私の夫は義妹のために99回離婚を切り出した의 모든 챕터: 챕터 411 - 챕터 420

480 챕터

411話

2人がやって来たのは、病院内にあるフリースペースだ。 見舞い客が小休憩する場所でもあり、入院患者がくつろぐスペースでもあり、電話をしたい人が利用する場所でもある。 今日はまだ朝早いため、そこには殆ど人がいなかった。 「もみじさん、どうぞ」 フリースペースに着き、どう話をしたらいいか、と悩んでいるもみじに、髙野辺が椅子を引いてくれる。 もみじは慌ててお礼を伝えると、椅子に腰を下ろした。 髙野辺ももみじの向かい側に座ると、申し訳なさそうに眉を下げ、口を開いた。 「──すみません、もみじさん。朝の事、気にしていますよね」 「えっ」 「逆の立場だったら、と考えたら俺の行動は軽率でした。……あの女性の事、説明させてもらっていいですか?もみじさんを裏切るような行動は一切していません。それを、説明させてください」 真っ直ぐもみじの目を見て言葉を紡ぐ髙野辺。 髙野辺は、いつだって誠実だ。 嘘を並べ、誤魔化すような事はしない。 もみじも背筋を伸ばし、髙野辺の言葉に頷いた。 「──はい、お願いします。……ごめんなさい、髙野辺さん。私、ちょっとだけ髙野辺さんの事を疑いました」 「いえ……朝に他の女性の声が聞こえたんですから、疑うのは当然です。昨夜、俺は実家に泊まっていました。父に、頼みたい事があり一時的に家に戻ったんです。……それで、あの声の女性ですが、あの女性は、須藤 亜希(すどう あき)と言います。子供の頃からの知り合いで、幼なじみです」 「幼なじみ、さん……?」 「ええ、そうです。幼なじみと俺は、7個も年が離れていて……子供の頃は良く遊んであげていたんです。俺にとって、彼女は女性じゃなく……妹のような感覚です」 「妹……」 妹みたいな、存在──。 その言葉を聞いたもみじは、過去の嫌な出来事を思い出してしまう。 新島 誠司も──元・夫も、最初はそう言っていた。 胡桃の事を、妹のように思っている、と。 もみじの妹だから、自分の妹のように接している、と──。 だけど、結局。もみじは誠司と離婚した。 (……今回は、髙野辺さんの幼なじみ……新島 誠司と胡桃との関係性とは、全然違う……。ああ、嫌だ……嫌なことを思い出してしまった……) もう、済んだ過去の事だ。 そう思っていたのに、髙野辺に「妹のような存在の女性がいる」と言う事を知ってし
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412話

「行きたい、ところ……?」 不思議そうに髙野辺の言葉を繰り返すもみじに、髙野辺は頷いた。 「ええ、そうです」 そして髙野辺は周囲──自分達の近くに人がいない事を確認すると、声を潜めて説明してくれた。 「……訳ありの車を引き受ける業者について、父から情報を。……関東に数件あるそうです。そこに、今から向かいませんか?」 「──!」 業者を見つけてくれた。 髙野辺の言葉に、もみじの瞳が期待に揺れる。 「教えてもらったリストの中に、確実にあるとは言えませんが……。事故が起きた時から逆算して、関東以外の業者だったら、引き取りに時間がかかるので近場だと思うんです」 「もし、その業者を見つけて……車を見つける事が出来れば……!」 「ええ、もみじさんが作ったステッカーがまだ車に残っていれば……それが動かぬ証拠になります」 「──はっ、早く行きましょう!あっ、待って……っ、その前におじいちゃん達に伝えておかないと……っ!」 わたわた、と慌てふためくもみじに、髙野辺は苦笑する。 落ち着いて、ともみじに声をかけるともみじの手を取った。 「まずは、もみじさんのおじい様とおばあ様に伝えに行きましょう。……事故の件、とは言わず仕事ですぐに向こうに帰らないといけなくなった、と言う事にしましょうか」 髙野辺の提案にもみじは頷く。 「そう、ですね。まだ業者を見つけた訳じゃないので……ちゃんと業者を見つけて、証拠を押さえてから2人には報告しましょう」 「ええ、その方がいいでしょう。事故を調べている、と知ったら心配を掛けてしまうかもしれませんしね」 じゃあ、病室に戻りましょうか。 そう話す髙野辺に頷いたもみじは、髙野辺と手を繋ぎながら病室に戻るために足早に移動した。 ◇ 「まあ、お仕事が……?」 もみじと髙野辺は病室に戻るなり、早速耕三とルリに一旦会社へ戻る事を伝えた。 「うん、そうなの……。急ぎの仕事が発生しちゃって……髙野辺さんの会社でその対応をしなくちゃいけなくて……」 「おじい様が退院なさる前にはこちらに戻ってきます。今日、明日はあちらに戻る事に……お傍に居れず、申し訳ございません」 頭を下げる髙野辺に、ルリはもちろん耕三も首を横に振った。 「いいのよ、そんなに申し訳なさそうにしないで?むしろ、2人とも忙しいのにここまで助けてもらって……ね
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413話

