何かを言おうとして、口を開いては閉じてを繰り返す伏見。 そんな伏見を、音羽は急かす事はせずじっと待った。 だが、結局伏見は音羽からふいっと視線を逸らしてしまって──。 そして、ソファから立ち上がった。 「蓮夜──……っ」 どうして、こんな事をするのか。 どうして以前、あんな事をしてまで自分が危ない仕事を始めようとするのを止めたのか──。 伏見は、昔の自分を知っているのか──。 音羽は、次々と込み上げてくる疑問を伏見に問いただそうとした。 だが、伏見を見上げた音羽は、伏見が窓の外に視線を向け、目を細めた姿を見た。 何かを見つけた、と言うようなそんな伏見の表情。 「蓮夜、どうしたんですか──」 音羽がそう聞こうとした時。 窓の外に向いていた伏見の顔がぱっと音羽に戻り、音羽の腕を掴んでソファから引き上げた。 「音羽の息子が帰って来た。散歩に行こう。接触するぞ」 「──っ!恭ちゃんが!?ま、待ってください!すぐに服を着ます!」 昔、伏見と会っていたかもしれない。 伏見は、昔の自分を知っているのかもしれない。 その事はとても気になるが、今の音羽にとって1番大事なのは息子の恭だ。 音羽は慌てて伏見に脱がされた下着やワンピースを急いで身に付けた。 ◇ 「──あ。おばさんに、おじさん。こんにちは……」 「こんにちは」 音羽と伏見が手を繋ぎ、外に散歩に出る。 玉櫛の家に向かって道を歩いていると、音羽の姿に気が付いた恭が自ら声をかけてきた。 音羽は恭に挨拶をされた事が嬉しくて嬉しくて。 だが、それを顔には出さないように細心の注意を払い、微笑みを浮かべて挨拶を返す。 「保育園の帰り?楽しかった?」 音羽が恭の背丈に合わせてしゃがみ込む。 そうすると、僅かに恭の瞳に感情が揺らいだように見えた。 恭は手を繋いでいる運転手を窺うように見上げた。 だが、運転手は伏見と言葉を交わしているようで、恭は迷ったように視線を揺らしたあと、音羽にぽつりと小さな声で答えた。 「あまり楽しくないです……」 「──え?」 どうしたの──。 どうして、保育園が楽しくないの。 音羽はそう聞こうとしたが、伏見と運転手の会話は終わってしまったようで。 運転手が恭に顔を向け、話しかける。 「さあ、坊っちゃま。お家に入ったらお勉強の先生がいらして
Last Updated : 2026-03-14 Read more