百二十九 全てのシーンのオーディションを終え、その日の稽古は終わった。結果は明日発表される。うまくいったところもあればうまくいかなかったところもある。それがいまの実力だとナベは受け入れる。もう一度充実した日々を過ごしたかった。主役に挑戦してみたい気もするが、いまの自分の実力からすると荷が重い気もする。 もう配役がどうなるかについては自分の手を離れて瞳と彩子に委ねられたので、結果を待つしかない。新人公演より出番が多い役になればいいとは思うが、どうなるのだろうか。 次の日。本公演参加メンバーが空き教室に集まった。今日は多目的ホールが使えない日だった。「ナベさん、緊張するっす俺」 二年のデカがナベに寄ってきた。去年ナベが大道具でスタッフ参加していたときに、たまに作業を手伝ってもらっていた。「うん、緊張するよね。もう瞳ちゃんと彩子ちゃんで配役決まってるだろうから、もう待つだけだよ」「そうですけどー。シュレーディンガーの猫ですよ。まだ未来は確定してないんすよ」 熱弁するデカの肩にガジンが手を回す。「まーたデカはなんか小難しいこと言って。大丈夫大丈夫。賄賂とか渡せばまだ間に合うって」「だめですよガジンさん、そんなことしたら永久追放ですよ。ですよね?理恵さん」 ガジンの軽口に二年のもえがにこにこと注意する。「卒業まで部費十倍で許さないこともない」 もえに話を振られた理恵が渋い顔で応えたが、顔を維持できずにやける。浮足立って口数が多くなっているのかな、とナベは勘ぐった。「このサークル、部長から腐ってやがる」 裕子が理恵につっこんだところで瞳と彩子が教室に入ってきた。それまでの和気あいあいとしながらも緊張感の漂っていた空気が一気に引き締まった。「はい、皆さんおまたせしました〜。それじゃあさっそく、気になってると思うので配役を発表しまーす」 瞳の発言にメンバーは居住まいを正す。「配役は、主人公のマシマタクヤをナベ、黒幕のニカイドウジンをガジン、婚約者コザクラシノブをみさきちゃん、歴史調停局員リヒトをデカ、
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