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新解釈「聖女」의 모든 챕터: 챕터 21 - 챕터 30

30 챕터

第17話

そして、ついでに……。「こちらは、飾られているのはルクスハイムの国宝ですか?」父親世代と思しき白髪交じりの騎士に、アリアはそっと近づいて首を傾げた。上目遣い。わずかな距離。騎士の目じりは、一気に下がる。「ええ、そうですよ。こちらは建国以来の……」お父さん世代を転がすのは、昔からアリアの得意技だった。辺境では、父を筆頭に、父の部下たち相手に何度も使い、食べ物を中心に色々なものをせしめてきたものだった。いつもの調子で、少し甘え、大袈裟に尊敬してみせれば、彼らは誇らしげに語り出す。アリアは相槌を打ちながら、壁に掛けられた装飾品を観察する。金細工。宝石。古びた剣。(これはレプリカ……これは本物。あちらは……おおっ、あれは高く売れるわ)母エリスの手伝いで、異国の商人と値踏みをしてきた経験が生きていた。国宝は国の所有物であり、個人のものではない。だからこそ、国の歴史で、国の権威である。それを軽んじることは、誰にも許されていない。しかし、王家が見栄で飾っているものなら問題ない。その王家を滅ぼそうとしているのだ。そうなれば、元王家だった家でしかない。(これまでの悪政の償い、賠償金はちゃんと回収しないとね)ルクスハイム王国の金庫はほぼ空。革命後には多くの資金がいる。金の純度。宝石の透明度。加工の技術。売ればいくらになるか、アリアの目には値札がかかっているように見えた。(あれは五百枚……いや、七百枚はいきましょう。代わりに、こちらは三百程度にして……)いや、アリアが値札をつけていた。「王太子殿下は国でも一、二を争う宝剣のコレクタ
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第18話

(この少女が「聖女」……どこがだ)ヴァルターは笑い転げたい気持ちをグッと抑えた。北部辺境伯家の一団がついたという報告を受けてしばらくすると、城内は天からの使いのごとく清らかで儚い聖女様の話で盛り上がった。それ一色にならなかったのは、聖女の三人の兄たちの話題もそこかしこで花を咲かしていたからだ。それを耳にしながら、ヴァルターは「仕事をしろ!」と思った。(言っても無駄なので思うだけだったのだが)この国は腐り、私腹を肥やしたい貴族がこの国の中枢である城に手の内の者を縁故採用するせいで、城内で働く者は過剰なほどいる。真面目に働いているのは、ほんの一握り。ヴァルターはアリアの後ろで、少しフラフラしている自分の侍従を見る。(彼には申しわけなさしかない)国家を運営していくにはいくつもの部署がまるで歯車のようにかみ合わせながら動かなければいけない。どこかだけ動いてもだめなので、働く一握りの者たちを全部署に割り振る。そうなると各部署に一人か二人しか配置できず、そこで彼らは重圧を背負いながら頑張って仕事をしている。ある程度一人で仕事ができる三十代は、一人配置。これから仕事を覚える二十代は四十代以上とペア。二十代のほうには「仕事を教えるため」と言っているが、四十代以上には夜通しで仕事をするときは自分は仮眠をとり必要なら二十代のほうを働かせろと言ってある。鬼のような発言だが、四十歳を過ぎると徹夜がきつくなるのだ。確実に次の日に使い物にならなくなる。それなら仮眠したほうが圧倒的に効率がいい。判断は年寄りがするから、若手は体力を使ってくれという力技。これがいまの城の内情だった。 .―― アリア・ヴァルグリム嬢ほど聖女が似合う者はいないが、セドリック王太子殿下の妃に彼女ほど似合わない者はいない。(兄上の言葉の意味が、ようやく分かった……この少女に、王太子妃は似合わん)ヴァルターの胸が高鳴る。(この
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第19話

