Todos os capítulos de 私の夫は義妹のために99回離婚を切り出した: Capítulo 461 - Capítulo 470

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461話

◇ 場所は変わって、とある一室。 テレビを観ていた人物は、テレビ画面に映ったもみじを見て、青筋を立てた。 「──はぁ!?」 画面には、もみじの姿と。そしてもみじを紹介する文章が載っていた。 「あの女が、有名デザイナー?はあ?バッカじゃないの!もみじなんか、大したデザイナーじゃないわ!!」 「……胡桃、落ち着きなさい。ストレスはお腹の子供に良くないわ」 「でも……っ、だって、お母さん……!」 「もみじは、TK株式会社と専属契約を結んでいるんでしょ?まぐれだとしても、コンテストで入賞したし、これくらい誇張して紹介文を書かないとTKとしても面子が潰れちゃうでしょ。実力がなくても、しょうがないのよ」 桔梗の言葉を聞いても尚、胡桃はイライラとした感情が収まらない。 (──あんなっ、素敵なドレスを着てっ、髙野辺さんの隣に……っ!それに、あの男の人は誰?何でもみじをそんな目で見てるの!?) 胡桃の目には、坂崎が映っていた。 その坂崎は、もみじを恋焦がれるような目で見つめ、見蕩れている。 (どうしてもみじばかり……!誠司だって、どうしてもみじなんか……っ) 胡桃は、玄関の方をちらりと見やる。 昨夜、誠司は家に帰って来なかった。 きっと中野と一緒にいるのだろう。 (それに、自分の子供を妊娠している妻を放っておいて、中野未来となんて……!誠司はいったい何を考えているのよ!) ぎりっと拳を握り締めていると、胡桃の下腹部にちりっとした痛みが走った。 「──っ?」 胡桃は違和感を覚え、ふと自分の下腹部に視線を落とす。 夕ご飯の支度途中だった桔梗は、今はキッチンに戻っている。 そのため、胡桃の様子には気がついていなかった。 「え、なに……?」 ちりっとした痛みは、どんどん増しているように思える。 「胡桃……?」 胡桃の呟きが聞こえたのだろう。 桔梗が振り返る。 「どうしたの、胡桃。お腹が痛いの?」 「お、お母さん……何だか、お腹が変なの……」 「──何ですって!?」 桔梗はお皿をシンクに落とす。 ガシャン!と皿が割れる音が部屋に響いたが、桔梗は構わず胡桃に駆け寄った。 「お腹がどうしたの!?痛みがあるの!?」 「な、何だか痛いの……ど、どうして……?赤ちゃんは大丈夫なの……?」 顔を真っ青にしておろおろとしだす胡桃。
last updateÚltima atualização : 2026-10-22
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462話

玄関の方から人の話し声と、足音が聞こえる。 誠司は慌てて玄関に向かい、目の前に飛び込んで来た光景にぎょっと目を見開いた。 「お、お義父さんにお義母さん……!?ど、どうなさったんですか!?」 胡桃の体を支え、ゆっくりリビングにやって来ようとしている3人を見つけ、誠司は慌てて胡桃に駆け寄った。 胡桃は自分の腹を庇うように手を添え、父の忠に肩を支えられている。 胡桃は誠司の声に反応し、ゆっくり顔を上げると濁った瞳で誠司を真っ直ぐ射抜いた。 「──ああ、誠司……。今日は帰っていたのね」 「──〜っ」 胡桃の言葉を聞いた忠の眉間に、皺が寄る。 忠はそれまで胡桃を気遣い、胡桃を見ていた目を誠司に向けた。 「今日、は……?まさか、誠司くんは昨夜帰って来なかったのか?」 まるで責めるような、低く重い忠の声。 誠司はびくり、と体を震わせると震える唇をゆっくり開き、言い訳を口にした。 「さ、昨夜、は……仕事が溜まっておりまして……。会社近くのホテルに、泊まりました……。そのっ、深夜遅くに帰ると、胡桃の体調にも悪いです、し……!」 「……」 誠司の言い訳を、忠は真顔で聞いていたがすぐに誠司から目を逸らし、胡桃に優しく話しかけている。 その光景を見つつ、誠司は背中に嫌な汗をかきながら必死に頭の中をフル回転させる。 (──不味い、不味いぞ……。昨夜、中野の家に行った事はバレていない、よな?それに、会社近くのホテルに泊まったのも本当だ……!昨夜、中野の妊娠を知って、すぐにあの家を出たんだ。それ以降はホテルの部屋で過ごしたんだ……!証拠を出せ、と言われればカード決済の証拠を出せる……!) 誠司がぐるぐるとそんな事を考えている間に、胡桃と両親の間で何か話が終わったのだろう。
last updateÚltima atualização : 2026-10-23
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463話