祖父母の病室を出たもみじと髙野辺。2人は真っ直ぐ病院の駐車場に向かっていた。 髙野辺の車に乗り込むと、すぐに髙野辺がカーナビに住所を入力し始める。 「まずは、ホームページなどが無い業者からあたりましょう」 「ホームページが無い?そんな業者、あるんですか?」 もみじの質問に、髙野辺は入力を終えて答えた。 「ええ。昔からの縁や……まあ、そうですね……今回のような後暗い事をしている業者なら……横の繋がりは多いでしょう?わざわざネットに情報を上げて、客を取らなきゃいけないほど、仕事に困っている事はないんでしょうね」 「……事故車の処理って、そんなに多いものですか……?」 「──まあ。俺も昨夜父から聞くまで知りませんでしたが、具体的な件数を知って驚きましたよ。今まではざっくりと、そう言う世界があるんだって事は知っていましたけど……。実際、処理している件数を耳にしたら確かにわざわざ新規顧客を獲得するためにホームページなんて作らなくても平気だな、と……」 「……事故を起こしたのがバレたら不味いお仕事の人とか、いますもんね……」 もみじがそう告げると、髙野辺は何とも言えない表情で押し黙る。 車内には重苦しい沈黙が流れたが、髙野辺は敢えて明るく声を発した。 「──住所の入力が終わりました。行きましょうか!」 「は、はい!よろしくお願いします……!」 ◇ 「おい、出来たか?」 NEW ISLAND、デザイン室。 数時間ぶりにデザイン室にやって来た誠司は、中にいる胡桃に低い声で問いかける。 誠司の声に振り向いた胡桃は、不機嫌さを隠しもせずに答えた。 「そんな簡単に出来る訳ないじゃない……!その……何年も前の作品だし、今はつわりだってあるのよ?デザインにずっと集中出来ないの」 「……そうか?」 「当然でしょ!?以前1度作っているとは言え、アレンジするんだから、時間が掛かったって当たり前なのよ!それくらい分かって!」 苛立ち顕に、声を荒らげる胡桃に誠司はむっとする。 だが、ここで口喧嘩をしても何も好転しない。 そもそも、胡桃の機嫌を損ねたらステッカーを作ってもらえないのだ。 だが、そこまで考えた誠司は、ふと違和感を覚える。 (……今までのSeaだったら、例えアレンジが必要なデザインだったとしてもすぐに納品してくれていた……。妊娠して、つわ
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414話

