Todos os capítulos de 私の夫は義妹のために99回離婚を切り出した: Capítulo 421 - Capítulo 430

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421話

「さっき教えてもらった区画と違う……。高く売れるからか……?」 そう呟きつつ、髙野辺が問題の車に近付く。 すると、髙野辺の目にもボンネットにステッカーが貼られているのが確認出来た。 「もみじさん、これが……?」 「……ええ、そうです。馬鹿ね、こんなステッカーを貼ったままにしているなんて……」 もみじは呟き、過去に自分が作ったステッカーを手でなぞった。 過去の自分が本当に愚かに思えてきて、もみじはふっと口元を歪めた。 「……本当に、馬鹿みたい」 「もみじ、さん……?」 こんな表情をするもみじが珍しく、髙野辺は驚いた。 まるで、自嘲するような、過去の自分の愚かさを笑うような。 だけど、愚かなのはもみじではない。 永遠の約束をしたのに、裏切った男が愚かなのだ。 なんと言葉をかければいいのか、髙野辺が迷っていると、ふっともみじが髙野辺に顔を向けた。 「──すみません、髙野辺さん。このステッカーの写真と、ステッカーが貼られている車の写真を撮ってしまいましょう!それで、このステッカーをデザインしたのが私だと分かる資料を用意します!」 「え、ええ……分かりました」 「あ、でも……。この車が処分されちゃったら大変です、よね……?どうしたら……」 悩むもみじに、髙野辺は安心させるように笑った。 「それについては大丈夫です。こちらで対応しておきますね」 さらり、となんて事ないように答える髙野辺に、もみじはむむっと眉を寄せた。 「髙野辺さん、もしかしたらお金で解決しようとしていますか?」 「……」 「あっ、やっぱり……!笑って誤魔化そうとしても駄目ですよ。私だって、Seaとして働いてお金を稼いでいますから。ちゃんと自分でお金を出します……!」 「だけど、こういった事は……」 「新島誠司の車です、それに、轢かれたのは私の祖父母です。……私が対応するのが、普通なんです」 もみじの強い意志を感じた髙野辺は、それ以上誤魔化す事はせず「分かりました」と答えた。 「本当なら……こういう事に、もみじさんを関わらせたりしたくないんです」 「……髙野辺さんのご実家が、大財閥……だから、ですか?」 もみじの言葉に、髙野辺ははっとして顔を向ける。 だが、猪谷とのやり取りを聞いていたなら。 もみじにもある程度、髙野辺自身の家の事は推測できてしまうだ
last updateÚltima atualização : 2026-09-19
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422話

それから。 もみじと髙野辺は再度男性に声を掛け、誠司の車を引き取る事にした。 今後、証拠を揃えたら警察に通報する事になる。 その際にこの車が既に壊されてしまっていたらどうにもならない。 男性には金を渡し、後の処理はこちらでやると言って髙野辺の部下に車を引き取らせた。 ここからそう離れていない車庫に、車を保管する。 そう言った髙野辺に車の対処はお願いし、金はもみじが払った。 この業者で、全てやる事を終えた頃には、既に夕闇が広がっていた。 「──遅くなってしまいましたね」 車に戻り、髙野辺がナビを操作しながらそう呟く。 「ええ、あっという間に時間が経っちゃいましたね」 「今日、新島社長の車を回収出来たのは良かったです。我々がこの車を引き取ったのが新島社長にバレる前に、確認出来る事はしてしまいましょう」 髙野辺の言葉に、もみじも頷く。 「きっと、彼は近い内にこの業者に連絡をして進捗状況を確認するはずです。その前に警察に通報しちゃいましょう」 「車が引き取られた、と彼が知ったら引き取ったのはもみじさんだと知られるかもしれませんしね」 「ええ。祖父母に接触を図ってくるかもしれませんから、私は早くデザイン画を見つけ、ステッカーの作成者が私だと言う事を証明しますね」 「その方がいいと思います」 そこまで話した所で、ナビの入力を終えたのだろう。 髙野辺がシートベルトを締め、もみじに顔を向けた。 「──では、そろそろ車を走らせますね」 「分かりました。お願いします」 車が走り出す。 髙野辺は、予約をしているような気配は一切無かった。 ホテルに電話している素振りも、ネットでホテルを予約している素振りも無い。 当日、ホテルに行って空いているだろうか。大丈夫だろうか、ともみじは心配したが、その心配は結局杞憂に終わる。 車を走らせ、数十分。 髙野辺の車が向かった先は、国内でも有数な高級ホテルだ。 もみじが驚いていると、髙野辺はホテルの正面に車を停めた。 すぐにホテルマンが出て来る。 「車を頼む」 「かしこまりました」 言葉少なに会話をすると、もみじに降りるように促した。 「た、髙野辺さん……」 予約していないが、大丈夫だろうか。 もみじの心配が顔に出ている。 そんなもみじに髙野辺は微笑むと、もみじの腰に自分の腕を回して
last updateÚltima atualização : 2026-09-20
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423話

