車が止まる。見ると目の前に小さなアパート。「ここだな」遼大がそう言う。私は遼大と共に車を降りて、アパートを見る。移動中に急に降り出した雨が地面に打ち付けている。傘をさして遼大と共に歩く。「上だ」遼大にそう言われて私は階段を上がる。ものすごい雨だ。ゲリラ豪雨の中、私は遼大の後に続き、アパート2階の角部屋まで来る。表札には山村と書かれている。遼大と顔を見合わる。チャイムを鳴らす。ドアが開く。中から山村奈津美が顔を出し、私の顔を見た瞬間、息を飲む。「……燈先生」久しぶりに見た山村奈津美は少し痩せていた。「お話をしたいのだけど」私がそう言うと山村奈津美は何とも言えない表情で少し考えている。私は隣に立つ遼大を紹介する。「彼は私の婚約者で、公私ともにパートナーの高嶺遼大さんよ」そう言うと山村奈津美は遼大を見上げて、一瞬、呆ける。「高嶺、遼大さん……」山村奈津美がどうしてこんな顔をするのかは分からなかった。「はじめまして、高嶺と申します」礼儀正しくそう挨拶する遼大に、山村奈津美の頬がほんの少し染まる。それを見て、私は内心、思う。(やっぱりイケメンはこんなところでも役に立つのね)そう思っている自分が少しおかしかった。「外はすごい雨なので、中に入ってお話しても?」遼大はその容姿を活かしてそう言う。「えぇ、どうぞ」山村奈津美がドアを開ける。外の雨の音が大きくて、少し大きな声で話さなければならなかった私たちは、山村奈津美の部屋の玄関に入る。人一人がやっと立てるくらいのスペースしか無い。玄関のすぐ脇にはキッチン、奥に一部屋あるのが見える。山村奈津美が言う。「中へどうぞ」そう言われて私も遼大も靴を脱いで部屋に上がる。通された部屋は私と遼大が入ると、グッと密度が増す。「狭い部屋ですみません、適当に座って下さい」山村奈津美にそう言われて私と遼大は部屋の中央に配置されているテーブルを囲むように座る。「何か飲むものでもお出ししますね」そう言って山村奈津美がキッチンへ入って行くのを見送る。部屋を見回す。必要最低限の物しか置かれていない部屋。ここはリビングなのだろう。隣にもう一部屋ありそうだ。ふと目に付いたのは飾り棚に置かれている写真。誰か男性と二人で写っている。(……恋人?)そう思いながら私はその写真に目を凝らす。小さな写真なので、ここから
Last Updated : 2026-08-13 Read more