Todos os capítulos de 私の夫は義妹のために99回離婚を切り出した: Capítulo 431 - Capítulo 440

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431話

◇ 幹線道路を、高級車が速度を上げてひた走る。 その車に乗っているのは、もみじと髙野辺。 髙野辺はハンドルを握る手に力を込め、握りこんだ。 時刻は早朝。 秘書の蒔田から話を聞き、すぐに出て来た。 そのため、まだ朝の道路は車が少なく、髙野辺の車は速度を上げて目的の警察署に向かっていた。 だが、いくら急いでも誠司が自首したであろう警察署までは車で1時間以上は掛かる。 髙野辺は気持ちが急き、首元のネクタイをぐいっと緩めた。 「──くそっ、時間が掛かる……!」 ここまで髙野辺が苛立ちを顕にするのは珍しい。 どうしてこんな焦っているのだろうか、ともみじが考えていると、赤信号で車が停まった。 そのタイミングで、もみじが髙野辺に話しかける。 「聖さん……、どうしてそんなに焦る必要が?新島社長が自首したなら、轢き逃げの罪で彼は捕まり、正しく裁きを受けるんですよね?」 もみじの言葉に、髙野辺はゆるりと首を横に振る。 そんな事、きっと有り得ない。 誠司を自首させたのは、きっと嶋久志の嫁だろう、と髙野辺は考えていた。 嶋久志 忠は、人脈が広い。 恐らく検察庁や警察、検事に知り合いだっているだろう。 このままいけば、誠司は不起訴になるだろう、と髙野辺はどこか確信めいたものを感じていた。 だからこそ、もみじに向かって答える。 「──新島 誠司に入知恵をしたのは、恐らく嶋久志 桔梗でしょう。彼女は、自分の夫の人脈を使い、彼を不起訴にするつもりだ」 「──えっ!?」 「だからこそ、新島 誠司に自首をするよう、勧めたんです。そして、深く反省している態度を見せる。……そうすれば、調書上は深く反省している、と書かれる」 「で、でも彼は祖父母を轢いて……あろう事か逃げたんですよ……!」 「……我々には、人脈がある。……警察や、政治家、……果てには検察にだって」 「ま、待ってください……そんなの、だって……ドラマの世界じゃ……」 「……現実にも、それがあるんです。それに、現実の方がもっとどろどろとしている……」 「──っ」 もみじが呆気にとられ、言葉を紡ごうとした時。 信号が青に変わってしまった。 もみじはそれ以上話しかける事はできず、口を閉ざす。 その後、車は信号に引っかかる事はなく、順調に進んで行った。 予定より少し早く警察署に到着
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432話

もみじと髙野辺が警察署に入り、轢き逃げについて伝えるとすぐに別室に案内された。 「──被害者の玖渡川 耕三さんと、ルリさんのお孫さんと言うことでお間違い無いですね?」 「はい。祖父はまだ入院中ですので、代わりに私が」 「かしこまりました。……お2人を轢き逃げしたと言う男性が、本日午前8時に自首しました。轢き逃げ容疑者は新島 誠司、男性、23歳です」 「──やっぱり……!」 刑事から伝えられた内容に、もみじは悔しげに奥歯を噛み締め、声を荒らげる。 そんなもみじを見て、刑事は驚いたように質問する。 「知っている方、ですか?」 「はい。元夫で……祖父母とも顔見知りです」 「──えっ!?」 もみじの言葉に、刑事は驚いたまま、何点か質問をした。 「容疑者があの場所にいた理由を知っていますか?容疑者と会う約束などをしていましたか?それと、別れた後も交流がありますか?」 「いいえ。別れた後は連絡を取り合っていません。それに、あの日……祖父母が轢かれた時、どうして彼があの場所に居たのか分かりません。……あの日、私はこちらの男性──髙野辺 聖さんと祖父母の家に行って、家を出てしばらくしたら祖父母が轢き逃げに遭い、病院に運ばれたと病院の方から連絡があったのです」 「──なるほど、そうなると……少し話は違って来ますね」 刑事は考え込むように自分の顎に手をやり、暫し黙り込む。 だが、すぐにもみじに顔を向けて話を続けた。 「……現在、新島 誠司は取り調べ室にいます。お会いしますか?」 「いいえ。会いたくありません。……ただ」 もみじはそこで一旦言葉を切ると、真剣な表情で刑事に告げた。 「彼は、何と……?何故、あの場所に居たのか……何と言っているのか、教えていただいてもいいですか?」 先程、車の中で髙野辺が言っていたように、誠司が不起訴になるために自首したのであれば。 殊勝な態度を心がけているのだろう。 それを確認するため、もみじが刑事に問うと、刑事が答えた。 「──とても反省しているようで、本当に申し訳ない事をした、と。気が動転してしまい、逃げてしまった事を、被害者の方に深くお詫びしたい、と話しています」 刑事の言葉を聞いたもみじは、ちらりと髙野辺に視線を向ける。 髙野辺は険しい表情のまま、微かに頷いた。 (──やっぱり。聖さんが言う通
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433話