案内された部屋は最上階にあるスイートルーム。 部屋の扉を開け、一礼して去って行った支配人。 もみじは自分の目の前に広がるスイートルームの部屋の豪華さに唖然とした。 こんな部屋が。 常に用意されているなんて。 「髙野辺さん……」 もみじが戸惑いつつ振り返ると、苦笑いを浮かべた髙野辺が「まずは座りましょうか」とソファに促した。 テーブルの上にはシャンパンとグラスが用意されていて。 髙野辺はシャンパンを開けた。 「──どうぞ、もみじさん」 「あ、ありがとうございます」 グラスに注がれた琥珀色のシャンパンがパチパチと弾ける。 その光景をじっと見つめていたもみじに、髙野辺が息を吸い、姿勢を正した。 「──もみじさんは、髙守株式会社を知っていますか?」 髙野辺の低く、静かな声が広い室内に響いて落ちる。 「髙守、株式会社──」 髙野辺の言葉に、もみじは同じ言葉を繰り返す。 髙守株式会社。 髙守は、古くから続く大財閥だ。 国内でホテル事業、不動産事業、アパレル関連事業など手広く事業を展開している大企業。 この国で暮らしている人なら、誰でも聞いた事がある企業だ。 それに、誰もが1度は髙守の製品を手にした事があるだろう。 それほど、大きな会社。 財閥としても有名。 そして、その名前が今、このタイミングで髙野辺の口から出て来たと言う事は。 もみじは信じられない気持ちで髙野辺を見た。 もみじの視線を受け、髙野辺は苦笑いを浮かべたまま、口を開く。 「髙守株式会社の現社長は、俺の父です。会長は……祖父、です」 「で、でも……っ髙野辺さんは、苗字が……っ」 「髙野辺、は母の旧姓です。……髙守の名を借りるのはどうしても嫌だったんです。……髙守の御曹司が、デザイン会社を設立した。髙守と言うブランド名を得た状態で、会社を経営して……利益を上げたって、それは俺の力ではなくて髙守の力になってしまう。だからこそ、俺は自分の手で一からデザイン会社を大きくしたくて……」 どうして、髙野辺が母親の旧姓を名乗っているのか。その理由を話されたもみじは、ただじっと話を聞く。 髙野辺の話は、まだ続く。 「俺の家の事は、TKに居る社員達は誰も知りません。取引先の一部には髙野辺、と言う苗字を知っている人は居ますが、ただの親戚筋だと思っています」 「そう、だ
last updateÚltima atualização : 2026-09-21
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424話

