All Chapters of 残業は、あなたのためだけに~部長、あなたを壊すのは俺です: Chapter 21 - Chapter 30

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21.奥まで来てほしい

伊吹の熱が背中に密着してくる。その体温が、指先の余韻ごと全身に染み渡るのを感じた瞬間、南條は呼吸を忘れそうになった。太腿を抱えられ、ゆっくりと腰を引き寄せられる。背後から伊吹の体が重なり、すぐ下腹部に熱いものが触れる感触。期待と、ほんのわずかな緊張。それでも、「もう受け入れたい」と思ってしまう自分の渇きが、羞恥よりもはるかに大きい。伊吹はそっと、南條の肩にキスを落とした。「…いきますね」静かな囁き。南條は声にならないまま、シーツをぎゅっと掴んだ。その瞬間、伊吹の先端がゆっくりと、じわじわと、南條の中へ押し入ってくる。最初の侵入は、やはり強い違和感とわずかな痛みを伴った。だがそれよりも、“内側が満ちていく感覚”の方が強烈だった。「…っ、は…ぁ……」声が漏れる。圧迫と熱が、身体の奥深くを埋めていく。深く、さらに深く、伊吹がゆっくりと進んでいくと、背中越しに彼の吐息が耳元にかかる。完全に奥まで入った瞬間、南條の身体はびくりと跳ねた。「すごい…全部入った」伊吹の声が震えている。その熱を内側で包み込む感覚。前回とは比べものにならないほど、南條は自分の奥が“伊吹でいっぱいになる”ことに、はっきりとした快感を感じていた。しばらく動かず、伊吹の手が腰骨をそっと撫でる。「大丈夫ですか」「…もう、動いて…」南條は自分でも信じられないくらい素直な声で応えた。すると伊吹はゆっくりと、浅く、小刻みに腰を動かし始める。最初はゆるやかな往復運動。だが、奥まで擦れる感覚が、敏感になった内壁をなぞり、背骨の奥に快感の火花が散る。「…あ、ぁ……っ、」伊吹は深く突き入れることはせず、敢えて浅く、だが角度を変えたり、時折ぐっと押し込んだりと執拗に“奥の一点”を探り続ける。それが焦らしなのだと気づいたのは、何度も突かれ、何度も頂点に近づいては引き戻される感覚を味わった後だった。「…伊吹、あっ、…や、だ……もう、」腰が勝手に伊吹の動きに合わせて揺れる。それなのに、伊吹は絶妙な力加減で南條を“イかせない”まま、奥をじらし続ける。「まだですよ、南條さん」耳元で囁かれる声が熱くて、ぞくりと鳥肌が立つ。伊吹の手が腰をしっかり支え、動きをコントロールされる。快感は臨界点すれすれで膨れ上がり、ひたすら“待たされる”ことそのものが快楽に変わっていく
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22.支配される悦び

伊吹の腰が、迷いなく深く打ちつけられる。逃げ場を塞ぐように抱えられた脚が、伊吹の腕の中でしっかりと固定され、南條はただ、揺さぶられる感覚に身を委ねるしかなかった。奥を擦られるたび、内側が熱く跳ねる。前回よりも、はっきりと、強く、身体が反応しているのがわかる。理性が追いつくよりも早く、快感が先に身体を支配していく。「……っ、伊吹……」名を呼ぶ声が震え、喉の奥で崩れた。伊吹はそれに応えるように、さらに深く腰を沈める。「ここ、ですね」囁きと同時に、角度が変わる。その瞬間、南條の背中が大きく反った。「あ……っ!」声が抑えきれず、はっきりと空気を震わせる。奥の一点を、確実に捉えられている。指で触れられた“そこ”を、今度は伊吹自身で、何度も、何度も。伊吹は動きを止めない。浅く、深く、緩急をつけながら、逃がす気のない突き方で、南條の内側を執拗に責め続ける。「……そんな顔、して」低い声が耳元に落ちる。南條は、自分の表情を確かめる余裕などなかった。眉が寄り、唇が開き、息が荒く漏れているのが、自分でもわかる。恥ずかしい。だが、それ以上に――「……だめだ……」言葉とは裏腹に、腰が伊吹の動きに合わせて揺れてしまう。前の方が、強く主張しているのを、はっきりと自覚する。触れられていないのに、内側を突かれるたび、勝手に熱が集まっていく。伊吹はそれに気づいているはずだった。それでも止めない。むしろ、さらに深く、確実に、奥を打ち抜く。「前より……すごく、感じてますね」囁かれた言葉が、決定打だった。前回は、混乱の中で流されただけだった。だが今は違う。はっきりと、“感じてしまっている”。伊吹の動きは執拗で、容赦がない。奥を擦るたび、身体の芯から震えが走り、視界が白く滲む。「……や、やめ……っ」止めてほしいのか、終わらせてほしいのか、自分でもわからない。ただ、限界が近いことだけは、否応なく理解してしまう。伊吹の手が、南條の腹部に添えられた。押さえつけるようでもあり、逃がさないようでもある仕草。「……ほら」そう言って、伊吹は一層深く、強く、奥を突き上げた。その瞬間、全てが繋がった。「あ……っ、ぁ……!」声が跳ね、腰が大きく浮く。前の方が、伊吹の動きと連動するように、勝手に脈打つ。止められない。触れられていない
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23.快楽の奥、三度目の波

