جميع فصول : الفصل -الفصل 40

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登場人物(新人公演配役・スタッフ)

( )内はあだ名。【 】内は配役・スタッフ渡辺浩二(ナベ) 主人公。大学一年生。 【石山総合病院院長・石山先生、大道具】松本雅人(ガジン) 大学一年生。二十歳。 【主人公の同僚・木戸ジンイチ、音響】橋本裕子(裕子) 大学一年生。【主人公の友人・城田マイ、演出助手・舞台監督】池田理恵(理恵) 大学一年生。【石山総合病院入院中の患者・小野フミカ、制作】岡田瞳(瞳) 大学一年生。【主人公・丸橋サトミ、衣装・メイク・小道具】清水智子(みずとも) 大学一年生。【婚約者の母・三上トモコ、制作】中島麻美(麻美) 大学二年生。【主人公の同僚・永瀬シオリ、演出】林由美(由美) 大学二年生。【石山総合病院看護婦・結城スズ、照明】山口和也(山口) 大学二年生。【主人公の婚約者・三上ショウ(浦島マモル)、舞台監督助手・アドバイザー】鈴木健一(ケン) 大学三年生。部長。【演出アドバイザー】佐々木学(佐々木) 大学三年生。【大道具助手・アドバイザー】山崎香織(コロ) 大学二年生。【照明操作・アドバイザー】前田久美子(久美子) 大学二年生。【照明操作・アドバイザー】高橋直樹(骨折) 大学二年生。【音響操作・アドバイザー】木村恵(キム) 大学二年生。【制作助手・アドバイザー】石川純子(純子) 大学二年生。【制作助手・アドバイザー】井上愛(タイガー) 大学二年生。【衣装・メイク・小道具助手・アドバイザー】
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第三十話

 中島さんは紙の束を一ページごと等間隔に並べた。二ページで一枚、A3用紙に印刷されている。それが三十枚六十ページ分が一列に並べられている。台本を一ページずつ並んでとっていく。取り終わるとそれを一枚ずつ山折りにする。ホッチキスではとめない。まだ未完成だし、シーンごとに抜き出して持ったほうが演じやすいからだ。完成するまでバラバラになってしまわないようにバインダーを用意したほうがいいかもしれない。「それじゃあまず、公演日と予算決めちゃいましょうか。決めとかないとチケット作れないですし、スタッフが使えるお金もわからないですから」 中島さんがそう言うと、「はい、はい」とケンさんが手をあげた。「早く公演する場合と遅く公演する場合のメリットとデメリットについて、一応、俺が思いつく範囲で言っとくね。まず早くやる場合のメリットは、寒くないからお客さんが来やすいことかな。雪で交通機関が乱れる可能性が低いよね。デメリットは稽古時間とスタッフの準備期間が短くなることだね。遅くやる場合は逆に時間に余裕ができるね。デメリットは寒くなってくること。まあ、多目的ホールに暖房はあるけど。コートとか着てくるから、ちょっと客席が狭くなるかもね。荷物入れとか用意してあげられるわけでもないし」 なるほど。でも満席にならないなら余裕があるかもしれないなあ。「ありがとうございます。私としては、十二月の方がありがたいです。台本の執筆は間に合うとは思うんですけど、稽古日数を取れたほうが完成度が上がると思うので。何か意見ある人いますか?」 中島さんが部員たちを見回す。僕の意見は参考にならない気がする。素人だし。自分の意見が取り入れられたときに責任を取りたくないのかもしれない。ガジンが手をあげる。「十二月にした場合のデメリットですけど、天気のことだから予想するのは難しいですが、上旬ならまだ根雪にもなってないでしょうし、そんなに降雪量も多くないと思うので、それほど大きなデメリットにはならないと思います」 こういうときにしっかり意見を言えるのはうらやましい。どうにも僕は自分に自信がないので、取るに足らない意見でみんなの時間を奪ってしまうのは申し訳ないと思ってしまう。瞳ちゃんが手をあげた。「私は初めてのことだらけなので、一週間でも時間があったほうが嬉しいです。以上です」 瞳ちゃんはちょっと恥ずかしそうに
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第三十一話