「もみじさんには、俺の家の事をちゃんと話しておきたかったんです。……初めて、好きになった女性なので。隠し事なんて、したくなかった。もみじさんが苦しんでいるなら、俺は実家の力に頼ってでも、助けたかったんです」 「──っ、髙野辺さん……」 髙野辺の口振りから、髙野辺は実家が財閥であり、自分自身が直系の──息子だ、と言う事を隠しておきたかったのだと分かる。 だが、それを今ではもみじの前で明かしてくれた。 隠し事はしたくない、力になりたいのだ、と全て正直に話してくれたのだ。 それが、どうしてなのか──。 考えなくとも、もみじには分かった。 将来を。 もみじとの将来を、髙野辺は考えてくれているからだ。 髙野辺が姿勢を正したのが分かった。 「──もみじさん。俺は、今後も……この先の未来も、あなたと一緒に歩んで行きたいと思っています。だからこそ、俺の家の事も……いずれは分かる事です。だからこそ、今、このタイミングで話しておくのが良いと思って説明させていただきました」 そこまで話すと、髙野辺はシャンパンの入っていたグラスをテーブルに置き、ソファから立ち上がる。 そしてもみじの隣に座ると、もみじの手を優しく握った。 「これから先、俺の家の事でもみじさんには沢山迷惑をかけると思うんです。だけど……、俺と一緒に乗り越えて欲しい……そう、思っているんです」 真剣な表情で、真っ直ぐもみじの目を見て告げてくる髙野辺。 もみじも自分の姿勢を正し、髙野辺の手をぎゅっと握り返した。 「──ありがとうございます、髙野辺さん。……凄く話し辛い事だったと思います。だけど、髙野辺さんが話してくれた気持ち……しっかり受け止めます。……私は、髙野辺さんのお家とか関係無く、髙野辺さん自身の事が大好きだから……。私が困っている時、怪我をした時……髙野辺さんは、迷わず手を伸ばしてくれました。髙野辺さんの優しさに、私は救われて……惹かれたんです。髙守とか、御曹司、とか……関係ないです。私は、髙野辺さんだから、ただの髙野辺 聖さんが好きなんです」 「──〜もみじさんっ」 髙野辺は、もみじの言葉に感動したように瞳を揺らす。 そして、堪らず、といった様子でもみじを抱きしめた。 もみじの細い体を、髙野辺がぎゅうぎゅうと抱きしめる。 嬉しい、という感情を抑える事なく素直に力強く抱きし
last updateÚltima atualização : 2026-09-21
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425話

ふわり、と髙野辺の唇が優しくもみじの唇に重なる。 啄むような、可愛らしい口付け。 もみじは、ぎゅっと目を瞑り緊張に体を縮こまらせていたが、想像していたよりも優しく、可愛らしい口付けに強ばっていた体から力が抜けて行く。 「──ん」 角度を変え、擦り合わせるようなキスの心地良さに、もみじが小さく声を零す。 可愛らしく声を漏らしたもみじに、髙野辺は堪らず抱きしめる腕の力を強めた。 こんな風に、好きという感情がこれ程こめられたキスなど、もみじは経験が無い。 髙野辺とのキスは、もみじへの感情がこれでもか、と言うほど込められている。 それが嬉しくて嬉しくて、もみじの目からは自然と涙が零れた。 「──っ!?すみません……!調子に乗って……っ!」 もみじが泣いてしまった瞬間、髙野辺はひゅっと息を呑み、慌てて体を離した。 「ち、違……っ、違うんです……っ、嫌で泣いたんじゃなくて!」 あわあわと慌てて自分の涙を拭うもみじ。 目元を擦るもみじに、髙野辺は優しくもみじの手を掴み、静止する。 「擦ったら良くないです。……嫌じゃ、なかった?」 不安そうに聞いてくる髙野辺に、もみじは頬を染めたまま頷く。 嫌なはず、無い。 むしろ、その逆で。 嬉しくて、嬉しくて涙が溢れてしまったのだ。 その気持ちを素直にもみじが口にすると、髙野辺は一瞬きょとん、としたがすぐに嬉しそうに微笑んだ。 「嫌じゃなかったのなら、良かったです……。すみません、もみじさんが可愛らしくて止まらなかったんです」 「か、かわ……」 「ふふっ、本当ですよ」 くつくつと楽しげに笑う髙野辺に、ぎゅっと抱きしめられる。 もみじの髪の毛に唇を何度も落とす髙野辺に、もみじは嬉しいやら恥ずかしいやらで訳が分からなくなってきた。 「う、うう……恥ずかしい……」 「──もみじさん?」 髙野辺に抱きつき、胸元に顔を埋めるもみじ。 髪の毛の隙間から除くもみじの耳は、真っ赤に染まっていて。 恋人同士の触れ合いに、ここまで恥ずかしがるもみじに、髙野辺は首を傾げた。 もみじは、かつて結婚していた。 夫がいたのだから、夫婦としてこういった触れ合いなど、数多くしていただろう。 元夫の不倫が判明した時期は触れ合いは無かったかもしれな
last updateÚltima atualização : 2026-09-22
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426話