全身が強く震えて、意識がどこか遠くへ連れていかれるような絶頂の余韻が続いていた。息が荒く、喉が焼けるほど熱い。挿入されたまま達してしまったという事実は、恥ずかしさと衝撃、そしてどこか満ち足りた幸福感のなかに溶けていた。だが、伊吹は南條の中から抜けることはしなかった。むしろ、腰の奥深くに熱を宿したまま、今度はゆっくりと、だが確実に動きを再開する。「……っ、伊吹……」喉からかすれた声が漏れる。全身が敏感になりきっていて、わずかな動きにも耐えきれずに痙攣してしまう。「まだ、いけますよね」伊吹が低く囁いた。耳元に落ちるその響きだけで、皮膚がぞくりと粟立つ。「無理……もう、やめて……」情けないほど弱い声だった。だが、伊吹は南條の頬に口づけを落としながら、腰の動きを緩めない。「でも、ほら……南條さん、またこんなに……」優しい指が前を撫でる。さっき果てたばかりなのに、そこはまた熱く脈打っていた。絶頂後の身体が、すでに次の波を予感している。腰が、跳ねた。痺れるほどの快感が、絶頂の直後からまた湧き上がってくる。「や、だ……やめて、やだ……」言葉は拒絶なのに、身体は正直だった。伊吹のものが奥を抉るたび、快感は臨界点すれすれで波を打ち、脚の付け根が勝手に震える。「南條さん、すごく綺麗ですよ」伊吹は、南條の震える手をそっと握り、指を絡めた。「もっと感じて……ください」その言葉通り、伊吹の腰が一段と深く、強く沈む。奥を打ち抜かれるたび、南條の全身が跳ね、思考は白く塗りつぶされていく。「や……っ、伊吹、もう……だめ……」もう限界だと思った。それなのに、伊吹の動きが荒くなり、内側を押し広げられる感覚がさらに強くなる。快感の奔流が、三度目の波となって押し寄せてきた。「あ、あ……っ、」今度は、先ほどのように液体は出ない。けれど、体の奥が爆発するように痙攣し、南條は絶頂に飲み込まれる。視界が大きく揺れ、耳の奥で自分の心臓が高鳴る音だけがやけに鮮明に響いた。その瞬間、伊吹の腰が深く沈み込み、震えるように痙攣した。「南條さん、俺も……っ」熱が、内側に流れ込んでくる感覚。伊吹の声と、息と、奥を満たす脈動が、南條の全身を締め上げた。南條は、自分でも信じられないくらい伊吹にしがみついた。伊吹の背中に爪を立てる。目の奥が熱く滲ん
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24.距離感のほころび

昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。営業企画部のフロアには、わずかにコーヒーの香りと、誰かの低い笑い声が残っている。南條司はいつものように自席でパソコンに目を落とし、淡々とタスクを整理していた。視線を上げれば、曇った窓の向こうに沈みきらない冬の日差しが浮かぶ。寒々しい外の気配と違い、社内はヒーターの温度設定がやや高く、空気が少し重たい。ふと隣のデスクで、市川が控えめに咳払いをした。市川は南條の部下で、30代半ばの実直な男だ。ここ数日、昼休みのたびに市川は南條の隣で、何か言いかけては引っ込める動きを繰り返していた。「部長、今日の午後のアポなんですが…」市川がタブレットを差し出し、予定表を指差す。その指の動きはぎこちなく、どこか落ち着きがない。南條は画面をひと目見て、短く応じる。「はい、分かりました」返事の声が自分でも平坦すぎた気がした。だが市川は「ありがとうございます」と小さく頭を下げ、会話をそれ以上広げようとはしなかった。その様子を、斜め向かいの席で伊吹が静かに見ているのが分かった。伊吹蓮は、部署内で一際目立つ存在だった。整った容姿、愛想の良さ、社内の誰にでも分け隔てなく振る舞える器用さ。だが、南條にだけは不自然なほど距離が近い――そんな気配が、最近、周囲の視線からも感じ取れるようになっていた。休憩が終わり、皆が各々の席へ戻る。オフィスに再び、パソコンのキーを打つ音と、紙をめくる小さな音だけが戻ってきた。伊吹は自分のデスクで、何か書類の整理をしているふりをしながら、ちらちらと南條の方を見ていた。その視線を意識するたび、南條の背筋は僅かに強張った。最近、伊吹の「懐き方」が変わってきている――それは南條自身も感じていた。休憩時間の雑談、さりげない気配り、無意味に思えるほど細やかな声かけ。それらは「部下が上司を立てる」ための作法にしては過剰で、しかも、その過剰さを周囲が薄々感じ始めているのが、怖かった。午後一番のミーティングが始まる。会議室でプロジェクト進捗の報告を聞きながら、南條は意識の半分を「誰が伊吹を見ているか」に向けていた。市川が伊吹に「先週の資料のフォロー、ありがとう」と声をかける。伊吹は笑顔で「いえ、部長に手取り足取り教えてもらいましたから」と返す。市川は「そうなのか」と少し目を細めて、どこか探るような視
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25.境界線の引き方

雨音が遠くの窓ガラスを細かく叩いていた。オフィスの天井灯はまだ点いたまま。夕方、会議室のガラス戸を閉めて座った南條は、自分でもやり過ぎだと分かっていた。資料の山を前にして、彼は伊吹に今日の報告書を求めるでもなく、ただ黙って、机上の書類を並べ替えているだけだった。外の空は、まるで今の自分の心の中のようにどこまでも灰色で、切れ目のない雲の帯が、地上に沈んだ光を落としている。オフィスのフロアには、終業前の重たい静けさが漂っている。だがこの密室だけは、もっと重い、言葉にならない圧力に満たされていた。「資料、ここにまとめました」伊吹が淡々とした声で、ファイルを差し出す。手指の節が薄く紅潮しているのが一瞬見えた。南條は受け取ることも、顔を上げることもできずにいた。自分があからさまに距離を取っているのは明らかだった。「…ありがとう。あとで確認しておく」必要最低限の言葉しか返さない。その口調に、自分でもとげとげしい何かが滲んでいるのを感じる。伊吹もそれに気づいたのか、一瞬だけ目を伏せて、小さくうなずいた。「他に何かありますか」「いや、今日はもういい」伊吹は「分かりました」と静かに言い、資料を持ったまま一歩だけ後ろに下がった。その仕草は、どこか寂しげで――けれど、南條は意識して「それでいい」と思い込もうとしていた。昼間、市川や他の社員たちの視線を何度も感じていた。伊吹への過剰な懐き方。自分への無意識の依存。部下と上司、それ以上になりかねない気配。――このままでは、仕事まで壊れてしまう。そう思うたび、南條の心の中に小さな棘が刺さった。だが、その棘を抜く方法が分からなかった。伊吹のことを遠ざけようとすればするほど、なぜか心が苦しくなっていく。「……あの」伊吹が、少しだけ声を上ずらせて口を開いた。普段の自信たっぷりな表情とは違う。迷いと、どこか子どもじみた切実さが混ざっている。「このままじゃ、ダメですか」「…何が」「いえ、やっぱり、いいです」伊吹は、ほんの一瞬だけ、机の端に目を落とした。南條は思わず、その手元に目をやった。ファイルを持つ指先が微かに震えている。「部長」静かな呼びかけが、密室に溶けた。「俺、ちゃんと分かってます。仕事と…それ以外、混ぜちゃいけないって。でも、部長は…いえ、司さんは、俺にとって特別なん
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26.「司さん」の重さ