去って行くもみじと髙野辺を見送った後、刑事は後頭部をかきつつ、取り調べ室に戻ろうと歩き出した。 所で、呼び止められる。 「秦野、少しいいか?」 「──課長?どうしましたか?」 焦ったように秦野、と呼ばれた刑事に駆け寄ってくる課長は、足を止めると疲れたように膝に手を着いた。 「──自首してきた新島さんを釈放して」 「……え!?な、何故ですか!?」 秦野がぎょっとして聞き返すと、課長は汗が滲む額を拭いつつ、答えた。 「いや、詳しくは分からないのだが……。署長からの命令だ」 「で、ですが調書もまだ……」 「ああ、良い良い。とても反省しているだろう?そう記載してくれれば問題無い」 「か、課長……」 「それと、被害者への調書も手短に。そうしてくれ」 「──分かり、ました」 秦野刑事は腑に落ちない、と眉を顰めたが署長からの命令、となれば従うしかない。 在宅起訴に切り替えるのか?と首を捻りつつ、秦野は誠司がいる取り調べ室に向かった。 ◇ 【──はい、ええ。問題なく。すぐに帰宅させますよ】 「ああ、ありがとうございます。助かりますわ、署長」 【いえいえ、お力になれて良かったです。それでは、失礼します】 スマホのスピーカーから流れてくる年を感じる男性の声。 その男性──署長、に機嫌良く言葉を返した桔梗は、最後に明るい声で言葉を返し、通話を終了した。 傍で心配そうに桔梗を見つめていた胡桃に、桔梗はにこやかに話しかける。 「──言ったでしょう?お父さんが対応してくれるって。あの人、すぐに動いてくれたみたい。誠司さんも、もう取り調べを終わらせて帰らせてくれるって」 桔梗の言葉を聞いた胡桃は、瞳にいっぱい涙を溜めて抱きついた。 「──〜ありがとう、お母さんっ!本当に良かった……誠司が犯罪者になったら、私……っ」 「お腹の子の父親を前科者になんかしないわよ。……たけど、しばらくは慎重に行動するのよ?もみじが接触してきても無視しなさい?」 「……うん、分かった。……だけど、もみじがいくら足掻こうが、どうしようもないよね……?」 「ええ、もみじ1人ならどうしようもできないわ。……ただ、TKの社長が気になるから、社長の行動は注意深く監視しておくわね」 「──ありがとう、お母さん!」 胡桃はほっとしたように笑みを浮かべる。 そんな娘の
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434話