もみじは、じっと髙野辺を見つめる。 まるで、何かを訴えるようなもみじの瞳。だが、髙野辺にはもみじが何を訴えたいのか、分からない。 ──もみじに、経験がなければ。 髙野辺もまた、そういった経験は、ない。 仕事や、それ以外──恋愛以外の事であれば、髙野辺は人の気持ちを汲み取る事に長けている。 だが、どうしても自分自身に経験が不足している恋愛事に関しては、考えを読む事が出来ない。 しかも、それが異性の感情、ともなれば尚更だ。 だからこそ髙野辺は、分からない事は素直にもみじに伝える事にした。 恋人の感情が分からない。それを恥ずかしい事だと、そのままにしておく事はせずにはっきりと伝える。 そうすれば、大切な恋人とすれ違う事はなくなる──。 「すみません、もみじさん。その……恋人同士の触れ合いが、ここ暫くは無かった、と言う事ですよね……?だから、恥ずかしかった、そういう事……ですよね?」 「──っ、」 髙野辺の言葉に、もみじは口元をもにょもにょと動かし、ちらりと後方を見やった。 もみじの後ろには、寝室がある。 「──えっ、と……?」 寝室が、どうかしたのだろうか。 髙野辺が首を傾げるのを見て、もみじは覚悟を決めたように一度目を瞑ると、髙野辺としっかり目を合わせ、口を開いた。 「その……今日、ここに泊まるんですよね……?一緒の、ベッドで……寝る、んですよね?」 最後の言葉になるにつれて、もみじの声はか細くなって行く。 それに比例して、真っ赤になったもみじを見て、ようやく髙野辺はもみじの言いたい事を察した。 そして、察した髙野辺は真っ赤になって慌てて首を横に振る。 「──ちっ、ちがっ!違うんです……っ!今日ここに泊まるのは、泊まるんですが……っ!そんなつもりはなくて!俺はリビングのソファで寝るつもりだったんです……っ!」 「えっ、え……っ!?」 「すみません、その……まだ恋人になったばかりなので、そういう事は……もう少しお互いの事を分かってから、と……」 髙野辺の言葉に、もみじは言葉を失ってしまう。 「ご、ごめんなさい……っ、私、なんて勘違いを……っ」 「いえっ!不安になるのは当然です!俺が最初からちゃんと話していれば……!」 2人して、わたわたとしながら謝罪をし合う。 真っ赤になって謝罪をし合う状況がおかしくて。 2人
last updateÚltima atualização : 2026-09-22
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427話

◇ 「──ん、んん?」 ふ、と意識が浮上する。 もみじはぼんやりとする視界に一度目を閉じた。 (えっと……。昨日、髙野辺さんと話をして……それで、どうしたんだっけ……?) せっかくだから、とシャンパンを丸々1本空けて。 その後もワインを2人で飲んだ気がする。 (……うう、頭がガンガンする。結構飲んじゃったのね……) こめかみを刺すような痛みに、もみじは眉を顰めると背中に感じる温もりに縋るようにころり、と寝返りを打った。 温かくて、安心して。何だかいい香りがする。 もみじは無意識の内に自分の顔を寄せ、擦り寄った。 「──ッ」 その瞬間、びくり、と目の前にある温もりが強ばったような気配がした。 もみじの頭上から、息を殺すような吐息が聞こえてきて、もみじは一瞬で微睡みから覚醒した。 「──た、髙野辺さん!?」 バチッ、と目を開けたもみじの目の前には、髙野辺の胸元があった。 寝惚けて胸元に擦り寄っていたのだろう。 もみじが慌てて起き上がると、そこは見た事のない部屋だった。 自分が寝ている場所も、昨夜座っていたソファではなく、ふかふかなベッドだ。 それを見たもみじは、昨夜酔い潰れた自分を、髙野辺が寝室に運んでくれたのだと理解した。 「ごっ、ごめんなさ……っ!すみませんっ!」 酔い潰れた事も。 好きな人に間抜けな寝顔を晒した事も。 全てが恥ずかしい。 もみじがわたわたと慌てながら髙野辺から離れようとした時。 ベッドの端っこに寄っていたもみじの足が、ベッドからずり落ちた。 「──わっ」 「危ない……っ!」 ベッドから落ちる、と目を瞑ったもみじを咄嗟に髙野辺が引き寄せる。 焦った髙野辺の腕の力が強く、引き寄せられたもみじはそのまま髙野辺の胸にどんっ、とぶつかってしまった。 「す、すみません……」 「──いえ」 何だか気恥ずかしくて、顔を合わせる事が出来ない。 昨夜、お酒を飲みながら話していて眠ってしまっただけ。だから、2人の間にそういった行為は、無い。 だが、それでも。 お互い好き同士なのだ。 どうにも気恥ずかしい空気になってしまい、もみじは髙野辺の胸に手を置き離れようとした。 「助けてくれてありがとうございます、髙野辺さん。その、もう大丈夫です」 だから、離してください──。 そう言おうと、腕の中か
last updateÚltima atualização : 2026-09-23
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428話