胡桃が、妊娠さえしていなければ。 そうすれば、胡桃とは不倫を続け、もみじとの婚姻関係を維持出来たのに。 そうすれば、中野とも胡桃のような関係を築けていたかもしれない。 (ああ、くそっ) 誠司は、自分の今の状況の悪さに目眩を感じていた。 その日の夜。 胡桃は既にベッドに入り、桔梗は客間で休んでいる。 忠は仕事を残しているからと家に帰り、誠司の家は静まり返っていた。 誠司は自分のベッドに入った状態で、スマホを確認していた。 その日のトップニュースや、SNSを確認する。 SNSを見ていた誠司が、ある投稿を見てスワイプしていた指がピタリと止まった。 「──は、新商品……発表の、パーティーだと?」 誠司の目は、TK株式会社が開催した新商品発売記念のパーティーの投稿に釘付けになった。 誠司が見ているのは、TK株式会社の広報が正式に上げている投稿写真だ。 写真は何枚かあり、殆どが社長である髙野辺が映っていた。 だが、その中の数枚にもみじの姿が映り込んでいる。 髙野辺と談笑している光景。 他の招待客と談笑しているもみじ。 もみじ1人だけが映っている写真。 複数枚あるもみじの写真を、誠司は未練たらしく見つめていた。 何枚もある写真をスワイプし、確認していく。 最後の方の写真は、パーティーでの写真ではなく、シリーズ化した新商品の紹介ページになっていた。 「……これ、は。新商品のシリーズ展開……?」 何かに気がついた誠司は、ハッとしたように目を見開き、食い入るように画像を見つめる。 「──これ……、このデザイン……」 どこか、見覚えがある──。 それにどこか懐かしい──。 どこだ。 どこでこのデザインを、と誠司は頭を悩ます。 この商品のデザイナーは、と確認してみると、デザイナーの表記はもみじの名前だった。 玖渡川 もみじ。 確かにそう記載されているのを見て、誠司は既視感を覚える。 「──そうだ、この海のデザイン……!」 海をモチーフにした、ボールペンのデザイン。 それを見た誠司の頭に、ふっと今までのSeaのデザインが浮かんだ。 「Sea、Seaだ……!どこか懐かしい、どこか見たように感じるのも、Seaのデザインと少し似ているんだ……!」 だが、Seaは胡桃のはずだ。 「──姉妹だから、感性が似通っているのか?も
last updateÚltima atualização : 2026-10-24
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464話

