Todos os capítulos de 私の夫は義妹のために99回離婚を切り出した: Capítulo 441 - Capítulo 450

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441話

玄関から続く廊下に、警察官2名が居る。 その事に、もみじは一瞬言葉に詰まり、足がピタリと止まった。 だが、警察官2名の表情は柔らかく、そしてどこか──申し訳なさそうな感情を宿していた。 もみじはきゅっと小さく拳を握り、警察官に頷いて返す。 「──はい。私は玖渡川 もみじ。玖渡川 耕三と、玖渡川 ルリの孫です」 「お身内の方は──」 「私以外に居ません」 「そうですか……。それでは、今回の轢き逃げ事件について、お話をさせていただきます」 「分かりました……」 車椅子に乗ったままの耕三を、髙野辺が抱えて居間に移動する。 ルリがキッチンで人数分のお茶を用意して、警察官の前に置いた。 警察官はお礼を口にすると、グラスに口を付けてお茶を飲んでから話し始める。 「──まず、この度の事故でお怪我を負われた事、お見舞い申し上げます。お体の調子はいかがでしょうか?」 「……見て分かるだろう?骨折はそう簡単には治らない。それで、話とは何だ?」 耕三は素っ気なくそう答え、本来の話をしろと促す。 警察官は悩むように視線を揺らしたあと、話し始めた。 「……今朝、本轢き逃げ事件の犯人が自首しました」 「──何だと!?」 耕三は、驚きに目を見開く。 ルリには犯人が自首した事を伝えているが、耕三にはまだ話せていない。 退院手続きや移動で疲れていた耕三に、車の中で説明はできなかったのだ。 家に帰ってから改めて話をしようとしていたのだが、警察官が先に来てしまった。 ルリがそっと視線を落とす。 その姿を見た耕三は、僅かに目を見開いた。 「……犯人が自首した事を知っていたのか?」 耕三の言葉に、ルリは肩を落とし頷いた。 「──ええ。私も知ったばかりよ」 「そうだったのか……。それで、犯人は誰だったんだ?」 耕三の言葉に、警察は姿勢を但し告げる。 「轢き逃げ犯は……新島 誠司、23歳。男性です」 「──っ!?」 「犯人は、とても反省しています。お2人を轢いてしまい、当時は動揺してしまいその場を離れてしまったそうです。自分の行動をとても悔いていて、被害者の方に申し訳ない、と反省しています」 「──はっ。人を轢いて、逃げておきながら反省している、だと?信じられんな」 吐き捨てるように告げる耕三に、警察官は困ったように眉を下げる。 ルリが「お
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442話

しばし話をした後、警察官は祖父母の家をあとにした。 警察官が去ったあと、家の中はしんと静まり返っていた。 誰も言葉が出せない中、もみじが口火を切った。 「──おじいちゃん。ごめんね……」 もみじが謝罪を口にすると、耕三は不思議そうな顔をする。 「どうしてもみじが謝る?そもそも1番悪いのは、交通事故を起こした人間だろう?」 「だけど、おじいちゃんとおばあちゃんを轢いたのは、新島誠司で……私の、元夫よ……。彼があの場に偶然居た、なんて事はきっと有り得ない。……もしかしたら、私をつけていたのかも……」 以前、誠司はもみじの後を尾行していた事がある。 離婚したのに、今更どうして自分に接触や執着をしてくるのか、もみじは訳が分からなかった。 だが、今回祖父母が怪我をした原因は、自分にあるのかもしれない。 そう考えたら。 もみじは自分の至らなさに申し訳ない気持ちになった。 だが、もみじが悔やむ必要はないと耕三も、ルリも首を横に振った。 「もみじが尾行されていたとしても、悪いのは相手だろう?」 「そうよ、もみじちゃん。悪いのは新島さんなんだから。もみじちゃんが気に病む事はないのよ。……もみじちゃんも、髙野辺さんも、精一杯の事をしてくれたじゃない?」 耕三とルリ、2人に慰められてしまい、もみじはとことん自分が不甲斐なく感じる。 こんな事、まかり通ってはいけない。 不起訴になったとしても、自分が誠司に罰を下すんだ、ともみじは改めてそう心に誓った。 ◇ その日の夜。 もみじが客間にいると、外からノックの音が聞こえた。 「──はい?」 時刻は、深夜だ。 もう耕三も、ルリも寝入っている時間帯。 そう考えれば、訪問してきたのは誰か、自ずと分かる。 もみじは布団から立ち上がり、襖を開けた。 すると、廊下に立っていたのは考えていた通り、髙野辺だ。 髙野辺は申し訳なさそうに眉を下げつつ、口を開く。 「夜分にすみません、もみじさん。……今後の事について、もみじさんと話をしておきたくて」 「分かりました、どうぞ入ってください」 「ありがとうございます」 「飲み物を用意しますね、待っててください」 そう言うと、もみじは室内に備え付けてある小さな冷蔵庫に向かう。 中から冷えたペットボトルのお茶を2本取り出すと、ちゃぶ台程の小さなテーブルに
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443話