──新島 誠司が、自首をした。 その単語を耳にした瞬間、もみじは勢い良くベッドから飛び降りた。 髙野辺がいる方へ歩み寄ると、もみじがやって来た事に気がついた髙野辺が、スマホの通話をスピーカーにしてくれた。 電話相手は、秘書の蒔田だったようだ。 耳馴染みのある声が、スピーカーから流れてきた。 【どうやら、今朝早くに近くの警察署に新島 誠司が行ったようです。その際、自分が轢き逃げをした、と話したようで……】 「──轢き逃げを、認めたと言うのか?」 【ええ、どうやらそのようです。……まだ、詳しい事は分かっていません】 「──いい、分かった。これから直接もみじさんと警察署に向かう。いいですか、もみじさん?」 髙野辺に視線を向けられたもみじはこくりと頷いた。 二人が、この時間に一緒に居る事を知った蒔田は驚きに一瞬息を呑んだ。だが、それをおくびにも出さず、言葉を返す。 【分かりました。もしかしたら警察から連絡が入るかもしれません。詳しい情報を探ってみます】 「ああ、頼んだよ蒔田秘書」 通話を終え、スマホの電源を切った髙野辺はもみじの手を取った。 「もみじさん、警察から連絡は?もしくは、おばあ様から連絡は来ていますか?」 「──あっ!ま、待ってください、今確認します……!」 もみじは慌ててベッドに戻り、ベッドサイドにある棚からスマホを持ち上げた。 画面をつけて確認するが、どこからも連絡は入っていない。 もみじは髙野辺に顔を向け、首を横に振った。 「聖さん、どこからも連絡は来ていません……っ」 「なら……本当に少し前に自首したばかりのようですね。我々も警察署に向かって、話を聞きましょう」 「──ええ!すぐに支度をします!」 もみじと髙野辺は、慌てて身支度を始めた。 ◇ 時は遡り、昨日──。 もみじが、髙野辺と一緒に業者に向かい、誠司の車を引き取ったあと。 その、数時間後。 誠司のスマホに、着信が入った。 「──こんな時間に誰だ?」 時刻は、夜。 帰宅の準備をしていた誠司は、不思議そうにスマホを確認した。 スマホに表示されているのは、非通知の文字。 最初、誠司は不審がりその電話を無視しようとした。 だが、ふと非通知の文字に引っかかりを覚えた誠司は、その電話を取る事にした。 「──もしもし?」 「社長?」 離れ
last updateÚltima atualização : 2026-09-24
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429話