玄関のドアが閉まる音が、週末の静けさに小さく響いた。コートを脱いだ南條は、薄い息を吐きながら、玄関脇の靴箱に革靴を並べる。金曜の夜、終業間際まで何度も「今夜はやめておこう」と思ったはずだった。だが、定時を過ぎてデスクを片付けていると、伊吹が「今日も、来てくれますよね」とごく自然に声をかけてきた。それだけで、拒む理由はすべて霧散した。リビングから微かな湯気の匂いと、出汁の甘い香りが漂ってくる。ソファに座る伊吹が、「寒かったでしょう」と声をかけてくる。テーブルには、コンビニの日本酒と湯豆腐の鍋、そして控えめな肴がいくつか並んでいた。白いシャツの袖をまくった伊吹が、鍋の蓋をそっと持ち上げる。その動作を眺めるだけで、南條の心に微かな緊張が走る。「もう鍋が温まってます」「ありがとう」そう返す声は、自分で思っていたよりもずっと小さかった。ふたりきりの空間は、外の冷気とは別の意味で張りつめている。普段通りの会話をしようとしても、仕事終わりの高揚感と、どこか取り繕うような距離感が混ざって、落ち着かなかった。伊吹が酒を注いだ湯呑を差し出す。その手の甲に湯気がかかり、白く霞んで見える。「今日は、“お疲れさま”じゃなくて…“来てくれてありがとう”って言いたいです」「…何で」思わず問い返すと、伊吹は照れたように目を伏せて笑った。「俺、今週ずっと、司さんのこと考えてて…だから、来てくれて、すごく嬉しいんです」「…また、名前で呼ぶのか」声が震えてしまうのを隠せない。伊吹は一瞬、迷うように唇を噛んだが、意を決したように南條を見つめる。「ダメですか。ここでは、“部長”じゃなくて、“司さん”って呼ばせてほしいんです」南條は酒の湯呑を持ち直し、視線を逸らした。伊吹の部屋の照明はやや落とし気味で、天井のスポットライトがテーブルの上にだけ円く明かりを落としている。外は静かな雨音。壁掛け時計の秒針が、淡々と時間を刻んでいる。「…別に、どっちでもいい」「じゃあ…司さん」その一言が、まるでガラス細工を弾くように、南條の胸の奥を揺らす。「…何だ」「ありがとうございます。司さん…ほんとに、俺、今、すごく嬉しいです」伊吹の顔には、どうしようもない幸福が滲んでいた。その笑顔を見ているだけで、南條は妙な安心感に包まれていく。ふたりは湯豆腐を食べながら、
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27.名前を呼ぶ唇

カーテンの隙間から、遠い街灯の明かりがぼんやりと部屋の壁を照らしていた。時計の針はすでに日付をまたぎ、どこか現実感の薄れた夜が、ふたりきりの空間に静かに降りている。ベッドサイドの灯りは控えめで、天井まで届かない柔らかな橙色だけが、シーツの上のふたりを包んでいた。雨はまだやまない。小さな粒が窓ガラスを滑り落ちていく音は、今夜だけ世界中の雑音を遠ざけているようだった。伊吹は、南條の隣に座っている。ほんのわずか、互いの肩が触れるか触れないかの距離だ。南條は静かに息を吐いて、何かを言いかけるように唇を動かしていた。その表情は、普段の無表情な“部長”とはまるで違う。微かに揺れる睫毛、わずかに紅潮した頬、何かに怯えるような、けれど期待を抑えきれない光が宿る瞳――こんな顔を、ほかの誰にも見せてほしくない、と伊吹は心の奥で強く思った。「…司さん」そっと名前を呼ぶと、南條の肩が小さく震える。自分が南條を“部長”と呼ぶ時には決して見せない、その無防備さが、たまらなく愛しい。伊吹は手を伸ばし、南條の頬に指先を沿わせた。薄く湿った髪を撫で、耳の後ろへとすくい上げる。その一連の動作を、南條は拒まずに受け入れている。「…どうして、そんなに優しくするんだ」南條の声は、どこか心細い。伊吹は、ただ微笑んだ。「司さんだから、です」その一言に、南條は目を逸らした。けれど、逃げようとはしない。呼吸が静かに速まる。首筋を這う自分の指に、熱が移っていくのが分かる。もう一度、ゆっくりと顔を近づける。「…キス、していいですか」南條は黙って頷いた。それだけで十分だった。伊吹は、慎重に唇を重ねた。最初は浅く、軽く触れるだけ。南條の体温を確かめるように、何度も優しく触れては離れる。そのたびに、南條の息が少しずつ深くなる。肩越しに伝わる鼓動が、自分のものより速いのが分かった。「…司さん」また名前を囁く。南條のまぶたが震え、今度は自分からそっと唇を重ね返してくる。伊吹の胸の奥で、強い何かが芽生えていく。この人の全部を、自分だけのものにしたい。誰にも、もう見せたくない。この声も、体温も、呼吸も、全部――「…もっと、呼んでほしいですか」訊くと、南條は照れたように息を吐き、小さく頷く。「…うん」「司さん」名前を呼びながら、もう一度キスを落とす。今度
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28.指先の熱、ふたりの距離