重厚な扉が、内側から押し開かれた。軋む音が、やけに大きく響くとアリアが思ったとき、玉座の間の明るさがアリアの目をさした。(魔導灯の使い過ぎ! 高位貴族様の頭が眩しい!)目くらましが目的ならすごい読みだが、ふんぞり返った国王と王太子、そして値踏みするような目で自分を見るおじさん貴族たちを見て『それはない』とアリアは判断した。一方で、光の中に立つアリアの姿に、玉座の間に集う者たち、国王たちも貴族たちは息を呑んでいた。まさしく、聖女。清らかで儚い少女。だが、その一歩目で幻想が壊れる。しずしずという歩みではなく、ズカズカという闊歩。裾を引きずらないどころか、やや男前な裾捌き。視線は下げないどころか、国王から視線を外さない。左右の列席者には目もくれない。そして手には錫杖、過去の聖女もそんなものは持っていなくて手ぶらだったが、アリアの手には細い剣。「お、お待ちください」どこから剣を持ってきたのかと言えば、入口の扉を開けた近衛兵がさしていた剣だった。最近王宮では装飾多めの細剣が流行っており、これ見よがしに彼がぶら下げた剣はアリアにとっては『良いもの見つけた』だった。当初の目的では、カイムが腰に指している剣を借りる予定であったが、体躯のいいカイムに合わせて誂えた剣なので重い。カイム自身は背負っている大剣を使うから別に構わないと言うのだが、アリア自身は構う。重い剣は構えるのも大変。(よし、決まった)アリアは細い剣をピッと構え、切っ先を国王に向ける。剣飾りの煌びやかな房も、アリア好みだった。「止まれ!」段の手前、二人の近衛騎士が槍を交差させる。「これより先は、陛下の許可なき者は――」金属音が弾けた。いつの間にか抜かれたレオンハルトの剣と、フィンの剣がふたりの剣を弾いていた。近衛騎士はたたらを踏んで、しりもちをつく。かかされた恥に近衛兵の顔が赤くなると同時に 玉座の間が騒めき弾ける。「無礼であるぞ!」王太子セドリックが立ち上がろうとしたが、あっという間に切迫したアリアがセドリックの着ていたマントに剣を刺してその場に留める。「はじめまして、王太子殿下」アリアはにっこり笑う。美少女の微笑み。父親譲りの好色がにょきっと出てきて、セドリックは状況を忘れる。「待っていたぞ、マリア」兄三人は、妹の額に青筋が立つのが分か
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第20話

「さて、ここまで王様たちを腐らせた人には責任をとらせないとね」アリアがにこりと笑って玉座の間を見渡す。アリアのこの一言は効果てきめんだった。この場の誰も、責任をとりたくなかったため、我先にと逃げ出した。「ま、待てっ!」身一つで逃げ出す者は追わず、火事場泥棒のような真似をする者だけ門にいた北部の騎士たちが捕縛していた。「陛下たちをお助けしろ、って攻撃されると思ったのに……人望がないのね」アリアは深い同情を込めた目で国王たちを見た。「煩いっ! お前、こんな真似が赦されると思うなよ」「誰が赦さないの?」「誰がって…………誰だ?」「さあ?」改めて『誰が』と言われると、王太子だったセドリックは誰の名前もあげられなかった。「アリア嬢」静かな玉座の間に、宰相ヴァルターの凛とした声が響いた。その後ろには大勢の城の使用人たちがいる。それに対峙するのは、アリアと三兄弟の、たった四人。「お前たち……」セドリックは、名前は分からなかったものの、城に残った彼らの姿に感動していた。「さあ、俺と父上を助けるんだ!」「無理です」息を吹き返したようなセドリックの言葉を、ヴァルターはバッサリと斬り捨てた。「よく見てください、我々は騎士ではありません」「だからどうした、戦え!」セドリックの言葉に、ヴァルターは深いため息を吐く。「何のために」「何のためって、俺たちを助けるためだ」「助けて、何になるのです?」「何にって……それなら、お前たちはなぜ逃げずに残った」「給金の為ですよ」「……は?」セドリックは理解できないという顔をしたが、アリアたち兄弟は「お金は大事よね」と頷いた。「食料品や日用品を購入するには、お金が必要。そのお金を稼ぐために、我々は働いています。そしてここにいる者は全員、己の職務を全うしてきております。例え厳しい取り調べを受けようと、決められた金銭を受け取るにふさわしい働きをしてきております。我々に何も恥じることはありません」セドリックが、目をパチクリとする。「もしや、金を寄越せといっているのか?」「それ以外のことを言っているように聞こえましたか?」ヴァルターは真剣な顔で問い返した。「今月分の給金、きっちり払ってください」セドリックの中で何かが切れた。「お前にはこの状況が見えないのか! 国が、国の、一大事なのだぞ!
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第21話