翌日。 誠司が起きて部屋から出ると、既に桔梗がキッチンで朝食の支度をしていた。 若干の気まずさを感じつつ、桔梗に挨拶をする。 「おはようございます、お義母さん」 誠司の声が聞こえたのだろう。 桔梗はちらり、と誠司を見やった後、すぐに顔を逸らして返事をした。 「おはよう。手を洗って、席に着きなさい」 「いえ、仕事が詰まっていますから先に出ます。今日は胡桃は休みで構いません。傍に付いてやっていてください。……それでは、行ってきます」 「あっ、ちょっと誠司さ──」 桔梗が何か言っていたが、誠司は足を止める事なくそのまま家を出た。 家を出ると、既に運転手が家の前に待機しており、誠司はそのまま車に乗り込んだ。 「おはようございます、社長」 「ああ、おはよう。……中野秘書の家に寄ってから会社に向かってくれ」 「かしこまりました」 中野が自分の子供を妊娠した──。 その事を知った誠司は、中野の送り迎えをする事に決めたのだ。 (胡桃には、お義母さんが付いている……。だが、中野は傍に頼れる人が居ない。俺しか、いないんだ……。それに、中野は今はまだ安静にしておかなければならない時期だ……。数週間くらい、中野を優先してもバチは当たらないはず) 誠司はそう考え、窓から見える外の景色に視線を移した。 ◇ 「──は?誠司、先に出て行ったの?」 起きてくるなり、胡桃は桔梗から聞かされた言葉に眉を顰めた。 朝食をダイニングテーブルに並べながら、桔梗は怒りを顕にぼやいた。 「ええ、そうよ。誠司さんは身重の胡桃を置いて出社したわ。……全く、昨夜は胡桃が体調を崩したって言うのに、心配もせず仕事に行くなんて」 「……誠司は私の事何も言っていなかったの?」 「いえ、仕事は休むようにと言っていたけど……」 桔梗の言葉に、胡桃は椅子に座ると早速用意された朝食に手をつけた。 「仕事は休まないわ。お母さんだって知ってるでしょ?誠司、秘書とできてるのよ。これで私が今日会社を休んだら、ここぞとばかりに社長室でイチャつくわ」 「──そうね、そうだったわね。……そんな事、阻止しないとね」 「ええ、そうよ。中野未来になんて渡さないわ。社長の妻って言う肩書きは、私にこそ相応しいんだから……!」 例え、今は不
last updateÚltima atualização : 2026-10-25
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465話

それから、あっという間に時間は過ぎた。 TK株式会社の新商品発売はとても好調で、既に増産体制に入っている。 シリーズ展開も成功で、女子中高生や会社員の女性達から人気があり、増産が間に合っておらず一部の地域では品切れが相次いでいた。 新商品が好調な事により、もみじや髙野辺も日々仕事に忙しくしていた。 「もみじさん、次のシリーズについて打ち合わせを……!」 「分かりました、このデータの入稿が終わったらすぐに。どこに行けばいいですか?」 「会議室Aでお願いします」 「分かりました!」 内線でやり取りをし終えたもみじが、パソコンのエンターキーを叩く。 そしてタブレットを手にするとすぐにデザイン室を出た。 「今日は……打ち合わせが2件と、新規案件のラフデザインの提出……。今日もおばあちゃん達の所に帰るのは難しそう……」 バタバタと慌ただしく廊下を駆け足で歩く。 廊下を歩いていた社員達は、もみじが歩いていると皆明るく挨拶をしてくれる。 もみじもそれに返しながら、髙野辺が待っているであろう会議室Aに向かった。 小一時間の打ち合わせはスムーズに進行し、早くも次シリーズの商品のデザインが仮決定した。 会議室Aにはもみじと髙野辺2人だけが残っており、もみじは自分のタブレットに会議で決まったラインナップの数パターンのデザインを起こしていた。 髙野辺も移動する時間が惜しかったのか、会議室内でいくつかの電話対応を行っていた。 「よし、一先ずはオッケーね」 小さく零しつつ、もみじは自分のタブレットにラフデザインを保存する。 タブレットから顔を上げたちょうどその時、髙野辺も電話対応が終わったらしく、顔を上げ、もみじと視線が絡まった。 「もみじさん、お疲れ様です。ラフがもう出来上がったんですか?」 「聖さんもお疲れ様です。ええ、いくつかパターンが浮かんだので、忘れないように保存しておきました」 「本当ですか!?後でデザインを見せてもらっても?」 「ええ、もちろんです」 2人は和やかに話しながら椅子から立ち上がる。 2人並びながら部屋の扉に向かっていると、髙野辺が話題を変えた。 「もみじさん、一段落着きましたか?もしよければ、これから一緒に夕飯でもどうですか?」 「ぜひ!ご一緒させてください」 ここ最近、2人は忙しく過ごしていて、食事も別々
last updateÚltima atualização : 2026-10-26
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466話

