Todos os capítulos de 僕は僕が欲しいものなんて知らない 聖北学院大学演劇研究会 続編: Capítulo 131 - Capítulo 140

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第百二十九話

百二十九 全てのシーンのオーディションを終え、その日の稽古は終わった。結果は明日発表される。うまくいったところもあればうまくいかなかったところもある。それがいまの実力だとナベは受け入れる。もう一度充実した日々を過ごしたかった。主役に挑戦してみたい気もするが、いまの自分の実力からすると荷が重い気もする。 もう配役がどうなるかについては自分の手を離れて瞳と彩子に委ねられたので、結果を待つしかない。新人公演より出番が多い役になればいいとは思うが、どうなるのだろうか。 次の日。本公演参加メンバーが空き教室に集まった。今日は多目的ホールが使えない日だった。「ナベさん、緊張するっす俺」 二年のデカがナベに寄ってきた。去年ナベが大道具でスタッフ参加していたときに、たまに作業を手伝ってもらっていた。「うん、緊張するよね。もう瞳ちゃんと彩子ちゃんで配役決まってるだろうから、もう待つだけだよ」「そうですけどー。シュレーディンガーの猫ですよ。まだ未来は確定してないんすよ」 熱弁するデカの肩にガジンが手を回す。「まーたデカはなんか小難しいこと言って。大丈夫大丈夫。賄賂とか渡せばまだ間に合うって」「だめですよガジンさん、そんなことしたら永久追放ですよ。ですよね?理恵さん」 ガジンの軽口に二年のもえがにこにこと注意する。「卒業まで部費十倍で許さないこともない」 もえに話を振られた理恵が渋い顔で応えたが、顔を維持できずにやける。浮足立って口数が多くなっているのかな、とナベは勘ぐった。「このサークル、部長から腐ってやがる」 裕子が理恵につっこんだところで瞳と彩子が教室に入ってきた。それまでの和気あいあいとしながらも緊張感の漂っていた空気が一気に引き締まった。「はい、皆さんおまたせしました〜。それじゃあさっそく、気になってると思うので配役を発表しまーす」 瞳の発言にメンバーは居住まいを正す。「配役は、主人公のマシマタクヤをナベ、黒幕のニカイドウジンをガジン、婚約者コザクラシノブをみさきちゃん、歴史調停局員リヒトをデカ、
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第百三十話

百三十「えー、はい。スタッフ希望聞いてきます。音響やりたい人ー」 ガジンともえが手を上げる。順番にスタッフ希望を確認していき、最終的には音響がガジンともえ、照明は四年のコロとしょうた、大道具はナベとデカとまゆ、衣装・メイク・小道具は四年の由美とみさき、制作は理恵とみずとも、舞監は四年の山口と裕子と彩子に決まった。 それからすぐにスタッフ会議になった。台本がすでにできあがっているので、スタッフとしてすぐに動き出せる状態だからだ。各スタッフのスケジュールを作り、舞監に報告して調整する予定だ。空き教室のあちこちで会議が始まり、すぐに騒がしくなった。「じゃあまず、主任決めようか。って言い出しておいてなんだけど、ごめん、主役と大道具の主任の兼任は無理だわ」 「そりゃそうでしょう……へっくしょん!すいません、なんか埃っぽいですね」 デカがくしゃみをする。ナベもデカもアレルギー体質だった。たしかに少し埃っぽいかもしれない。ナベの鼻もムズムズしてきた。まゆが手を上げる。「私やりますよ。役者やらないんで」 「あ、まじ?助かった」 「べつにいいって。私が適任でしょ」 まゆの立候補にデカが感謝する。デカも役者なのできついと思っていたようだ。ナベも無理やり押し付けるのは嫌だったので、まゆが立候補してくれてありがたかった。「ありがとう、まゆちゃん。よろしくね」 「いえ。やりたかったので気にしないでください」 ナベはまゆの表情から、嘘はついていないようだと判断する。他人の表情を読み取る力に自信があるわけではなかったが。「それじゃあ、会議の進行お願い」 「はい。まず、全体のスケジュールを決めていきましょう。えーと、本番の一週間前、仕込みは七月八日あたりですね。この日までに完成してるのが理想ですけど、ペンキ塗りは最悪残っててもいいです。まあただ、完成を目標にしましょう。大丈夫ですか?」 まゆのきりっとした表情に頼もしさを感じた。まゆはしっかり者というイメージをナベは持っていたので、任せて安心だと感じた。『異議なし』 ナベとデカが同意する。
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第百三十一話