「……ずっと考えていたのですが、髙野辺さんに助けていただくのはとても有難いんです。……だけど、今回の件だけは、私が新島社長にしっかり罪を償って欲しい……。私が出来る事は少ないですけど……ちゃんと、私自身の手で新島社長にやり返したい……」 「──うん」 もみじの考えを。 拙く紡がれる言葉を。 髙野辺は真剣に、言葉を挟む事なく聞く。 もみじは続ける。 「……だから、私に出来る事は何だろうって考えて……。それで、思いついたんです」 「何を思いついたか、聞いても大丈夫ですか?」 「ええ。駅舎の件です」 「──!」 駅舎──。 1年と少し後に、開催予定だった駅舎のセレモニーの事だろう。 セレモニー、と言うか、パーティーと言うか。それくらい大きな催し物を開催する予定らしい。 そして、もみじはその駅舎のデザインを手がけている。 もみじが「Sea」だと知らず、胡桃は家の力を借りてその駅舎のデザインに無理矢理横入りした、と聞いたのを髙野辺は覚えていた。 髙野辺の表情が変わった事を見て、もみじは話を続ける。 「──実は、あれ以降も担当さんとの連絡は続いていて……。偽物のSeaと思われる人物が、あるラフ画を提出してきた、と教えてくれたんです」 「……偽物が、ラフ画を?」 「ええ、そうです。担当さんが、そのラフ画を送ってくれたんです。国内の知り合いデザイナーさんのデザインを盗まれてはいませんか?って、確認してくれたんです」 「……その、ラフ画を見せていただく事って出来ますか?」 「ええ、大丈夫です」 髙野辺の言葉に、もみじは頷き、タブレットを操作する。 そして、担当者から送られて来たラフ画の画像を表示させると、タブレットを髙野辺に渡した。 担当者は、駅舎のデザイン選考に詳しく関わってはいない。 だからこそ、担当者は他のデザイナーの心配をしたのだろう。 そうでなければ、デザイン選考に少しでも関わっていれば、担当者はそのラフ画が誰によって描かれた物か、すぐに分かっただろう。 そして、ラフ画をひと目見た髙野辺も、このラフ画の作成者をすぐに見破った。 「……このラフ画、もみじさんが描かれた物、ですよね?」 あっさりデザイナーが誰かを見破った髙野辺が、驚いたように目を見開き、呟く。 もみじは苦笑いを浮かべつつ、頷いた。 「ええ、そうです
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444話

