All Chapters of 氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜: Chapter 41 - Chapter 50

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41話

 朝食を終えると、ワゴンに食器を乗せた。外に出ようとしたところで、誰かがドアをノックする。誰なのか察したカミリアは、ワゴンを部屋の隅に寄せてドアを開けた。ラウルが入ってくるのと同時に、はなやかな香りがする。「やぁ、カミリア。開けてくれてありがとう」「それはなんですか?」 ラウルが持っているトレーを見ながら聞く。トレーの上にはティーポットとふたり分のティーカップ、そしてクッキーがある。「お茶をしながら話そうと思って、紅茶を淹れてきたんだよ」「そうでしたか。お気遣い、ありがとうございます」 言葉とは裏腹に、カミリアの頬は引きつっている。子供の頃に1度だけ、紅茶を飲ませてもらったことがあったが、口に合わなかった。独特な風味に、気分が悪くなったのを今でも覚えている。「あ、もしかして紅茶苦手?」「えぇ、実は……。子供の頃に飲ませてもらったことがあるんですけど、あまり美味しくなくて……」「もしかしたら、癖のある茶葉だったのかもね。紅茶は種類豊富だし、中には癖が強いものもあるから。一応飲みやすいダージリンにしてみたけど、無理しなくていいよ。なんなら、君が好きなものを持ってくるよ」 ラウルはテーブルにティーセットを並べると、自分の分を淹れながら言う。せっかくの好意を無駄にしてはいけないと、カミリアは首を横に振った。「いえ、いただきます」「そう? 口に合わなかったら無理して飲まなくていいからね」 ラウルはもうひとつのティーカップに紅茶を注ぐと、カミリアの前に置く。ダージリンの優しい香りがふわりと広がった。(香りはいいんだけど……) カミリアは恐る恐る口をつける。爽快感のある引き締まった渋みが、口いっぱいに広がる。クッキーとの相性も良さそうだ。
last updateLast Updated : 2026-01-29
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42話

「美味しい……!」「気に入っていただけたようでよかった。美味しいお茶とお菓子があるから楽しい話をしたいところだけど、昨日約束したとおり、シャムスについて教えてくれるかな? 特に、どういったものがどう差別されているのかを」 真剣な顔で言うラウルに、胃がキュッと締まる感覚がする。シャムスの差別にはカミリア自身も苦しんできた。今までのラウルの行動を見てきて、彼は差別をすることはないだろうと思う反面、万が一のことがあったらという不安も少しある。「まず髪色ですが、黒髪と赤髪が差別の対象になっています。ブロンドが至高とされており、ブロンドの人間が、黒髪や赤髪の人間を虐げるのは日常茶飯事です」「確か、黒髪は夜空、赤髪は夕空を連想させるから、だっけ?」 ラウルの問いに、カミリアは大きく頷く。髪色差別で思い出すのは、子供時代のハーディと、この前街で見かけた黒髪の少年。彼らには罪はないのに、髪色だけで虐げられるのはおかしいと、話をして改めて思った。「自警団にいた頃、被害者は黒髪や赤髪がほとんどで、加害者は決まってブロンドの人間でした。稀に髪色差別をされている者が加害者になることがありますが、彼らは……」 加害者にならざるを得なかった彼らを思い出し、胸が苦しくなる。彼らはただ、普通に暮らしていただけなのだ。それなのに髪色を理由に暴力を振るわれ、愛する者を目の前で殺されたり犯されたりされる。その結果、相手を殺害してしまうという痛ましい事件をいくつも見てきた。「なるほどね、髪色差別だけでも考えられないくらいに酷い……。大丈夫? 気分悪くしたりしてない?」 顔を上げると、ラウルが気遣わしげにのぞき込んできている。このままではダメだと心の中で自分に言い聞かせ、ラウルを見つめ返す。「大丈夫です、続けましょう。このことは、できるだけ多くの人に知ってもらいたいんです」「カミリア……。君は本当に強くて優しい人だね。ありがとう、続けて」 カミリアは小さく頷くと、紅茶で口を湿らせた。
last updateLast Updated : 2026-01-29
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43話