百三十一「すいません、相談なんですけど」 ナベはアルバイト先のコンビニで店長に相談を持ちかけた。「あ、だから早く来たの?」 店長の斉木がパソコンから目を離して振り向く。「はい、実は演劇研究会で主役をやることになりまして」 「おお、すごいじゃん」 「ありがとうございます。それで、いまシフトが火・木・土で入ってるんですけど、火曜か木曜のシフトを日曜にずらせないかと思いまして」 店長は渋い顔をする。その顔を見て、あまり期待しないほうがいいかもしれないと感じた。店長がなにやら思案している間、店内から聞こえる「いらっしゃいませー」の声がなぜかナベの耳に大きく響いた。「う〜ん、そうかぁ……代わりの人いるかなあ。ちょっと探してみる」 「すいません、よろしくお願いします。あとすいません、本番一週間前の土曜日から休ませてください」 ナベはこのコンビニで働き始めてもうすぐ三年になる。仕事にはすっかり慣れていた。主役をやるからには稽古にあまり穴を開けたくないので相談することにした。携帯代は卒業までの分はすでに稼ぎきっていたので、最悪辞めてもいいかと考えていた。だが新たにバイトを探して仕事を一から覚えるのも面倒だったので、代わりが見つかることを願った。代わりを探してくれるだけ良心的で、辞めるのは申し訳ないという気持ちもある。 とりあえずアルバイトは仕込みの一ヶ月前までは現状のままで様子見をしておくことにして、それを過ぎたら辞めるかどうか考えることにした。 稽古の方は読みから始まり、いまは立ち読みに変わっている。セリフ量が膨大なので早く覚えなければならないが、舞台案も考える必要がある。主任ではないが後輩に任せっぱなしにしてはいけないと考えていた。 明日が大道具案を持ち寄る日だったので、帰宅後に舞台案を考え始める。上手下手の出ハケ口はオーソドックスに二箇所ずつでいいだろう。タイムマシンをどうするかだが、強い光を放つバックライトがあったはずだ。それを使うとよいのではないだろうか。だが、バックライトを客席から見えたままにしておくのも目立ってしょうがないので、引き戸で隠すか。引き戸を作るのは
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第百三十二話

百三十二 次の日の稽古前、部室に集まって大道具会議が開かれた。「これが俺の案です」 ナベが自分の案を説明した後、デカが出してきた舞台案は斬新だった。舞台がそのままタイムマシンのように見える。大道具の経験が少ないからか、発想が自由だった。「……おー……すごいな。おもしろい……けど、実現できるかぁ?」 とりあえずナベの中から出てきた言葉はそれだった。デカは満足げな顔をしている。「デカ、説明してもらっていい?出ハケ口とか全部」 まゆに促されてデカが話し始める。ナベは手を後ろに回して座っているパイプ椅子のパイプを掴む。金属の冷たさが気持ちよかった。「えーと、見たまんまタイムマシンをイメージして作りました。下手にタイムマシンを置いて、ここの出入りでタイムトラベルします。上手側でそれ以外の出入りをします。タイムマシンの曲線部分は、まあ糸と鉛筆結んで円を書く要領で線引いて、のこぎりで切ればできるかなって思います」「なるほど……。まあ、できなくもなさそうだけど演出プランが制限されるから、それ次第かな?」 ナベは言いながら制作工程を考える。勝手が違うので時間がかかるかもしれないが、二か月あればできそうな感じはした。「最後は私ですけど、ナベさんの案とけっこう似てるかもなんですが、引き戸じゃなくてタイムマシンに見えるような装飾をしたフレームを作って、そのフレームに布かなんかを張ります。その後ろからバックライトを当てて、フレームの後ろに役者が入ると布に役者の影が反射されてタイムマシンぽく見えるかな、と思いました」 舞台案が描かれた図にはフレームの絵がある。ペンキを塗るのか何かで彫るのかわからないが、フレームへの装飾だけだとタイムマシンというよりやはりフレームに見えた。「あー、なるほど。引き戸よりは作るコストは低そうかな?引き戸がうまく開かない可能性とかも考えなくていいか。そうだな……お客さんから役者が見切れちゃうからフレームの左右にパネル一枚ずつ
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第百三十三話