「決めた、とは何を……?」 髙野辺の質問に、もみじは答える。 「──現行犯じゃないと、意味がありません。それに、すぐに話題が廃れてしまうのは許せません。……だから、大々的に取り上げてもらえるようにする。なので、セレモニー……パーティーの時に複数のテレビ局の報道陣や取材陣を入れて、その場で偽物のSeaの仮面を剥がそうと、決めました」 「……確かにテレビ、ネット、雑誌などで広まれば事件が風化しにくいですね。Sea……もみじさんが偉業を成せば、偽物のSeaもまた話題に上がる事は明白です」 「ええ。私は……Seaを演じた胡桃を絶対に許せません。彼女には、この先デザイナーとして活躍して欲しくない。相応の罰を受けてもらいます」 Seaの振りをしている胡桃への制裁は分かった。 では、誠司に対してはどんな罰を受けさせるのだろう──。 抱いた疑問を、髙野辺はそのまま口にする。 「では、新島 誠司は……?事故を起こした事や、不倫──不倫していた件はもう知れ渡っていますが……不起訴になってしまった事件の罪は、どう償ってもらうつもりですか?」 「……彼自身に公の場所で、轢き逃げ事故を起こした事を話してもらおうと思います。轢き逃げの件も、セレモニーパーティーの時に出来ればいいと思っているんです」 「それは、どうやって……?」 髙野辺の質問に、もみじはタブレットを捜査するとある画像を出した。 「──このステッカーが、決め手だと思うんです」 「これ……!」 もみじが表示した画像。 それは、誠司の車に貼ってあったステッカーだ。 この世に1枚しかないステッカーだと、もみじは言っていた。 だからこそ、このステッカーが事故車の証拠になる。 だから廃車になった誠司の車を、このステッカーを頼りに探したのだ。 「──このステッカーは、世界で1枚しかありません。データだって、私が持っているので同じステッカーを作成するのは不可能に近いです。……このステッカーが貼られた彼の車は、もう既に私たちが入手していますから……」 「……彼を説得するんですか?」 「ええ、最初は。……だけど、断るのであれば。世間が、このステッカーが貴重な物であり、価値あるものだと認識させ、このステッカーを探させます。……このステッカーが、どこからどう見ても事故車と思われる車に貼られていたら、凄い騒ぎ
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445話

ここ最近、もみじはずっと落ち込んだような。思い詰めたような様子だった。 表情も硬く、元気が無い──。 だが、今のもみじはどこか吹っ切れたような表情をしていて。 髙野辺は、もみじの中で結論が出たのだ、と理解する。 それが、先程もみじが語った内容だろう。 許さない、罰を受けさせる、とは言っても。一体どのように罰を受けさせるのか。 その方法に悩んでいたのだろう。 だが、もみじは自分でその答えに辿り着いた。 鉄道会社とも、きっと何度もやり取りをしていただろう。 髙野辺も、もみじから助けを求められればいくらでも手伝うつもりだった。 相手に制裁を加えたいのであれば、髙守の名前を出してでももみじの助けをしようと考えていたのだ。 だが、実際。もみじは自分1人で考え、結果を出した。 (……俺も、もみじさんに頼ってもらえるようにならないとな) 髙野辺がそんな事を考えていると、もみじはタブレットを操作して話を続ける。 「聖さん。駅舎のセレモニーパーティーまであまり時間がありません。……それまでに、私は過去に胡桃がSeaを偽っていた証拠を集めようと思っています」 駅舎のセレモニーパーティー。 開催まで1年以上あったと思っていたが、既に1年を切っている。 このままだと、あっという間に時間が過ぎ、パーティー当日になってしまいそうだ、と髙野辺は顎に手を当て、考える。 「そうですね。……証拠集めと同時に、嶋久志 忠が今回の事件を不起訴にするために動いた証拠も集めないと……」 「──!確かに、そうですね。いくら胡桃や新島社長を制裁しても、嶋久志家が後ろにいたら、彼らを庇うかもしれません」 「……嶋久志 忠は、業界内外に顔が効きますからね。……嶋久志の方は俺に任せてください。あの家の弱み……きっと不正なんかも常習的に行っているはずですから、その証拠を集めます」 「ありがとうございます、聖さん……!」 「家の力を削がないと、いつまでももみじさんの妹の手助けをするかもしれないですからね。まずは家の力を削ぎましょう」 そっちは俺に任せてください、と言いながら髙野辺は自分のスマホを取り出す。 そして、スケジュールを開くと「ああ、あった」と呟きながらもみじに画面を見せた。 「──まずは、このパーティーに一緒に行きましょう」 「パーティー、ですか?」 髙野
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446話