リビングに戻った胡桃は、テーブルに着いてノートパソコンを開いたところでハタ、と目を瞬く。 「──そうだ。誠司が自首したんだったら、もうこのステッカーは不要じゃない?作らなくて良くなったわよね、きっと?ラッキーだわ!」 胡桃は嬉しそうに表情を綻ばせ、パン、と両手を打つ。 実際、胡桃は苦戦していたのだ。 ステッカーの情報は、昔SNSに上げた写真のみ。 ステッカーのデザインの細部までは分からない。胡桃が本物のSeaであったなら。 ほんの少しでもデザイナーとしての才能があったなら。 容易に元のデザインに似せてステッカーを作る事は可能だっただろう。 だが、胡桃は海外での勉強も途中で放り投げ、帰国してしまったのだ。 誠司の子供を授かった以上、誠司の妻の座は自分になる。 それなら、無理をしてデザインの勉強をする必要もない。 なぜなら、胡桃の両親が誠司の会社をある程度助けてくれるだろうから。 「──あ。でも、誠司が自首したのって、噂になるのかしら?会社の株は……?いくらお母さんとお父さんが助けてくれても、会社の経営は傾くわよね……?大丈夫なのかしら……」 いくら桔梗や忠が助けてくれたとしても。 会社の評判が下がれば、どうしようもない。 胡桃はさあっ、と顔を真っ青にした。 「ま、まさか会社が潰れたり……なんか、しないわよね……?だ、大丈夫よね?私は、社長夫人になれる、のよね……?」 胡桃がそんな事をぶつぶつと呟いていると、玄関の方から鍵を開ける音が聞こえた。 そして、足音が近づいてくる。 胡桃はガタン、と椅子から立ち上がり、リビングの扉の方に顔を向けた。 同時に、扉を開けて誠司がやってくるのが見えた。 「──誠司」 「胡桃か……」 「お帰りなさい」 誠司は見るからに疲れているように見えた。 たった数時間で、顔はやつれ生気を失っている。 「……少し、眠る」 「あ、ちょ、ちょっと待って誠司……っ」 腹部を抑え、寝室に下がろうとしている誠司に胡桃は慌てて声をかける。 「お腹が痛いんじゃないの?」 「……だからどうした。……胃痛に聞く薬があるのか?」 誠司は痛みに歪んだ顔で、胡桃を振り返る。 せっかく事故そのものを隠そうとしたのに、このザマだ。 警察に自首しなければならないなんて。 (デザイン会社の、社長である俺が……!
last updateÚltima atualização : 2026-09-28
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435話

誠司が自分に向かって声を荒らげる事も。命令口調で何かを言われる事もなかった胡桃は、驚いて唖然とする。 声を荒らげた事に気がついた誠司は、ハッとしてすぐに「すまない」と告げると、幾分か和らげた口調で続けた。 「とりあえず、市販薬でも何でもいいから胃痛の薬を出してくれ。あと、水も。話はそれからだ」 「水はあるけど……胃痛の市販薬は無いわ。買ってきてもらわないと」 さらり、となんて事ないように答える胡桃に、誠司はぎょっと目を見開いた。 「胃痛の市販薬が無い……?俺が胃痛持ちなのは分かってるだろ?それなのに、準備していないのか?」 責めるような誠司の言葉に、胡桃はむっとして頬を膨らませた。 「だって、私と一緒にいる時、誠司が胃を悪くした事なんてないじゃない?そんなに辛そうな誠司、初めて見たもの。知らないんだから、用意なんて無いわよ」 「──〜っ、俺の胃が悪いのは昔からだろう!?長い付き合いなのに、俺の事を思って薬の一つくらい常備しておけ!」 「なっ、なによっ!私に怒鳴らないでよ!元はと言えば、誠司が人を轢いて逃げるからいけないんでしょう!?」 売り言葉に買い言葉。 胡桃と誠司の言い合いは、熱を増していく。 「──もみじだったら……!もみじは、常に俺の体調を考えて、薬を常備してくれていた!主治医に相談して、俺の体調に合う薬を処方してもらっていたんだ!俺が大事なら、お前も少しくらいもみじを見習え!!」 「な……っ」 誠司のあまりの言いように、怒りで頭の中が真っ赤に染まる。 胡桃は手近にあったノートパソコンを掴み、誠司に向かって投げつけた。 「もみじと比べるなんて!どんな神経をしているのよ!ふざけないで!!!」 「──っ」 咄嗟に自分の腕で顔を庇った誠司。 腕に胡桃のノートパソコンが当たり、痛みを感じる。 じんじん、と痛みを訴える腕。 誠司は胃の痛みにも耐えきれず、未だに喚き続ける胡桃を無視して椅子から立ち上がった。 「ちょっと!どこに行くのよ、誠司!!」 胡桃の甲高い声が頭に響く。 胃痛も耐えられないが、頭も痛くなってきた誠司は、そのまま寝室に向かって歩き出した。 「私を……っ、私をもみじなんかと比べないでよ!もみじを捨てたのは、誠司、あんたじゃない!それなのにもみじの事を今更出すなんて卑怯だわ!もみじを捨てたのはあんたよ!
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436話