百三十三 稽古前に瞳が来たので舞台案を持っていく。全員の合作なので大道具チームの三人で説明し、舞監と音響と照明の同意が得られれば舞台案は決定でよいという回答を得ることができた。ナベはひとまず安心する。「準備できたらシーン3やりまーす」 準備運動を終え、稽古の時間が来る。新人公演でナベは端役だったので稽古をしていない時間が多かった。だからその時間に台本を読んだり大道具の作業を進めることができていた。だが、今回は主役なので役作りのヒントは多いがほぼ休みがない。そこに不安を感じていたがやるしかない。「用意……」 瞳が手を叩き、稽古が始まる。「西暦2020年、高園技研工業と帝大基礎物理学研究所の共同研究によりタイムマシン試作機第一号が完成。その研究結果の公開により民間企業でのタイムマシン開発が加速。十年を待たずして、タイムマシンは民間レベルまで汎用性を拡大」「それと期を同じくして、時空の揺らぎを観測。歴史改変犯罪の発生と認知により歴史調停局が誕生。タイムマシンの民間利用は禁じられたが、不正利用や不正開発が後を絶たず歴史改変の犯罪認知件数は増加の一途を辿っている」 リヒト役のデカとマーサ役の裕子がそれぞれモノローグを語り終えて舞台を降り、入れ違いでジン役のガジンとジンの同僚役のしょうたが舞台に上がる。「ついに完成したな、ジン」「ああ、やったな」「世界が変わっちまうぜー……って、徹夜続きでもう限界だ。俺休んでくる」「ああ、お疲れ様」「お前も休めよー」 しょうたが舞台を降りると、ガジンはパソコンを操作するジェスチャーをする。「……これでようやく、僕の世界を変えられる」 ガジンは下手から上手へ移動し、携帯電話を取り出すジェスチャーをする。ジンの言動をタクヤは知らないので、頭には入れないようにする。ナベは出番が来たので台本を目で追いつつ、ガジンのセリフに耳を傾けた。「……僕だ。……ああ、そうだ
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第百三十四話