「女性も差別の対象です。これについては、ドゥム達を見てある程度分かったでしょうが、女性が上の地位に立つと、白い目で見られます。実力ではなく、身体を売って入ったと陰口を叩かれます」「なるほど、男は無条件に女より優れてると思われてるって感じかな?」「はい、そうです。女は愛想を振りまいて、家事だけしていればいい。女が勉強や剣術を学ぶなんて考えられない。大抵のシャムス人は男女関係なく、そう考えていると思います」「随分深刻だな……。女性は男の奴隷ではないのにね」 ラウルの言葉に、カミリアは胸が熱くなる。サウラを例外に、男は皆女性を差別していると思った。ラウルにいたっては、女たらしだと。少しだけ、ラウルの見方が変わった。「髪色と女性以外に、差別はあるのかい?」「はい。私個人としては、これが1番問題だと思っています」 脳裏に過ぎるのは、この前助けた黒髪の少年や、焼印でしなくていい苦労をしている人々のこと。いくら地位があるとはいえ、騎士団長にどうこうできる問題ではないが、悲劇を終わらせるためにも、ひとりでも多くの人に知ってほしい。 理由は分からないが、ラウルならこの問題を明るい方向へ持っていってくれるのではないかと、淡い期待を抱いてしまう。「ラウル団長、焼印について聞いたことありますか?」 焼印という言葉と聞いた瞬間、ラウルの眉間にシワが寄る。「あぁ、詳しいことは知らないけど、三日月の焼印だろ? あれは一体どういう言われがあるんだい?」「あれは、未婚の子に付けられるものです。この国では未婚を不浄のものと考えていて、未婚のまま妊娠したり、出産したりしたカップルは罰せられるんです。子供には未婚の子である印として、三日月の焼印を、顔に……」「はぁ……本当に酷い国だね……。話してくれてありがとう。辛いことばかり聞いてごめんね」 そう言ってラウルはカミリアの柔らかなブロンドの髪を撫でる。カミリアは戸惑いながらも、おとなしく撫でられる。恥ずかしさはあるものの、不思議と心地よく、振り払おうという気は起きなかった。
last updateLast Updated : 2026-01-29
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44話

「ラウル団長、私からも質問をしていいですか?」「どうそ」 カミリアを撫で終わると、ラウルは優雅な仕草で紅茶に口をつける。カミリアはその様子を観察するが。剣を握った時の彼とは別人に見える。「どうしてそんなに強いんですか?」 ラウルの動きが止まり、一瞬だけ顔が強張る。だが、すぐにいつもの優しい笑みを浮かべた。「君には負けるよ」「私に余裕で勝っておいて、よくそんな嫌味が言えますね」「嫌味なんかじゃないさ。本気で言ってるんだ」 カップを置いて言うラウルの顔は真剣そのもので、カミリアは思わず息を呑む。「僕は、君のような戦い方ができない」「それってどういう意味ですか?」 ラウルは質問に答えず、寂しそうに目を伏せた。どう言葉を続けるか考えていると、ラウルは顔を上げて不自然なほど明るい顔をする。「さてね。それよりもう昼近くだ。授業の準備をしよう」 貼り付けられた笑みが痛々しく見え、カミリアはそれ以上踏み入ることができなかった。 午後、ついに人生初めての授業が始まる。カミリアが会議室の前に座ると、騎士達がぞろぞろと集まってくる。席が半分近く埋まったところで、ラウルに授業を始めるように言われた。(大丈夫、付け焼き刃とはいえ、ちゃんと準備してきたんだから) 自分に言い聞かせて資料で顔を隠し、小さく息を吐いて騎士達と向かい合う。「今日から何日か、君達に軍学について教えることになった。こういったことは初めてなので至らぬ点もあると思うが、よろしく頼む」 硬い表情で挨拶をするカミリアに、ラウルを始め、騎士達は少し微笑ましく思い、彼女を見守る。そうとも知らず、カミリアは手元の資料に目を落とす。「今日は、人海戦術と少数精鋭についての授業をする。説明するまでもないが、人海戦術は数で押し切る戦術、少数精鋭は名前の通り少人数の精鋭で戦うことを指す。私は人海戦術より、少数精鋭で戦う方がいいと思っている」 不安になりながら顔を上げると、騎士達は持ってきたノートにカミリアが言ったことを書き込んでいる。真面目に聞いてくれている彼らを見て、少しだけ安心した。
last updateLast Updated : 2026-01-29
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45話