デザイン室を出た誠司は、足早に社長室に戻った。 「──中野秘書!」 「はい、何かご用命ですか?」 社長室の扉を開けるなり、誠司は中野に声をかける。 デスクから立ち上がり、小走りでやってくる中野に、誠司は指示をした。 「ここ最近のSeaの行動を調べてくれ」 「Seaの……、ですか?Seaは胡桃、ですよね?彼女に直接聞けば……」 「少し怪しい部分がある。……Seaが本当に胡桃なのだ、と確信が欲しい。胡桃には知られないように調べてくれ」 「──かしこまりました。最優先で?」 「ああ、頼む」 誠司の言葉に、中野は真剣な表情で頷く。 中野は、誠司に近付こうと1歩足を踏み出したが、誠司はそんな中野から離れるように1歩後ろに下がった。 「──今はまだ、不味い。胡桃の母親も、いつここに来るか分からん。今までのように社長室でする訳にはいかない」 「……分かりました。なら、どこで……?」 誠司が1歩下がっても、中野は気にする事なく誠司に近づく。 社長室のデスクの椅子に座った誠司に近づいた中野は、そのまま流れる動作で誠司の膝に腰を下ろした。 向かい合うように座った中野は、誠司の胸元を自分の指先でつん、とつつく。 「……暫くは、こういう事は控えた方がいい」 誠司は中野の肩に手を置き、離れるように力を込めた。だが、中野は逆に誠司の胸元にもたれ掛かる。 「……我慢出来るんですか?……ここでするのが危ないなら、私の家はどうですか?胡桃には取引先との会食とでも言えば大丈夫ですよ」 あの子は馬鹿だから、仕事の話を出したら納得するから──。 その言葉は、中野の頭の中で続ける。 中野が少し甘えて強請って見せれば、誠司は満更でもなさそうな表情で中野を見下ろしている。 中野は真っ赤な唇をにんまり、と笑みの形に歪めると、少し体を伸ばして誠司の耳元で囁いた。 「ね、そうしましょう社長?私の部屋だったら、誰かに見つかる心配もないですから」 中野の言葉に、暫し沈黙していた誠司。 だが、中野の腰に自分の腕を回し、ぐっと引き寄せた。 「そうだな。分かった。今日、明日は胡桃もデザインの方に集中するだろうから、俺から意識が逸れる。今日は中野の家に泊まるか」 「──ふふっ!嬉しいです、社長。私の部屋でいっぱいしましょ?」 「仕方ないな」 誠司は今夜の事を考え、デ
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415話

胡桃は投稿をスクショし、保存した画像をスマホに表示する。 以前、誠司とこっそり海に行った時の物だ。 誠司に「出張」だと嘘をつかせ、その日は2人きりで朝まで海で過ごした。 日が暮れ始めた時間帯に海を背景にした誠司の車の写真だ。 ボンネット部分が画角から切れているが、ステッカーは辛うじて映っている。 だが、それも遠くから撮っている写真のため、投稿からはどんなデザインのステッカーなのか分からない。 「どんなデザインだったけ、ズームすると……ああもう、ぼやけちゃう……!」 スクショした画像を拡大するが、ステッカーのデザインはぼやけてしまい、ハッキリとは分からない。 けれど、ある程度どんなデザインだったのかは分かる。 それに、どんな色を使っているのかも大体分かり、胡桃は急いで拡大した画像をスクショし直した。 「……アレンジでいいって言ってたから、好きにアレンジしちゃっていいわよね?色味と、形がある程度合っていれば大丈夫でしょ……?」 胡桃はブツブツ呟きながら、今度はネットで検索をする。 「Sea」「デザイン」と検索に入力して、検索する。 すると、今までSeaが手がけたデザイン、Seaのデザインが採用された商品がズラっと出て来た。 「──本物のデザインの中で、似たような物がないかしら……?」 画面をスワイプし、確認していく。 「これ……デザインの形は似てるけど、色味が全く違う……それに、これは逆ね。色味は似ているけど、デザインが全然違う……」 爪を噛みながら、胡桃は必死にデザインを確認していく。 すると、その中でデザインも、色味もステッカーと似ている画像が見つかり、胡桃は「あった!」と声を弾ませた。 「よし!よし……!このデザインをちょっとパクって……アレンジしちゃえば誠司にバレないわよね……!」 明るい声で告げると、胡桃は急いでパソコンに向き直る。 デザイン作成用のソフトを開き、ペンタブを握ると早速デザインのアレンジを始めた。 ◇ 祖父母の元を離れ、車で数時間。 カーナビから「目的地周辺です」と流れ、髙野辺は周辺を確認した。 助手席に座っていたもみじも、不思議そうに周囲を確認する。 「本当に、ここが目的地周辺……?何も無さそう、ですけど……」 「──おかしいな。……レンタル倉庫ばかりですね。もう1回住所を入れ直してみま
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416話