「セドリック、耐えるんだ」「……父上?」「三日……いや、七日耐えれば助けがくる」国王の言葉は楽観的であったが、それは事実だろうなとアリアは思った。国家の佞臣だろうと、彼らも人の子。霞を食って生きていけない以上は、金は必要になる。もちろん職を探すなり、領地をきちんと治めるなど、真っ当な方法で金は稼げるのだが、真っ当な方法には労働力が必要である。一度、それも長い間、甘い蜜を吸って、食って、寝って、アッハ~ンな生活をしてきた彼らに働く意思が生まれるとは思えない。『この世の春をもう一度!』と蜂起する可能性は高い。 .「皆が結託すれば、辺境の兵など恐れるに足らず」「父上!」国王はアリアに向かってふんっと鼻を鳴らして見せる。「まずは北だ。北を攻め、子どもにろくな教育をしなかった辺境伯夫妻を処刑してやるっ!」「あはははは、泣いて許しを請うがいい」セドリックはアリアをジッと見る。「安心しろ、お前は殺さない。お前は聖女だからな。俺が夫として、きっちり教育し直してや……ぶべっ」いやらしい目つきに耐えかねて、アリアは近くにあった盾を投げつけた。「ふっ……こういうじゃじゃ馬を御すのも一興」「気持ち悪い妄想をしないで。そもそも、私はあなたと結婚したくないから、女王様になることに決めたのよ」「そんな下らない理由で?」「あんたの嫁になるくらいなら、女王様のほうがマシ」「お前、貴族の娘だろう。貴族の娘なら、家が王家と繋がることを喜べ」「喜ばれないことを恥じなさいよね」「生意気なっ! 女のくせに王になど……いや、待て、女王になるだと?」「ええ、そうよ」アリアが頷くと、セドリックは笑う。「お前、やっぱり俺と結婚しなくてはならないだろう
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第22話

石造りの大広間の中央にそびえる巨大な魔道具は、見た目こそ朽ちかけた遺物だった。高さは三階建ての塔ほどもあり、六本の漆黒の柱が円環を描くように立ち並び、その中心にはひび割れた水晶球が宙に縫い止められたように浮かんでいる。「まだ魔力が残っているが……」(まるで生き物だな)魔力の流れを感じたルシアンは、この無機物がまるで生き物のように聖女、隣にいるアリアを標的と定めたことを感じた。(魔道具が、魔力を吸っている?)「王よりかなり若かったはずなのに、王妃陛下が早くに亡くなったのはそういうわけか」「この魔道具のせい?」「ああ。すでに君の力を吸い始めている。体に異常は?」「そうね、例えるなら生理中みたいな感じ」アリアの例えに、ルシアンはため息を吐く。「男の俺が分かるように説明してくれ」「痛みはないけれど、体の中から何かが流れ出るのを感じるの。ケガからの出血みたいに止めたいのだけれど……止める術が分からない」アリアが魔導具の一点、ヒビ割れた水晶を見つめた。水晶の内部で淡い燐光が揺らめきはじめる。アリアの呼吸に合わせて、脈打つように燐光は強弱を繰り返している。「ここに入るのは、初めて?」「ああ。先代は、魔道具だからメンテナンスをしたほうがいいと言ったようだが王妃陛下に不要だと断られたらしい」ルシアンは古めかしい魔道具の外観にため息をついた。柱の表面には苔がむし、金属の輪は錆びついている。(起動しているところを見ると、色褪せただけで魔法陣に欠けはないようだな……なんだ?)「何を、笑っている?」「笑っているように見える?」アリアの表情に、ルシアンは首を横に振った。「訂正する。いまにも泣きそうだ」「面倒くさそうに言うなんて、紳士失格だわ。こういうときはハンカチをそっと渡すのよ?」「洗うのが面倒
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第23話