百三十四 大道具案は無事決定したようだった。まゆが動いていたが、ナベは稽古にかかりきりで把握していなかった。「ナベさん、質問なんですけど」「ん?なに?」 ナベが部室で台本を読んでいると、まゆがノートを持って立っていた。「倉庫整理も終わって、必要な木材もだいたい把握できたんですけど」 まゆは背負っていたリュックをテーブルに置き、空いている席に座る。ナベとまゆ以外、部室には誰もいないので金属製のパイプ椅子を引く音が響く。「ごめんねー、任せっぱなしになっちゃって」「いえいえ。ナベさん主役なんで、それは織り込み済みです。タイムマシンのデザインをどう実現するかちょっと悩んでまして。円柱の部分とか木材削ってたら時間足りないじゃないですか」 そのことは舞台案を見た時、すでにナベはうっすら考えていた。タイムマシンのデザインの中に太い円柱部分がある。ホームセンターには角材を丸く加工したものは売っているが、それだと細すぎるので使えない。「そうだね。木材じゃなくて、ホームセンターに適当なパイプかなんかがあると思うから、安いやつ買えばいいよ」 ナベは台本をテーブルに置く。「……あ、工事の人が買うような金属製の部品とかですか?」「そうそう。他にもプラスチックとかポリ……プロピレン?とかわかんないけど、よくわかんない材質のやつとか……」 ナベは部室の中に参考になりそうなものはないかと目を走らせたが、適当なものはすぐに見つからなかったのでそのまま続ける。「絶対じゃないけど、できればペンキとかスプレーとか使わない方が楽だから、そのままの素材で使えるようなやつとか。百均の方が安く済むかな。いいのがあればだけど。なんかこう、洗濯機用の排水パイプとか使えそうじゃない?」「あー。タイムマシンの部品に見えるようなものですか?」「うん」「そうですね。ありがとうございます、今度ちょっとお店に行ってみます」「俺も行くよ。タイムマシンのデザイン考えたのデカ
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第百三十五話

百三十五 世間はゴールデンウィークに入った。ナベの家では特に旅行の計画などなかった。長兄の哲也がまだ大学生だった頃、もう五年以上前が最後の家族旅行だった。哲也の会社はお盆と正月に長期休暇があるが、ゴールデンウィークは通常の勤務をしていた。 結局ゴールデンウィーク中は人の集まりが悪そうなので稽古しないと決定された。ナベの予定はバイトと大道具の素材探し以外に予定はないが、暇な訳ではない。役作りとセリフ覚えで忙しかった。セリフを覚えれば台本を持たなくて良いので、動きの稽古を始められる。だからまずセリフを覚えようと考えた。 朝食を終えて自室に戻ると、空気が濁っている気がして窓を開ける。新鮮な空気と一階から持ってきたコーヒーの匂いで頭が冴えたように感じる。 新人公演のときに役作り論について話したことを思い出す。どんな状況で生きてて、いまどういう場面にいるのかを考える、と言っていたのは裕子だったな、とナベは思い出す。ふいに自分の心臓の鼓動が意識された。あのときは楽しかったな、と思考が逸れかけ、ナベはぶんぶんと頭を振る。 どんな状況で生きてて、どういう場面にいるのか考えたら覚えなくてもセリフは出てくるだろうか。いい台本なら自然にセリフが出てくると言ったのは理恵だっただろうか。ナベは台本を読み、マシマタクヤの置かれた状況と場面の整理を始める。 ナベは作業に没頭し、昼食に呼ぶ母の声に気づかず怒られた。昼食を終え、また台本を読み始める。二日で状況と場面整理を終え、三日目からセリフの暗記を始めた。ノートにまとめた状況と場面を頭の中に入れ、自分のセリフだけ隠して言う。いままでの読み稽古と立ち読み稽古ですべてのシーンを一通り経験していたので、うっすらとセリフは覚えていた。だが、やってみるとセリフが出てこないことが多い。 出てこないセリフを繰り返し口に出す。そしてまたセリフを隠して言えるか試す。シーンごとにその作業を続けていく。全てのシーンをとりあえず言えるようになり、またシーン1から始めると言えないセリフが出てくる。ナベはふーっと大きく息を吐いた。少しイライラしているかもしれない。 新人公演の時を思い出すと、セリフを覚えられたのはもっと後のタイミングだった。だ
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第百三十六話