近づいて来たのは、中年の男性。 中年の男性は真っ直ぐもみじと髙野辺の車に近付いて来ると、運転席側の窓をノックした。 髙野辺は警戒しつつ、窓を下ろした。 「──どうしました?ここはレンタル倉庫ですが」 中年の男性は、人の良さそうな人相で、困ったように眉を下げている。 髙野辺は愛想笑いを浮かべつつ、中年男性に答えた。 「ええ、そのようで……。すみません、住所を間違って入れてしまったようで……」 「そうですか、住所を」 「ええ。入れ直したらすぐに出て行きますね」 中年男性は話す髙野辺を、じっと見ていた。 表情の変化、声に緊張が滲んでいないか──。一挙手一投足を見逃さないよう、じいっと見つめている。 人の良さそうな表情で笑ってはいるが、どこか普通の雰囲気ではない。 車内に、緊張感が流れたその瞬間。 中年男性がふ、と口を開いた。 「──もしや、あなた達……車の処分に困っていらっしゃるのでは?」 「──っ」 髙野辺が乗っているのは、高級車だ。 そして、身なりや振る舞いにも品が感じられる。 たった数秒言葉を交わしただけで、その中年男性は髙野辺がある程度の地位に就いている男だと悟ったのだろう。 そして、突然核心を突くような声をかけた。 構えていない所で、そんな言葉をかけられ、髙野辺は微かに表情を変化させてしまった。 ほんの僅か。だけど、それを中年男性は見逃さなかった。 「やはり。どうぞこちらへ。お話を伺いましょうか」 にこり、と笑みを浮かべた中年男性。 だが、その笑みはどこか薄ら寒く、もみじの背筋はぞっとした。 「……」 髙野辺が警戒していると、中年男性はそれを見越して笑った。 「大丈夫ですよ、お話をお伺いするだけ。我々も、あなた方のようなお人をどうこうするつもりはありません。……あなた方の身に何か起きたら、我々が大変な事になる。……そうでしょう?」 「……確かに、そうですね。ここで私たち2人に何か起きたら……父が黙っていないでしょうから」 「──そうですか。ふふ、何も心配はございませんよ。安心してください」 この会話だけで、ある程度察したのだろう。 中年男性は車から離れ、ゆっくりと歩き出す。 緊張に体を硬くしていたもみじに、髙野辺は顔を向けた。 「もみじさん、大丈夫です。彼に着いて行きましょう。……俺たちに何か
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417話

2人が案内された場所は、沢山あるレンタル倉庫の内の1つだった。 「ここでお話を聞くのが多いんです。中へどうぞ」 「……」 倉庫の扉を開けた中年男性が、そのまま中に入って行く。 髙野辺は扉の中を確認した。 すると、倉庫の中は事務所のような雰囲気になっていて、驚きに目を見開く。 電気も通っていて、水道まである。 「……事務所?」 髙野辺が驚きのまま呟くと、先に中に入った中年男性が笑いながら答えた。 「おふたりはこのような業者を探していたのでは?」 「……確かに、そうですが……」 「ふふふ、さあどうぞ。座ってください。本当は美味しい緑茶をお出ししたいですが、警戒するでしょう?ペットボトルでいいですかな?」 「──ありがとうございます」 まるで、こちらの心を読んでいるかのような言葉。 髙野辺は苦笑いを浮かべつつ、頷いた。 椅子に座るよう促され、髙野辺は椅子に座り、もみじもその隣に座る。 2人の前に、お茶のペットボトルが置かれ、中年男性が向かい側に座った。 中年男性は急須から自分の湯のみにお茶を入れると、両手で包んでそれを口に運ぶ。 ふう、と小さく声を漏らした後、髙野辺ともみじに視線を向けた。 「さて……。お話を聞きますよ」 にこり、と笑った中年男性に、髙野辺はゆっくりと口を開き、ここに至った経緯を説明し始めた。 ◇ 「──そう言う事があり、私は父にここの住所を教えてもらいました。……もしかしたら、処理に関わっているのでは、と……」 「ふむ……。こちらに来た経緯は分かりました。それを踏まえて、お話を聞いた結果……その事故車について、我々は関わっておりません、と回答します」 「──それは、本当ですか……」 「ええ。それは断言できます。……我々を知っているのは……あなた様のお父様のようなお方達ですから。……もしかしたら、事故を起こした方は我々には辿り着けない方なのかもしれませんね」 その口ぶりから、中年男性が口にする「我々」と言う組織は、ある程度の地位がある人間でないと辿り着けないのだろう。 それを考えると──。 もみじは、そっと髙野辺の横顔を見やる。 (……髙野辺さんの、ご実家は……お父様は、大変な財力があって……権力をお持ちのお方……?髙野辺さん、も……あのTK株式会社の社長さん、だし……。本当だったら、私みたいな
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418話