「……その、だな。交わると言うのは……えっと……」この場には自分しかおらず、自分から切り出した以上は自分が説明するべきだとルシアンには分かっているが……。(する相手からの説明って、いやらしくないか? こうやってしますって暴露する……いや、心の準備はしてほしいから、事前説明が必要ってことなら……いやいや)ルシアンの言葉も、思考も止まる。喉が上下し、視線が魔法陣へと逃げる。(そんな手を使わなくても、魔法陣を解読すれば……でも、この規模だぞ? 十年は余裕でかかるぞ……十年、王妃陛下が身罷られたのはご成婚から二十……三年、くらい)「この元気いっぱいな聖女様でも、さすがに十年は……」「何を悩んでいるか分からないけど、十年? それなら、交わりましょう」「はあ?」驚くルシアンに、アリアは首を傾げる。「交わるのが一番手っ取り早いといったのは、ルシアン様でしょう?」  アリアの問いかけに、ルシアンはさらに困った顔をした。(時間だけを問題にすれば一番早いことに間違いはない)「難しいことなの?」「いや……難しくは、ない」「何か必要なものは?」「必要なもの……も、特に、これと言っては、何も……いや、それでいいのか?」ルシアンの問いかけに、アリアはきょとんとしたあとで、笑う。「質問しているのは私なのに」「そう、だな……」ルシアンは大きくため息を吐いた。「交わりというのは……一種の儀式と思ってほしい」「うん」
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第24話

「ロザリー」名前を呼ばれたロザリー、アリアの侍女の女性はフィンとの話を切り上げた。「どうしましたか、姫様」軽やかに駆けてくるアリアの後ろ、ゆっくりと歩いてきたルシアンにロザリーは会釈する。ルシアンも会釈を返した。「ロザリー、昨日城下町で買ったものはどこ?」昨日、アリアから求婚が上手くいったと聞いたロザリーは城下町を歩き回り、アリアの嫁入り道具を買い集めた。金はあるが店がないという北の辺境伯領。金に糸目はつけないという北の辺境伯ローデリヒの言葉を遂行すべく、事前に情報を集め、無駄なく、アリア好みのものを集めた。「夜着はちゃんと用意している?」「……用意、は、してあります……けれど……」ここで聞くか、とロザリーは内心でアリアに抗議した。ロザリーは三兄弟のほうを顔を向けないように気をつけつつ、目線だけを向けた。三兄弟は揃って唖然とした顔をした後、さすが仲良し兄弟と言わんばかりの揃ったタイミングでルシアンを見た。(ルシアン様、おかわいそう……いや、でも、ローデリヒ様十人でも突破できない物理障壁を作れる方だと聞いているから大丈夫かしら)物理的には、ロザリーの思っているようにルシアンは安全である。だからこそ、アリアの白羽の矢がぶっ刺さったのだから。しかし、メンタルはボロボロである。でもデフォルトが無表情なルシアン、ぼろぼろのメンタルを誰にも認識してもらえなかった。 .「ルシアン、お前っ!」「レオン! 大いなる誤解だ! 剣を下ろせ!」 ガキンッレオンハルトは剣を下ろしたが、ルシアンが反射的に張った物理障壁に向かって振り下ろしていた。硬質な音にロザリーは吃驚したが、吃驚したのはロザリーだけだった。.「アリア、お前も嫁入り前で……」
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第25話

