2人がやって来たのは、病院内にあるフリースペースだ。 見舞い客が小休憩する場所でもあり、入院患者がくつろぐスペースでもあり、電話をしたい人が利用する場所でもある。 今日はまだ朝早いため、そこには殆ど人がいなかった。 「もみじさん、どうぞ」 フリースペースに着き、どう話をしたらいいか、と悩んでいるもみじに、髙野辺が椅子を引いてくれる。 もみじは慌ててお礼を伝えると、椅子に腰を下ろした。 髙野辺ももみじの向かい側に座ると、申し訳なさそうに眉を下げ、口を開いた。 「──すみません、もみじさん。朝の事、気にしていますよね」 「えっ」 「逆の立場だったら、と考えたら俺の行動は軽率でした。……あの女性の事、説明させてもらっていいですか?もみじさんを裏切るような行動は一切していません。それを、説明させてください」 真っ直ぐもみじの目を見て言葉を紡ぐ髙野辺。 髙野辺は、いつだって誠実だ。 嘘を並べ、誤魔化すような事はしない。 もみじも背筋を伸ばし、髙野辺の言葉に頷いた。 「──はい、お願いします。……ごめんなさい、髙野辺さん。私、ちょっとだけ髙野辺さんの事を疑いました」 「いえ……朝に他の女性の声が聞こえたんですから、疑うのは当然です。昨夜、俺は実家に泊まっていました。父に、頼みたい事があり一時的に家に戻ったんです。……それで、あの声の女性ですが、あの女性は、須藤 亜希(すどう あき)と言います。子供の頃からの知り合いで、幼なじみです」 「幼なじみ、さん……?」 「ええ、そうです。幼なじみと俺は、7個も年が離れていて……子供の頃は良く遊んであげていたんです。俺にとって、彼女は女性じゃなく……妹のような感覚です」 「妹……」 妹みたいな、存在──。 その言葉を聞いたもみじは、過去の嫌な出来事を思い出してしまう。 新島 誠司も──元・夫も、最初はそう言っていた。 胡桃の事を、妹のように思っている、と。 もみじの妹だから、自分の妹のように接している、と──。 だけど、結局。もみじは誠司と離婚した。 (……今回は、髙野辺さんの幼なじみ……新島 誠司と胡桃との関係性とは、全然違う……。ああ、嫌だ……嫌なことを思い出してしまった……) もう、済んだ過去の事だ。 そう思っていたのに、髙野辺に「妹のような存在の女性がいる」と言う事を知ってし
최신 업데이트 : 2026-09-13 더 보기