「それぞれのメリット・デメリットについて話をしよう。まず、人海戦術のメリットだが、兵器や資金力などを必要としない。だが、デメリットはかなり大きい。数に頼るあまり、ひとりひとりの気が緩む。他人任せにして逃げ出す兵士もいるだろう。連携もロクに取れない。何より、多くの命を犠牲にする。だから、私は人海戦術は絶対に使わない。この騎士団がどれだけ大きくなろうが、君達ひとりひとりに変わりはいない」 少し感情的になってしまったかと思いながら、彼らを見る。騎士達は小声で隣同士の者と話し合いながら、ノートを取っていた。(今のところ順調、ってことでいいんだよね……?) カミリアは資料にざっと目を通して、顔を上げる。「次に、少数精鋭についてだ。少数精鋭のメリットは、連携が取りやすい、数が少ないため、敵に見つからずに任務を遂行しやすいなどがある。大勢に囲まれたとしても、日々鍛錬をしている精鋭なら、立ち向かっていけるだろう」 カミリアは言葉を途切れさせ、この場にいる騎士達を見回す。彼らの顔は真剣そのもので、真面目にカミリアの話を聞いている。「私は、この騎士団がどんな困難にも立ち向かえるよう、ひとりひとりに精鋭になってもらいたいと思っている。王族や国民の命はもちろん、仲間や自分自身の命を守れるよう、日々の鍛錬と勉学を怠らないように。軍学のすべてを覚えろとは言わない。基礎知識だけでもいい、たったひとつの戦術だけでもいい。その知識が、きっといつか皆の役に立つ日が来るはずだ」 話をしているうちについ感情的になり、一気に話してしまった。カミリアは小さく息を整えると、再び彼らを見回した。熱い視線を送られて驚くも、自分の言葉が彼らの心に届いたと思うと嬉しくなる。「今日の授業はここまで。……初めてで正直自信がないんだが、どうだった?」 恐る恐る聞いてみると、騎士達はカミリアを囲んだ。彼らの目はきらきらと輝いており、くすぐったい気持ちになる。
last updateLast Updated : 2026-01-29
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46話

「ケリー副団長のこと、誤解していました。前回の野盗討伐で、大人数のあいつらを少人数で相手にさせられた時、使い捨ての駒にされていると、噂通りの冷酷な氷の戦乙女だと思っていました。けど、我々を信じてのことだったのですね?」 ひとりの若手騎士が興奮気味に言うと、他の騎士達も誤解をしていたと打ち明ける。 騎士達はカミリアに質問したり、次の授業のリクエストをしていく。カミリアは少しドギマギしながらも、彼らの質問に答えたり、リクエストをメモしていく。 騎士団に入団して6年になるが、初めて彼らと心を通わせることができていると実感する。 ふと視線を感じてそちらを見ると、微笑を浮かべて見守っているラウルと目が合った。軽く手を振るラウルにどう反応していいのか困り、顔をそらす。 少し離れたところから、仄暗い目でその様子を見つめる者がいた……。 それから1週間、カミリアは午前中にラウルとシャムスや騎士団についての話をし、午後は授業をするという生活を送った。カミリアの授業は大好評で、サウラが時間を割いて見学をしに来るほどだった。 そして7日目の朝。ラウルがふたり分の朝食を持ってくる。3日目までは朝食を終えた後に話をしていたが、一緒に食べたほうが効率がいいということで、4日目からはこうして朝食を共にしている。「おまたせ、カミリア」「ありがとうございます」 朝食を並べてくれるラウルの横顔を見ながら、感慨深いものを感じる。最初は嫌だったファーストネーム呼びも、今ではすっかり定着してしまった。騎士達との距離も、この1週間でだいぶ縮まった。これはカミリアにとって大きな収穫だ。 男性嫌いではあったが、彼らとの距離感を虚しく思う時が何度もあった。「さぁ、食べようか。いただきます」「いただきます」 ふたりは手を合わせると、紅茶を飲みながら朝食を食べる。カミリアはベーグルを半分食べたところで、紅茶をひと口飲んで小さく息を吐く。7日目の今日、ラウルにどうしても聞きたいことがあった。
last updateLast Updated : 2026-02-02
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47話

