混乱の最中、俺は確実に見た。燈が背を押し出され、前に飛び出したその時、燈を押したその手の主を。愛沢くるみだった。愛沢くるみがその場にいたのは偶然だろう。俺に会いに来ていたのだから、その後、院内を歩いていても何の不思議も無い。おそらくは俺に話を聞いてもらえなかった事で、俺の周囲を探ろうとでもしていたのだろう。もしかしたら俺の個人オフィスに入り込もうとしていたのかもしれない。押された燈を庇ったのは高嶺さんだった。俺も手を伸ばそうとしたけれど、目の前の看護師が俺の方へ押し出されたのを見て、思わずその看護師を受け止めたのだ。俺の隣で警備員が刃物を持った新見悟を捕らえようと動き出していた。全てがあっという間の出来事だった。燈に縫合の処置を受けている高嶺さんを見て、俺は安堵した。燈が自ら縫合するなら大丈夫だ。俺は目の前の新見悟を見下ろし、嫌悪した。そしてこうも思ったのだ。俺ももしかしたら、こうなっていたのかもしれない、と。五年前、俺は確実に燈を嫌悪していた。それは愛沢くるみによる印象操作だったとしても、だ。「警察に引き渡せ」俺はそう言い捨てて、高嶺さんの元へ行く。「大丈夫ですか?」そう聞くと高嶺さんはその腕に燈を抱き寄せながら微笑む。「あぁ、問題無い」燈は高嶺さんの胸に顔を埋めて泣いているようだった。その様子を見て俺は微笑み、そしてその場のカーテンを引き、二人を周囲から隔絶する。俺は俺でやれる事をやる。今回のレベル4の騒ぎを納めなければならないのと。愛沢くるみを追わなければ。◇◇◇「レベル4!?」俺はそれを聞いて、思わず大きな声が出てしまった。「それで、高嶺さんと佐伯顧問は?」俺がそう聞くと高嶺さんの部下が言う。「総帥が怪我を」そう言われて俺はその場にいた全員に言う。「悪いが、外す」そう言ってEMSOの分析室を出る。佐伯顧問が分析してくれていたレプリトールディザスターの構造式を皆に説明していたところだったのだ。この分析結果を元に、レプリトールディザスターの中和を進めるつもりだった。「賀神さん!」声を掛けられ、振り向くと真壁早妃が走って来る。「高嶺さんは?」そう聞かれて俺は言う。「それを今から確認しに行く」真壁早妃もその顔に焦りを見せている。おそらくは高嶺が怪我をしたと耳にしたんだろう。「君も高嶺の様子が気にな
Last Updated : 2026-08-23 Read more