ベッドのシーツの上、南條は静かに横たわっている。伊吹の手がそっと彼の髪に触れるたび、わずかに睫毛が揺れる。まだシャワーの香りが微かに残るその黒髪を、何度も何度も撫でると、南條は息を吐くたびにほんの少しだけ首を傾げて、伊吹の手に委ねてくる。その仕草ひとつひとつが、伊吹にはとても新鮮で、美しかった。手のひらが額から頬へと滑っていく。南條の頬はいつもより赤みを帯び、目元には眠たげな翳りと、何かを期待するような色が宿っている。頬に触れた自分の指を、南條がかすかに唇で受け止めた。それだけで、胸の奥に温かな火が灯る。「司さん…」名前を呼びかけながら、伊吹は首筋に口づけを落とす。南條は思わず目を閉じ、喉をそっと反らす。その白い肌に息を吹きかけると、微かに身を震わせる。伊吹は、その反応が嬉しくてたまらなかった。ゆっくりと、指先を鎖骨の上に滑らせる。柔らかな肌の下、細い骨が指先に伝わるたび、南條の呼吸が少しずつ乱れていくのが分かる。薄く開いた唇が、僅かに震えている。伊吹は、南條の身体に一つひとつ言葉を刻み込むように、優しく、けれどじれったいほどゆっくりと触れた。手のひらが胸元へと移動し、Tシャツの生地越しに円を描く。南條は首筋に力を入れて耐えていたが、その内側で徐々に熱が高まっていくのを隠しきれていない。「もっと…感じて」小さく囁き、指先で南條の胸元をなぞる。そのままTシャツの裾をまくり、指を中へ滑り込ませる。南條の腹筋がわずかに波打ち、思わず小さく息を呑む音が聞こえた。「大丈夫…?」伊吹がそっと訊くと、南條は目を伏せたまま、わずかに頷く。それだけで、伊吹は優しくTシャツを脱がせ、白い肌を明るみにさらす。指先で乳首をそっとつまみ、親指で円を描くように撫でる。南條の体が跳ねる。声にならない吐息が、喉の奥から零れた。「…やっぱり、司さんの身体…綺麗です」その言葉に、南條はさらに顔を赤くし、唇を噛みしめる。だが、拒む気配はどこにもない。むしろ、伊吹の手が動くたび、肌の内側で熱がじわじわと膨らんでいくのが伝わってくる。伊吹は、あえて一気に攻め立てることはしなかった。南條がどんな顔をするのか、どんなふうに声を堪えるのか、そのすべてを知りたいと思ったからだ。乳首を優しく転がし、時折ついばむように口づける。南條はシーツを握り
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29.快感の奥で、名前を呼んで