「次は、ステージ数ですけど、いまのところ金曜日に一ステージ、土曜と日曜に二ステージずつで考えてるんですが、他に案はありますか?」「それは通しでどのくらいかかる台本なのかによって変わるよ」 中島さんの問いに裕子ちゃんが質問で返す。確かに公演時間がわからなければ答えられない質問だ。「あ、そうだね。ええと、だいたい一時間半くらいになりそうかな」「それなら一日三ステとかできなくもないけど、午前中にお客さんは来たりしないか」 ガジンが自問自答する。「午後三ステ?」 裕子ちゃんがいたずらっぽく笑う。「えー?十二時から一時半、二時半から四時、五時半から七時……。できちゃうね」 理恵ちゃんは自分の言葉に驚いている。「いや、きついよ。集中力もたないよ」「そうだね、やめといたほうがいいね」 ガジンも裕子ちゃんも演劇経験があるから想像がつくのだろう。「じゃあ、全五ステでいいかな?」「オッケー」 公演数は五回に決まった。そうか。人前で五回演じるのか……。なんだか大変な決断をしてしまった気がする。「開演時間は金曜日は午後六時に五コマ目が終わるから、六時半くらい?」「一時間半の芝居なら、もう十分くらい遅らせた方が余裕もてるよ」「そうだね、六時四十分でいい?」「いいよ」「土曜日はどうする?」 目まぐるしく決まっていく。状況に思考が追いついていかない。「午後一時だと早い?」「昼ごはん終わってからきたら二時くらいの方がいいかな?」「えーと、終わるのが三時半で、二ステ目が五時とかでも全然余裕あるか」「うん、夕食前の時間にに終わるからちょうどいいんじゃない?」「なら、日曜も同じ時間でいいかな?」「異議なーし」 発言しないといる意味がない気がしてくる。こういうときに自主性がないなあと感じる。
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第三十二話

「えーと、次はチケット代ですが。この前の公演は二千円でしたけど、客席は何席でした?」「えーとね、五十席だったよね?たしか」「ああ、そうだよ」 中島さんに問われてケンさんが山口さんに確認する。「てことは、二千円×五十席×五ステで、……五十万?」「満席ならね。でも、チケット代より先に予算出した方がいいよ。そうしないと赤字になるかもよ」 たしかに。ケンさんの指摘はもっともだ。「なるほど。劇場代は多目的ホールを使うからタダ、照明代もタダ、音響はCD買うかどうかによる?チラシ代とチケット代は大学のリソグラフ使えばタダ、パンフレット代もタダ、衣装代も白衣とかスーツとか持ってる人のを使えばタダ、メイク道具は足りないのを百均で買えばいいか。大道具代ってどのくらいかかるんですかね?」「えーとまず、紙買うのもお金かかるよ。パンフレットとかチラシとかコピー用紙より厚くするから、五千円くらいかかると思ってたほうがいいよ。それと大道具代はどれくらいだろうね、佐々木さんならよくわかってるけどな。山口、わかる?」「えーとね、たしか90×180のベニヤ板が一枚千円くらいで二十枚くらい、240cmの角材が一本五百円くらいだったかな。三十本くらい。釘は数百円で大量に買える。あ、あとペンキが一缶三千円くらいのが五個くらいかな。だから一公演六万くらいかかるかな。あと、仕込み代もあるな。ガムテとかスズランテープとか蓄光テープとかカラーテープとか。まあ一万円あれば足りるか」 中島さんはメモしながら聞いている。僕も大道具の材料費と予算をメモした。「総合すると、だいたい十万円くらいあればなんやかんや足りそうですね。五ステで満席だと二五〇人、その六割くらい埋まるとしたら、えー……」 中島さんが携帯電話をいじる。たしか計算機が使えるんだったっけ。持ってないからよく知らないけど。「一五六人。十万円を一五六人で割ったら……約六四一円。チケット代千円で赤字にはならない」「本当に六割埋まったらね。手売りだけで埋めようと思ったら、えーと……、新人八人と山口入れて、一人につき十八人に売らなきゃならないけど、売れる?」 中島さんの計算にケンさんが助言する。「十八人……そもそもそのくらいの交友関係があるかどうかも怪しいですね。あまり人付き合いしてないので」 僕は人と仲良くなるのが得意ではないし、仲
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第三十三話

