◇ 幹線道路を、高級車が速度を上げてひた走る。 その車に乗っているのは、もみじと髙野辺。 髙野辺はハンドルを握る手に力を込め、握りこんだ。 時刻は早朝。 秘書の蒔田から話を聞き、すぐに出て来た。 そのため、まだ朝の道路は車が少なく、髙野辺の車は速度を上げて目的の警察署に向かっていた。 だが、いくら急いでも誠司が自首したであろう警察署までは車で1時間以上は掛かる。 髙野辺は気持ちが急き、首元のネクタイをぐいっと緩めた。 「──くそっ、時間が掛かる……!」 ここまで髙野辺が苛立ちを顕にするのは珍しい。 どうしてこんな焦っているのだろうか、ともみじが考えていると、赤信号で車が停まった。 そのタイミングで、もみじが髙野辺に話しかける。 「聖さん……、どうしてそんなに焦る必要が?新島社長が自首したなら、轢き逃げの罪で彼は捕まり、正しく裁きを受けるんですよね?」 もみじの言葉に、髙野辺はゆるりと首を横に振る。 そんな事、きっと有り得ない。 誠司を自首させたのは、きっと嶋久志の嫁だろう、と髙野辺は考えていた。 嶋久志 忠は、人脈が広い。 恐らく検察庁や警察、検事に知り合いだっているだろう。 このままいけば、誠司は不起訴になるだろう、と髙野辺はどこか確信めいたものを感じていた。 だからこそ、もみじに向かって答える。 「──新島 誠司に入知恵をしたのは、恐らく嶋久志 桔梗でしょう。彼女は、自分の夫の人脈を使い、彼を不起訴にするつもりだ」 「──えっ!?」 「だからこそ、新島 誠司に自首をするよう、勧めたんです。そして、深く反省している態度を見せる。……そうすれば、調書上は深く反省している、と書かれる」 「で、でも彼は祖父母を轢いて……あろう事か逃げたんですよ……!」 「……我々には、人脈がある。……警察や、政治家、……果てには検察にだって」 「ま、待ってください……そんなの、だって……ドラマの世界じゃ……」 「……現実にも、それがあるんです。それに、現実の方がもっとどろどろとしている……」 「──っ」 もみじが呆気にとられ、言葉を紡ごうとした時。 信号が青に変わってしまった。 もみじはそれ以上話しかける事はできず、口を閉ざす。 その後、車は信号に引っかかる事はなく、順調に進んで行った。 予定より少し早く警察署に到着
Última atualização : 2026-09-25 Ler mais