「力を奪うのであって、即死させるわけではない……王妃陛下も、二十年以上……ご存命だった」「そう、だったな」王妃陛下の意外な死因の判明に、その場の全員が沈黙した。哀悼がすんだと判断したところでルシアンが口を開く。「俺が見た限りではアリア嬢はあの魔道具が欲する以上の魔力を今は持っている」「それを、吸われ続けたら?」「魔力がなければ、生命力変換させるようになっていた」「大変じゃないか」「……だから、そう言っている」ルシアンの言葉に三兄弟は黙った。理解しているのか、していないのか分からない沈黙。「それが……どうして、夜着になる?」「レオン、お前、学校で何を習った?」レオンハルトが首を傾げる。「剣」「……座学はからっきしだったな」呆れるルシアンに対して、レオンハルトは胸を張る。「お前の答えを一夜漬けで覚えてクリアしていたからな。お前がいなければ卒業できなかった自信がある」「そんな自信はいらん。あの装置の仕組みの詳細は不明だが、見たところ聖女の浄化魔法の術式の読み込みと魔力の吸い込みがあった」「なぜ? 浄化魔法ならいちいち術式を読み込む必要はないだろう」「聖女の浄化魔法は何かしら特別で、個体差があるのだろうな。アリア嬢がいる間、何度も読み込みが行われていた。だから一時的にアリア嬢の魔力を俺の魔力にしてしまい、魔導具に聖女の魔力だと誤認させれば、あいつは俺の魔力を吸い続ける」ルシアンが一拍置く。空気が凍った。先ほどまでの騒ぎが嘘のように静まり返る。ロザリーも、言葉を失っていた。「魔力を同質に……それで、夜着か」「そういうことだ」どういうことかと、理解できないロザリーはアリアを見た。見てしまった、という表現のほうが正しいのかもしれない。「私とルシアン様が房事を行い、ルシアン様の魔力を纏った精……」「姫様ストップ! マジで、ストップ!」ロザリーは急いでアリアの口を塞いだ。説明の途中だという目をアリアはしたが、ロザリーは無視した。「大丈夫です。理解できました」「そう? そういうことだから、夜着の準備をお願いできる?」「……姫様、その前に、急いで結婚しましょう。大丈夫です、姫様、まだピンピンしていますし」「そう言えば、閨は暗い中で行われると先生は言っていたわね」何かが違う。でも、何が違うのか説明するのは面倒臭い。
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第26話

目が覚めたとき、アリアが最初に感じたのは静けさだった。(そう言えば、ここはお城だったっけ……お城って、静かなのね)革命直後で、ほとんどの人を城から追い出したから静かなのである。しかし、まだ眠気にとらわれたアリアはそんなことは気にしなかった。分厚いカーテンの隙間から差し込む光はやわらかく、寝室の空気を淡く照らしている。アリアはぼんやりと天井を見上げていた。「……疲れた」ブハッと吹き出す声がした。アリアは横を見た。そこにはルシアンがいた。(魔力を吸い取る魔法陣の話を聞いて、急いで結婚して、そして――)そこまで思い出したところで、アリアは瞬きをした。痛みがないわけではない。体の奥に、鈍い違和感のようなものは残っている。けれど、それは覚悟していたものとは随分違っていた。(もっと、こう……大変なものだと思っていたのだけど)アリアはゆっくり息を吐いた。子どものころから、痛みには慣れている。両親も兄たちもアリアに対して気は使っていたが、武芸を身につけるのに無傷とはいかない。魔物討伐時には、数えきれないほど怪我をしている。骨が軋むような重さも、牙や爪が食い込むを感じたこともある。だから昨夜、アリアは当然のように耐えるつもりでいた。文句を言わず、黙って耐えるように教えられてきたのだから。(でも……)違った。少なくとも、アリアが想像していたものとは。「……おはよう」ルシアンはしばらく前から起きていたようで、背もたれ代わりに枕を重ね、それにもたれながら座っていた。いつも通りの無表情だったが、その目は少しだけ柔らかかった。「おはようございます」アリアは少しだけ体を動かした。その瞬間、体の奥に鈍い痛みが走り、思わず「う」と小さく声が漏れた。ルシアンの眉がぴくりと動く。「……無理はするな」「大丈夫……」「頑張るかどうかを聞いているんじゃない。無理はするなと言っている」アリアは不思議そうに瞬きをした。そんなアリアに、ルシアンはため息を吐く。「疲れたと言っていただろう……痛みは?」「大丈……多少の違和感、くらい」ルシアンにじっと見られ、アリアの訂正した言葉にルシアンは満足げに頷いた。アリアは、なんとなく、もう少しだけ話が続けたくなった。「思っていたより、ずっと」「思っていたより?」「もっと、こう……」言葉を
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