◇ 「──胡桃っ!」 ドタバタ、と大慌てで帰宅した誠司は家の扉を開けるなり大声で胡桃の名前を呼んだ。 誠司の大声に、キッチンにいたであろう胡桃がひょい、と顔を出す。 「おかえり、誠司。今日は取引先と会食があるんじゃなかったの?随分帰りが早いわね」 「そ、それどころじゃない……!」 「誠司さん、胡桃に怒鳴って……どう言うつもり?いつも胡桃にはそんな横柄な態度で接していたの?」 胡桃の呑気な言葉に誠司が怒鳴り声を上げる。 すると、胡桃の後ろから桔梗が出てきて、誠司はぐっと言葉を飲み込んだ。 そうだ、そうだった、と誠司は思い出す。 桔梗は、胡桃の体調を心配して今は一緒に暮らしているのだ。 そして、桔梗に自分と業者の話を聞かれていた。 桔梗さえここに来なければ。そうすれば、自分が轢き逃げをしたなんてバレなかったのに。 誠司は自分の身勝手な恨み辛みを、桔梗に向けた。 その視線を受けた桔梗は、ぴくりと眉を跳ね上げた。 「──その目は、なあに?私がここに居るのが邪魔だとでも言うのかしら?」 「いえ……」 「あなたが犯罪者にならないよう、うちが手を回していると言うのに……それなのに、そんな目をするの?随分ね」 桔梗の言葉に、誠司はハッとする。 そうだ。 今はこんなやり取りをしている場合ではない。 「──お、お義母さん!」 誠司の必死な表情を見て、桔梗は眉を顰める。 何か良くない事が起きたのではないか──。 そんな直感が、嫌な予感が胸を過ぎる。 すると、誠司は床に膝を着いて項垂れた。 そんな誠司を見て胡桃と桔梗はぎょっと目を見開き、胡桃はすぐに誠司を立たせようとしゃがみ込んだが、誠司が話し出す。 「──俺の、車を……事故を起こした車を……引き取った人間がいる、と知らせを受けました」 誠司の口から語られた言葉に、誠司の腕を取ろうとしていた胡桃がぴたり、と止まる。 「……誰が車を引き取ったのか、分かりません。だけど、恐らく……もみじと……髙野辺、だと思います。……もみじは、あの車を見れば、俺が乗っていた車だと、すぐに分かる……。もみじがあの車の写真でも撮っていたら……!俺と車が一緒の写真が1枚でも見つかれば……!轢き逃げの証拠にされます……!俺が、轢き逃げ犯だと、知られてしまう……!!」 「──最悪、ね」 「ど、どうか……
last updateÚltima atualização : 2026-09-24
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430話

「──はっ」 誠司は、言葉を失う。 桔梗から告げられた「自首」と言う言葉が、ぐるぐると頭の中を巡り、足元がぐらぐらと揺れる。 「な、何故……俺が、自首、など……」 「待って、待ってよお母さん!誠司に自首しろってどう言う事!?」 誠司が全部言葉を言う前に、胡桃が割り込み叫ぶ。 「自首ってどう言う事!?なんで誠司がそんな事をしなくちゃいけないの!?誠司を犯罪者なんかにしないわ!お腹の子の父親が犯罪者なんて……っ!」 胡桃が自分の膨らんできたお腹を守るようにして叫ぶ。 取り乱した様子の胡桃に、桔梗はさっと表情を変え、駆け寄った。 「落ち着きなさい!誠司さんは犯罪者にならないわ!なる訳ないでしょう!?胡桃の子の父親が犯罪者なんて……!私が許さないわ!」 「で、でも……っ、どうやって……っ」 「──初犯に、自首。深く反省している態度を見せれば、大丈夫よ。お父さんに手伝ってもらえれば、不起訴に出来る。……事故を起こしてしまったのは真実。逃げたのも、真実。だけど、それを深く反省して自首するの」 「……ほん、とう?それは、本当?」 本当なの、お母さん。お父さんに助けてもらったら、誠司は不起訴になるの?と胡桃は泣きながら問う。 桔梗は胡桃に言い聞かせるように告げた。 「ええ、大丈夫よ。お父さんの大学の後輩に、検事になった人がいるの。……昔、お父さんがその彼を助けた恩があるわ。……今回、その恩を返してもらえばいいの。……それに、腕の良い弁護士を誠司さんにつけるわ。彼は初犯だし、反省もしている。……起訴されないよう、取り計らってもらうわ」 桔梗はそう言うと、呆然としている誠司に顔を向けた。 「──そう言う事だから、誠司さん。あなたは自首の準備をなさい。なるべく憔悴し切った様子でね。反省している、と態度に出すのよ」 「ま、待ってくださ……待ってください。じ、自首、したら……!俺が自首、したら……会社は……俺の会社はどうなるんですか……!」 社長が人を轢いて、逃げた。 そして、その社長が自首したのだ。 そんな噂は、瞬く間に業界内に広がるだろう。 「せ、せっかくここまで大きくして……っ、これからって時、に……っ」 会社を諦めなくてはいけないのか。 誠司が声を震わせると、桔梗が胡桃を抱きしめながら冷たい声で告げた。 「……会社は、胡桃がいるで
last updateÚltima atualização : 2026-09-25
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