招待状には、同伴者についても記載されていた。 同伴者は必須とは書かれていなかったが、髙野辺は当然のようにもみじを誘う。 「もみじさん、この日付ですが予定は空いていますか?もし大丈夫だったら、俺のパートナーとして一緒にパーティーに参加して欲しいです」 「──私が、聖さんのパートナー……」 もみじが嬉しそうに呟くのを見て、髙野辺も頬を緩めて笑う。 「ええ、俺のパートナーはもみじさんしかいないでしょう?」 「あ、ありがとうございます……!聖さんと一緒に参加したいです!」 「良かった、決まりだ。パーティーまであまり日にちが無いので、急いで準備をしましょう」 髙野辺の言葉に、もみじはこくこくと頷く。 もう、自分が髙野辺の隣に立ってもいいのだろうか、と言う不安はもみじには無い。 髙野辺が、自分を選んでくれた。それに気持ちを伝えてくれる。 確かに髙野辺ともみじ自身、育ちの違いがある。 それは逆立ちしたって覆す事が出来ない、事実だ。 だけど、自分なんて……。と思う事は気持ちを伝えてくれた髙野辺に失礼だ。 それに、髙野辺の事を好きだと思う自分自身の気持ちにだって失礼だ、ともみじは思う。 髙野辺に相応しい人は、自分ではないかもしれないが、それでももみじは足掻いていこうと、髙野辺の実家の事を聞いた時に心に決めたのだ。 「分かりました、聖さん。……恥ずかしながら、パーティーでの作法などにはまだ不慣れなんです。手間を掛けちゃいますが、教えて下さると嬉しいです」 「──!もちろん!もちろんです。パーティーでのマナーなど、一緒に練習しましょうね」 もみじの前向きな姿勢を見て、髙野辺は嬉しそうに破顔した。 ◇ 翌日。 耕三とルリは、その日は家でゆっくり過ごすと言う。 もみじも髙野辺も、その日は出社する事にした。 もみじは自宅でもデザインの仕事は出来るが、申請や入力は会社のパソコンでする必要がある。 それに、もみじと髙野辺は自分の目で確認したい物があったのだ。 ──以前、ライバル会社のFLOWER SHIPに新商品の発売情報を盗まれてしまった商品。 その代替商品のデザインが完成し、工場生産が間に合い、それが会社に到着しているのだ。 もみじも、髙野辺も。 実物をまだ自分の目で見ていない。 完成品が届いた時、祖父母の交通事故が起き、そちらの対
last updateÚltima atualização : 2026-10-06
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447話

TK株式会社 エントランス。 もみじと髙野辺は車から降り、すぐに社長室直通のエレベーターに向かう。 まだ朝早い時間帯のため、社員の姿はまばらだ。 エレベーターに向かって歩いていると、秘書の蒔田がやって来た。 「社長、玖渡川さん。おはようございます」 「蒔田秘書か、おはよう」 「おはようございます」 挨拶を交わしていると、エレベーターがやって来て、3人は乗り込んだ。 蒔田は手に持っていたバインダーを開き、髙野辺ともみじ、交互に顔を向けると話し出す。 「発売予定の商品サンプルを、社長室に運び入れています。それと新商品発売イベントの件で、企画部から社長と玖渡川デザイナーに会議に参加して欲しい、と要望が出ております」 「分かった。サンプルはこの後すぐに確認する。会議の日程は?」 「会議は2日後、13時から予定しております」 「分かった、調整する」 髙野辺と蒔田の仕事の会話はエレベーターを降りた後も終わらず、続いた。 社長室に入り、全て話し終えた蒔田は一礼すると去って行った。 蒔田を見送ったもみじは、2人の会話内容から仕事が立て込んでいる事を知り、申し訳なさを感じる。 自分の祖父母の件で、髙野辺は相当無理をしてスケジュールを空けてくれたのだろう。 (聖さんの社長の仕事は私にはどうにも出来ないけど……それ以外の……私でも手伝える仕事は手伝いたい) もみじが気にしすぎてしまえば、髙野辺自身も気に病むだろう。 そう考えたもみじは、感謝の言葉は伝えても、謝罪の言葉だけは伝えないようにしよう、と決めた。 もみじがひっそりとそんな事を考えていると、いつの間にか社長室のテーブルに移動していた髙野辺が明るい声でもみじを呼んだ。 「──もみじさん。見てください、サンプル凄く良い出来ですよ」 「えっ、ほ、本当ですか!?」 ぱっと顔を上げ、もみじは髙野辺がいるテーブルの方に駆け寄る。 笑顔の髙野辺にサンプルを渡されたもみじは、自分の手の中にある文房具を見て感嘆の吐息を零した。 「──凄い、イメージ通りです」 嬉しそうにしているもみじを見て、髙野辺も柔らかく微笑むと、頷いた。 「ええ、そうですね。ここまでもみじさんのデザインを忠実に再現してくれて……しかも、機能性を損なっていない。……新商品として発売する予定だった商品より、ヒットするでしょう
last updateÚltima atualização : 2026-10-07
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448話

