遼大と聖カトリーナへ戻る。私と遼大が使っている部屋に入ると、すぐにノックが響いて、湊が顔を出した。「湊、どうしたの?」そう聞くと湊は近くのカフェのコーヒーカップを持っている。「これ、差し入れに」そう言って私と遼大の分を差し出す。「ブラックは高嶺さんに。カフェオレは燈に」コーヒーの差し入れは有り難い。手渡されたカップの蓋を開けると、ふわりと上質な香りが漂う。遼大のカップからはエスプレッソを追加した極濃のブラックアイの匂い、そして私のカップからは、生クリームを使った極甘のブレベオレの温かい甘さが広がった。受け取って言う。「ありがとう」湊は何だか含み笑いをしている。「どうしたの?」そう聞くと湊が笑いながら言う。「カフェで愛沢くるみに出くわした」そう言われて飲みかけていたカフェオレを吹き出しそうになる。遼大も笑っている。「それで? 愛沢くるみは何て?」そう聞くと湊が言う。「金の無心だったよ。乙藤小春から引っ張れない事が分かって焦ったんだろう」そう言われて私は笑う。私たちが仕掛けた愛沢くるみのスマホとPCを覗くバックドア。そこから流れ込んで来る彼女のプライベートな情報たち。しかもリアルタイムで流れ込んで来るそれは、今、愛沢くるみが何を考えていて、何を仕出かそうとしているのかを、全て見透かせる、魔法の扉になっている。ピコンと湊のスマホが鳴る。湊がスマホを見て怪訝そうな顔をする。「どうしたの?」そう聞くと湊がスマホの画面を見せてくれる。そこに映し出されていたのは、加山良江が監視している愛沢くるみのスマホの中の最新情報だ。真壁早妃そんな名前が愛沢くるみのアドレス帳に加わっている。私は遼大と顔を見合わせる。あの愛沢くるみが真壁早妃と接触をした。それが示す事は……。「真壁早妃って誰なんだ?」そう聞く湊に遼大が言う。「千堂彰の一件で、EMSOの日本支局の再編が急務になった。乙藤氏からの提案でEMSO日本支局の人員補充の為に呼ばれたEMSO本部の人間だよ」湊がそれを聞いて少し驚く。「何だってそんな本部の人間が愛沢くるみに接触を?」そう聞かれて私は苦笑する。何だか、その本意が分かってしまったからだ。私は遼大を見上げる。遼大も私を見て頷く。「真壁早妃は私を陥れたいのよ」私がそう言うと湊が眉間に皺を寄せる。「それで愛沢く
Last Updated : 2026-07-14 Read more