朝食を終えると、ワゴンに食器を乗せた。外に出ようとしたところで、誰かがドアをノックする。誰なのか察したカミリアは、ワゴンを部屋の隅に寄せてドアを開けた。ラウルが入ってくるのと同時に、はなやかな香りがする。「やぁ、カミリア。開けてくれてありがとう」「それはなんですか?」 ラウルが持っているトレーを見ながら聞く。トレーの上にはティーポットとふたり分のティーカップ、そしてクッキーがある。「お茶をしながら話そうと思って、紅茶を淹れてきたんだよ」「そうでしたか。お気遣い、ありがとうございます」 言葉とは裏腹に、カミリアの頬は引きつっている。子供の頃に1度だけ、紅茶を飲ませてもらったことがあったが、口に合わなかった。独特な風味に、気分が悪くなったのを今でも覚えている。「あ、もしかして紅茶苦手?」「えぇ、実は……。子供の頃に飲ませてもらったことがあるんですけど、あまり美味しくなくて……」「もしかしたら、癖のある茶葉だったのかもね。紅茶は種類豊富だし、中には癖が強いものもあるから。一応飲みやすいダージリンにしてみたけど、無理しなくていいよ。なんなら、君が好きなものを持ってくるよ」 ラウルはテーブルにティーセットを並べると、自分の分を淹れながら言う。せっかくの好意を無駄にしてはいけないと、カミリアは首を横に振った。「いえ、いただきます」「そう? 口に合わなかったら無理して飲まなくていいからね」 ラウルはもうひとつのティーカップに紅茶を注ぐと、カミリアの前に置く。ダージリンの優しい香りがふわりと広がった。(香りはいいんだけど……) カミリアは恐る恐る口をつける。爽快感のある引き締まった渋みが、口いっぱいに広がる。クッキーとの相性も良さそうだ。
最終更新日 : 2026-01-29 続きを読む