「全く見ず知らずの人ってチケット買ってくれたりするんですか?」 理恵ちゃんは制作になったので気になるのだろう。「そうだなあ。手売りした人の友達とか家族とか……は、ちょっと質問の意図とずれるか。えーと、一定数はいるよ。大学内の掲示板のチラシを見て来てくれた人とかね。大きい劇団とかはインターネットで宣伝してるけど、うちはそういうのはしてないね。でもネットで販売するとしたらチケットサイトの使用料とかもかかってくるし、自力で販売受付もできるホームページとか作るのは難しそうだよね。あ、そうそう。アンケートに何でこの公演を知ったかって項目は作っといたほうがいいよ。あとで分析できるから。まあ、アンケートに答えてくれる人はそこまで多いわけじゃないけどね」「なるほど……」「でもまあ、やっぱり手売りが確実だし数も多いね」「みんな、どれくらい手売りできそう?私は十人くらいかな」 理恵ちゃんの質問には答えづらい。恥ずかしいけど背に腹は代えられないので、まず家族で二人くらい。大学の友達は演劇研究会以外には親しい人はほぼいない。バイト先も厳しい。「十五人?」「五人くらいかなあ」「十人っす」「……五人売れれば奇跡です」 あとになるほど言いづらくなるので早めに言っておく。理恵ちゃんはメモをとっている。「十人ちょい?」「ごめんなさい、五人くらい」「二十……は売れるかな」「十人いかないくらい」 全員言い終わったようだ。理恵ちゃんが計算している。「はい、だいたいいまのところチケット売れ行き予想は九十枚くらいですね。一枚千円だと九万円」「意外と売れそうだね。予算もなんとかなりそうな感じ」 中島さんは少しほっとしたみたいだ。「予想は悪い方に考えといた方がいいよ。当日の天候とか、急用が入ってやっぱり来れなくなったとかあるからね。そういうとき、やっぱり友達に売ってると払い戻し対応とかしなきゃいけないでしょ?押し売りしたいわけじゃないから。それに、想定してなかった支払いが発生する可能性も考えといたほうがいいよ。客席半分も埋まらなくてガラガラでも嫌でしょ?どの回にお客さんが来るかって偏るよ。満席にならないなら特にね。だから売る努力はずっとするべきだよ」 ケンさんが釘を刺す。たしかにそのとおりだ。「えー、ということでみなさん。チケット売りましょう。他にいま決めとくことある
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第三十四話

 新人公演に向けて稽古が本格的に始まった。月・水・金はサークル棟の多目的ホール、火・木は大学の空き教室で稽古が行われている。土日の稽古は本番が近づいてくれば行われるが、いまはまだ休みだ。多目的ホールの方がいろいろと設備が整っていて稽古の効率がいいので、火・木・土の午後五時から十時までアルバイトのシフトを入れていた。まだわからないことも多いが、働き始めてから一ヶ月以上経ったので慣れてきてはいた。 シフトはいつも二人一組で、もう一人のアルバイトはだいたい固定されている。堀田さんという二十代の男の人で、主に夜勤で働いているけれど火・金は夕方に働いている人だ。この店の一番のベテランらしく、コンビニ業務で知らないことがないらしい。土曜日は夏休みに研修してくれた篠原さんがペアだ。篠原さんもベテランで、堀田さんと二人でこのコンビニを支えているらしい。今日も堀田さんと一緒に働くことになっている。「おはようございます」 いつものように地下鉄の無秩序な自転車置場から自転車を引っ張り出し、二分もかからない距離にある店の自転車置場に駐輪し、店長に挨拶する。「はい、今日もよろしくね」「おはよう」 出勤すると店長と堀田さんが雑談とコンビニの仕事について混ざったような話をしていた。二人はいつもこんな感じだ。ロッカーにかばんを入れ、上着を脱いで制服を着る。 午後六時から七時くらいの間が一番混んでいる時間帯だ。帰宅途中のサラリーマンや学生がよく利用する。僕は混んでいるときにテンポよくお客さんを捌いていけるわけではないので、そんな時は店長が事務所から出てきて手伝うことがある。そしてだいたいだいたい店長はいつも午後七時くらいになると帰る。コンビニから歩いて行ける距離に自宅があるらしい。 コンビニではだいたい午後五時から六時にかけて掃除と品出し、お客さんが少なくなってきた午後八時くらいにトラックが来て、商品を運んでくると堀田さんが検品して、その間僕はレジ打ちをしている。少しずつ検品も任されてきている。検品が終わると商品の陳列とバックヤードへの保管整理をする。ついでに冷蔵庫のドリンク・酒類も補充する。夏の間は涼しくて良かったが、今はもう寒く感じる。 冷蔵庫から店内に戻ると、よく来る高齢男性が来た。いつものように赤い顔でふらふらと店内を徘徊してから、常温保存の酒類コーナーの棚で紙パック入り
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第三十五話