「──もみじさん?」 先程からもみじが無言な事に気がついた髙野辺が、心配そうに顔を向ける。 すると、もみじの顔色が悪くなっている事に気がついた。 「大丈夫ですか、顔色が悪い……!」 頬に手を添え、もみじの顔を覗き込む。 もみじは慌てて首を横に振り、答えた。 「ご、ごめんなさい大丈夫です……!少し、びっくりして……」 「そう、ですか……」 もみじと髙野辺のやり取りを見ていた中年男性は、自分の顎に手をやり「ふむ」と小さく声を漏らす。 どうやら男の方は相当な財閥の出で、女の方は一般家庭の様子。 女の反応からして、男は自分の身分を明かしていないのか?と、察しがついた。 中年男性は自分の懐を漁り、使い古された名刺ケースを取り出した。 中から1枚の名刺を取り出すと、髙野辺に手渡す。 「……何かあれば、電話をください。後は……何か情報を掴めたらそちらに連絡をしましょうか?」 「──いいんですか?」 中年男性の申し出に、髙野辺は驚いたように声を上げる。 髙野辺に対して男性は薄っすらと口元を笑みの形に変えると頷いた。 「ええ、もちろん。お客さんのような方とは繋がっておきたいのでね」 「……はは」 にんまり、と笑みを浮かべた中年男性の言葉に、髙野辺は愛想笑いを返す。 名刺を受け取り、自分も懐から名刺ケースを取り出して男性に名刺を渡した。 「お嬢さんにも一応渡しておきましょう」 「あっ、ありがとうございます」 中年男性から差し出された名刺を、もみじは頭を下げてから受け取る。 ちらり、と名刺に視線を落とすと、そこには「猪谷 雅臣(いのた まさおみ)」と名前が書かれていた。 「……お話を聞かせていただき、ありがとうございました。私たちは他の業者をあたってみます」 「そうですか。でもまあ、その方がいいでしょうね」 ここで聞く事はもう無いだろう。 そう判断した髙野辺が椅子から立ち上がる。すると、中年男性──猪谷もあっさりと頷いた。 猪谷の様子を見る限り、本当の事を言っているようだ。隠し事をしているような様子には見えない。 それなら、早く別の業者を当たってみた方がいいだろう。髙野辺はそう判断した。 倉庫の扉に向かって歩いて行き、ドアに手を掛けようとした所で、後ろから猪谷に話しかけられる。 「そうだ、髙野辺さん」 「──はい?」
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419話