シーツの上に、南條は仰向けになっていた。肩先にはまだシャツが残り、裾はすでに腰までめくり上げられている。伊吹はゆっくりと、指先で南條の腹筋をなぞった。僅かに力の入った腹部が呼吸に合わせて上下する。その律動を見ているだけで、胸が熱くなる。南條の目は薄く開き、焦点が合わないまま天井のどこかを見ていた。彼は声を堪えている。羞恥と悦びの狭間で、抗おうとしてももう逃げ場はない。伊吹はその姿を心底愛しいと感じていた。「司さん…」そっと名前を呼び、今度は南條の太腿に手を滑らせた。指先で軽く撫でると、南條はぴくりと反応する。伊吹は笑みを浮かべながら、慎重に、ゆっくりと下着を膝まで下ろしていく。南條は目を閉じ、吐息を喉の奥で震わせた。「恥ずかしい?」小さく問いかけると、南條は何も言わずに首を振った。その反応が、かえって伊吹の胸をくすぐる。「…大丈夫。誰にも見せない。俺だけの…司さんです」囁きながら、伊吹は南條の脚をそっと開かせた。膝を立てて、両手で包むように太腿を持ち上げる。光の当たり方によって、肌の色や影がわずかに変わる。その一つひとつを伊吹は見逃さず、まるで彫刻家が自分の作品を撫でるように、丁寧に愛撫していった。唇を近づけ、まずは腿の内側にそっとキスを落とす。何度も何度も、唇で円を描くように。南條は手のひらでシーツを握り、肩を震わせる。「…や、あ…」微かな声が零れた。「声、我慢しなくていいんですよ」伊吹はさらに唇を這わせ、やがて中心に辿り着く。最初は軽く舌先で触れるだけだったが、南條の反応を確かめるように、徐々に口づけを深めていく。指で包みながら、ゆっくりと、ゆるやかに舌で刺激する。南條は唇を噛み、喉奥でかすかに喘いだ。伊吹は顔を上げ、南條の表情を見つめた。頬は熱に染まり、目尻には涙のような光がにじむ。「…司さん、もっと…感じてほしい」そう囁きながら、伊吹はもう一度、口で優しく愛撫する。南條の身体が微かに反り返り、吐息が漏れる。「…い、ぶ…き…」消え入りそうな声で、南條が名前を呼ぶ。伊吹の胸に、甘く鋭い何かが突き刺さる。「司さん、嬉しい…もっと聞かせて」その言葉とともに、さらに舌を深く絡ませる。南條は恥ずかしさに身を捩りながら、少しずつ力を抜いていく。快感に抗うのをやめて、自分を委ねはじめているのが
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30.重なる名前

ベッドの上で、南條の身体はすでに十分に熱を帯びていた。伊吹の指と唇に導かれ、緊張はほとんど溶けている。それでも、最後の一線だけは、まだ越えられていない。その境目に、伊吹は膝をつき、南條の顔を見下ろした。乱れた呼吸。濡れた睫毛。唇はわずかに開き、声を堪えるように喉が動いている。伊吹は、そのすべてを胸に焼き付けるように見つめた。「司さん…」名前を呼びながら、伊吹はそっと体を近づける。南條の太腿に手を置き、ゆっくりと力をかけると、南條は一瞬だけ身を強張らせ、それから小さく息を吐いた。「……大丈夫だ」自分に言い聞かせるような、その声に、伊吹の胸が締め付けられる。「ゆっくり、いきます」そう告げて、伊吹は慎重に、深く、体を繋げていった。触れ合う熱が、境界を溶かしていく。南條の身体がびくりと跳ね、喉から低い声が漏れる。「……っ、伊吹……」伊吹は動きを止め、額を南條の額に寄せた。呼吸が重なり、互いの熱がはっきりと伝わる。「無理しないで。司さんのペースで」その言葉に、南條は小さく首を振った。「……続けて」その一言が、伊吹の中の何かを決定的に解放した。伊吹はゆっくりと腰を動かし、深く、確かめるように繋がる。そのたびに、南條の声が震え、指がシーツを掴む。「司さん……綺麗です」名を呼びながら、伊吹は律動を刻む。南條の身体は次第に力を抜き、快感に身を委ねていく。息が荒くなり、喉がかすれる。「……は、……っ」耐えきれなくなったのか、南條の目尻から、きらりと光るものが零れた。伊吹はそれを親指で拭い、優しく口づける。「司さん……」その呼びかけに応えるように、南條の唇が震えた。「……蓮……」初めて呼ばれた自分の名前。それは、伊吹にとって何よりも深く、甘い衝撃だった。「……今、なんて」確かめるように言うと、南條は目を閉じ、息を整えながら、もう一度はっきりと呼ぶ。「……蓮……」その瞬間、伊吹の胸に込み上げるものがあった。喜びと、安堵と、どうしようもない愛しさ。「司さん……」今度は伊吹の声が震える。二人は互いの名前を呼び合いながら、動きを重ねていく。身体だけでなく、心までが深く絡み合っていく感覚。南條の背が大きく反り、喉から甘い声が溢れる。伊吹はその身体を抱きしめ、離さない。「蓮……っ」「司さん……」名前と息が
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