エリスがアリアの両肩を掴んだ。「アリア、あなたは私たちの自慢の娘よ」「ありがとう」「何を言われても気を強く持ってね」「……なんで、私が貶される前提なわけ? 私、そんなに聖女らしくない?」「いいえ、見た目は問題ないわ。見た目”には”ね」「見た目しか褒めるところがない、みたいな言い方はやめてよ」アリアは、兄たちを見た。「見た目は、聖女っぽいんだがな」「父さん譲りの銀髪に、母さん譲りの蒼色の瞳。色味はいい感じ」「見た目詐欺だろ、あれ」(……この、馬鹿兄貴たち!) 「仕方がないわ。エリス、よく聞きなさい」「……はい、お母様」「分厚い薄絹を数百枚被った、くらいの気持ちと態度で伝令と接しなさい」アリアは思った。(分厚い薄絹は、それでも”薄”絹なの?) * 「聖女マリア様、こちら、王太子殿下からのお手紙です」(マリア……)アリアの眉間にしわが寄った。しかし、使者はそれを“緊張”と勘違いした。「マリア嬢、そう緊張なさらず。王太子殿下はマリア嬢を正妃として迎えられることを喜んでいらっしゃいました」「……そうですか」冷めた反応に使者は、なんか盛り上がりにかけるなと思ったが、咳払いひとつ、体勢を立て直す。「それでは……」使者は紙に巻かれた赤いリボンを解き、中の文章を朗読する。「“今夜、城下の灯りがとても綺麗に見えるらしい。 マリア、それを君とみたい。いつか、マリアが好きだと言った甘いミルク酒も用意しよう。お礼は、私のシャツ一枚だけを羽織った君の姿で”…………え?」揚々と読み上げていた使者の顔が青くなる。使者の目線は手紙とアリアの顔を、何度も高速で往復した。 「私、王太子殿下にお会いしたことはありません。先日成人したばかりなので、ミルク酒も覚えがありませんわ……使者様」アリアの低い声に、使者は俯く。「使者様」再度の問いかけ。先日成人、つまり十八歳になったばかりの若い娘とは思えないアリアの圧に、使者の背にはダラダラと冷や汗が流れた。「使者様、ご気分でも?」「いえ、その……」「そのご様子では、あとは自分で読みますわ」「いいえ……」「いえいえ。遠慮なさらず。ええっと……“お礼は、私のシャツ一枚だけを羽織った君の姿で。あれ、すごく似合っていたから。返事は気軽に。今夜を楽しみにしている”……これが、求婚
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