それから、午前中はサンプルの確認や関係各所への連絡に時間を費やした。 気がつけば既に時刻は午後を回っている。 髙野辺がふとパソコンから顔を上げてもみじを見ると、もみじはサンプルを手に持ち何かを確認しているようだった。 真剣な表情でサンプルを見つめ、もみじは手元のタブレットに何かを書き出している。 (……何かに集中しているようだが、このままだともみじさんは昼食を抜いてでも仕事をしそうだな……) もみじがデザインに集中すると、余裕で数時間が経ってしまう。 集中している所を邪魔してしまうのはしのびないが、ご飯を食べずにいたら体調を崩してしまう。 髙野辺は申し訳なく思いつつ、椅子から立ち上がりもみじに近づいて行った。 「──もみじさん。もうお昼ご飯の時間です。いったん休憩をしましょうか?」 もみじの肩に軽く手を置きつつ、髙野辺は声をかける。 するとはっとしたもみじは顔を上げて髙野辺と目を合わせた。 「す、すみません聖さん……!もうそんな時間に?」 「ええ、俺も今気が付いたんですが、もうお昼を回っています」 「……確かに、お腹が空いてきたような気がします……!」 「ふふっ、でしょう?俺もお腹が減ったので、一緒にランチを食べに行きましょう?」 髙野辺の誘いに、もみじは嬉しそうに頷く。 もみじは今まで何かを書いていたタブレットを自分のバッグに入れた。 「もみじさん、何か食べたい物はありますか?」 「うーん……。私は特にこれといった物は……聖さんは?何か食べたいご飯ありますか?」 「俺は……そうですね。最近はもみじさんのおばあ様の和食が美味しくて、和食ばかり食べてます」 「なら、今日は逆にイタリアンとか、中華なんてどうですか?」 「いいですね、そうしましょうか」 2人は話しながら廊下を歩き、エレベーターに乗り込む。 もみじも最近はこの辺りにあるご飯屋さんに詳しくなってきている。 もみじが提案してくれた店に行く事にした。 イタリアンのランチが美味しいと評判の店に、もみじと髙野辺はやって来た。 お昼時のお店は混んでいるようで、もみじと髙野辺がやって来た時には既に満席のようだった。 もみじ達の前にも数組待っている人がいて、もみじと髙野辺は自然と身を寄せ合い、待つ事にした。 お互いの肩が触れ合うくらいの近さに、最初は落ち着かなくて
last updateÚltima atualização : 2026-10-09
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449話

