僕は上手へ戻りかけ、三上ショウを振り返る。「こいつは助けを呼んだ手間賃としてもらっとくぜ。悪く思うなよ」 そう言って僕は悠然と上手側へハケた。ピーポーピーポー、と骨折さんが救急車の効果音をラジカセから流す。「暗転します」 コロさんの合図で山口さんはうつ伏せから仰向けに向き直り、看護婦の結城スズ役の由美ちゃんが上手から出る。「明転します」 結城スズは仰向けの山口さんの顔をすでに心配そうに覗き込んでいる。それから体を転がし、背中を拭き始める。僕もジャージの上着を羽織って上手から出る。白衣という設定だ。稽古が進むにつれてこういう約束事は無数に増えている。結城スズが僕を振り返る。「石山先生」「検査の結果、目に見える外傷以外に重篤な症状はなさそうだよ」「そうですか。どうして意識を失くしたんでしょうね」「頭を打っているようだからね。じきに目を覚ますだろうから、今は安静にしておくべきだね。結城さん、彼が目覚めるまではこまめに様子を見ておいてね」「はい、わかりました」 僕と結城スズは上手側へ向かい、結城スズだけ立ち止まって心配そうに三上ショウを振り返った。「照明変化しました」「……っつ……」 コロさんの合図でゆっくりと三上ショウが上体を起こす。「どこだ、ここは。……病院?」 三上ショウはきょろきょろと周りを見回す。ゆっくり振り返って横に手を伸ばし、ナースコールをする。結城スズが上手から舞台へ出ていく。「良かった、目が覚めたんですね。お加減はいかがですか?」 ぱん、と手が鳴る。由美ちゃんは台本を取りに行く。「スズが喜んでるのはわかるんだけど、もっとオーバーにお願いします。あともっと慌てて駆けつけてください」「はい」「じゃあ、もっかい『良かった』から」 由美ちゃんが台本を置くと、ぱんと麻美さんの手が鳴る。ばたばたと結城スズが三上ショウに駆け寄る。「良かった!目が覚めたんですね。お加減はいかがですか?」「なんだか頭がぼうっとしています。ええと、ここは……」「ここは石山総合病院です。あなたが気を失って倒れていたところを救急車で運ばれてきたんです」「倒れていた……?」「名前を教えていただいてもよろしいですか?」「ああ、名前は——」 三上ショウは言葉に詰まり、片手で額を押さえる。骨折さんが操作するラジカセから洋楽がフェードインし、
اقرأ المزيد