百三十六 ホームセンターまでは歩いて十分くらいだが、それでも時間の節約になる。デカの車でホームセンターに到着した。車の中はタバコと香水の匂いが入り混じっていて、車の香水が嫌いなナベは少しだけ気分が悪くなった。三人別々に行動する。ホームセンターは新品の製品の匂いが立ち込めている。この匂いはどちらかというと好きな方の匂いだった。天井から区画を示すアルファベットが書かれた案内板が吊られていたので、三等分して担当を決めていた。広すぎるので良さそうなものがあれば写真をとり、あとで見比べる方針だ。デカから円柱のサイズ感をすでに確認済みだった。 ナベは店内を巡りながら円柱を探す。金属製のものだと照明を反射するので反射しない素材を選ぶか、あとでペンキを塗ったほうがいいかもしれないと実物を見て感じた。二十分ほどでナベは全ての担当分を確認し、待ち合わせ場所のインフォメーションコーナー前に向かう。そこにはすでにデカの姿があった。「なんかよさげなのあった?」 ナベが声をかけると携帯電話の画面を見ていたデカが顔を上げた。「はい、いくつか写真撮りました」「そっか。デカは役作りやってる?」「ええまあ、ぼちぼち。まだ役者やるの二回目なんでなかなか難しいっす」 デカは携帯電話をポケットにしまう。「高校ではやってなかったの?」「はい。部活入らないでバイトやってました。裕子さんは演劇部でバイトもしてましたけど」 急に裕子の名前が出てきてナベは表情が変わらないように苦心する。「同じバイト?」「そうっす。バイト先が同じでした。フレディーバーガーっす」「それで顔見知りだったんだ」 ナベは微妙に気になっていたので、謎が解けて少しだけすっきりした。田中が大量に持ってきたのもフレディーバーガーだったことを思い出す。高校生のバイト先としてはよくある選択肢の一つだ。「え。デカ、フレディーでレジに立ってたの?なんていうか……」 似合わないな、という言葉をナベは飲み込む。「いえいえ。俺はずっとキッチンでしたよ。裕子さんはずっと
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第百三十七話

百三十七 大道具の買い出しを終えた午後から、またナベはセリフの暗記を再開した。今はまだ半分も覚えられていない。このペースだと、ゴールデンウィークをすべて使ってセリフをすべて暗記できるかどうかわからない。役作りを進めないという選択肢はなかったので、暗記をほどほどにして役作りに入る必要がありそうだった。 残りの暗記については完全に覚えず、さらっと覚えるという方針に切り替えることにした。そうして役作りに入ったのはゴールデンウィークが残り二日になったときだった。 マシマタクヤの置かれた状況と場面の整理についてはゴールデンウィークの初日に軽くやっていたので、マシマタクヤの内面を深堀りしていくことにした。各シーンごとにタクヤが誰に何を言われてどんな反応をするのか、そこから思考の癖や考え方を探る。何を大事にしているのか、何に気を取られるのか、行動を起こす心の芯は何か。 タクヤとジンの運命を分けたのはなんだったのだろうか。タクヤはナベと違って自信を持って行動しているし、自分の思いを素直にシノブに伝えている。この自信や行動力はどこから出てくるのだろうか。大切な人を取り戻すためなら自然と湧いてくるものなのだろうか。それなら、ナベにとって裕子は大切ではなかったのだろうか。 集中して作業していて、ずっと同じ姿勢をとっていたらしい。ナベは右目だけ強い痛みを感じた。首も肩も固まっている。肩こりが目に来たようだった。休憩して柔軟運動すると少し回復し、作業を再開する。 新人公演のときの石山先生と比べると出演シーンが圧倒的に多い。だから役を掴むためのヒントがそこら中に転がっていて、役作りしやすいとナベは感じた。まだ理解できていないところも多いが、やればやるほど深く理解できるので終わりはないが、またセリフの暗記に戻ってもいいかもしれないと期待できた。 ゴールデンウィーク最終日、午前中に役作りは一段落していいと判断する。午後からセリフの暗記を再開したが、ナベは暗記しやすくなっている、と感じた。場面と状況が頭に入り、タクヤの内面の理解が深まった影響かもしれない、と嬉しい誤算が起こった。 だが残り半日しかないので今日中にすべて暗記するのは難しい。そして今は座って落ち着いた状態
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