「あのたった数時間の内に、こんなにラフ画を……?」 驚きに目を丸くした髙野辺が、ぽつりと言葉を零す。 髙野辺がこんなに関心してくれるとは思わなかったもみじは、首を傾げつつ頷いた。 「すみません、勝手にシリーズ物のデザインをしてしまって。ただ、ちょっとこんなシリーズがあったらなぁ、と思っただけで……っ!サボってた訳じゃないんです!」 わたわたと自分の胸の前で必死に手を振るもみじ。 やましい事をしていた訳じゃなく、ちゃんとデザインをしていたんです!と一生懸命伝えるもみじに、髙野辺は柔らかく笑みを浮かべた。 「もみじさんはうちの会社のデザイナーなんですから、アイデアが浮かんだらいつでもデザインしていただいて大丈夫ですよ。誰も咎めませんし、もみじさんのやる気は、他のデザイナーにも良い刺激になっています。大変助かっていますから、気にしないでください」 それに、と髙野辺は言葉を続ける。 「シリーズ物……あの短時間で、新商品のシリーズ展開した場合のデザインを作成したんですか?ちなみに、どれとどれを?」 興味津々、といった様子で画面を覗き込む髙野辺に、もみじもハッとして「ここからです」とシリーズ毎に纏めた資料を表示した。 「──すみません、少し拝見してもいいですか?」 「ええ、もちろんです」 髙野辺はもみじに一言断りを入れると、もみじからタブレットを受け取る。 そして真剣に画面に目を落とした。 その間、もみじは待合にあるイタリアンのメニューを確認していた。 数組呼ばれ、もうそろそろもみじと髙野辺の順番だ。 列が移動する間も髙野辺はもみじのタブレットをじっと見続けている。 「お待たせいたしました」ともみじ達が呼ばれ、席に案内された時。ようやく髙野辺がタブレットから顔を上げ、もみじに返した。 「すみません、つい集中してしまいました」 「いいえ、大丈夫ですよ。何か気になったデザインがありましたか?」 もみじの質問に、髙野辺は満足気に頷いた。 「──ええ。シリーズ展開した場合の全デザイン……本当に良いですね。今回の新商品を第一弾として、今後第二弾、第三段、とシリーズ展開していきましょう」 「えっ」 「今回、パッケージに第一弾の文字を入れる事は間に合いませんが、ホームページやネットCMで大々的に宣伝を
last updateÚltima atualização : 2026-10-10
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450話

昼食を食べ終えたもみじと髙野辺は、個室から外に出た。 ちょうどその時、個室に入ろうとしていた人間が髙野辺の姿を見てはっと目を見開く。 「──社長?どうなさいました?」 足を止めたその女性に対して、秘書のような人物が呼びかける。 社長、と呼ばれた女性は髙野辺が去って行った方向を見ていたが、すぐに体の向きを戻した。 「今、TKの髙野辺社長が居たように見えたのだけど……」 「TKの、ですか?」 秘書は廊下の先を見るようにひょい、と体を傾けた。 だが、見えるのは髙野辺の背中だけで顔が見える事はない。 秘書はすぐに隣にいるもみじに気が付き、眉を不思議そうに眉を寄せた。 「顔は見えませんが……あの方が髙野辺社長だとしたら……隣にいる女性は須藤財閥のご令嬢ですかね?確か、今月の誕生パーティーで2人の婚約を発表するとか何とか噂が流れていたような……」 「須藤家の……?確か……須藤 亜希さん、だったかしら?」 「ええ、そうですそうです。確かそのようなお名前でした」 頷く秘書に、女性社長は興味なさそうに「ふうん」と答える。 「須藤 亜希さんは確かまだ20歳そこそこでしょう?……そんなに若い女性には見えなかったけど……。まあ、いいわ。彼が本当に婚約をするなら、弱点が増えると言う事だもの。今回の新商品は棚ぼただったけど、弱点が増えれば彼の会社の売上をうちが追い抜く事だって可能だわ。運が上向いてきたわね」 「おっしゃる通りですね。今回の新商品は情報を流してくれた社員があちら側に居たからついてました。うちの息のかかった人物をTKに潜り込ませますか?」 「いいえ、それは難しいわ。……中途採用に関して、TKは業界内でも一番厳しいから。採用されるかどうかも怪しいし、バレたら大変な事になるわ」 「……髙野辺社長は、冷酷な方だと聞きますもんね」 「ええ、だからこそ婚約者が出来るなら。多少は弱みになるわ。……須藤 亜希の情報を集めてくれる?」 「かしこまりました、社長」 女性社長は秘書にそう告げると、個室に入った。 中には既に会食の約束をしていた人物が待っていて、女性が入ってくるなり満面の笑みで出迎えた。 「橋本社長!本日はお時間をいただき、ありがとうございます!」 橋本、と呼ばれた女性社長は差し出された手を
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