「えーとですね、石山総合病院は石山の祖父が診療所を始めて、父親が総合病院にしました。年齢は五十歳です。結婚して、息子が一人、犬を一匹飼っています。息子は医大生で今年卒業予定の二十四歳です。妻は元看護婦です。医者の家系の三代目で、父親からは医者になるよう期待されていました。勉強も医者も嫌いではなかったので、医者になることは苦ではなかったです。医者以外にどうしてもやってみたいこともなかったので、やりたいことは余暇でやればいいかと考えていました。」 ナベは役作り用のノートを一枚めくり、一瞬ノートに目を走らせる。合宿所内にページをめくる音だけが響く。「えー、院長の息子ってことで、当然次期院長になることを父親から期待されていました。だから、同僚の医者に比べて優秀でなければならないっていうプレッシャーがありました。ただ、実力が飛び抜けてあるわけではないけど人望はあるタイプだったので、人と人をつなぐタイプのリーダーとして認められる院長になりました。 二十五歳で結婚したんですが、相手は看護婦で、次期院長の可能性が高いってことでぐいぐいこられて押し切られました。妻のことは苦手でも嫌いでもないです。結婚した一年後に息子が生まれて、四十歳で院長になります」 ナベはここまで一気にしゃべり、一息ついた。周りを見回す。「なにか質問とかありますか?」「はーい。結城スズのことはどう思ってますか?」 由美が手を上げるが、ナベは少し顔を曇らせる。「いやー、さっきまではね、信頼できる部下だと思ってたんだけど。いやまあ、いまもそうなんだけど。告白されたって話を聞いたからなあ。微妙にどう思ってるか変わるよね。母子家庭の話とか看護学校の奨学金の話もそうだけど。でもまあ、そうだなあ。そういう家庭の事情とか知ってたら支援は惜しまないかな。正看護婦になってもらったほうが病院としても助かるだろうし。仕事は一生懸命する子だからね」 ガジンがぷっ、と吹き出した。「『一生懸命する子』って……。なんかナベ、おじさんみたい」「しょうがないだろー?混じるんだよ、役と」「それはわかるけど」「はい、他ー。質問ある
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