まさか髙野辺からそんな提案をされるとは思っていなかったもみじは、喜色に満ちた表情で強く頷いた。 「──いいんですか!?2人をこちらに呼んでも!?」 狭いエレベーターの中、もみじはぐっと髙野辺に近寄る。 もみじの嬉しそうな表情を見て、髙野辺まで嬉しくなってくる。 髙野辺はもみじの腰に自分の腕を回して抱き寄せた。 「ええ、もちろんです。もし良ければ、後で連絡してみてください」 「はい!ありがとうございます!」 嬉しそうに笑うもみじの額に、髙野辺は軽く口付ける。 ちょうどその時エレベーターが1階に到着し、もみじと髙野辺は慌てて離れた。 会社からほど近い個室の和食料亭に2人はやって来た。 ここはもみじも髙野辺と何度も来ている店で、店員ももみじと髙野辺がやって来ると愛想良く挨拶をしてくれる。 「玖渡川様、髙野辺様。すぐにご案内させていただきますね、少々お待ちください」 ぺこり、と頭を下げて声をかけてくれる店員に、もみじも髙野辺も頷き、言葉を返す。 ちょうど夕食時と言う事もあり、店内は混みあっているようだ。 もみじと髙野辺は待合で案内を待ちながら談笑する。 2人が他愛もない話をして笑っていると、入口のドアが開き、誰かが入ってくるのが分かった。 もみじからは誰が入ってきたのかは分からなかったが、向こうにはもみじの姿が見えたのだろう。 「──もみじ?」 唖然とした声が聞こえ、もみじは自分の名前が呼ばれた事に驚き、そちらへ顔を向けた。 すると、そこに居たのは。 「──新島、社長?」 まさか、こんな所で鉢合わせになるとは。 この店に入ってきたのは、誠司だった。 彼の他にも数人連れがおり、その中に胡桃の姿は見えない。 年格好も誠司より年上の人間が多く、中には中年男性も居る。 その事から、取引先との夕食だろうか、とすぐに察しがついた。 「もみじ……、話したい事、が……!」 誠司はそう口にすると、もみじの隣に髙野辺が立っている事に気が付き言葉に詰まる。 一瞬、表情を強ばらせてもみじの方に踏み出しかけていた足をぴたりと止めた。 そして、自分も取引先の人間と一緒に店にやって来たのを思い出し、慌てて後ろを振り返った。 「あ……っ、その……っ」 取引先に、何と言葉をかけようか──。 そんな事を考えているのが、表情から分かった。 誠
last updateÚltima atualização : 2026-10-26
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467話

案内された個室に入り、席に腰を下ろした2人は長いため息をついた。 2人同時にため息を零したため、お互い顔を見合せて笑ってしまう。 「びっくりしましたね。まさかここに新島社長も来るとは」 髙野辺が切り出した話題に、もみじも頷いた。 「ええ。取引先の人が居るのに、まさか話しかけられるとは思いませんでした」 「──ああ、あの人達ですか」 苦い表情を浮かべた髙野辺に、もみじは首を傾げる。 知っている人達なのだろうか、と考えたもみじに答えるように髙野辺が口を開いた。 「彼らは以前取引していた関連会社の社長と専務ですね。……前に、俺ともみじさんの噂がネットで上がったでしょう?その時に、彼らはあまり良い対応をしなかったので、契約を打ち切ったんです」 「──あの時の噂、の?」 「ええ、そうです。……うちで新商品を発売して、売れ行きが好調と知るとすぐに再度契約を、と連絡が来たのですが断った会社です」 髙野辺の説明にもみじはなるほど、だからか、と納得する。 あの人達に対する髙野辺の態度が、普段よりも数段冷ややかだったのだ。 髙野辺は「あまり良い対応ではなかった」と説明してくれたが、それが理由で契約を打ち切ったとするならば、相当な事を言われたのかもしれない。 「……すみません、私のせいでもありますね」 申し訳なさにもみじが謝罪をすると、髙野辺は「とんでもない!」と言葉を返す。 「もみじさんが謝る事は1つも無いですよ。それに、下世話な勘ぐりをしたのはあちらです。……そんな会社とは、遅かれ早かれ契約を白紙にしていたと思いますから」 さあ、食べましょうか。 話はこれで終わりだ、とばかりに話題を変えて明るく話す髙野辺に、もみじも頷いて食事を注文した。 ◇ あれから、小一時間ほど。 美味しい料理に、髙野辺との楽しい時間を過ごしたもみじは、お腹も満腹になり、幸せな気分で眠気を感じていた。 もみじが眠そうな事に気がついた髙野辺は、笑いかける。 「あと少しだけ頑張ってください、もみじさん。お手洗いに行ってきますから、少し待っててくださいね。俺が戻ったら家に帰りましょう」 「分かりました、待ってますね」 「ええ、お願いします」 眠そうに、ふにゃりと笑むもみじに笑いかけてから、髙野辺は個室の扉を開けて外に出て行った。 髙野辺の足音が遠ざかり、もみじが
last updateÚltima atualização : 2026-10-26
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468話