◇ 「ただいま、おばあちゃん」 「あら、もみじちゃんに髙野辺さん。お帰りなさい」 もみじと髙野辺は、祖父母の家に戻ってきた。 玄関の扉を開け、居間に進むともみじの祖母ルリがほわりとした温かい笑みを浮かべ、2人を出迎える。 そんなルリの優しい笑みに、もみじはきゅっと唇を噛み締め、ルリの横に膝を着く。 そして、そのままルリに縋るように抱きついた。 「──あらあら、どうしたのもみじちゃん」 「……ううん、何でもないの。……何でもないのよ」 「……?」 孫の様子がどこかおかしい──。 ルリはちらり、と髙野辺を見やる。 ルリの視線を受けた髙野辺は、申し訳なさそうに眉を下げ、悲しそうに笑った。 (……おじいさんの事で、何か分かったのかしら) ルリはそう思うと、すぐにもみじの背中に手を回してぽんぽん、と慰めるように優しく叩く。 そうしていると、もみじがそっと顔を上げ、ルリに話しかけた。 「……おばあちゃん、警察から連絡……来た?」 「いいえ、特にはないけど……。何か進展があったの?」 「うん。それがね……おじいちゃんとおばあちゃんを轢いた犯人が、警察に自首したの」 「──えっ」 もみじの言葉に、ルリが驚きの声を上げる。 ルリが言葉を発そうと、口を開いたところで、家の固定電話が鳴った──。 「──あら、電話?」 ルリが電話の方に顔を向け、もみじから離れる。 電話の方に向かって行くルリの背中を見ていると、もみじの隣に髙野辺がやって来て、手を差し出した。 「もみじさん。おばあ様に話しましょう」 「──ええ、聖さん」 髙野辺が差し出してくれた手に自分の手を重ね、もみじが立ち上がった時。 電話を受けていたルリが驚いた声を上げた。 「どう言う事ですか……!?犯人が、自首……?」 「──おばあちゃんっ」 声を荒らげるルリに、もみじと髙野辺は急いで駆け寄る。 「おばあちゃん、興奮しないで……!血圧が上がっちゃうわ……!」 「──電話、俺が代わります……!」 もみじがルリを支え、髙野辺がそう告げると、ルリは額に手をやり受話器を髙野辺に手渡した。 「どう言う事、なの……犯人が自首……?それに、私たちを轢いた犯人が、新島 誠司って……誠司さんって、もみじちゃんの元旦那さん、でしょう?どうして、こんな……っ」 「──おばあちゃん
last updateÚltima atualização : 2026-09-29
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437話

ルリの部屋の障子が開き、髙野辺が顔を覗かせる。 そして部屋に入ってくると、もみじの隣に腰を下ろした。 ルリは髙野辺に視線を向けると、悲しそうに眉を下げて問いかけた。 「……それで、警察の人は何と言っていたのかしら……?」 もみじは髙野辺に顔を向けて小声で「私から話します」と告げる。 真っ直ぐ目を逸らさず、強い眼差しのもみじ。 髙野辺は頷いて、もみじの手を握った。 髙野辺が、勇気付けてくれているのだろう。それが分かったもみじは、自らも髙野辺の手を握り返し、ルリに向き直る。 「おばあちゃん。私から話すね。……おじいちゃんとおばあちゃんを轢いた犯人が自首したって、私が話したでしょう?」 「え、ええ……それで電話が、来て……。自首したのは男性で、新島 誠司って名前だって……警察の人が……それで、調書は必要ないからって……」 ルリの言葉を聞き、もみじは悔しそうに唇を噛んだ。 調書が必要ない、なんて。普通なら有り得ない。 自分達がここに帰ってくるまでの2時間。 警察内部では、既にこの事件の処理の仕方が決まっているのだろう。 調書が必要ないと言う事は。 誠司は確実に不起訴処分だ。 もしかしたら、既に釈放だってされているかもしれない。 その事を、もみじは順を追って、ゆっくり分かりやすくルリに説明していった。 もみじの話を最後まで言葉を挟まず、黙って聞いていたルリは、長い長い溜息を吐いて額を手のひらで覆った。 「──おばあちゃん」 もみじが心配そうに声をかけると、ルリは心配させまいと言うように無理やり笑顔を貼り付ける。 「……そう、そうなのね。犯人──誠司さんは自首した、けど……。不起訴になる可能性がとても高いのね……」 「──うん。とても悔しいんだけど……。多分、新島誠司の件で、あの人が警察に働きかけたんだと思う」 もみじが「あの人」と言葉を濁して告げたが、ルリにもその人物は分かる。 それだけの影響力を持ち、誠司を助けるために動く人物は嶋久志 忠しかいない。 忠は、自分の娘のために夫となるであろう誠司が前科者にならないよう、動いたのだろう。 忠の娘は2人いると言うのに、いつも優先されるのは。大切にされるのは、桔梗との間に授かった胡桃だけだ。 それが、ルリはどうしようもなく悔しくて、やるせなかった。 舞奈との子供、もみじを鑑
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438話

