私と遼大はホテルの部屋を出て、八重樫一晟の指定したホテルに向かう。本当ならこちらからも場所の指定をすべきだったのだろうけれど、八重樫一晟がそれをさせなかった、というのもある。私たちは不測の事態を考えて、それぞれが配置につく事にした。実際に八重樫一晟に会いに行くのは私と遼大、そしてその八重樫一晟の居る部屋の近くに賀神さんが、加山良江には愛沢くるみの端末の動きを逐一探って貰い、湊には公的な人間たちのとパイプ役を担って貰った。湊も賀神さん同様、現場に出たがっていたけれど、今回はそれを我慢してもらう形にを取った。私や遼大、賀神さんは現状、国内の医療機関の制約を受けていない。EMSOという組織内のいざこざという側面もある。愛沢くるみが本人の意思で八重樫一晟に付いて行ったのだから、言ってしまえばそれも自己責任の一環だ。そして湊にはそれを止める手立てが無い。「アストリア・メトロポールに向かってくれ」遼大が運転手にそう告げる。私たちが宿泊している【ル・ヴァンドーム】から、八重樫一晟が宿泊している【アストリア・メトロポール】までは、それほど時間はかからない。ヴァンドームもアストリアも国内では最高峰のホテルだ。ヴァンドームは老舗、アストリアは最近出来た先鋭的なホテルだ。アストリアは先鋭的なホテルと言われるだけあって、現代美術品がホテルのフロントに飾られ、異質な雰囲気を醸し出している。私たちがフロントに入ると、アイスグレーのスーツを着た数人の男性たちに囲まれる。八重樫一晟の部下だろう。「高嶺遼大様、佐伯燈様ですね?」そう冷たい無機質な声で聞かれて遼大が警戒しながら頷く。「あぁ、そうだ」そう言うとその男性が言う。「一晟様がお待ちです」そう言って私たちを促す。数人の男性に囲まれて歩いている私たち二人は相当、異質だっただろう。こういう扱いをされると、本当に敵陣に来たのだなと思う。エレベーターで階上へ上がり、ポーンという電子音の後、開いたエレベーターの扉の向こうは、当然のようにスイートルームだった。大きなスイートルームの扉が開くと、目の前の光景がパッと開く。部屋全体がアイスグレーに統一されていて、無機質で冷たい印象の部屋だった。「高嶺総帥、そして佐伯燈さん、良くいらっしゃいました」そういう声が聞こえて、姿を現したのは、その部屋の色にでも染まったかのような八重樫一
Last Updated : 2026-08-30 Read more