先程まで感じていた眠気など、既にどこかに行ってしまった。 どうして、ここに──。 もみじの顔が、見る見るうちに青ざめて行く。 「も、もみじ……少し話をしたい……」 だが誠司はもみじの顔色など気にもせず、そのまま個室に入ってくる。 開けた扉をピッタリと閉め直し、誠司はもみじに向き直った。 髙野辺がいない事を気にもせず、ただもみじをじっと見つめる様子から、誠司は最初から部屋に髙野辺がいない事を知った上でここに来たのだと言う事が分かり、もみじは誠司の周到さに唇を噛んだ。 (きっとどこかで聖さんが部屋を出て行くのを見て、ここに来たんだわ……。髙野辺さんはお手洗いに行ったから、戻ってくるのにはもう少しかかる。……なら) もみじは、この部屋からお手洗いは少し離れている事を思い出す。 髙野辺が戻って来るのを待つより、店員を呼んでしまった方が早いだろう。 そう考えたもみじは、席に設置されている端末で店員の呼び出しをこっこり行った。 (後は……新島社長が逆上しないように気をつけつつ、店員が来るのを待つだけ……) もみじはすぐに席から立ち上がると、誠司から距離を取るように離れる。 そんなもみじの動きを見て、誠司は傷付いたような表情を浮かべた。 どうして誠司がそんな顔をするのか──。 (この人のせいで、おじいちゃんとおばあちゃんがあんな目に遭って……!傷付いたのはこちらだわ……!) もみじがギッ、と誠司を睨み付けると、誠司は狼狽えたように慌てて口を開いた。 「ど、どうしてそんな風に俺から離れる……?俺とお前は少し前まで夫婦だっただろう……それなのに、夫を、避けるなんて……」 「夫……?私に夫はいません。以前は確かに法廷上、そう呼ばれる人が居たのは確かです。だけど、今私にそう呼ばれる人はいません。それに、私と新島社長はこんな風に親しく話をするような間柄ではないですよね?それほど親しく無い男性と、個室で2人きりになるのは怖いです。早く出て行ってください」 「──〜っ、親しくない、だと……!?」 もみじの言葉に、誠司の顔色が変わる。 その様子を見て、もみじはしまった、と胸中で悔いた。 (逆上させないように気をつけなきゃ、と思っていたのに……!この人は自分の思い通りにならないとすぐに苛立つ事を忘れてた……!) もみじは慌てて更に壁際に下がる。
last updateÚltima atualização : 2026-10-27
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469話

