ベッドのシーツは柔らかく、長い午後の日差しがカーテン越しに溶け込んでいる。窓から差し込む光は淡く、やがて夕暮れの気配が部屋の隅々まで染めていく。南條は伊吹の隣に座ったまま、しばらく静かに指先を見つめていた。部屋の空気は、休日らしい静けさに満ちていたが、その中心にあるベッドの上だけは、どこか張り詰めた緊張が漂っている。伊吹は、南條の横顔をそっと見つめている。微かに震える南條の睫毛。落ち着きなく動く唇。何も言わずとも、その小さな仕草のすべてが、今日この瞬間にかかる期待と高揚、そしてほんのわずかな不安を語っていた。「…司さん」名前を呼ばれて、南條は伊吹の方を向いた。瞳が重なる。カーテン越しの光が、南條の頬に淡く影を落とす。伊吹の手がそっと南條の頬に触れる。指の腹がゆっくりと肌を撫で、頬骨から耳の下へ、首筋へと伝っていく。「緊張してる?」伊吹の囁きは、ほとんど息の音だけだった。「少しだけ」南條は素直に認める。その言葉に、伊吹がやわらかく微笑む。ふたりの間にあった距離が、まるで目に見えない糸で少しずつほどかれていくようだった。「…俺もです」伊吹がそう言って、そっと南條の手を取る。指先が絡まり合い、体温がゆっくりと混ざりあう。南條の掌は、汗ばむほどに熱かった。だが、それは決して不快なものではない。ただ、相手に触れている実感が心の奥まで伝わってくる。ゆっくりと、伊吹が南條の手を自分の胸元へ導く。南條の指先が、伊吹のシャツのボタンに触れる。普段なら意識しない、ささやかな動作が、このときだけは意味を持つ。ひとつ、またひとつとボタンを外していく。シャツの隙間から、伊吹の素肌がのぞく。伊吹は、何も言わずに南條の手の動きを受け入れている。その沈黙が、むしろふたりの間の信頼と親密さを強く感じさせた。南條は自分の動作に戸惑いながらも、どこか誇らしいような高揚を覚えていた。これまでの自分なら、こんな風に誰かの服に触れ、脱がせることなど想像もできなかった。だが今は、迷いながらも自分の手で伊吹に触れたいと、はっきりと思えた。「…好きだよ」小さく囁いてみる。伊吹は、開きかけたシャツの間から南條を見つめ、目尻に細い皺を浮かべた。「俺も。司さんの全部が、好きです」その言葉に、南條の胸が熱く満たされた。まるで、どこかで絡まっていた糸が、静かに解かれていくようだった。伊吹がそ
Last Updated : 2026-01-23 Read more