はレーザーを当てながら、隣の個室で佐伯燈が愛欲の女王のすり替えとスマホのバックドアの開錠をする為の時間を稼ぐ。ゆっくり、丁寧に。そうする事で愛沢くるみからの俺のへの評価が上がるのも、また皮肉な話だ。◇◇◇隣ではレーザー治療が開始されている。私は個室のロッカーから、イルミの真っ赤なバッグを取り出す。一条和輝の取り計らいで、この個室は一条クリニックのスタッフでさえ、入れないようにして貰っている。イルミのバッグの中。湊から渡されたものと同じ形のアトマイザーが出て来る。使った量までは分からなかったので、偽の方はアトマイザーの容量は満タンにして来たけれど。愛沢くるみの本物の愛欲の女王の方はアトマイザーの八割ほどの量だった。今朝、足して来たのか、甘い匂いがプンプンする。偽の方の量を調整し、違和感の無いようにする。それと同時に、スマホの方にもゴースト・ジャックを挿
Last Updated : 2026-05-01 Read more