「ラウル団長、聞きたいことがあります」「何かな?」 まだ眠いのか、ラウルはあくびを噛み殺している。「1日目、「君のような戦い方はできない」と言ったのを覚えていますか? その意味を教えてください」 ラウルは小さく肩を揺らし、紅茶を飲んでいつもの微笑を浮かべた。「あぁ、そんな話もしたっけね。君は刺突メインで戦うだろう? 僕にはそんな戦い方はできないっていうのは、そういうことだよ」 そう言って笑うも、カミリアはすぐに嘘だと見抜く。ラウルほどの実力があれば、刺突だけで相手を仕留めることができるだろう。それを指摘しようとするも、ラウルが先に口を開く。まるで、指摘されるのを恐れるように。「そんなことより、カミリア。サーベルを扱ってみる気はないかい?」「サーベル、ですか?」 思ってもいない提案に、カミリアはキョトンとする。ラウルの提案はいつも突拍子もない。困惑するカミリアを他所に、ラウルは楽しそうだ。「そう、サーベル。あれなら刺突もできるし、君に向いてると思うんだ」 顎に手を添え、思考を回す。カミリアは刺突に特化したレイピアを使っているのは、鎧を着込んだ敵兵といつ対峙してもいいようにというのと、敵でもできるだけ苦しませたくないという思いからだ。 自警団時代から使い続けているが、それでも不便に思う時がある。「そうですね。せっかくですし、習得してみようと思います」「それじゃあ、明日からサーベルの練習をしよう」「ひとりでできます」 カミリアがきっぱりと断ると、ラウルは苦笑する。「まだそんなこと言うの? 使い手に教わる方が効率いいと思うんだけどな」 ラウルの正論にどう反論するか考えたが、思いつかずにうなだれる。それを肯定とみなしたのか、ラウルは嬉しそうな顔をする。「それじゃあ、明日から教えるよ」「今日からでもいいんですよ?」「ダーメ。今日まで安静にしてて。って言っても、君が安静にしてないことは知ってるんだけどね」 ラウルはやれやれと方をすくめ、ため息をつく。
last updateLast Updated : 2026-02-02
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48話

「……なんのことでしょう?」「君が空き時間で基礎トレーニングしてるの、知ってるよ」 ラウルの言うとおり、身体が鈍っていくことを恐れたカミリアは、空き時間に軽い筋トレをしていた。「足に負担がかかることはしていません」「まったく、困った子だ……。ところで痛みはどう?」 ラウルに聞かれ、カミリアは軽く足首を回す。毎日薬を塗っていたおかげか、5日目あたりから痛みはほとんどなくなっていた。「大丈夫です」「そっか、よかった。それなら予定通り明日から練習を始めるけど、無茶はしないように」「はい」 カミリアが素直に返事をすると、ラウルは満足げに微笑んだ。 この日、午後に最後の授業が終わると、騎士達はカミリアを囲んだ。彼らがカミリアを囲むのはいつものことだが、今日は雰囲気が違う。「ケリー副団長、お願いがあります」「なんだ?」「週に1回でいいので、これからも授業をしてくれませんか?」「副団長の授業は分かりやすいですし、とてもためになります。一昨日の魔物討伐任務も、副団長の教えのおかげで、効率よくできたんです」「俺も、仲間と連携を取る大切さを学んだおかげで、円滑に任務を遂行することができました」 騎士達は口々にカミリアの教えが役に立ったことを報告する。驚きはしたものの、嬉しく思う。彼らにもっと軍学を教えたいとも。けど、それを決めるのは団長であるラウルだ。「大人気だね、カミリア・ケリー先生。君さえよければ、週に1,2回くらい、授業やってもらえるかい?」 ラウルの言葉に、騎士達はカミリアに期待の眼差しを向ける。(そんな目で見られたら、断るわけにはいかないなぁ。それに、私も続けたい) 彼らの期待に答えるように、カミリアは大きく頷く。「団長がそうおっしゃるのであれば、授業を続けます」 カミリアが出した答えに、歓声が上がる。ここまで喜んでもらえるとは思わず、胸が熱くなる。これからも彼らに生き抜く術を教えられるのは、この上なく嬉しいことだ。
last updateLast Updated : 2026-02-02
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49話