叩き潰す──。 まさか、そんな言葉がもみじの口から出るとは思わなかったルリは、驚いたようにポカンと口を開けた。 もみじが苦笑い混じりに「ごめんね、口が悪かったね」と零す。 ルリはすぐにハッとしてもみじの手を取った。 「──ううん。滅多に怒らないもみじちゃんが、こんなに怒っているんだもの。相当腹に据えかねているのは分かるわ。おじいさんももう退院するし、私とおじいさんが協力出来る事はいくらでもするからね。1人で背負い込まないでね」 「ありがとう、おばあちゃん……」 もみじとルリ。2人が固く手を握り合っているのを見て、髙野辺は言葉を挟まず黙っていた。 そんな髙野辺に、もみじはちらりと視線を向けると、ルリに話しかける。 「聖さ──髙野辺さんも、凄く協力してくれたの。今回、新島誠司が自首するようなきっかけを作れたのも、髙野辺さんのお陰なの……本当に、彼には沢山助けられていて……」 もみじの言葉に、ルリも髙野辺に顔を向ける。 自分の方を見た髙野辺に、自然と背筋がしゃんと伸びる。 「そう、髙野辺さんが。……髙野辺さん」 「──はい!」 ルリが、もみじに向けているような優しい目で、髙野辺を見つめる。 そして、優しく柔らかな声音で髙野辺を呼んだ。 髙野辺は硬い声で返事をして真っ直ぐルリを見返す。 緊張した面持ちの髙野辺を見たルリは笑った。 何だか、これではまるで結婚の挨拶のようだ。 ルリの頭にふとそんな言葉が浮く。 ルリはもみじを見て、そして再び髙野辺を見たあと、嬉しそうに言葉を発した。 「色々とありがとう……。これからももみじちゃんをよろしくお願いしますね」 「──っ、はい、もちろんです!」 ルリの言葉に、髙野辺は深々と頭を下げる。 柔らかい雰囲気。 優しい空気感に、もみじも自然と笑みを浮かべた。 ◇ 誠司が自首をし、警察署に数時間居た事で会社の業務は滞った。 社長の決済が必要なもの。 社長を交えての新商品会議。 取引先との会議、などなど……。 誠司の姿一つないだけで、滞る内容が多岐にわたる。 いくら桔梗や胡桃が一時的に社長代理として仕事をしようとしても、桔梗は社会経験が浅く、また胡桃は経営的な手腕も、頭脳も持たない。 言ってしまえば、頭の出来が悪く、社長の仕事など出来る訳がないのだ。 誠司は警察署から帰宅したと
last updateÚltima atualização : 2026-09-30
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439話

