遼大が一気にレバーを下す。ガチャンッ!そんな音がして、レバーが下がり始め、ゆっくりと扉が音を立てて開き始める。ギィィーー!ゴリゴリと錆が擦れる音と共に、少しずつ扉が開き、やがて人一人分くらいなら通れるくらいの隙間が開く。私はワセリンで油分まみれになった手を、ベッドのシーツで拭い、座っている千堂理に言う。「さぁ、行くわよ」遼大が千堂理を助け起こし、千堂理を背負う。千堂理は血を失っているせいか、その手に力が入らない。「燈、シーツを捩って、紐にしてくれ」遼大にそう言われて私は言われた通りに簡易で紐を作り、千堂理を背負っている遼大と千堂理をその紐で括り付ける。紫色の煙が既に隔離室の中に入り始めている。「いいわ」私がそう言うと遼大は千堂理を背負って、その扉の中に入って行く。私も後に続く。振り返ると紫色の煙がすぐそこにまで迫っている。「扉を一旦、閉めた方が良いかもしれないな」遼大がそう言う。「そうね」私は真っ暗なメンテナンスシャフトをスマホの灯りで照らし、扉のすぐ脇にあったレバーを見つける。(またレバーね)そう思い苦笑する。遼大は千堂理を支えているので、そのレバーを下す事は不可能だ。私はそのレバーに手を伸ばし、力を入れてみる。ガチャンッ!内側のレバーはすんなりと動いてくれた。扉が閉まる。視界が真っ暗な闇に支配される。「このまま……奥に進むと、このシャフトを登る梯子が……見えて来る筈だ……」遼大に背負われた千堂理が言う。「燈、先に行ってくれ」そう言われて私はジェラルミンケースを握り、スマホの灯りを頼りに奥へ進む。◇◇◇私は走り出して行った連中を尻目にコントロール室に戻る。「百田、どうだ?」そう聞くと百田は私に振り返り、言う。「地下階は漏れ出した新薬によって汚染されています」そう言って百田が監視カメラの映像を見せる。そこに映っていたのは紫色の煙が充満している地下階の映像。「フフフ……ハハハハハ……!!」笑いが止まらない。これでアイツらは全員、地獄行きだ。あれだけの量の“絶望の王”に囲まれたら、生きては帰れないだろう。たとえ、生きていたとしても。もうそれは生きる屍になっている筈だ。「排気システムはまだ回すなよ? 外に厚生労働省の役人たちが居るからな」私がそう言うと百田が言う。「ただ、懸念点が……」そう言われてムッ
Last Updated : 2026-05-31 Read more