 その番、カミリアの部屋に来訪者が来る。来訪者は静かにドアをノックする。 「こんばんは、カミリア」 「ハーディ! 今開けるわ」  ドアを開けると、ハーディがワゴンを押して入室してくる。ワゴンの上には捻挫した日と同じく、ケーキスタンドとふたり分のココアが乗せられている。ハーディは窓際のテーブルに、それらを並べていく。  ふたりで向かい合って座ると、ハーディが先に口を開く。 「授業続行なんてすごいじゃない、ケリー先生」 「その呼び方恥ずかしいからやめてよ」  カミリアが頬を僅かに紅潮させると、ハーディはからかうように笑った。 「いいじゃない。カミリアの授業は分かりやすかったから、私でも理解できたわ。ラウル団長に感謝ね」 「ラウル団長ねぇ……」  ラウルの名前が出た途端、カミリアの表情が曇る。ラウルには感謝しているが、彼といると少し疲れるというのが、今のカミリアの本音だ。 「どうしたの?」 「正直、一緒にいると疲れるのよね……。ドゥム達みたいに差別的な目で見ないのはありがたいけど、発言がいちいちキザだし、過保護っていうか、子供扱いされてる気がするっていうか……」  この1週間を思い出し、カミリアはため息をつく。ラウルは約束していた午前中はもちろんのこと、授業後や夜までカミリアと一緒にいた。夜に至ってはカミリアの湯浴み後を狙って来て、足に薬を塗る。自分でやると言ってもやらせてもらえず、朝晩欠かさずに薬を塗られ続けた。  献身的な態度だけでも戸惑うのに、彼は1日5回は口説き文句と捉えてしまう言葉を平然と口にしていた。男性に優しい言葉をかけられることすら慣れていない初心なカミリアにとって、ラウルの口説き文句は心臓に悪い。思い出しただけでため息が出る。 「確かに、ラウル団長は口を開けばカミリアって感じだもんね。好かれてるんじゃない?」 「冗談じゃない!」  反射的に否定すると、ハーディはクスクス笑う。 「お似合いだと思うけど」 「絶対嫌。そもそも、私は恋愛になんて興味ないの。ハーディも知ってるでしょ?」  ムキになって否定するカミリアに、ハーディは困ったように笑う。彼女にも子供扱いされている気がして、何かいい言い訳はないかと考えるも、思いつかずに諦める。 何も思いつかなかったこともあり、重々しいため息をついてしまう。 「大きなため息ね。
last updateLast Updated : 2026-02-02
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50話

 ラウルが入団して3ヶ月、騎士団は大きく変化した。以前より和気あいあいとした雰囲気になり、更に強くなった。個々の強さはもちろんのこと、臨機応変に連携したり、単独で戦ったりするということを覚えてきた。ラウルがひとりひとり手合わせをして的確なアドバイスをし、カミリアが軍学を教えた結果だ。 この日カミリアは数人の見習い騎士達と、低級モンスターの討伐任務に出ていた。彼らの腕試しを兼ねた任務を終え、良い点と悪い点を指摘しながら、城に帰ると、城門でラートが待ち構えていた。彼はカミリアと目が合うと、片手を上げて挨拶をする。「やぁ、副団長お疲れ様」「ありがとう。君が出迎えに来たということは、何かあったのか?」 カミリアの問いに、ラートは深刻な表情を作る。いったい何があったのかと、緊張してラートを見つめる。すると、彼は吹き出し、大声で笑いだした。「ははははっ! そんな顔しなくていいですよ、副団長。悪い話じゃないんですから」「なっ……! 君が深刻そうな顔をするからではないか!」 ふたりのやりとりを見て、見習い騎士達も笑う。恥ずかしさで顔が熱くなってくる。「ごめんごめん。副団長、意外と素直だからさ。サウラ王子が客間に来いってさ。大事な話があるらしい」「王子が呼んでいるのに、悪ふざけをしたのか!? そういうことはすぐに伝えるんだ」 久方ぶりにカミリアに睨まれ、ラートは冷や汗を垂らす。そんな彼を見上げてため息をつくと、カミリアは見習い騎士達に向き直った。「話は途中だったが、今日の討伐任務は及第点だ。これからラートが稽古をつけてくれるそうなので、色々学ぶように」「はいっ!」「お、おい……」 からかわれた仕返しに仕事を押し付けると、カミリアは汗を流しに風呂場へ行く。本来なら今すぐ行くべきなのだが、汗や返り血で汚れたままサウラの元へ行くのは気が引けた。
last updateLast Updated : 2026-02-02
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