「それじゃですね、今日から立ち稽古に入っていきます。ので、みなさん早めにセリフ覚えてください」 新人公演の稽古開始から三日目の稽古を始める前に中島さんがそう宣言した。シーン1から稽古が始まる。シーン1では主人公の丸橋サトミが会社で同僚の城田マイから、婚約者の三上ショウが出張先で行方不明になり、列車事故に巻き込まれた可能性が示されるシーンだ。僕はシーン1での出番は無い。なので、台本を読んで待っていた。「次、シーン2いきまーす」 出番が来た。山口さんが舞台上で足を引きずってふらふらと歩いている。舞台の上手から下手側へ歩き、力尽きて倒れる。上手側から僕が歩いていく。僕は石山病院の院長の石山先生役だが、今歩いているのは石山先生としてではなく、モブとして歩いている。僕は倒れている三上ショウを見つけ、驚く。「お、おい!あんた、大丈夫か」 僕が三上ショウに駆け寄ると、ぱん、と麻美さんが手を叩いた。「えーと、ナベはいま石山先生役じゃないので、あんまりお客さんに顔を見せないでください。だからお客さんに背中見せてください」「はい」「じゃあ、ナベが駆け寄るところから続きいきまーす」 ぱん、という音で僕は三上ショウに駆け寄る。さっきとは逆向きだ。三上ショウはぐったりしたままだ。「おい!……おい!」 僕は周囲を見渡し、三上ショウの胸ポケットのあるあたりとズボンのポケットに手を入れるジェスチャーをする。財布を自分のポケットに入れ、携帯電話を操作するフリをした。「もしもし、道の上で人が倒れています。すぐに来てください。場所は栗原公民館の裏にある田んぼの農道で……はい、そうです。近くにあります。……いえ、すいません、ちょっと急いでいるので……いえ、本当に時間がなくて……はい、失礼します。すいません」 僕は上手へ戻りかけ、三上ショウを振り返る。「こいつは助けを呼んだ手間賃としてもらっとくぜ。悪く思うなよ」 そう言って僕はそそくさと上手側へハケた。ガジンがピーポーピーポー、と救急車の効果音を口で表現した。ちょっと笑いがもれる。あとで効果音を用意するのだろう。山口さんはうつ伏せから仰向けに向き直り、看護婦の結城スズ役の林さんが上手から出ていく。結城スズが三上ショウを心配そうに見ている。僕も上手から出る。今度は石山先生役だ。結城スズがふりかえる。「石山先生」「検査の結果
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第三十六話

 続いて三上ショウが目を覚ますシーンだ。ト書きには照明が変わると書いてある。「はい、照明が変わりました」 中島さんが指示を出す。「……っつ……」 ゆっくりと三上ショウが上体を起こす。「どこだ、ここは。……病院?」 三上ショウはきょろきょろと周りを見回すと、麻美さんが手を叩いた。「えーと、三日間寝込んで起きてる設定なので、周りを見るのはいいんですけど元気そうに見えます。もう少し体力落ちてる感じにしてください」「あ、そんな寝込んでたんだ」「すいません、台本には書いてないんですけどそうなんです。じゃあ、起き上がったところからもう一度。用意……」 ぱん、と手が鳴る。「どこだ、ここは。……病院?」 三上ショウはゆっくり振り返り、横に手を伸ばす。ナースコールをするジェスチャーだ。結城スズが上手から舞台へ出ていく。「良かった、目が覚めたんですね。お加減はいかがですか?」「なんだか頭がぼうっとしています。ええと、ここは……」「ここは石山総合病院です。あなたが気を失って倒れていたところを救急車で運ばれてきたんです」「倒れていた……」「名前を教えていただいてもよろしいですか?」「ああ、名前……」 三上ショウが黙り込む。「どうされました?」「俺の、名前……」「はい」「……すいません、思い出せません」「え?」「俺が誰なのか、わからない」 ぱん、と手が鳴り、シーン2が終わった。
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第三十七話