猪谷の倉庫を出た2人は、車に戻った。 「──猪谷さんが言った通り、南に行くと確かに車の引き取り業者がありますね。ここは、ネットでも宣伝している……」 髙野辺がスマホをいじりつつ、そう告げる。 もみじに自分のスマホを渡し、画面を指差した。 「ほら、ここ。この業者が猪谷さんが言っていた業者みたいです。……金額については何も書かれていない。相手を見て吹っかける業者でしょうね」 「……こういった場所に、新島社長は頼んだのかもしれないって事、ですよね?」 「ええ。ただ、ここは廃工場ですし。車の解体もここで行っているかもしれません」 「……それならもしかしたら!」 ぱっ、ともみじの瞳が輝き、髙野辺に顔を向ける。 髙野辺は頷いてから答えた。 「ええ、もしかしたらまだ解体前の彼の車が残っているかもしれません。あるかどうか、探してみましょうか」 「……そうしましょう!」 2人は目を合わせたまま頷き合った。 30分ほど車を走らせ、髙野辺は周囲を見回した。 「ナビで表示している場所はこの辺りですね」 「──あっ!髙野辺さん、あれじゃないですか?ボロボロの車が沢山あります!」 もみじが指差す方向に顔を向けた髙野辺は、頷いた。 「確かに、あそこがそうみたいですね。行きましょう」 アクセルを踏み込み、車は目的の場所に向かった。 駐車場と思わしき場所に車を止め、もみじと髙野辺が車を降りると、店舗のような場所から人が出て来た。 スーツ姿の若い男性で、先程の猪谷とは違いこちらの男性は会社員風だ。 もみじと髙野辺に向かって、営業スマイルを浮かべ話しかけてきた。 「──こんにちは。当店にはどう言ったご用事でしょうか?」 男性はちらり、と2人が乗って来た車を見て、2人に視線を戻す。 「お車に問題は無いようですが……。当店は故障した車の引き取りを行っております……中古車の販売も行っておりますが、数は多くありませんので……」 不思議そうな表情で言葉を紡ぐ男性に、どう切り出そうか、ともみじが悩んでいると髙野辺があっさりと切り出した。 「──数日前にこちらに車の処分を頼んだ人は居ますか?」 「……数日前、ですか?申し訳ございません、当店をご利用するお客様は結構多くいらっしゃいまして……」 「なら……車の引き取りをお願いした人がいるって事ですね?その人物の
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420話

「私は、彼女の友人です。彼女が苦しんでいるのを傍で見て来ました。証拠さえあれば、彼女の夫有責で離婚が出来るんです……!」 「どうか、車だけでも探させてください。お願いします……」 もみじは、自分の目元を覆う。 その姿を見た男性は、憐れむような目をもみじに向けた。 もみじに同情している。 それが分かった髙野辺は、もみじの肩を支えつつ男性に顔を向けた。 「探させていただけたら、お礼はいくらでも……」 「──えっ」 髙野辺の言葉に、男性が明らさまに反応した。 やはり、人間金には簡単に揺れるのだろう。いくら規則だ、ルールだ、と口では言っていても簡単にその心は揺れる。 それも、ただの従業員であれば簡単だ。 髙野辺はもみじからそっと離れると、男性の耳元で囁いた。 「──これくらいで、どうですか?この事は他言しません。誰にも言いませんから」 「──っ」 髙野辺が指で示した数字に、男性は目を見開く。 「わ、分かりました。そこまで仰るなら……。だけど、絶対に誰にも言わないでくださいね。上司にバレたら、私は首になってしまいますから……」 「ええ、もちろんです」 男性の言葉に、髙野辺はにっこりと笑みを浮かべる。 そして、懐から封筒を取り出すと男性にそっと渡した。 「……最近引き取った車は、この区画にあります。……ただ、旦那さんの車が本当にここにあるかは分かりませんよ?」 「ええ、もちろんです。無くても構いませんよ。自由に探させていただいてよろしいですか?」 「ええ、どうぞ。私は中に戻っていますので……。お好きになさってください」 男性は髙野辺から受け取った封筒を大事そうにポケットにしまう。 そして、そそくさと事務所と思わしき場所に戻って行ってしまった。 その後ろ姿を見ていた髙野辺は、部屋の中に入った姿を見届けると、もみじに振り返った。 「さて、もみじさん。男性は居なくなりましたから、探しましょうか」 「ええ、そうしましょう。ありがとうございます、髙野辺さん」 2人は顔を見合わせて小さく笑い合うと、男性が言っていた区画に向かって歩き出した。 「この辺り、ですよね?」 「ええ、確か……。だけど、新しい車は無さそう、ですね」 「どの車もここに運び込まれて、時間が経っていそうです」 誠司の車と思わしき物は見つからない。 もしか
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