社員の一言に、集まっていた他の社員が驚いたように話し出す。 「──えっ、どう言う事だ?」 「確かにお前の家、遠いもんな……あの警察署の前を通るか……」 「じゃあ、社長が今日出勤しなかったのは、警察署に居たからって事か……?」 「……何をやったんだ?」 「そもそも、俺たちの会社……大丈夫なのか?」 「給料、ちゃんと支払われるよな……?」 様々な憶測と、不安が飛び交う。 「え……っ、給料払われなかったらどうすんだ……?俺、この会社辞めようかな……」 「俺もそうしようかな」 「社長が不倫するわ、警察署にいるわ……取引先との仕事に穴を開けるわ、だもんなぁ……」 「この会社、ヤバいんじゃねえかな……」 「だけど、この会社をやめて、どこ行くっていうんだよ……」 「──俺は!TKを受けるぞ!中途採用枠を定期的に募集してるんだ、TKは!ここで仕事していたって言う実績があるし、他の奴らよりは受かりやすいだろ!」 「あっ、ずりい!俺もTK受けるぞ!」 俺も──。 私も──。 そこに集まっていた社員達は、わいわいと話した後、早速辞表を提出するために自分のデスクに戻って行った。 例え、誠司の会社──NEW ISLANDを退職しようが、TK株式会社に受かる確率はゼロに等しい。 しかも、TKの社長は髙野辺だ。 もみじを軽んじ、冷たく酷い態度を取っていた社員達を、髙野辺が果たして採用するだろうか。 自分の行動を恥じ入り、食い改めればもしかしたら、と言う可能性はあるが、髙野辺はそう言った人間の軽薄さ、感情に鋭い。 髙野辺が認めるくらいの仕事の腕を持っていれば話は別であるが、中途採用されるだけの実力はこの会社の社員達には無かった。 その日、NEW ISLANDには、複数の社員達から退職願が提出された。 ◇ 「──おじいちゃん!」 その日の、午後。 もみじは髙野辺と一緒に病院にやって来ていた。 ルリは、退院する祖父を家で待ち、食事の支度や掃除などをしている。 もみじと髙野辺が祖父、耕三の病室に姿を現すと、耕三の表情が僅かに明るくなる。 「もみじに、髙野辺さん。迎えに来てくれたのか」 「ええ!おばあちゃんが家で待っているわ。退院手続きをして、家に帰りましょう」 「そうだな……、病院にずっと居ると気が滅入ってしまう。早く帰ろう」 いそい
last updateÚltima atualização : 2026-09-30
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440話

耕三の退院準備を終え、病室を後にする。 髙野辺が退院手続きをしてくれている間に、もみじは耕三と一緒に駐車場にやってきた。 「おじいちゃん、ゆっくりね。焦らないでいいからね」 「ああ、大丈夫だよ。すまないなぁ」 耕三の足と手は骨折している。 もみじは車のドアを開け、耕三から松葉杖を受け取るとトランクに入れた。 そしてすぐに耕三の隣に戻ってくると、耕三を支えながらゆっくり座席に座ってもらう。 耕三が座席に座り、もみじも助手席に向かおうとしたところで、退院手続きを終えた髙野辺が合流した。 「もみじさん」 「あっ、聖さん。手続きありがとうございました……!」 「いえ、とんでもない。おじい様は──ああ、良かった。無事車に乗れたんですね」 髙野辺は、先に車に乗っている耕三を見て安心したように表情を綻ばせる。 髙野辺は病院からリースしてきた車椅子をトランクの中に詰め込む。 「聖さんが手続きをしてくれている間に、ゆっくり車に来る事ができました。ありがとうございます」 「そんな……。お礼なんていいんですよ、当然の事ですから」 どこか照れくさそうに笑い合うもみじと髙野辺。 2人の様子を車内から見ていた耕三は、ほっとしたように柔らかく笑んだ。 車で数十分、安全運転で帰宅したもみじ達一行は祖父母の家に到着した。 「おじいちゃん、私に掴まってて」 「俺はトランクから車椅子を取り出しますね。待っててください」 そう告げた髙野辺は、急いで車の後ろ側に回るとトランクを開けて車椅子を取り出した。 車椅子を広げ、もみじに支えられている耕三の前に持って行く。 「おじい様、俺に掴まれますか?」 「ん、ああ……」 「ゆっくりで大丈夫ですよ」 「分かった」 髙野辺に声をかけられ、耕三はもみじに支えてもらっていたが、ゆっくり自分の手を伸ばし、髙野辺の手に掴まる。 髙野辺に支えられ、車椅子に乗せられた耕三はほっと息を吐き出した。 「おじい様、車椅子を動かしますね」 「ああ、ありがとう」 「私は荷物を持ってくるね、おじいちゃん。髙野辺さんと一緒に先に入ってて」 「ああ。もみじもありがとう」 顔だけを振り返り、もみじにお礼を告げる耕三。 もみじはにこっと笑みを返し、退院する際に纏めた荷物を車から取り出した。 髙野辺と耕三の後を追うように、もみじは
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