ぼすん、ともみじの顔が髙野辺の胸元に埋まる。 部屋から逃げ出す事を最優先にしていたからか、もみじの走る速度は上がっていて、結構な強さで髙野辺にぶつかってしまったのだが、当の本人髙野辺は、もみじが顔を打ってしまわないように上手く受け止めてくれたようだった。 「もみじさん、大丈夫ですか?怪我はしていない?」 「ひ、聖さん……?ごめんなさい、大丈夫ですか!?」 2人して同じタイミングでお互いを心配する声を上げてしまう。 よくよく見てみれば、髙野辺の後ろにはこの店の店員も一緒に来ていて、もみじは髙野辺を見上げた。 「私は大丈夫です、それにしても……早かったですね、髙野辺さん」 「ええ、まあ……。──どうして、彼がここに」 もみじの問いに答えを濁し、髙野辺は室内に顔を向ける。 室内には誠司が残っており、部屋の入口を塞がれているため狼狽えていた。 「た、髙野辺……」 「新島社長。どうしてこの部屋に?彼女に何をしようとしていたんですか」 こんなに怯えている、と髙野辺はもみじの肩を抱き寄せた。 もみじが大人しく髙野辺の腕に収まっているのを見た誠司は、面白くなさそうに眉を寄せる。 髙野辺と一緒に来た店員は、もみじが呼び出しボタンで呼んだからだろう。 店員は室内に視線を向け、誠司を見るなり眉を顰める。 「──お客様、どうしてこちらに?お客様に何かされたのですか?」 店員は、この個室にはもみじと髙野辺のみと言う事を知っている。 それに、髙野辺は既に会計を終えているので、途中合流者もいない。 まさか、個室だからと酔った客が女性客に乱暴をしようとしたのでは──。 その考えに至り、店員の表情が強ばる。 「ち、違うっ、この女性とは顔見知りで……!少し話をしたかっただけで……!俺はその女性に指1本触れていない……!」 店員の雰囲気が変わった事に焦った誠司が、慌てて言い訳を口にする。 確かに、誠司はもみじに指1本触れてはいない。 危うく腕を掴まれる所だったが、もみじはそれから逃げたのだ。 だが、誠司の怒鳴り声は恐らく──。 「ですが、あなたの怒鳴り声が廊下にまで聞こえていました。……だからこそ、私とお客様は急いで部屋に駆けつけたのです」 店員の言葉に、髙野辺が店員と一緒だった経緯を知り、なるほど、ともみじは納得した。 髙野辺が早く戻った事は
last updateÚltima atualização : 2026-10-27
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470話

誠司が言っていた、言葉──。 髙野辺の質問に、もみじは思い出そうと虚空を見上げる。 あの部屋に入って来た誠司は、話があると言っていた。だが、その時にもみじが誠司の怒りを買ってしまい、まともに話を聞く事は出来なかったのだ。 それを思い出したもみじは、髙野辺にその事を説明した。 だが、もみじの話を聞いた髙野辺はハンドルに手をかけたまま返す。 「それも、本当かどうかは分かりませんね。姑息な手を使って、刑事罰を回避した人間です。もしかしたら、もみじさんあなたを油断させて何かをしようとしていたかもしれない」 「……!そっか、そう、ですよね……。新島社長はそんな酷い手を使う人……」 「ええ、そうです」 こくり、と頷く髙野辺にもみじは自分の考えの甘さを恥じた。 (例え、あの人が何か話したそうにしていたとしても……それ自体が罠かもしれない。……胡桃に関わる人全てを、今後は疑ってかかった方がいいかもしれない) 真剣な表情で黙り込むもみじに、髙野辺は話を変えるように明るく言葉を紡ぐ。 「さあ、そろそろ家に帰りましょうか。帰ったら、もみじさんはおじい様とおばあ様に連絡してみてください。もしお2人が一緒に住む事に同意してくれたら……週末に済ませちゃいましょう」 髙野辺の言葉に、もみじははっとして頷いた。 ◇ ──週末。 もみじは髙野辺の家の外でそわそわとしながら周囲を見回していた。 もみじの隣には、もちろん髙野辺も一緒に居る。 2人で待っていると、もみじの視界の先に引越し業者のトラックが走ってくるのが見えた。 「──あっ!聖さん、来ました……!」 引越し業者のトラックの後ろには、一台の車が着いて来ている。 トラックがもみじ達の近くに止まり、業者に髙野辺が挨拶をしている間に後から着いて来ていた車が停車した。 運転席から降りて来たのは、田島だ。 田島はもみじに笑顔で会釈をすると、もみじもぺこりと頭を下げる。 後部座席のドアが開き、そこから降りて来た人物を見てもみじは駆け寄った。 「──おじいちゃん、おばあちゃん!」 もみじの声に反応したのだろう。 後部座席から降りて来た祖父の耕三がもう1人の秘書、蒔田に支えられながら顔を上げた。 「もみじ」 「もみじちゃん」 祖母のルリも一緒に降りてきて、駆け寄るもみじに笑顔を向けた。 耕三は蒔田
last updateÚltima atualização : 2026-10-28
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