「はい、じゃあダメ出ししていきます。えっと、まず三上ショウはですね。最初倒れる前に歩いてるところでは、もう少し目的なく歩いてください。今のままだとどこかに向かってるように見えます。 で、倒れたあとに男がやってきて、んー……姿勢はまあ、いいか。えーと、男が三上ショウに気づくときなんか不自然でした。見つける前から見つけようとして歩いてるように見えます。三上ショウを見つける前まで何を目的にして歩いてたか考えてください。あと、声量が足りないのでもっと出してください。 それから、救急車を呼ぶところのセリフですが、いまだとただ心配してる善意の人みたいなので、もっと善人のフリをわざとらしくしてください。財布を盗んで去る時は逃げる感じじゃなくて、手慣れた感じでゆっくり余裕をもって去っていってください。」 モブ役だからあまり読み込んでいなかったけど、けっこうダメ出しが多いな。言われたことを台本にメモしていく。「結城スズが三上ショウを見ているところ。んー、なんか仕事しててほしいですね。点滴の具合を確認するとか。結城スズも声量足りないのでがんばってください。『そうですか。どうして意識を失くしたんでしょうね』は、あー……その前の『石山先生』のセリフもですね。もっと心配してください。 石山先生は、もっと姿勢よくしてください。モブの男の姿勢は悪いままでいいです。で、石山先生と男は違う人間なのでもっと声色を意識して変えてください」 おや?姿勢悪かったのか。どっちも姿勢よくしてたつもりだったんだけど。「その後、二人ハケるところですが、結城スズだけ振り返って三上ショウの心配してください。次、三上ショウが目覚めたあとですね。結城スズの『目が覚めたんですね』はもっと喜んでください。そのセリフの後の三上ショウ、ひなが生まれて親鳥を初めて見た感じで結城スズを見てください。で、三上ショウの『倒れていた』ってセリフ、もっと不思議がってください。次の『ああ、名前』はそのまま名前を言おうとする感じで言ってください。以上です。裕子ちゃん、なんかある?」「はい。えっとねぇ、全体的にタルい。見ててつまんない。のは、なぜかっていうと、芝居の情報量が足りないからです。もっと自分が何やってるのか意識してください。何を考えて動いてるのか伝わってこないです。台本に書いてあることだけやっても小学生がセリフ言って動か
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第三十八話

 立ち稽古が始まった週の土日、土曜日はバイトが始まるまで、日曜日は一日中時間があった。だから台本の読み込みと大道具案を考えることにした。台本も読みたいが、大道具案が通らなければ作り始めることができない。アドバイスを受けるにしても、案くらいできていなければ質問するのも失礼だろう。考えることを放棄することはできない。 今できている台本を読む限り、病院と会社が舞台になっていることが多い。結末までの間もそこが舞台になることが多かった。だからどちらかと言えば建物をイメージできる舞台の方がいいような気がする。だけど路上の舞台もあるし、旅行先のシーンも追加される予定だ。だから、あまり固まったイメージを与えすぎるのもよくないだろう。 僕はメモ帳とルーズリーフを取り出し、予算の話をしたときにメモしていた材料費を確認した。90×180のベニヤ板が一枚千円で二十枚、240cmの角材が一本五百円で三十本。釘は数百円。ペンキが一缶千円で五個。一公演五万円。このまえの公演では、上手と下手の手前と奥に二箇所ずつと上手と下手をつなぐ最奥のパネルを作った。最奥のパネルが八枚、上手と下手のパネルはすべて四枚ずつで、一枚のサイズは90cm×210cmだったはずだ。 それで必要なベニヤ板と角材を計算すると……ベニヤ板が二十八枚。あれ?一公演で使うって言ってた二十枚を越えたな。あ、そうか。前使ったパネルが倉庫に保管してあるからそれを使うのか。角材は枠の長さと斜めに入れる補強を計算すると、だいたい百五本。おや、三十本よりだいぶ多いな。倉庫にあるやつを使えば足りるのかな?パネルを支える足は倉庫にある分で足りると思って計算に入れてないけど。 ペンキは五缶と言ってたけど、よくわからないな。まあ、薄めて使えるからいいか。あとで佐々木さんに聞いておこう。 出ハケ口は上手と下手二箇所ずつ必要だろうか。上手と下手をつなぐ奥パネルは必要だろう。出ハケを一箇所ずつにしたらだいぶ予算が浮きそうだ。上手か下手どちらかが一箇所でもいい。そうすると演出プランが狂ったりするのだろうか。舞台案を何個か作って、各案の予算も伝えて判断してもらえばいいか。 病院のベッドは作る必要があるだろうか。椅子を並べて代用できるかな。椅子を作るならコンパネが必要になる。コンパネというのは、厚さ1cmくらいある板のことだ。強度があるので階段や椅
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